【アロマ】ジャスミン・アブソリュート
-植物の特徴・期待される効果効能とは?

【アロマ】ジャスミン・アブソリュート<br />-植物の特徴・期待される効果効能とは?

幸福な気分へ導く「神からの贈り物」

エキゾチックで濃厚な花の香りから、芳香剤や化粧品類の香りにも使われるジャスミン。溶剤抽出したアブソリュートが一般的ではありますが、精油感覚でアロマテラピーやスキンケアなどにも利用されています。濃密な香りはゆったりとした贅沢な時間を演出してくれますし、メンタルサポートにも高い効果が期待されていますよ。女性領域でのサポートやスキンケアなど、女性の美の健康サポーターとしても注目されている存在です。

ジャスミンのアロマ解説

ジャスミンとは

ジャスミンの特徴・歴史

香水や芳香剤などの“香り”としてお馴染みのジャスミン。日本に住む私達にとっては、植物としてのビジュアルよりも「ジャスミンの香り」や「ジャスミン茶」など、香りの印象の方が強いと言っても過言ではないかも知れません。香りも、白もしくはクリーム色をした小振りな可愛らしい花も、世界中で愛されている花の一つです。香料としてみると、ジャスミンは濃密で甘い花の香りが特徴。ロマンチックなと表現する方も多い一方、人によってはこってりしすぎていると感じるほど濃厚です。

そんなジャスミンは、植物として見るとモクセイ科ソケイ属に分類されます。広義でのジャスミンはソケイ属に含まれる約300種の総称としても用いられていますが、香料としてはスペインジャスミンやオオバナソケイと呼ばれる種(学名Jasminum grandiflorum)が主に利用されています。ジャスミンティー・沖縄のさんぴん茶に利用される茉莉花(マツリカ)も同属ですがJasminum sambacという別種。茉莉花もお茶だけではなく香料源として利用されていますが、こちらは“ジャスミンサンバック”と呼んで区別しています。

ジャスミンの原産地は中国~インドにかけてのヒマラヤ地域と考えられています。ただし、かなり古い時代には既に広い範囲へと伝わっており、古代エジプトでも栽培が行われていたそう。現在使われているジャスミン(jasmine)という呼び名や属名Jasminumは「神からの贈り物」を意味するペルシャ語“yasmin(ヤースミーン)”が語源とされています[1]。中近東や欧米では女性の名前としても人気があるそうで、ディズニー映画『アラジン』のヒロインの名前もジャスミンでしたね。日本で言うところのサクラに近いのかもしれません。

ジャスミンはエジプト王国最後の女王、世界三大美女の一人に数えられるクレオパオラが愛した香り(花)であるとも言われています。また、ジャスミンは愛や性の象徴としてもよく用いられ、クレオパトラがジャスミンの香りを“媚薬”として一役買ったなんていう逸話も。それ以外にも、インドでは結婚式の花・アラビアでは媚薬として用いられてきたなど、陶酔感のあるジャスミンの香りは官能的な印象で語られることが多い存在。

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ちなみにジャスミンは「夜の女王」とも呼ばれますが、これはナイトライフ的な意味合いではなく、ジャスミンが夜になると香りが増す花ため。ローズが“芳香(花)の女王”と称されるのに対して、ジャスミンを“芳香(花)の王”と呼ぶこともあります。また、ジャスミンは最も芳香が強くなる夜間もしくは早朝までに花を摘み取る必要があること・約760万本の花から1kgの香料しか製造出来ないと手間がかかる存在。それでいて香水や化粧品産業での需要も高いので、お値段的にも女王様です。

最も高品質とされるアンフラージュ抽出はデリケートな作業を一ヶ月ほど続けてやっと抽出できます[2]し、溶媒抽出の場合も採油率が低く原料確保が大変なことに違いはありません。精油(ジャスミン・アブソリュート)として販売されているものであっても、安価なものは他の精油や合成香料による偽和が多いことが指摘されています。

香料原料データ

通称
ジャスミン・アブソリュート(Jasmine Abs.)
別名
素馨(ソケイ)、大花素馨(オオバナソケイ)
学名
Jasminum Grandiflorum
(syn.Jasminum officinalevar.grandiflorum)
科名/種類
モクセイ科ソケイ属/低木
主産地
インド、モロッコ、フランス、エジプト
抽出部位
抽出方法
溶剤抽出法(アブソリュート)
オレンジ~茶色
粘性
中~高い
ノート
ミドル~ベースノート
香り度合い
強い
精油成分
酢酸ベンジル、安息香酸ベンジル、フィトール、リナロール、ジャスモン、オイゲノール
おすすめ
芳香浴・アロマバス・マッサージ・スキンケア・ヘアケア

