【アロマ】クミン/クミンシード精油
-植物の特徴・期待される効果効能とは?

【アロマ】クミン/クミンシード精油<br />-植物の特徴・期待される効果効能とは?

精神面での疲労回復や強壮に

カレー香りの元というイメージの強いクミン。精油はスパイスとしてのクミンとは少し印象の違う、スパイシーでムスクっぽさもある香りです。紀元前から人々に薬として使用されてきた歴史があり現在でも各地の伝統医療で使用されているためか、精油も様々な効能が囁かれています。ただし芳香吸引で得られる効果についてのエビデンスはほとんどありませんから過信は禁物、香りが好きならば取り入れてみる程度にしましょう。

クミン(Cumin)

クミン(クミンシード)とは

クミンの特徴・歴史

ターメリックなどとともにカレースパイスとして日本でもお馴染みのクミン。カレーの独特の芳香の中心的スパイスと紹介されることもあるので「カレーそのままの香り」を想像してしまいますが、スパイス単体での芳香はカレーよりも漢方薬に近い印象。さらに不思議なことに精油は“カレー感”がほとんどなく、甘さとスパイシーさを持ったムスク寄りの香りになります。万人受けする香りではありませんが、オリエンタル調で温もりのあるセクシーな香り。リキュールを筆頭とした食品類や化粧品や香水などに香料としてクミン精油が使われているのも納得ですね。

そんな不思議な性質のスパイス、クミンはセリ科クミン属に分類される植物。香辛料として一般的な縦長の“クミンシード”は果実に該当する部分で、茎や葉などの部分は同じせり科のニンジンと似ています。セリ科には芳香性植物が多く含まれており、特にキャラウェイシードフェンネルとは果実(種子)部分の外見もよく似ていますね。香辛料としての芳香であれば、甘い印象の強いフェンネルやアニスに比べてクミンはスパイシー寄り。クミンの精油となると雰囲気が変わり、別でフェロモン香水に近い印象の香りになるのは不思議ですね。

カレーの関係からかインドのスパイスというイメージのあるクミンですが、実は東地中海沿岸地域が原産と考えられています。人がクミンを使用してきた歴史は5,000年以上も前まで遡ることから「歴史上最も古くから栽培されているスパイスの1つ」と称されることもあるほど。紀元前16世紀頃に古代エジプトで記されたとされる医学書『エーベルス・パピルス』や『旧約聖書』など古代の書物にもクミンと思われる記述があり、古代エジプト(エジプト新王国)で使用されていたことも報告されている[1]ようです。

地中海エリアで栄えた古代エジプト・ギリシア・ローマでクミンは香辛料として使われたほか、医薬品のような感覚でも用いられていたと考えられています。また、中世ヨーロッパでクミンは魔術的な力を持つと信じられていたと伝えられています。クミンは恋人の心変わりを防ぐ働きがあると信じられ、男女関係における「貞操」を象徴するスパイスとされていた時期もあったのだとか。結婚式でクミンを運ぶと夫婦円満が続く、戦場へ行く兵士の妻は浮気を防ぐためにクミン入りのパン持たせたなどの伝承もありますよ[1]。

とはいえ中世後期頃にはスペインなどの一部地域を除きヨーロッパで香辛料として使われることが減っていき、現在では「エスニック料理のスパイス」という印象が強い食材となったようです。

香料原料データ

通称
クミン(Cumin)
別名
クミンシード(Cuminseed)、馬芹(ウマゼリ/バキン)
学名
Cuminum cyminum
科名/種類
セリ科kクミン属/一年草もしくは二年草
主産地
エジプト、スペイン、フランス、インド、モロッコなど
抽出部位
果実(一般的に種子と呼ばれる部分)
抽出方法
水蒸気蒸留法
淡黄緑色~やや褐色寄りの黄色
ノート
ミドル~トップノート
香り度合い
強め
精油成分
クミンアルデヒド、y-テルピネン、β-ピネン、サフラナール、パラシメン(p-シメン)など
おすすめ
芳香浴(ごく低濃度でアロマバス・マッサージ)

スパイシーで温かみのある、濃厚なムスク調の香り

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クミン精油に期待される働き・効能

精神面への作用と効果

スパイシーで強いクミンの香りは植物療法上では神経・精神に対しての強壮効果を持つと考えられており、無気力な時や神経疲労・神経衰弱時のケアに使用されています。強壮だけではなく気分を高揚させる働きを持つという説もあり、気持ちが落ち込んでいるときに香らせるという方も。ストレスや緊張などで精神的に疲れていると感じている時に香らせてみると良いかもしれません。

またクミンは中枢神経系を刺激することで記憶力を高めたり手足の動きをサポートする可能性があるという論文[1]が発表されたことから、お年寄りの見守りアロマとして注目された時期もありました。そのほか精神的に高揚させるだけではなく抗ストレス・リラックス効果があると紹介されていることもありますが、こうした効果のエビデンスとして紹介されている研究は「クミン抽出物の投与」によって行われたもの。芳香を吸引するだけの場合、どのような効果が得られるのかは分かっていません。医薬品的な効能は期待せず、気分にも良い影響があるかもしれない芳香剤の一種と考えておきましょう。

ちなみにクミンシードは催淫作用(性欲を高める働き)を持つ精油の一つにも数えられています。中世ヨーロッパでは浮気防止のスパイスとして扱われていたことを考えるとちょっと不思議ですが、香りの印象は「確かに」と言いたくなるようなムスク系。精神的は部分でのストレスや疲労感軽減効果も期待できるため、仕事などのストレスをベッドまで持ち込んでしまうような場合には良いのかもしれません。好き嫌いはありますがエキゾチックでセクシーな香りですので、ムード作りのアイテムとしても一役買ってくれそうですね。

