虫除け・蚊よけスプレーにも使われる
レモンをちょっとハーバルにしたような、さっぱりとした香りを持つシトロネラ。名前も柑橘系っぽいですがイネ科の植物でパルマローザやレモングラスの近縁種から精油が蒸留されています。伝統的に天然昆虫忌避剤として使用されてきた植物でもあり、精油も蚊取りアロマ・虫除けスプレーとして利用されることの多い存在。そのほかリラックス作用や高揚作用も期待されていますが、人によって効果が異なる可能性も示唆されています。
Contents
シトロネラとは
シトロネラの特徴・歴史
虫除けのオイルとしても使われることの多いシトロネラ。好き嫌い少ないスッキリとした香りと、価格面の安価さから香水や芳香剤・石鹸を始めとするトイレタリーにも広く利用されています。呼び名からもうかがえるように柑橘系の香りが特徴的ですが、イネ科オガルカヤ属に分類される植物で同属種にはパルマローザやレモングラスなどがあります。パルマローザとは区別が付きやすいですが、レモングラスとは香りもよく似ていますし、和名も同じ“香水茅(コウスイガヤ)”が使われることがあり紛らわしい存在ですね。また、レモングラス以上にレモンバーム(メリッサ)とは香りが似ていると言われており、採油率の低いレモンバームの偽和剤としても利用されているようです。
シトロネラの原産はスリランカのセイロン島と考えられています。原産地周辺である熱帯アジアでは虫を寄せ付けない草であることが知られており、蚊帳に編み込んで使用されることもありました。これは単なる虫除けだけではなく、マラリアなどの感染症対策でもあったのではないかと言われています。現在日本のホームセンターや花屋で販売されている“カレンソウ(蚊連草/蚊嫌草)”というハーブも、ゼラニウムをベースにシトロネラを交配させ作られた園芸品種です。
熱帯アジアでは古くから活用されてきたシトロネラですが、世界的に注目されるようになったのは19世紀以降と言われています。ヨーロッパに「オーリアム・シレー(oleum siree)」と呼ばれたシトロネラオイルが出荷されるようになると、レモンに似た親しみやすいハーバルな香りと防虫作用・消臭作用などの機能性から人気を集めるようになります。安価で合成香料が作れるようになるまではシトロネラールの抽出源としても重要な植物であり、虫除けキャンドルをはじめデオドラント用品・石鹸・洗剤など幅広く利用されていたそうですよ。
現在以上に香水業界からの需要も高かったことから、シトロネラは南米・アジア・アフリカなど世界中の熱帯地域で広く栽培されています。世界で最も多く栽培されている香料植物とも呼ばれおり、現在でもシトロネラ油年間生産量は世界で約4,000トンだとか。欧米を中心に見ると使用された歴史こそ短いものの、爆発的に普及したエッセンシャルオイルと言えるかもしれませんね。ちなみに食用には適さないと言われていますが、インドでは葉を香辛料としてスープやカレーなどに使われており、中国では生薬としてリウマチの痛みを抑えるのに取り入れられているそうです。
シトロネラ精油はかつて原産地とされるスリランカが主産地でもありましたが、1980年台からはジャワ産で精油生産が行われ多く出回るようになりました。現在はシトロネラ・ジャワ型とシトロネラ・セイロン型の2タイプに大きく分けられており、ジャワタイプの方がゲラニオールやシトロネラールの含有が多く芳香も強いとされています。このためジャワタイプは香りがハッキリとして鮮烈な印象があり、精油として優れていると評価されています。香りには好き嫌いがありますから、単に香料として考えれば、強い香りが苦手な方はセイロンタイプの方が良い香りと感じる場合もありそうですが。
香料原料データ
- 通称
- シトロネラ(Citronella)
- 別名
- 香水茅(コウスイガヤ)、オーリアム・シレー(oleum-siree)
- 学名
- Cymbopogon nardus
- 科名/種類
- イネ科オガルカヤ属/多年草
- 主産地
- インドネシア、スリランカ、ジャワ、アルゼンチン
- 抽出部位
- 葉部
- 抽出方法
- 水蒸気蒸留法
- 色
- 淡い黄色~黄土色
- 粘性
- 低い
- ノート
- トップノート
- 香り度合い
- 中~強め
- 精油成分
- ゲラニオール、シトロネロール、リモネン、カンフェン、シトロネラール、シトラール、酢酸ゲラニル
- おすすめ
- 芳香浴・アロマバス・マッサージ・ハウスキーピング・防虫
レモンに似た爽やかなシトラス感の中に、甘さ・グリーン感を含む香り
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シトロネラに期待される働き・効能
精神面への作用と効果
シトロネラの精油はレモングラスなどのように特定の成分を高い比率で含んでいるわけではなく、モノテルペンアルコール類、モノテルペン炭化水素類、アルデヒド類、エステル類などを広く含んでいます。このうちトロネラの代表成分と言えるシトロネラールやシトロネロールには鎮静作用が期待されており、強壮刺激作用や抗うつ作用を持つと考えられているゲラニオールの含有率も比較的高いことから、シトロネラの香りは気持ちのバランスを整えたりリラックス状態を作り出すサポートとして用いられています。シトロネラ精油の香りはスッキリとした印象が強いので、リフレッシュして気持ちを切り替えたい時にも役立ってくれそうですね。
ただしシトロネラの芳香を吸引することで得られる生理学的効果については、鎮静や高揚と一言で言い表せないものだという研究もあります。2001年に『International Journal of Aromatherapy』に掲載された日本の研究者による評価実験では、シトロネラは副交感神経と交感神経の両方の神経活動を活性化する可能性があること、シトロネラの評価は個人によって大きく異なる可能性が示唆されています。つまり、ある人によっては鎮静剤のように働き、ある人にとっては刺激剤のように働くのではないかという事。更にシトロネラはセイロンタイプ・ジャワタイプでも成分差がありますし、製造販売社によっても違いはあります。リラックス効果を示したという実験報告も複数ありますが、自分自身の心身にどのような変化があるのかを見極めながら使う必要がありそうですね。