エキゾチックで濃厚な、陶酔感のある甘い花の香り

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ジャスミン・アブソリュートに期待される働き・効能

精神面への作用と効果

陶酔感をもたらすと表現されることのある、ジャスミンの濃厚な香り。実際に2013年『Journal of Health Research』に発表された研究論文でも“ジャスミンオイルによって、幸福感、アクティブ、フレッシュ、ロマンティックなどのポジティブな感情が高まった”ことが報告されています[3]。また、2010年にもジャスミンオイルによるアロマテラピーマッサージによって刺激・活性化効果が見られたことが報告され、うつの軽減や気分向上に役立つ可能性を示唆した論文も『Natural Product Communications』に発表されています[4]。

こうした研究から、ジャスミンは気分を盛り上げたり、幸福感を高める働きが期待されています。快感を司る脳内の神経伝達物質のエンファリンやドーパミンの分泌を促すのではないかという説もあるほど。精神的な疲労で気分が落ち込んでしまった時、不安・恐怖に苛まれている時、自信喪失時や一歩を踏み出せない時に、自信を取り戻す手助けをしてくれる香りであると表現されることもありますよ。

加えて、ジャスミン・アブソリュートに多く含まれている酢酸ベンゼル・フィトール・リナロールなどの精油成分は、鎮静作用を持つ可能性が示唆されている成分でもあります[1]。芳香の吸引ではありませんが、2005年に『European Journal of Applied Physiology』に掲載された京都大学の実験では、ジャスミン茶の匂いを嗅ぐことで自律神経活動と気分状態の両方に鎮静作用が見られたことが報告されています。こうした作用はリナロールの働きによる可能性が示唆されていますから、お茶ではなく精油を香らせることでも同様の効果に繋がる可能性はあるでしょう。

このため、ジャスミンの精油は気分を高めるだけではなく、気持ちを落ち着けてリラックスさせる働きも期待されています。刺激・高揚作用と合わせて、ラベンダーと同様に「気持ちのバランスを整えてることが得意なオイル」と紹介されることもあります[2]。

安眠サポートにも…?

神経や気分を落ち着かせるは働きを持つと考えられることから、ジャスミンの香りは気持ちを穏やかにリラックスさせることで睡眠のサポートにも効果が期待されています。中部大学からもジャスミンの香りによって心拍変動に変化(LF成分の増大)があったことが報告されており、気持ちの面と体の状態の両方から入眠のサポートをしてくれる精油としても使用されています。

ただし、2013年『Journal of Health Research』に発表された論文では、眠気が減少したことが報告されており、ジャスミンオイルは神経系の機能に刺激効果があるのではないかもと示唆されています。古代エジプト人が神経障害や睡眠改善のためにジャスミンを使用していたという逸話がある一方、夜を盛り上げる“媚薬”としても使われてきたジャスミン。医薬品のように効果が認められているものではありませんので、自分が香らせてみてどう感じるかによって使い分けていくのが良いでしょう。

肉体面への作用と効果

ジャスミンは鎮静・抗うつ作用など精神面でのサポートが得意な精油と考えられることから、精神的ストレスに起因する諸症状の軽減や改善が期待されています。また、自律神経系に働きかける可能性が示唆されているため[4]、自律神経の乱れからくる頭痛や倦怠感など諸不調の緩和に役立つ可能性もあります。

鎮静作用だけではなく鎮痙作用も期待されおり、けいれん性の咳・気管支炎・胃痛や腹痛などの軽減にも取り入れられています。有効性を示唆している研究もありますが、研究数が少なく、プラセボと比較して明確な差異はないと報告している論文もあり、詳細は分かっていません。同様に呼吸器系の不調緩和などに対しても、民間療法の域を出ないのが現状です。

女性の体への働きかけ

ジャスミンは古くは「子宮のハーブ」とも呼ばれ、子宮収縮を促す=出産サポートの民間薬として用いられてきた歴史もあります。また精神面のサポート役立つこと、母乳分泌を促す働きが期待できることから、ジャスミンをマタニティーブルーを始めとした産後のケアに勧める声もあります。ただし、ジャスミン精油は子宮や女性ホルモンに対しての働きかけが示唆される一方、その科学的根拠はありません。どういった作用を持つか解明されていませんので、妊娠中や授乳中の方は医師に相談なく使用することを避けましょう。

