【アロマ】ラベンダー精油(真正ラベンダー)
-植物の特徴・期待される効果効能とは?

【アロマ】ラベンダー精油(真正ラベンダー)<br />-植物の特徴・期待される効果効能とは?

“万能精油”とも呼ばれる存在

化粧品から入浴剤・芳香剤として広く用いられているラベンダー。原産地の地中海沿岸地域では紀元前から利用されてきたハーブであり、古くは万能薬とも考えられていました。アロマテラピーでは“世界で最も多く使われる精油”と称され、各国で様々な効果を持つ可能性が報告されています。リラックスしたい時の香りとしても親しまれていますし、スキンケアにも人気ですね。鎮痛や風邪予防など現在でも万能精油として愛されています。

ラベンダーのアロマ解説

ラベンダー(真正ラベンダー)とは

ラベンダーの特徴・歴史

リラックスアロマとして、ハーバルで柔らかい芳香からスキンケア商品などの香りとしてもお馴染みのラベンダー。ラベンダーの香りはポプリやハーブティーをはじめ、入浴剤・芳香剤・洗剤や柔軟剤・香水・化粧品・飲食物ほか様々なところで使われています。ハーブの香り・アロマテラピーという言葉で真っ先に思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。ハーブにさほど興味がない方でも何となく想像できるほど身近な存在ですし、花としても可愛らしいのでお庭やプランターで栽培している方も珍しくありませんよね。

植物として見るとそんなラベンダーはシソ科に分類され、地中海沿岸地域が原産と考えられています。原産地近くで栄えた古代エジプトや古代ローマの人々は紀元前からラベンダーを香料植物として利用しており、特にローマ人は芳香剤・石鹸・料理用ハーブなど幅広く活用していたようです。ラベンダーの語源についても洗剤などに使われていたため“洗う”を意味するラテン語の“lavo/lavare”ではないかという説があるほど[1]。

古くから人との関りが深いハーブのため、古代ローマでは入浴剤として利用されていた、クレオパトラはラベンダーの香りでシーザーを誘惑した、聖母マリアはイエスの産着をラベンダー水で洗っていた、ベタニアのマリアがイエスに注いだ「ナルドの香油」はラベンダーの香油だった…などなど様々な言い伝えがあります。真偽については諸説ありますが、重要な植物として扱われてきたことがうかがえるエピソードですね。古代だけではなく中世以降もヨーロッパを中心にラベンダーは愛され、虫除け兼芳香剤としてラベンダーを吊るしたり、床に撒いて伝染病予防などに活用していたことも分かっています。

十字軍遠征によって高度な蒸留技術がヨーロッパでも確立したことで、ラベンダーの精油も生産され多用されるようになっていきました。イギリスのエリザベス1世もラベンダーが大好きだったそうで、ジャムや砂糖漬け・ハーブティー・香水とラベンダーに囲まれた生活をしていたという逸話があります。日本では定番とは言えませんが、ヨーロッパではサラダや焼き菓子類などにもラベンダーが使われますね。また、19世紀には憂鬱を払うと考えられ、一種の気付け剤としても使われました。

ラベンダーという植物はアロマテラピーの歴史も密接な関わりがあります。フランスの化学者ルネ・モーリス・ガットフォセが火傷にラベンダーオイルを塗ると治りが良いことに気付き、精油の医学的効能について研究した結果を1928年頃に「Aromatherapie(アロマ=芳香、テラピー=療法)」として発表したことから注目されるようになりました。現在口にしているアロマテラピーやアロマセラピーという言葉もラベンダーあってこそと言えますし、数多く流通している精油の中でラベンダーは現在でも人気上位。アロマテラピーでは“世界で最も多く使われる精油”とも言われています。

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ラベンダーの種類について

ラベンダーと呼ばれる精油は数多くしていますが、品種による大きな区分としては

の大きく4つに区分されます。

真正ラベンダーが香り・作用ともに穏やかで最も扱いやすい種類と言われていますが、スパイクラベンダーは男性的な強い香り、フレンチラベンダーはカンファー系のフレッシュな香りがありますし、ラバンジンは真正ラベンターよりも筋肉疲労や関節痛の軽減には優れているとも言われています。価格的な問題から洗剤や消臭剤など日用品の「ラベンダーの香り」にはラバンジンを用いることが多いと言われています。真正ラベンダーが最良とする傾向もありますが、香りを楽しみたい場合など目的に応じてお好みのラベンダーを選ぶようにすると良いでしょう。

真正ラベンダーに関して言うと、同じ品種を原料とした場合でも、“ラベンダーエクストラ”と“ラベンダーファイン”という2つの表記に分けられることがあります。ラベンダーエクストラはプロヴァンス地方の山岳地帯で自生する野生種、ラベンダーファインは栽培種を指します。ラベンダーエクストラは香り高い最高級品とされていますが、採取率・収油率共に低いため業者であっても入手が困難と言われています。

