【アロマ】パチュリー/パチョリ精油
-植物の特徴・期待される効果効能とは?

【アロマ】パチュリー/パチョリ精油<br />-植物の特徴・期待される効果効能とは?

心とお肌のケアに注目される精油の一つ

墨汁をハーバルにしたような、クセのある香りが特徴的なパチュリー。香料源となるのはシソ科植物の葉部分で、インドや中国などでは古くから生薬としても用いられてきた歴史があります。好き嫌いが別れたり、ヒッピーの香りというイメージもありますが、実はストレス対策や女性領域のサポートなど様々なメリットも期待されています。幅広いお肌の悩みの改善を手助けしてくれる精油としてスキンケアにも活用されていますよ。

patchouli

パチュリー(パチョリ)とは

パチュリーの特徴・歴史

良く言えばエキゾチック、悪く言えば墨汁と咳止めシロップを混ぜたような独特の香りを持つパチュリー。好きになると病みつきになる香りでもある一方、苦手な方はとことん苦手な香りでもありますね。原材料となる植物よりも、精油もしくは香りの表現としての方が知名度が高いのではないでしょうか。湿った土や墨汁と表現される香りから木部や根を連想されることもありますが、パチュリーはシソ科に分類さる植物で葉が香料として使われています。大雑把にはミントの仲間である、と紹介されることもありますね。精油は葉を乾燥・発酵させたのちに水蒸気蒸留したものが一般的。年に数回収穫でき採油率も高いので、価格帯は比較的安め。

パチュリーの原産地はインド、もしくはその周辺を含む熱帯アジアとされています。地域によっては野菜として葉を食べたり、調味料や香辛料として料理にも使われているようです。またインドや中国などでは古くから薬効ある香草であるとして、伝統医療・民間療法に用いられてきました。現在でも漢方では霍香(カッコウ)して下痢・制吐剤や解熱剤として利用されていますし、古くはマレーシアでは蛇に噛まれた際の解毒薬として用いられていたこともあるそう。そのほかインドでは虫除け効果があることも経験的に知られており、18~19世紀にはインドから輸出された布・衣服の香りとして欧米にも広がっていきます。当時の人々はパチュリーの香りが染み付ているかを“高品質のシルク”だとか“本当のオリエンタルの布”の指標にしていたという逸話もありますよ。

現在のように飛行機であっという間に輸送されるわけではない当時の交易で、ヨーロッパに到着してなお香りが残っていたパチュリー。またサンダルウッドベチバーなどと同様に時間の経過によって質が向上していくという特性もあり、現在でも香りが長く持続することと合わせて特にオリエンタル系香調の香水作りでは保留剤としてもよく使われています。パチュリーオイルは経年変化でコーヒーやカカオを思わせるような甘く香ばしいニュアンスを含み、色も黄色から琥珀色へと深くなります。買ってから苦手だなと感じた時もは捨てずに寝かせておくと使いやすくなるかもしれません。

パチュリーの香りの持続性を示す例として有名なのはマドンナの「Like A Prayer(ライク・ア・プレイヤー)」香りですね。保存状態にもよりますが、20年以上経っても香りが残っていたものも少なくないのだとか。余談ですが「Like A Prayer」にパチュリー感の強い香水が使われた理由も“マドンナが愛した香り”として紹介されることが多いものの、当時の新聞では“60年代と教会の雰囲気を音と香りで感じて欲しい”という意味合いがあったことが紹介されています。無類のパチュリー好きというよりは曲の雰囲気や世界観に重点を置いていたようにも感じられるコメントですね。

ちなみに、パチュリーの香りはアメリカにおいて60年代から70年代に誕生した既存の社会体制や価値観を否定し自然回帰を提唱した人々「ヒッピー(フラワーチルドレン)」を象徴するものの一つでもあります。これは精神の調和をもたらすと考えていたとも、媚薬効果があったためだとも、強い香りでマリファナの香りを誤魔化すためだったとも言われていますが、ともあれ多くのヒッピー達が身に纏っていた香りの代表格という位置づけであったそう。と言っても近年はエキゾチックかつノスタルジックな香りとして広く使われていますし、スキンケアに対する有効性や食欲抑制効果を持つ可能性が報じられたことで美容面のサポーターとしても注目されていますよ。

香料原料データ

通称
パチュリー(Patchouli / patchouly)
別名
パチョリ、霍香(カッコウ)
学名
Pogostemon cablin
科名/種類
シソ科ミズトラノオ属/常緑多年草
主産地
インド、インドネシア、マレーシア、ブラジルなど
抽出部位
葉部分(乾燥葉)
抽出方法
水蒸気蒸留法
オレンジ色~琥珀色
粘性
中~高め
ノート
ベースノート
香り度合い
中くらい
精油成分
パチュリアルコール(パチュロール)、グアイエン、パチュレン、ブルネセン、β-カリオフィレン
おすすめ
芳香浴・アロマバス・マッサージ・スキンケア・ヘアケア・防虫

