香り作用も「スッキリ」がキーワード
果物としてよりも更にライトで親しみやすい印象の、サッパリとした軽やかな香りを持つグレープフルーツ精油。近年はグレープフルーツの香り成分“ヌートカトン”に交感神経活発化による脂肪燃焼作用を持つ可能性が報告されたこともあり、ダイエットをサポートしてくれる精油としても注目されています。気持ちを落ち着ける働きも期待されていますし、疲労や二日酔いの時など色々な意味で「スッキリしたい」時に適した精油です。

Contents
グレープフルーツとは
グレープフルーツの特徴・歴史
みずみずしさとスッキリ爽やかな風味から、日本でもおなじみの柑橘類の一つになっているグレープフルーツ。冬ミカン(温州みかん)やオレンジと比べると甘みが少なく、酸味とほのかな苦味を持つキリリとした味わい・香りが特徴的です。このスッキリとした風味が好きという方も多いですし、朝食やデザートに食べるという方も珍しくはありませんよね。現在は親しみのある果物となっていますが、グレープフルーツが一般的に食されるようになったのは輸入が自由化された1970年代以降。それ以前は海外から輸入した高級果物の一つとして扱われていましたから、短い期間で私達の生活の中に定着した果物と言えるかもしれません。
果物としても精油としてもアメリカの印象が強いグレープフルーツですが、原産地は熱帯アジアと考えられています。ミカン科ミカン属に分類され、文旦(ブンタン)とオレンジの自然交雑種だろうと考えられてはいるものの、どこで誕生したかは断定されていません。文献の中でグレープフルーツが登場したのも、1750年にイギリス人の学者グリフィス・ヒューズが発表した『The Natural History of Barbados(バルバドスの自然史)』が最初。このためグレープフルーツは18世紀に西インド諸島(バルバトス島)で発見された柑橘類であると紹介されることもあります。日本で普及した歴史だけではなく、世界的に見ても歴史の浅い果物の一つなんですね。
ちなみに『The Natural History of Barbados』の中ではグレープフルーツという言葉は登場せず、文旦(shaddock)に似た味を持つ“The Forbidden Fruit(禁断の果実)”として記載されています。発見された当初、ヨーロッパでグレープフルーツは“禁断の果実”もしくは文旦と区別をつけずに“shaddock”と呼ばれていました。現在使われているグレープフルーツという名前は19世紀初頭に「ぶどう(Grape)の房のように果実がたわわに実る」という性質から命名されたそう。グレープフルーツの学名には楽園(Paradise)に由来する“paradisi”が使われていますが、こちらは禁断の果実=楽園に実っていたから、楽園になる果実として重宝されていたから、その香りが楽園を連想させるからなど諸説あります。
19世紀になるとアメリカ西海岸やブラジル・地中海沿岸と広い範囲でグレープフルーツの栽培が行われるようになりますが、19世紀の後半まで主に観賞用として栽培されていたという説が有力視されています。精油の生産についても1930年代頃から本格的に行われるようになったそうですから、定番とさているラベンダーやローズ・ネロリなどと比べると新しい部類です。現在では果物としても世界中で食されていますし、精油も食品の香り付け用・化粧品や香水・芳香剤など世界的に多用されているものの一つ。日本でもグレープフルーツの香りがする芳香剤や入浴剤などは多く販売されていますよね。果物としてのグレープフルーツよりも、精油は爽やかで明るい印象。香りとしても酸味や苦味を感じさせる部分が少ないので、果物よりも嫌われにくいという評もあります。
グレープフルーツの精油は基本的に果皮だけを低温圧搾して抽出されます。小売価格はほとんど変わりませんが、グレープフルーツは精油の元となる芳香成分を溜めている油胞が果皮の深い部分にあるため圧搾法で抽出する場合はオレンジやレモンに比べて採油率が低いそう。そのほか光毒性のあるフロクマリン類を含んでいることから、ベルガモットなどと同じく水蒸気蒸留したもの・圧搾法の後脱フロクマリン処理を行ったものなど「FCF(フロクマリンフリー)」タイプの精油も生産されています。フクロマリンフリーの方が使い勝手は良いですが、普通に圧搾したグレープフルーツ精油と比べると香りが劣るという説もあります。産地やメーカーによっても香りは微妙に違っていますから、用途や香りの好みに合わせて選ぶと良いでしょう。
香料原料データ
- 通称
- グレープフルーツ(Grapefruit)
- 別名
- グレープフルーツホワイト(White Grapefruit)
- 学名
- Citrus × paradisi