ジャスミンはホルモンバランス調整に役立つ可能性があること・精神面への働きかけが期待できることから、PMS(月経前症候群)や更年期障害などホルモンバランスの乱れに起因する諸症状には用いられることが多い精油です。2008年『Journal of Evidence-Based Complementary and Alternative Medicine』に掲載された研究では8週間ジャスミンオイルを用いたマッサージを受けた被験者にクッパーマン更年期障害指数・気分および更年期関連症状の改善が見られたことも報告されています[5]。

その他に期待される作用

肌への働きかけ

ジャスミンは古代から肌を美しく保つために使われてきた植物。ジャスミンオイルもまた、溶剤抽出されたアブソリュートではありますが、皮膚に塗布することでも様々なメリットがあると考えられています。

ジャスミンに期待される作用としては、エリモント作用(皮膚を柔らかく潤す働き)・抗炎症作用・細胞再生促進などが挙げられており、肌タイプを選ばず利用できることからスキンケア用としても優れていると考えられています。エリモント作用や抗炎症作用から乾燥肌・敏感肌ケアにも用いられており、精神面への働きかけからストレスが原因の肌荒れにも効果が期待できます。

そのほか、ジャスミンオイルは肌の再生を高める働きがあり、アンチエイジングや出来てしまったシワの軽減に良いという説、抗炎症作用を持つ酢酸リナリルも含まれているためは湿疹や皮膚炎のケアに良いという説もあります[6]。ただし、ジャスミンオイルは接触性アレルギーを起こす可能性が指摘されている存在。炎症部位は避けて皮膚の厚い部分からパッチテストを行い、問題なかったとしても炎症を起こして敏感になっている場所への使用は避けるようにしましょう。

催淫作用について

ジャスミンは古くから催淫剤として用いられてきた歴史があります。現代でもジャスミンを配合し媚薬的な働きが期待される“フェロモン香水”や、子宝のハーブとして紹介されることも有りますね。催淫作用がある成分としてはジャスミンの甘い香りの元であり、イランイランなどにも含まれている「酢酸ベンジル」が取り上げられることが多いかと思います。この場合の催淫作用というのは心を解放してゆとりを産み出し“素直に愛情や喜びを表現し感じられる”という精神的な働きも大きいのではないかと考えられています。

肉体面でも生殖器強壮作用が期待されていることから、精神的なサポートと合わせて男性であれば精子を増やす・インポテンツ(勃起不全)の改善などに、女性の場合であれば身体を整えたり不感症への改善に繋がると考えられています。肉体・精神両方の作用によって性的障害や不妊のサポートに良いと言われていますが、現代の薬物のような性欲増強といったものではないでしょう。意中の人を誘う・射止めるというよりは、性行為に対する不安やコンプレックスがある・日常生活のストレスや疲労があるカップルに適しているかもしれません。

ジャスミン・アブソリュートが利用されるシーンまとめ

【精神面】

  • ストレス・神経疲労
  • 気分の落ち込み・無気力
  • 不安・自己嫌悪があるときに
  • 前向きになりたい時に
  • 心の癒やしが欲しい時に
  • 自信を取り戻したい時に
  • 気分を整えたいときに

【肉体面】

  • 精神面に起因する不調緩和に
  • 自律神経のサポートに
  • 更年期障害の緩和に
  • PMS/月経中の不快症状軽減に
  • 生殖機能・妊活サポートに
  • 肌コンディションを整えたい
  • シワ・乾燥小じわケアに

ジャスミンの利用と注意点について

相性の良い香り

ジャスミン・アブソリュートはブレンドする相手の系統を選ばすに利用できる、ブレンド用としても使い勝手の良いオイル。特に柑橘系の香りとは相性抜群で、ジャスミンの濃厚さを軽くしてくれるという面でも人気があります。逆に濃密な香りが好きな方であればオリエンタル系・フローラル系と組み合わせても良いでしょう。香りが強く持続性も高いので、ブレンドの際はジャスミンの量は控えめにすると失敗しにくいですよ。

ジャスミンのブレンド例

ジャスミン・アブソリュートの注意点

  • 妊娠中・授乳中の方、小さいお子さんへの使用は避けましょう。
  • 香り・刺激ともに高いので高濃度での使用は控えましょう。
  • 運転中など集中力が必要な場面での利用は控えて下さい。
  • 皮膚を刺激する可能性があるため、敏感肌の方は使用に注意が必要です。
  • 疾患がある方・投薬治療中の方は医師に確認してから利用して下さい。
  • アロマテラピーは医療ではありません。効果や効能は心身の不調改善を保証するものではありませんのでご了承ください。
  • 当サイトに掲載している情報は各種検定とは一切関わりがありません。

参考元