カビ臭さ・墨汁っぽさにも通じる、スモーキーな麝香系の香り

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パチュリー(パチョリ)に期待される働き・効能

精神面への作用と効果

漢方薬と麝香・土を混ぜたような香りを持つパチョリー精油。この独特の香りは精油成分全体のうち30~40%を占めるパチュリアルコール(Patchoulol/パチュロールとも)、またパチュレンなど特有とされる芳香成分によるとことが大きいと考えられています。主成分のパチュリアルコールには気持ちのバランス整える働きが期待されており、土をイメージさせる香りであることも合ってか地に足を付けて落ち着いた状態を作り出す“グラウディング”効果を持つ精油として扱われています。このためパチュリーはストレスや不安を和らげ、リラックスしたり自分を取り戻す手助けをしてくれる精油として活用されています。

気持ちのバランスを整える働きが期待されている精油でもありますから、ストレス・緊張・不安・興奮・憂鬱感など広い意味での“気持ちのうわつき”がある時や、何かの事柄について思い詰めてしまっている時にも力を貸してくれる精油と考えられます。パチュリー精油は少量を用いれば鎮静、多量に用いると刺激効果を表す特性があるという見解もあり、リラックスタイムの演出や精神安定・混乱状態からの回復には少量を、活力や前向きさ・創造力が欲しい時は少し強めに香らせてると良いという話もありますよ。そのほか2011年に『Journal of Natural Medicines』に発表された予備調査では、パチョリのアロマを吸引したマウスに鎮静効果が見られたこと・睡眠障害の治療に役立つ可能性があることも報告されています。

催淫作用について

パチュリーはイランイランと共に催淫特性を持つと考えられている精油の代表格でもあります。60年代のヒッピーが挙って付けていた香りである理由の一つとしても、媚薬効果があると考えられていた事が関係しているという説もあるほど。しかし、香りのベクトルとしては濃厚な甘さで「いかにも」なイランイランとパチョリは全く別モノ。苦手な方であれば「絶対無理」と仰るのではないでしょうか。

パチュリーの催淫作用については性ホルモンを刺激するという説もありますが、グラウディングとバランシングの働きがあるとされている部分が大きいのではないかと考えられます。好きな方であれば深い安心感を感じさせる香りでもありますし、気持ちを安定させるだけではなく刺激させることでモチベーションアップに繋がるとも言われています。欧米人的にエキゾチックな香り=セクシーに感じられる傾向もあったのではないかと邪推も出来ますが、双方ともパチュリーの香りがOKならばベッドルームの雰囲気作りに利用してみても良いでしょう。

肉体面への作用と効果

パチュリー精油の主成分であるパチュリアルコール(パチュロール)やパチュレンなどは消毒・抗菌効果を持つと考えられている成分であり、特にパチュリアルコールには一部のインフルエンザウィルスに対して有効であるという報告もなされています。2018年に『Molecules』に掲載された60種の精油の抗真菌活性調査の結果でも、パチュリオイルに抗菌活性が見られたことが報告されています。そのほかに抗炎症作用が期待できるα-ブルネセンやカリオフィレンを含むこと・パチュリーオイルには免疫強壮作用を持つという見解もあり、精油は風邪やインフルエンザなどの感染症予防・発熱などのケアに取り入れられることもあります。

また、パチュリーは食欲増進ではなく、食欲を抑える「食欲抑制効果」が期待できる精油として一時期話題になった精油。と言ってもパチュリー精油が食欲抑制を発揮するかというヒトでの研究は行われておらず、可能性を示した報告と言えるのも2006年に『Journal of Korean Academy of Nursing』に掲載された韓国の動物実験くらい。結論として飼料効率を下げる=摂取した食べ物による体重増加を抑える可能性があると示されていますが、実験用ラットでは体重または消費された食物の量に有意差は見られなかったそう。パチュリーは消化促進作用・蠕動運動促進作用があり消化不良や便秘軽減に良いという説もありますし、地域によっては香辛料として使われているもの。無闇矢鱈に使用すると食欲増進の方に働く危険性も否定できません。精神面でのバランスを整えることでストレスによるイライラ食い・過食を抑えてくれるかも知れない程度に考えるのが無難でしょう。

むくみ・女性の不調にも

パチョリーオイルは利尿・尿量増加にも役立つとして、一部の自然療法では腎臓結石の予防にも使われています。抗菌性が期待できることと合わせて尿道炎などに良いとする見解もありますよ。また血液循環促進やリンパを強壮する働きがあるという見解もあることから、利尿作用と合わせてむくみの解消やセルライトケアなど美容用として用いられることもあります。ダイエットサポートに適した精油の一つとしてパチュリーを取り入れるという方もいらっしゃいます。