- 科名/種類
- ミカン科ミカン属/常緑高木
- 主産地
- アメリカ(カリフォルニア、フロリダ)、ブラジル、イスラエル、アルゼンチンなど
- 抽出部位
- 果皮
- 抽出方法
- 圧搾法
(※水蒸気蒸留やフロクマリン誘導体を除くため分留されたものも有) - 色
- 淡黄色~琥珀色
- 粘性
- 低い
- ノート
- トップノート
- 香り度合い
- 中
- 精油成分
- リモネン、ミルセン、α-ピネン、サビネン、ネラール、ヌートカトン、フロクマリン類など
- おすすめ
- 芳香浴・アロマバス・マッサージ・スキンケア・ヘアケア
グレープフルーツそのものに近い、軽く爽やかな柑橘の香り
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グレープフルーツに期待される働き・効能
精神面への作用と効果
グレープフルーツは精油成分のうち88~95%程度はモノテルペン炭化水素類のリモネンが占めており、オレンジ精油とそう変わらないほどリモネン含有率が高い精油です。なのにオレンジスイートとはかなり印象が異なっているのは、グレープフルーツ(特にホワイト種)の特徴成分でもある“ヌートカトン(Nootkaton/ノートカトンとも)”などが含まれているためです。成分的に見るとリモネンは鎮静作用を持ち気持ちをリラックスさせる働きを持つことが報告されていますし、ヌートカトンは刺激作用を持つ可能性が高いと考えられています。
グレープフルーツ精油は爽やかな香り+ヌートカトンが神経を刺激することで頭をスッキリさせたり、リフレッシュにも繋がると考えられています。リラックスやリフレッシュをサポートしてくれることから、心のバランスを整える精油としてストレスケアにも活用されています。2002年に『Journal of Japanese Pharmacology』に掲載された資生堂株式会社の実験ではグレープフルーツ精油などのエッセンシャルオイルの芳香吸入によって、交感神経活動を増加させ、気分を改善させたという結果も報告されていますよ。不安や緊張・動揺・イライラなど気持ちのバランスが乱れていたり、そんな状態で集中力や冷静さを失っていると感じた時にも良さそうですね。
香りの印象としてもグレープフルーツの精油は爽やかで、晴れの日・太陽を連想させるような明るさがあります。このためか抑鬱状態の軽減・明るく前向きな気持ちを取り戻すサポートに良いという説もありますから、自己嫌悪や気分の落ち込みがある時、女性であれば生理前や生理中・更年期・マタニティブルーなど情緒不安的になりやすい時期のお供にも適しているでしょう。TPOや性別・年代を選ばない香りであることと合わせて、あがりやすい・ネガティブな想定をしてしまいやすい方のサポートとして、ビジネスシーンにも活用されることがあるようです。
肉体面への作用と効果
グレープフルーツの香りの主成分であるリモネンは唾液分泌を促すことによる消化促進作用や、健胃・整腸など消化機能のサポートが得意であると考えられている成分。血行促進作用があることからも消化機能の向上、冷えによる腹痛などの軽減に繋がります。このためリモネンは食欲不振・消化不良・便秘・下痢・お腹の張りなど幅広い胃腸トラブルの緩和をサポートしてくれる精油成分として扱われています。加えてグレープフルーツ精油全体としては胆汁分泌促進や肝臓・胆嚢の強壮作用があるとする説もあり、暴飲暴食による消化器の疲労や二日酔い軽減にも活用されています。
また血液やリンパの流れを促進して老廃物や余分な水分を排泄する働き期待できることから、むくみやセルライト対策用としてもグレープフルーツは人気の高い精油です。スタイル面だけではなく血行不良による冷え・肩や腰のこりにも効果が期待できますし、血行促進や消化器官の活発化以外に緩下作用があるとする説もありますので便秘気味の方も取り入れてみると良いでしょう。精神面への作用と合わせてPMS(月経前症候群)対策や、ストレス性の頭痛などの緩和用としても用いられています。
風邪予防や回復サポートにも
リモネンは鎮静作用や消化機能亢進のほか、抗菌・抗ウィルス作用や、免疫細胞の働きを正常に整える働きを持つ可能性が報告されている成分でもあります。血行を促すことで体を温める働きも期待できるため、合わせて風邪やインフルエンザ予防、風邪の初期症状ケアにも役立ってくれるでしょう。
肥満予防・食欲抑制効果について