肉体面への作用と効果

クミンシードは伝統的に消化器をサポートしてくれるハーブ/生薬として、消化不良や腹部膨張感(ガスによるお腹の張り)などの予防改善に使用されてきた歴史があります。現代の研究でも消化酵素の活性を高める可能性があることや、胆汁分泌促進作用を持つ可能性があることが報告[3]されています。肝臓サポートや胆汁分泌促進に役立つ可能があることから、体内毒素の排出促進(デトックス)にも役立つのではないかと期待されています。

こうした伝統的効能と研究発表の結果もあってか、クミンの精油も消化器系のサポート効果が期待されており、軽度の消化不良や胸やけ・食欲不振時などに適した存在として紹介されていることもあります。ただしクミン精油は香りが非常に強いため、クミン精油の香りが苦手な方や高濃度で利用すると逆効果になる可能性も否めません。また、健康メリットを持つ可能性が報告されているのはクミン抽出物やクミン油の投与による結果。精油をつかったマッサージや芳香吸引による効果については未知数ですので過剰な期待は避けましょう。

そのほかに伝統医療の中では鎮痛・鎮痙剤として扱われてきた歴史も[3]あり、自然療法ではクミン精油もまた頭痛・偏頭痛や痙攣性の胃腸の痛み、筋肉痛、関節痛などの痛みの軽減に活用しているようです。こうした作用についても有効性を評価するだけの研究はないことが指摘されていますし、クミンシード精油の芳香吸引や塗布については更に分かっていません。自己判断で取り入れるのは自由ですが、症状が重い場合は医療機関で適切な診療と治療を受けるようにしましょう。

空気清浄・風邪予防にも

大半が伝統医療における効能・摂取することで得られる可能性がある健康メリットをベースに語られる「クミン精油に期待できる作用」ですが、クミンシード精油を使用した実験もあります。多くが抗菌・抗真菌特性についての評価であり、食品媒介細菌およびいくつかの感染性真菌の増殖を制限する可能性があることが示されています。古い時代に胃腸薬のように利用されていたのも食中毒の予防や軽減効果があったから[4]という見解も。自然療法/民間療法においてクミン精油は抗炎症作用と免疫強化作用を持つと信じられていることも合わせて、空気浄化や風邪予防にクミンオイルを焚くという方もいらっしゃいます。

女性の身体への働きかけについて

クミンは伝統医療の中で女性の体を整えたり、時には堕胎のために使用されてきた経緯があります。現在の自然療法でもクミン精油は通経作用(月経促進作用)を持つ精油にカテゴライズされることがあり、月経不順のケア、鎮痛・抗痙攣作用が期待できることと合わせて生理痛の軽減などに利用されています。

2011年『Pharmacognosy Reviews』に掲載されたクミンについてのレビュー[3]ではクミンシードは植物性エストロゲンを含んでいると紹介されていますが、その根拠として示されている研究は“クミンのエタノール抽出物を投与された動物”を使ったもの。精油ではありませんし、精油の芳香だけでエストロゲン様作用や通経作用があるのかは不明です。安全のために妊娠中の使用は避けるべきですが、謳われている効能を鵜呑みにはせずコンディションを整えるサポーター程度の感覚で使用しましょう。

その他に期待される作用

皮膚利用について

クミンシードオイルは光毒性があること・皮膚刺激性が危惧されることから、スキンケアやトリートメントなど皮膚に直接塗布するような形での使用に適した精油とは言えません。抗酸化作用からアンチエイジングに、抗炎症効果がある・乾燥肌のケアに良いとする説もありますが、日本でも利用者が多い別の精油やテスト経て製品化されているものの使用をお勧めします。皮膚に直接付くような使用法でほちいる場合は低濃度使用・パッチテストを行い、使用後の紫外線(直射日光など)を避けるようにしましょう。

クミン精油が利用されるシーンまとめ

【精神面】

  • ストレス・神経疲労
  • 神経衰弱・過敏症
  • 無気力・やる気が出ない
  • 疲労感・倦怠感
  • 気分の落ち込み
  • リラックスしたい

【肉体面】

  • ストレス性の胃痛・腹痛
  • 消化不良・腹部膨張感
  • 胸やけ・食欲不振・夏バテ
  • 頭痛・偏頭痛の軽減
  • 神経痛やリウマチの軽減
  • 空気浄化・風邪予防

クミンシードの利用と注意点について

相性の良い香り

クミン精油はかなり香りが強めの部類で芳香にも独特の癖があります。単体で拡散する場合も、ほかの精油とブレンドするときも少なすぎると思うくらいに少量使用することをお勧めします。ブレンドは比較的ハーブ系・スパイス系の香りと合わせやすいほか、レモンなどと混ぜて使うと癖が和らぎライトな香りになりますよ。

クミンシードのブレンド例

クミン精油の注意点

  • 妊娠中・授乳中の方、小さいお子さんへの使用は避けましょう。
  • 光毒性のある精油のため肌への使用には注意が必要。皮膚を刺激する可能性もあるため皮膚利用は控えた方が確実です。
  • 疾患がある方・投薬治療中の方は医師に確認してから利用して下さい。
  • アロマテラピーは医療ではありません。効果や効能は心身の不調改善を保証するものではありませんのでご了承ください。
  • 当サイトに掲載している情報は各種検定とは一切関わりがありません。

参考元