副次的な働きとはなりますが、血行不良やむくみに起因する頭痛やめまい・だるさ・倦怠感などの不調軽減につながる可能性もあります。精神面での鎮静作用と合わせて更年期障害やPMS(月経前症候群)など、心身に不快感の出る女性特有の不調ケアにオススメの精油として紹介されることもありますね。生理前にイライラしやすい・異常に食欲が出てしまう方も試してみると良いかも知れません。

その他に期待される作用

>肌への働きかけ

心身に対して様々な働きかけが期待されているパチュリーですが、近年は幅広いお肌の悩みに答えてくれる精油としてスキンケア用途で注目されることが多い精油。原産であるアジアでも伝統的にパチュリーは乾燥・湿疹などの皮膚トラブル、フケや頭皮の脂っぽさなどのケアに民間薬のような感覚で利用されてきた歴史があります。近年でも十分な根拠と言えるほどのデータではないにろ16菌株の皮膚細菌に対して有効性が見られた・コラーゲン繊維の破壊を防ぐなどの報告もあり、収斂作用・細胞成長促進・瘢痕形成作用・皮膚軟化作用など皮膚に対して様々な働きが期待できる精油として注目されている存在となっています。

パチュリーは肌の再生を助けてくれる精油として傷・ひび・あかぎれなどの回復促進に活用されている他、たるんだ皮膚を引き締めてくれることからはシワ改善などのエイジングケア用・ダイエット後や産後の皮膚のたるみのケアまで様々に取り入れられています。滑らかで柔らかくハリのあるお肌作りをサポートしてくれる成分として、スキンケア化粧品類に使われていることもありますよ。また、抗炎症作用に加えて抗菌・抗真菌作用や殺癬作用を持つとされることから、ニキビ予防・水虫や真菌性皮膚炎・ヘルペスなどの感染症予防に良いという説もあります。肌のお悩み全般に対して何らかの働きかけが期待されている精油であると言っても過言ではないですね。

防虫剤代わりとしても

インド産の布を輸送する際に、虫剤代わりに使われていたことから欧米へと広まったと言われるパチュリー。現在でも衣類やお部屋を害虫から守ってくれる防虫・殺虫作用を持つ精油として、芳香剤兼防虫剤として用いられています。2015年にはアイオワ州立大学からパチョリ油が2種類の蚊に対して強い殺虫特性を発揮したことが報告されていますし、イエバエやアリに対しての有効性を示唆した報告もなされていることから、パチュリーオイルは現在でも人に対する毒性が低い天然殺虫剤として注目されています。

ただし服・布製品にはパチュリーの香りが染み付いてしまうので使用には注意が必要。単品ではなく、レモンなどトップノートの精油に保香剤として少量ブレンドして利用すると良いでしょう。柑橘系やフローラル系のものよりもタバコと香りが混じった際に害がない香りですので、タバコを吸われる方の場合はそのままパチュリー精油を利用しても良いかもしれませんが。

パチュリーが利用されるシーンまとめ

【精神面】

  • ストレス・緊張・不安
  • イライラ・興奮
  • 気持ちの落ち込み
  • 精神疲労・無気力
  • 心を落ち着かせたい
  • 冷静な判断力が欲しい
  • 考えたに詰まっている
  • やる気がでない時に
  • 自分を見つめ直したい時に

【肉体面】

  • イライラ食い対策に
  • 消化機能サポートに
  • 風邪・インフルエンザ予防
  • むくみ・セルライト予防
  • 更年期障害・PMS対策
  • ニキビ・水虫予防に
  • 肌のたるみ対策に
  • 肌のエイジングケアに
  • 防虫剤や保香剤として

パチュリー精油の利用と注意点について

相性の良い香り

パチュリーは非常に強い香りを持つ精油。1滴だけでもしっかりと自己主張する香りですから、ブレンドする場合は1~2滴ずつ入れるようにすると失敗しにくいです。配分を間違わなければ、どの系統であっても組み合わせやすい香りではあります。パチュリーの香りが苦手な方は軽めのフローラル系やハーブ系と、思いっきり濃厚さを楽しみたい時はウッディー系やバルサム系の香りと合わせのがおすすめです。

パチュリーのブレンド例

パチュリー精油の注意点

  • 妊娠初期の使用は避けましょう。
  • 多量もしくは長時間の使用で食欲不振・不眠・神経系の発作など起こす危険性が指摘されています。使用量に注意しましょう。人によっては不快感を覚える香りでもありますから、TPOを考えて使用することをお勧めします。
  • アロマテラピーは医療ではありません。効果や効能は心身の不調改善を保証するものではありませんのでご了承ください。
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参考元