その他にもメーカーによってラベンダーフランスやラベンダーブルガリアなど産地を呼び名に付けるケースもあります。同じ原料であっても様々な名前で呼ばれていますから、名称(商品名)だけではなく学名を確認してみてください。同じ真正ラベンダー(L.angustifolia)を原料とする精油であっても、産地や抽出技術の関係か商品によってかなり香りの印象が違うように感じられます。はじめて見かける“ラベンダー精油”であれば、個人的には購入前に香りを確かめることをお勧めしたいです。

香料原料データ

通称
ラベンダー(Lavender)
別名
真正ラベンダー(True Lavender)、イングリッシュラベンダー(English Lavender)、コモンラベンダー(common lavender)
学名
Lavandula angustifolia
(syn.Lavandula officinalis)
科名/種類
シソ科ラベンダー属(ラヴァンドラ属)/小低木
主産地
フランス、イギリス、イタリア、ブルガリア、日本、オーストラリアなど
抽出部位
葉、花穂、茎
抽出方法
水蒸気蒸留法
無色~淡いクリーム色
粘性
低い
ノート
トップ~ミドルノート
香り度合い
中~やや強
代表成分
酢酸リナリル、リナロール、テルピネン-4-オール、酢酸ラバンデュリル、β-オシメン、ラバンデュロール
おすすめ
芳香浴、マッサージ、ヘア・スキンケア、アロマバス

ハーバルさとフローラル感のある、親しみあるラベンダーの香り

真正ラベンダーに期待される働き・効能

精神面への作用と効果

ラベンダーは西洋・東洋どちらの伝統医学でも、気持ちを落ち着かせリラックスさせる働きを持つハーブとして利用されてきました。現代でも真正ラベンダーの精油は“リナロール”と“酢酸リナリル”の含有率が高いことが認められており、この2つの成分が複合して働くことで神経の興奮を鎮めるのではないかと研究が行われています。交感神経の緊張が低下し副交感神経の活動が向上することを示唆した研究結果や、芳香の吸引によってα波が増加することを示した研究報告[2]もありますよ。

2016年には140人の産後女性を対象としたイランの研究で、ラベンダーエッセンシャルオイルを4週間吸入すると産後のストレス、不安、うつ病を防げる可能性があることも発表されています[3]。ただし抗不安作用や鎮静作用を示した論文の中はラベンダーオイル製剤(Silexan)の服用によるものも多く、芳香吸引のみでの有効性については断定される段階ではありません。

とは言え、有用性を示唆した研究報告が世界各国から発表されていること・伝統的に用いられてきたことから、精神面でのサポーターとしてラベンダー精油が使われることもあります。アロマテラピーでは抗不安・抗鬱効果を持ち、神経系やメンタル面において“バランスを整える”働きが期待できる精油として、ストレス対策をはじめ不安発作・抑うつ状態・無気力状態などに広く利用されています。脳や身体への働きかけはさておき、ハーバル感とフローラル感を併せ持ち、馴染みのあるラベンダーの香りは多くの方が“心地よい”と感じる芳香でもありますから、お部屋にふんわりと香らせて雰囲気を整えてみても良さそうですね。

安眠・快眠のサポーターとしても

ラベンダーはハーブピローやポプリ・おやすみ前のハーブティー・ベットサイドアロマなど、睡眠をサポートするハーブとしても世界中で利用されています。入眠を促す・質の良い睡眠をもたらすなどの安眠効果が期待されているのは、優れた鎮静(リラックス)効果が期待できるため。研究でもラベンダーの匂い刺激がGABA系を介して中枢神経を抑制する可能性が示唆[2]されていたり、人を対象とした小規模な研究でもラベンダーの芳香によってピッツバーグ睡眠品質指数(PSQI)が見られたことが報告[4]されています。

このためラベンダーは興奮や緊張を緩め、心と身体を眠りやすい状態に導く働きが期待されています。その他に酢酸リナリルはセトロニン分泌を高める、睡眠に関わるメラトニン分泌・体内時計を整える働きを持つのではないかという説もあります。アロマテラピーなどの民間療法でもラベンダーは入眠トラブルや体内時計のリセットに活用されています。寝付きが悪かったり不眠状態が続くことで、体内時計が乱れて起こる悪循環の予防にも役立ってくれる可能性があるかもしれませんね。

ちなみに、古くからラベンダーがリネンウォーターや枕の詰め物などに利用されているのは、心地よい香りで睡眠をサポートしてくれる働きがあるというだけではなく、抗菌・防虫作用によって寝具を清潔に保つという意味合いもあったと考えられています。古代から感染症予防に使われてきたハーブでもありますから、清潔さの維持という面もあったのでしょう。真正ラベンダーはお子様にも安心して利用できる精油ですので、抗菌防虫剤を兼ねたお休みサポートの香りとして使われることもありますよ。

肉体面への作用と効果

民間療法の中でラベンダーは「万能薬」「万能精油」と称されることもあるほど、様々な不快感・不調のケアに取り入れられています。芳香吸引だけではなく飲用も含めると150以上もの効能があるとも言われ、現在も様々な分野で研究が行われています。そうした様々な働きをもたらす大きな要因として、脳や神経の興奮を鎮める働きが挙げられます。緊張やストレスなどによって生じる消化器系の軽減、痙攣の緩和などに繋がる可能性もあるでしょう。このため神経性の腹痛や食欲不振、吐き気・胃痛・腹部膨満感や過敏性腸症候群の緩和にも効果が期待されています。

