女性領域でのサポートにも期待
ナッツのような、お酒のような、ちょっと癖のあるフルーティーな香りを持つクラリセージ。上質なマスカテルワインっぽさを出すための香料として使われたという歴史もあります。精油成分としては酢酸リナリルとリナロールの含有率が高くストレスケアや不眠対策に期待されているほか、エストロゲンと似た構造を持つ「スクラレオール」と合わせて月経痛や更年期障害など女性領域のサポートにも注目されています。
Contents
クラリセージとは
クラリセージの特徴・歴史
フルーティーな印象でありながらナッツのような香ばしさ・ハーブ調っぽさも併せ持った、芳醇な香りを持つクラリセージ。香料として利用されることが多い植物で、ルームミストやバスソルトなどでもその表記を見かけることが多いのではないでしょうか。バジルなどのように料理用ハーブとして使われることは少ないものの、お酒類をはじめとした“食品香料”としては使用されています。アロマテラピーでも様々な効能を持ち、ホルモンバランスに左右されやすい女性の体に対しても優れた効果を発揮する精油として重要視されているようです。ミントやラベンダーほど老若男女問わずに認知されているとは言い難いものの、ハーブや芳香商品がお好きな方であれば目にする機会の多い植物と言ったところでしょうか。
名前にセージとついている通り、クラリーセージはシソ科アキギリ属(Salvia/セージ属とも)に分類されるハーブの一つ。私達が生活する中で単に「セージ」と呼び料理用もしくはハーブティーに利用しているのは和名ヤクヨウサルビア・英名コモンセージと呼ばれるSalvia officinalisで、こちらもアキギリ属に属す近縁種。それ以外にもアキギリ属の植物には多くの種がありますが、精油原料としては
- クラリセージ:Salvia sclarea
- コモンセージ:Salvia officinalis
- スパニッシュセージ:Salvia Lavandulifolia
の3種が主に用いられています。そのほかに浄化作用があるとされ人気となったホワイトセージ(Salvia apiana)の精油も時々販売されていることがありますが、ポピュラーな精油かと言えば微妙なところです。この3種の中でハーブとしての利用で見れば、世界的に料理にも使用されているコモンセージがダントツで需要の高い存在。しかし精油の場合はコモンセージは刺激が強いこと・ケトン類を含むことから扱いが難しく、刺激性が穏やかで皮膚利用にも使用しやすいクラリセージが多く使用されていますよ。
クラリーセージは南フランス・地中海沿岸周辺が原産とされる植物。紀元前から宗教儀式や薬用に活用されてきたハーブの一つに数えられ、紀元前の植物学者テオプラストスや薬理学と薬草学の父と言われるペダニウス・ディオスコリデスなどもクラリセージの薬効を認めていたと伝えられています。クラリーセージの種小名sclareaや呼び名に使われているクラリー(Clary)も、古代ローマ人が洗顔料として利用していたことからラテン語で「明るい・明晰な」を意味するクラルス(clarus)が語源という説もあります。種小名については「堅い」を意味するギリシア語が語源という説もありますが。また、中世頃からはクラリーセージの種子を水に浸すと出てくる粘液質を洗眼剤として使用したことも分かっています。17世紀に活躍したハーバリストのニコラス・カルペパーは『Complete Herbal』の中で、目の異物を取り除くからクリアーアイ(clear eyes)と呼ぶという旨を記しているそう。
何かと“clear”と縁の深い植物のように思いますが、中世には「人を陶酔させるハーブ」として宗教儀式の中で使ったり、媚薬の原料として使われていたという歴史もあります。クラリーセージの用途としてはお酒類の香り付けがありますが、これも元々は香りの良さだけではなく陶酔作用を持つと考えられていたから取り入れられたと考えられていますよ。ドイツでは質の悪いワインを上質なマスカテルワイン風に調整するためにクラリーセージを使っていたそうですし、イギリスではビール醸造時にホップの代用品として用いていた時期もあります。現在でもクラリセージは香料としての需要が高く、クラリセージのエッセンシャルオイルやアブソリュートは香水を始め石鹸・化粧品・飲食物の香り付けなど様々な分野で用いられています。
香料原料データ
- 通称
