【アロマ】ゼラニウム精油
-植物の特徴・期待される効果効能とは?

【アロマ】ゼラニウム精油<br />-植物の特徴・期待される効果効能とは?

ストレス・ホルモンバランスにも?

バラに似た香りから「バラの香り」を作るためにも使われているゼラニウム。その香りから“ローズゼラニウム”とも呼ばれていますが、精油はハーバル調寄りの香りです。成分としてはゲラニオール、シトロネロールやリナロールなど鎮静作用が期待できる成分も多いためメンタルケアに役立つと考えられています。女性特有の精神的な不調の軽減、スキンケア用の精油としてもよく使用されていますよ。

ゼラニウムのアロマ解説

ゼラニウムとは

ローズゼラニウムの特徴・歴史

様々なバリエーションがあり華やかで、育てやすいことから園芸植物としても人気のあるゼラニウム。お花が好きな方ならご存じのようにゼラニウムと一口に言っても、様々な種類がありますよね。そんな中でハーブや香料原料として単に「ゼラニウム」と呼ぶ場合は、バラのような甘くフローラルな香りを含むことから“ローズゼラニウム”とも呼ばれるPelargonium graveolensという品種を指すのが一般的となっています。

ちなみに、本来ゼラニウムという呼び名はフウロソウ科フウロソウ(Geranium)属の植物の総称として使われていた言葉です。ローズゼラニウムが属すPelargoniumはテンジクアオイ属なので“Geranium(ゼラニウム)”と呼ぶのはおかしいように感じますが、かつてはテンジクアオイ類もゼラニウム属としてまとめられていました。なのでゼラニウムという呼び名が定着しており、現在でもハーブや香料ではテンジクアオイ属のPelargonium graveolensが“ゼラニウム”のオーソドックスとなっています。ちょっと紛らわしいですね。

さらに紛らわしいことに、園芸植物としてはテンジクアオイ属の中でも芳香を持つ種類をセンテッド・ゼラニウムして区分し、その中でバラ様の芳香を持つ品種を総称して“ローズゼラニウム”と呼んでいるケースもあるという点。ローズゼラニウム=Pelargonium graveolens var Roseumという訳でもないのですね。精油の場合は基本的に種が決まっていますが、園芸植物としては呼称だけではなく学名まで確認しないと品種がわからない事も多いのだとか。余談ですがゼラニウムの種子名“graveolens”は強い香りを意味するラテン語で、セロリディルなど芳香が強い植物の種子名にでも見かけます。

ゼラニウム(Pelargonium)はアフリカが原産の植物。原産地付近の人々には古くから傷の手当などに取り入れられてきた、古代エジプトやギリシアでは皮膚に良いハーブとしてスキンケアに使われていた、不安や疲労の緩和・気分の改善に使用された…などの説もありますが、本格的にヨーロッパに導入されたのは17世紀頃から[1]と考えられています。香りが良いことからフィンガーボウルの香り付けハーブとしても人気だったのだとか。また、現代でもヨーロッパの一部地域では赤いゼラニウムを飾る風習がありますが、これはゼラニウムが魔除け・厄除けのパワーを持つと信じられていた名残だという説もあります。魔除けはさておき、ゼラニウムは虫が嫌う香りを持つことが認められていますから、防虫や虫を介する病気予防に役立った可能性はあるかも知れませんね。

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ゼラニウムの成分と産地について

ゼラニウム精油にはシトロネロール・ゲラニオール・リナロールなどローズと共通の成分が含まれており、香りにもローズっぽさがあるため「バラの香り」の演出にも使われています。ローズ精油は薔薇の花びら4000kgから1kg程度と言われていますが、ゼラニウム精油は葉や茎800kgから約1kgと採油率が高く安価なことも特徵。このため、かつては安価なローズの代用品という扱いで“貧乏人のバラ(poor-man’s rose)”とも呼ばれていました。しかし近年はゼラニウムの香りそのものの評価も高まり、芳香剤や入浴剤などで「ゼラニウムの香り」という表記も多く見かけるようになりました。ゼラニウム精油は香味剤として食品・飲料にも使われていますし、化粧品・香水での需要も高い存在と言えます。