グレープフルーツは脂肪燃焼を促す・食欲を抑制するなど、ダイエットサポートに役立つ可能性があることが報告され話題になった果物でもあります。このうち食欲抑制作用はポリフェノールの一種である「ナリンギン」という成分によるものとされていますが、精油の成分分析表にはナリンギンは記載されていません。グレープフルーツ精油の主成分であるリモネンは消化液の分泌を促して、食欲増進に働きかけると紹介されることもある成分。グレープフルーツの香りを付けたダイエットグッズなども販売されていますが、食欲抑制効果については期待しないほうが確実でしょう。
しかし精油に微量含まれており、グレープフルーツらしい香りの構成物質でもある“ヌートカトン(Nootkaton/ノートカトンとも)”にも肥満予防に有益な働きも持つ可能性が報告されています。ヌートカトンは交感神経を刺激することで、代謝を高めて脂肪分解・燃焼を促す働きが期待されている成分。2003年には新潟大学医学部からグレープフルーツの香りが白色脂肪組織(WAT)に対する交感神経活動を増加させたことを観察し、脂肪分解の増加および体重増加抑制に役立つ可能性を示唆した報告もなされています。
ヌーカートンの作用については研究段階ですし、販売されているグレープフルーツ精油によってはヌートカトンが含まれていないものもあるようです。このためグレープフルーツの香りを嗅ぐだけで脂肪が燃焼する・痩せるという過度な期待は避けた方が良いと考えられますが、グレープフルーツ精油は血液やリンパ液の循環を促す働きが期待できる精油でもあります。精神面でのサポートからもストレス性の過食・イライラ食いの軽減に繋がる可能性がありますから、ダイエットを手助けしてくれる精油であるとは言えるでしょう。日本だけではなくアメリカでもグレープフルーツ精油はダイエットのお供として注目されていますよ。
その他に期待される作用
肌・頭皮への働きかけ
グレープフルーツ精油には抗菌作用があることが認められており、収斂作用や皮脂分泌抑制作用が期待できることと合わせて脂性肌のケア、ニキビ・吹き出物予防などに用いられています。ニキビ対策用のフェイスローションやクリームに配合されていることもありますね。そのほかリンパや血液の循環を促進することからセルライトや妊娠線対策のマッサージオイルとしてもよく利用されていますし、血行を良くすることで皮膚の新陳代謝促進にも効果が期待できるでしょう。
またリモネンは脱毛の原因物質の一つとされる5αリダクターゼの抑制作用が報告されていますし、頭皮の血行促進も期待できることから抜け毛予防・育毛にも良いとされています。ただし光毒性を持つ成分を含むので、皮膚へ利用する場合は紫外線を避けるかFCF(フロクマリンフリー)のものを使うようにして下さい。
デオドラント用に
グレープフルーツの爽やかな香りには消臭作用・抗菌作用があることから、精油は消臭芳香剤のような感覚でも使用されています。細菌やバクテリアの繁殖を抑制することで、体臭・カーテンなどの生乾き臭対策にも繋がるのだとか。夏場はアロマバスやフットバスとして利用するのもオススメですし、アロマディフューザーなどで拡散すれば空気浄化と共にお部屋の空気を爽やかな印象にしてくれるでしょう。
グレープフルーツが利用されるシーンまとめ
【精神面】
- ストレス・不安・神経疲労
- イライラ・興奮・緊張
- 抑うつ・気分の落ち込み
- 女性特有の精神不調
- 情緒不安定さが気になる
- リフレッシュしたい時に
- 前向きさになりたい時に
【肉体面】
- 胃もたれ・二日酔い
- 胸焼け・消化不良
- 血行不良・冷え性
- 肩こり・腰痛・疲労
- むくみ・セルライト
- ダイエット中の方に
- 脂性肌・ニキビ肌のケア
- 消臭剤の代わりに
グレープフルーツの利用と注意点について
相性の良い香り
どのタイプの香りとも相性が良くブレンドしやすい精油ですが、特に柑橘系と樹木系の香りと相性が良いでしょう。レモンと同様にブレンドに加えることで香りに軽みを出してくれるので、ゼラニウムやジャスミンなどの甘さや重さが気になる際に加えてみるのもおすすめです。
グレープフルーツのブレンド例
- リラックスしたい時⇒ラベンダー、パルマローザ、リンデン
- 前向きになりたい時⇒ライム、メイチャン、カーネーション
- 冷え性のケアに⇒ナツメグ、シダーウッド、ブラックペッパー
- ダイエットサポート⇒パチュリー、ジュニパー、キンモクセイ
グレープフルーツ精油の注意点
- 特に記載の無いものは光毒性のある成分を含むため、肌への使用後は紫外線を避けましょう。
- 芳香浴として利用する場合でも、濃度や体質によっては皮膚刺激となる場合があります。
- 酸化しやすい精油のため、開封後は半年以内には使い切りましょう。
- アロマテラピーは医療ではありません。効果や効能は心身の不調改善を保証するものではありませんのでご了承ください。
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参考元