- クラリセージ/クラリーセージ(Clary sage)
- 別名
- オニサルビア、マスカルテルセージ(muscatel sage/日本ではマスカット・セージとも)、クリアアイズ(clear eyes)など
- 学名
- Salvia sclarea
- 科名/種類
- シソ科アキギリ属/二年草
- 主産地
- フランス、モロッコ、イタリア、ロシアなど
- 抽出部位
- 全草(花と葉)
- 抽出方法
- 水蒸気蒸留法
- 色
- 無色~淡い黄緑色
- 粘性
- 低い
- ノート
- トップ~ミドルノート
- 香り度合い
- 中くらい
- 精油成分
- 酢酸リナリル、リナロール、β-カリオフィレン、ゲルマクレンD、α-テルピネオール、スクラレオールなど
- おすすめ
- 芳香浴・アロマバス・マッサージ・スキンケア・ヘアケア
甘くナッツ系の印象を含んだ、フルーティーなハーバル調の香り
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クラリセージに期待される働き・効能
精神面への作用と効果
クラリセージの精油成分の中で含有率が最も高いのが、高い鎮静効果を持つとされる酢酸リナリルというエステル類です。次いで含有量が多いのも同じく鎮静作用に優れるとされるリナロールのため、クラリセージは心を深く鎮め穏やかな状態へ導いてくれるリラックス用の精油として評価されています。全体の成分は勿論違いますが、優れた鎮静効果を持つとされる酢酸リナリル・リナロールの含有率が高ことはラベンダーと同じ。気持ちを落ち着けたり精神安定をサポートしてくれる精油と考えられている他、深いリラックスと癒し効果から睡眠導入のアロマとしても利用されています。
また、クラリセージの香りには気持ちを落ち着けるだけではなく、抗うつや神経強壮作用があるとする説もあります。2010年の『Journal of Ethnopharmacology』にはラットを使った実験で、クラリーセージオイルがラベンダーやカモミールなどの精油よりも強い抗ストレッサー効果を示したという韓国の研究報告も掲載されています。プレッシャーやストレスによる緊張で心が強張ってしまっている時や、心配事・感情に振り回されてしまっている時などに香らせてみても良さそうですね。幸福感や自分らしさを取り戻す手助けをしてくれるという見解もありますので、憂鬱感や悲観的な感情に押しつぶされそうな時にも役立ってくれるかもしれません。
肉体面への作用と効果
クラリセージは鎮静作用や抗不安作用など、精神面でのサポートに優れた効果が期待されている精油。このためストレス性(心因性)の腹痛や動悸など様々な不調の軽減に役立つのではないかと考えられます。鎮静作用から神経を落ち着けて痙攣を落ち着ける事に繋がりますし、酢酸リナリルはリナロールは鎮痛作用も期待されている成分。頭痛・偏頭痛・腹痛・筋肉痛・肩こりなど体の痛みの緩和にも効果が期待できるでしょう。鎮静・鎮痙作用などが総合的に働くことによって血圧降下作用となり、動悸や高血圧の改善に役立つとする説もあります。
また、クラリセージに含まれている精油成分の多くは抗菌・抗真菌・抗ウィルス作用を持つ可能性が報告されている成分。クラリセージオイルについても抗菌性・抗真菌性が報告されている実験報告もあります。創傷および皮膚感染症の治療への応用を研究した実験も多いため有効性については曖昧ですが、デュフューザーなどで拡散することで空間の消毒剤として働き風邪・インフルエンザなどの感染症予防にも役立つ可能性があるでしょう。
女性領域でのサポートにも
クラリセージは精神的な不調をはじめ様々な場面で活用されている精油。その中でも注目されている働きとして、月経トラブルや更年期障害など女性領域でのサポートがあります。これは女性ホルモンのエストロゲンと似た構造を持つ「スクラレオール」という成分を含むため、月経を促す・ホルモンバランスを整えるなどの働きが期待されているためです。副作用の少ない女性サポーターとして世界中で研究も行われており、有効性を示唆した報告も数多くなされていますよ。