アメリカ、ヨーロッパ、日本など在は世界各地でゼラニウムの栽培・採油が行われていますが、産地によって成分比率と香りが異なっていることも認められています[1]。マダガスカル島のレユニオン島(旧ブルボン島)で採れたものは他の産地に比べゲラニオール含有量が高く、バーボン(ブルボン)タイプと呼ばれます。とは言え単体でゼラニウム精油(エッセンシャルオイル)を香らせた場合は、ローズ・オットーっぽさを微かに感じる程度。ローズよりもシャープなグリーンさが強く、ハーブオイルにローズを少量加えたような印象です。香りの好き嫌いが分かれる精油ですが、成分や働きはローズ近く特に女性へのサポートに適していると考えられていますよ。

香料原料データ

通称
ゼラニウム(Geranium)
別名
ニオイテンジクアオイ(匂い天竺葵)、トゥルー・ローズゼラニウム(true rose geranium)、センテッドゼラニウム(Scented geranium)、ペラルゴニウム(Pelargonium)など
学名
Pelargonium graveolens
(syn.Pelargonium roseum)
科名/種類
フウロソウ科テンジクアオイ属/多年
主産地
マダガスカル島、レユニオン島、エジプト、モロッコ、中国
抽出部位
花、茎、葉
抽出方法
水蒸気蒸留法
淡黄色~明黄緑色
粘性
低め
ノート
ミドルノート
香り度合い
中~強め
精油成分
シトロネロール、ゲラニオール、蟻酸シトロネリル、リナロール、イソメントン
おすすめ
芳香浴・アロマバス・マッサージ・スキンケア・ヘアケア・防虫

微かにローズっぽさのある、甘さと鋭さの混じった重いハーバル調の香り

 

ゼラニウム精油に期待される働き・効能

精神面への作用と効果

ゼラニウムの特徴成分と言えるのが、モノテルペンアルコール類の一つであるゲラニオール(geraniol)。ゼラニウムから発見された成分で、ゼラニウムが「バラに似た香り」を感じさせるのはゲラニオールの持つ芳香が元となっています。優雅なフローラル調の香りを持つゲラニオールには抗うつ作用が、ゼラニウムに多く含まれているシトロネロールとリナロールにも鎮静作用や抗不安作用などが期待されています[1]。このためゼラニウム精油の甘くフローラルな芳香は心身を落ち着かせ、リラックスさせたい時に用いられています。

2015年『Journal of Caring Sciences』に掲載されたイランの研究でも、ゼラニウム精油の香りを吸入することで分娩中の不安が効果的に軽減したことが報告されています[2]。こうした研究や伝統的にストレス軽減や気分の改善に利用されてきたことから、アロマテラピーでゼラニウムはストレス・不安・倦怠感・緊張感を軽減してリラックスを促し、幸福感を高めてくれる香りとして扱われています[1]。

肉体面への作用と効果

ゼラニウムに含まれているゲラニオールは抗炎症作用作用がみられたことも報告されています。2013年には『Libyan Journal of Medicine』にロースゼラニウム精油に抗炎症作用が見られたというアルジェリアの研究が報告されています[3]。同研究ではローズゼラニウム精油が“安全な抗炎症薬の原料”となる可能性があることも示唆されています。まだ有効性が断定された状態ではありませんが、伝統的にゼラニウムはアロマテラピーなどで関節リウマチのケアに利用されてきたこともあり、神経痛・関節痛・リウマチなどの緩和に役立つのではないかと期待されています。

そのほかゼラニウム精油は民間療法において、循環系への刺激作用を持つと考えられています。血液やリンパ液などの体液循環を良くする働きが期待され、循環が整うことで利尿作用・体内の余分な水分や老廃物の排出を促す=むくみや水太りの予防や軽減によいとする説もあります。こうした働きについては根拠と呼べるデータはありませんが、指針・神経の安定作用と合わせて使用してみても良いでしょう。

感染症予防・呼吸器ケアに

ゼラニウムに含まれている精油成分の大半は、抗菌作用や抗ウィルス作用を持つことが報告されている物質でもあります。ゼラニウム精油全体としても24種類のバクテリアや真菌に対して強力な抗菌および抗真菌能力を持っていることがinvitro試験で確認されています[4]。厳密にそれぞれの原因菌への有効性が評価されているわけではありませんが、民間療法では天然の抗菌薬として風邪やインフルエンザ、膀胱炎や尿道炎などの尿路感染症予防に取り入れられていることもあるようです。

また、抗炎症作用が期待できることも合わせて、ゼラニウム精油は風邪の初期症状ケアにも効果が期待されています。研究段階ではありますが、急性気管支炎や副鼻腔炎の軽減に役立つ可能性も示唆されています。呼吸器系の不調が出やすい方であれば、ルームフレグランスも兼ねて香らせてみると調子が悪くなる予防にも繋がるかも知れません。