また、ラベンダーは神経系の興奮を鎮めるだけではなく、より直接的な鎮痛作用を持つという可能性も示唆[4]されています。リラックス効果と合わせて頭痛や偏頭痛・筋肉痛・坐骨神経痛など様々な“痛み”の軽減が期待できる精油として、アロマテラピーではマッサージサロンにも取り入れられていますね。余談ですが、エリザベス1世も単にラベンダーが好きだっただけではなく、偏頭痛持ちであったために頭痛薬代わりにしていたという見解もありますよ。

風邪予防や症状緩和に

ラベンダーは抗菌・抗真菌・抗ウィルス作用に効果が期待されている精油でもあります。古代ギリシア・ローマ時代から感染症の予防に用いられてきた、ラベンダー畑で働いていた農夫はペスト感染を免れたという逸話もあり、古くから病気避けのハーブとして使われてきた歴史もあります。現在でも自然療法(民間療法)ではラベンターオイルは天然の抗菌剤と称され、ルームアロマとして香らせることで風邪予防に一役買ってくれるのではないかという説も。風邪予防に有効かは認められていませんが、抗菌作用が見られたという報告もあります。

女性領域でのサポートにも期待

ラベンダーは若干の通経(月経促進)作用を持つという説もあります。これは女性ホルモン(エストロゲン)の分泌を促すと考えられている“ゲラニオール”などの成分が微量含まれているためと考えられますが、成分分析表などでは記載されていないものもあります。アロマテラピー関連書籍でも妊娠初期は使用不可としているもの・いないものがあります。大事を取って妊娠中は使用を避けた方が確実ですが、通経・女性ホルモン様作用についてはあまり期待しない方が良いでしょう。

ただ精神的な面でのサポート・痛みを和らげる働きなどは期待できますから、生理痛が重い方やPMS(月経前症候群)などで生理前にイライラ・抑鬱などメンタルバランスが乱れやすい方には役立ってくれると考えられます。更年障害に伴う不調の軽減にも利用できるでしょう。2013
年『BioPsychoSocial Medicine』に掲載されたPMS症状を有する17人の女性を対象に行なった実験では、ラベンダ精油の芳香吸引によってPMSに関連する感情的な症状を軽減することが出来る可能性が示唆されています[5]。

その他に期待される作用

肌への働きかけ

ラベンダーオイルはティートリーオイルとともに“局所的にであれば原液を直接肌に付けても良い”とされるほど、刺激性の低い精油とされています。刺激性が低く肌質を選ばずに使えることから、市販されている化粧品にも天然の“油性エモリエント成分”として配合されていますね。エモリエントというのは皮膚に柔軟性や潤いを与える効果を指しますが、ラベンダー精油はその他にも殺菌・皮脂分泌調整・抗炎症作用が期待されています。

そのほか肌の潤いを保つことで余剰な皮脂分泌を抑えニキビ予防にも良い、肌荒れ・吹き出物・湿疹などのケアに役立つという説も。ただしラベンダー精油が皮膚に及ぼす影響については研究報告が少なく、有効性については不明な点も多いです。刺激性が低いとは言われていますが、人によってはアレルギー反応を起こしてしまうことも認められていますので注意して使用しましょう。

ラベンダーが利用されるシーンまとめ

【精神面】

  • ストレス・緊張時
  • ショック・パニック状態
  • 不安・恐怖・イライラ
  • 抑鬱感・無気力状態
  • 情緒不安定・神経過敏
  • リラックスしたい時に
  • 気持ちを落ち着けたい
  • 寝付きが悪い・不眠
  • 体内時計の乱れに

【肉体面】

  • 頭痛・偏頭痛
  • 筋肉痛・神経痛
  • 消化器の不調・過敏性腸症候群
  • 風邪・インフルエンザ予防
  • 咳・気管支炎・喘息
  • 生理痛・生理前のイライラ
  • デイリーなスキンケアに
  • ニキビ・肌トラブル全般に
  • 日焼け・火傷のケアに
  • 傷・虫刺されのケアに

ラベンダーの利用と注意点について

相性の良い香り

ラベンダーの香りはオレンジ・スイートと共に好き嫌いが少なく、大抵の香りと馴染みやすいことも特徴とされています。特に柑橘系やオリエンタル系、フローラル系の香りとは特に相性が良く、組み合わせやすいですよ。

ラベンダーのブレンド例

ラベンダー精油の注意点

  • 妊娠初期は使用を避けてください。
  • 低血圧気味の方が使用すると眠気を起こす可能性があります。
  • お子様への利用時は濃度0.1〜0.3%程度、薄めに希釈してください。
  • 疾患がある方・投薬治療中の方は医師に確認してから利用して下さい。
  • アロマテラピーは医療ではありません。効果や効能は心身の不調改善を保証するものではありませんのでご了承ください。
  • 当サイトに掲載している情報は各種検定とは一切関わりがありません。

参考元