2012年に韓国の乙支大学では女子高生を対象に、クラリーセージ・マジョラム・シナモン・ジンジャー・ゼラニウムのブレンドオイルをアーモンドオイルで希釈したものを使用し、腹部へマッサージを行って月経痛の緩和度合いを測定するという研究が行われました。被験者をアセトアミノフェン群とアロママッサージ群に分けたところ、月経痛の軽減はアロマテラピー群の方が有意に高かったことが報告されています。また、2014年『Journal of Phytotherapy Research』に発表された更年期障害の女性を対象とした実験では、クラリセージオイルの吸引でコルチゾール濃度低下・うつ状態自己評価尺度に有意な改善が見られたことも報告されています。
こうした実験報告から、クラリセージ精油はルモン様成分であるスクラレオールと鎮静効果を持つ酢酸リナリル・リナロールが複合して働くことでマタニティブルーやPMS、更年期障害による憂鬱感やパニックなど精神的な不調軽減に役立つのではないかと注目されています。メンタルサポートにも適した精油ですから、ストレスによって自律神経が乱れることを防いでホルモンバランスを整える働きも期待できるでしょう。
そのほか精神的な抑圧を開放することと合わせて催淫作用(性欲を高める効果)があるとも言われています。女性だけではなく男女の生殖機能を高める作用もありますので、妊活中の方のサポートにも役立ってくれるかもしれません。ただしスクラレオールには通経作用があるため月経不順に有効とされる反面、流産を誘発する可能性があるので妊娠中は禁忌とされています。出産準備や分娩中に用いることで分娩の促進や痛みを和らげてくれるという説もありますが、安全のために自己判断での使用は避けましょう。
その他に期待される作用
肌への働きかけ
クラリセージは中世頃から皮膚トラブルに対して利用されてきたハーブとしての歴史もあります。ニコラス・カルペパーも目の洗浄だけではなく蜂蜜や酢とクラリセージの葉を混ぜたものを皮膚感染症に使用したと伝えられていますし、かつては軟膏の成分としても使われていたそう。現在でも抗菌・抗真菌作用が見られたという報告や、創傷や皮膚感染症の治療への応用を示唆した報告がなされています。
またクラリセージの精油は収斂作用と皮脂分泌調節作用をもつと考えられ、脂性肌や頭皮の脂っぽさ対策としても活用されています。抗菌作用の高さ・酢酸リナリルには抗炎症作用が期待できることと合わせてニキビ予防や軽度のニキビケアに使用されることもあります。そのほか細胞の成長を促進させる働きがあるという説もあり、シワやたるみが気になる年齢肌のケア、育毛促進・脱毛予防用としても期待されています。
クラリセージが利用されるシーンまとめ
【精神面】
- ストレス・神経疲労
- 不安・緊張・興奮
- 気分の落ち込み・抑鬱
- 悲観的な気分の時に
- イライラ・情緒不安定
- 心が弱っていると感じる
- 癒やしが欲しい時に
- 寝付きが悪いと感じる時に
【肉体面】
- ストレス性の腹痛や頭痛
- ストレス性の動悸・高血圧
- 筋肉痛・神経痛・関節痛
- 風邪などの感染症予防
- 月経不順・生理痛の軽減に
- PMS、更年期障害の軽減に
- 脂性肌・ニキビケアに
- 頭皮・毛髪のお悩みに
クラリセージの利用と注意点について
相性の良い香り
クラリセージは何系の香りとも組み合わせやすい精油ですが、外れる心配が最も低いのは柑橘系。ライトな香りと組み合わせることでクラリセージの持つ芳醇なニュアンスがしっかりと残ります。軽めの印象がある樹木系・ハーブ系・フローラル系などとも比較的ブレンドしやすい香りです。
クラリセージのブレンド例
- 女性領域の不調に⇒ゼラニウム、ネロリ、タラゴン、パイン
- ストレス対策に⇒サイプレス、フランキンセンス、ダバナ
- 脂性肌のケアに⇒グレープフルーツ、レモン、メイチャン
- 夜のムード作りに⇒ジャスミン、パチュリー、バイオレット
クラリセージ精油の注意点
- 妊娠中の方・エストロゲン関連疾患がある方は使用を避けましょう。
- 月経過多・多量月経の方は医師に確認の上で使用することをお勧めします。
- 多量・高濃度での使用、アルコール摂取と前後して使用すると頭痛や吐き気を起こす危険性があります。
- 医薬品と相互作用を起こす危険性があります。
- 鎮静作用が強いため、運転など集中力を要するときは使用を控えてください。
- アロマテラピーは医療ではありません。効果や効能は心身の不調改善を保証するものではありませんのでご了承ください。
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参考元