女性領域のサポートにも

神経の興奮を落ち着けることは自律神経やホルモンバランスを整える事にも繋がるため、ゼラニウムの芳香は間接的に女性ホルモンのバランスを整えるサポートも期待されています。そのほか、副腎への刺激作用がありホルモン分泌を促すという説もありますが、こちらはエビデンスがほぼなくゼラニウムに女性ホルモン様(エストロゲン様)作用を成分は含まれていないという見解も多いため信憑性はイマイチです。

ともあれ、気持ちを落ち着ける働きが期待できるので更年期障害や月経前症候群(PMS)など、女性特有の精神的に不安定な期間を乗り越えるためのサポートに役立つ可能性はあります。女性ホルモンの分泌リズムも整いやすくなりますから月経不順の改善につながる可能性もあるでしょう。香りも女性に好まれやすいフローラル調なので「女性サポートの香り」と紹介されたり、ブレンドオイルに使われていることもありますね。ただし妊娠中の使用は避けるべき精油とされていますので注意しましょう。

その他に期待される作用

肌への働きかけ

ゼラニウム精油は抗菌作用や抗ウィルス作用を持つことから、水虫やカンジダ、口唇ヘルペスなどのケアにも利用されています。抗炎症性を示したアルジェリアの研究でも、ゼラニウム精油の局所塗布によって炎症症状を抑制することが報告されています[3]。研究で認められたわけではありませんが、こうした背景からゼラニウム精油は虫刺されや湿疹などの皮膚炎症ケアに有益な精油であると紹介されることもあります。ただし、EUからは強い感作性(アレルギー誘発性)を持つという評価もされていますので使用には注意が必要です。

また、ゼラニウムは古代からスキンケアに取り入れられてきたと伝えられるハーブの一つ。精油もスキンケアに優れた効果を持つとして、製品から自作スキンケアまで様々なところで使用されています。皮脂分泌調整作用や肌の水分バランスを整える働きが期待されており、ニキビ予防や乾燥肌・脂性肌両方のケアに適した精油と紹介されることもあります。そのほか肌を柔らかく保ち、肌のくすみや乾燥・角質化などを防ぐとも言われていますが有効性は分かっていません。感作性が指摘されている精油でもありますから、使用する場合はお肌の調子を確認しながら少量ずつ取り入れてみて下さい。

天然の虫よけとしても

ゼラニウムに含まれているシトロネロールやゲラニオールには防虫作用があります。このためゼラニウムは昆虫禁忌特性がある精油として、天然の虫よけ剤としても利用されています。ゼラニウムの香りは特に蚊が嫌う香りと言われていますから、フレグランスを兼ねた蚊よけアロマスプレーを作る方もいらっしゃいます。ただし、シトロネロールやゲラニオールなどのモノテルペンアルコール類はダニや蜂を誘引する可能性が高いと考えられている成分でもありますから、使い所には注意が必要という指摘もあります[5]。

ゼラニウムが利用されるシーンまとめ

【精神面】

  • ストレス・神経疲労
  • 不安・緊張・抑うつ状態
  • イライラ・情緒不安定
  • 明るい気持ちになりたい
  • 気持ちを穏やかにしたい
  • 更年期障害に伴う精神不調
  • 生理前(PMS)の精神不調

【肉体面】

  • 循環不良・むくみ
  • 神経痛・関節痛の軽減
  • 風邪・インフルエンザ予防
  • 自律神経の乱れ
  • ホルモンバランスの乱れ
  • 生理痛・月経不順
  • 脂性肌・乾燥肌のケアに
  • 肌老化・くすみケアに
  • 天然蚊よけ剤として

ゼラニウム精油の利用と注意点について

相性の良い香り

ゼラニウムの精油は柑橘系、オリエンタル系の香りと相性が良いとされています。特にレモンなどさっぱりとした柑橘系とのブレンドはゼラニウムが持つ重さを中和して全体的な香りの印象をライトにしてくれるため、ちょっと重いなと感じる方におすすめです。

ゼラニウムのブレンド例

ゼラニウム精油の注意点

  • 妊娠中・授乳中の方、小さいお子さんへの使用は避けましょう。
  • 皮膚を刺激する可能性があるため、敏感肌の方は使用に注意が必要です。
  • 疾患がある方・投薬治療中の方は医師に確認してから利用して下さい。
  • アロマテラピーは医療ではありません。効果や効能は心身の不調改善を保証するものではありませんのでご了承ください。
  • 当サイトに掲載している情報は各種検定とは一切関わりがありません。

参考元