肉体面への作用と効果
シトロネラの持つストレス軽減効果や自律神経への働きかけは、神経性の不調軽減にも役立つ可能性があります。2012年に『Journal of Health Research』に掲載された健康な20人のボランティアを対象とした研究では、シトロネラ油の吸入によって血圧、心拍数、呼吸数が大幅に減少したことが報告されています。また、成分的に見てもゲラニオールは鎮痛・鎮静作用、シトロネラールは局所鎮痛・抗炎症作用などが期待できることから、シトロネラオイルは頭痛や偏頭痛をはじめ、肩こり・腰痛・神経痛・筋肉痛など様々な“痛み”の軽減に取り入れられています。有効と考えられています。かつて伝統医療の中では月経困難症(生理痛)の治療薬として用いられていたこともあるようです。
そのほか2015年に『Nutrients』に発表されたCymbopogon nardusの葉から蒸留した精油を高脂肪食ラットに吸引させるという実験では、シトロネラオイル吸引群は食欲とコレステロールが減少し対照群と比較して体重が減少したことも報告されています。論文ではシトロネラ精油(β-シトロネラール)の吸入は交感神経活動を増加させることにより体重増加を減少させると結論付けられており、ダイエット中の香りとしても役立つのではないかと期待されています。
しかしながら、上記でもご紹介したようにシトロネラの効果は個人によって異なる可能性が示唆されています。心拍数の低下などは鎮静方面の働きですし、交感神経活発化による体重減少は刺激作用の方という風に捉えられますよね。シトロネラの有用性を示唆した研究報告はありますが、なんらかの症状を効果的に治療できるという根拠には至っていません。取り入れる場合は、医薬品のように効果が認められたものではないこと、体に及ぼす影響は未知数で個人差があることを理解して使用するようにしましょう。
風邪予防にも
シトロネラは消毒・抗菌・抗ウィルス作用や免疫力向上効果が期待される成分を多く含む精油でもあります。研究でも特定の抗菌・抗真菌特性を持つことが認められています。インフルエンザウイルスへの有効性については分かっていませんが、デュフューザーなどで拡散することでお部屋の空気を綺麗に保ち、風邪やインフルエンザの予防を手助けしてくれる可能性はありそうですね。精神面の作用と合わせて、ストレスや精神的な問題から免疫力の低下が気になる時のサポートに役立つという見解もあります、シトロネラ精油は爽やかな香りで、価格的にもお安い部類なので使いやすいのも嬉しいところですね。
その他に期待される作用
デオドラント(消臭)用に
シトロネラは防臭・消臭作用を持つとして百年以上前から用いられてきた精油であり、現在でもトイレの消臭芳香剤などにも配合されています。成分的に見てもゲラニオールは体臭や口臭を抑える成分として注目されていますし、シトロネラールやシトロネラールも菌類の繁殖を抑えることで悪臭を抑える事に繋がると考えられます。
制汗作用を持つという見解もありますから、シトロネラ精油を使って自作のデオドラントスプレーなどを作ってみても良いでしょう。トイレやゴミ箱・靴の中敷きなどにスプレーしておくと気になる臭いの抑制にも繋がります。香りが柑橘系であり香水や柔軟仕上げ剤などとの香りとも馴染みやすいという利点もありますね。また柑橘系精油とは異なり光毒性のあるフロクマリン類を含まないので、大人で敏感肌などでない場合であれば低濃度なら肌に直接スプレーもできます。
虫除け・防虫に
シトロネラに含まれるゲラニオールやシトロネラールなどの成分は昆虫忌避作用があり、特に蚊が嫌う香りとされています。このため天然の虫よけ成分として網戸にスプレーしたり、虫除けスプレー作りなどにも重宝されています。デオドラント作用が期待できることと合わせて、シトロネラは夏に需要が高まる精油とも言われていますよ。とは言え、セイロン型シトロネラオイルにはメチルオイゲノールが含まれていることを問題視して防虫剤としての販売を規制している国もあります。逆にアメリカの環境保護庁では局所昆虫忌避剤として使用する場合の毒性はほぼ無いとしており、国によって扱いが異なっていたりします。念の為に小さいお子さん、特に3歳未満の乳幼児の付近では使用しない方が無難でしょう。
ちなみにシトロネラオイルの蚊忌避剤つぃての効果についても意見は様々。優れた威力を発揮したという報告もあれば、継続的に効果を発揮するためは一時間以内に再利用が必要=実用的ではないという見解も。有効性という大雑把なくくりで見れば蚊以外の昆虫に対しても有効性が報告されていますから、蚊よけ・キッチン周りのコバエ対策や洋服の防虫剤などに補助的に使ってみる分には良いかもしれません。低濃度であれば犬に対してノミ・ダニよけとしても利用できるとしてペットアロマとして使う方もいらっしゃるようですが、猫に対しては中毒性を起こす危険性があるため使用を避けましょう。そのためか猫は本能的にシトロネラの香りを嫌う傾向にあり、逆手に取って家の門やお庭で猫の侵入防止として使う方もいらっしゃるようですが。
皮膚利用について
シトロネラは収斂作用や皮膚弾力の回復などが期待されており、脂性肌の方・シワが気になる方に良いと考えられています。石鹸や化粧品などにも配合されていますし、希釈すれば消臭や虫除けスプレーなどの成分として使われることもあります。しかし、皮膚を刺激してしまう可能性があるため使用濃度等には注意が必要。きちんと希釈していても、直接皮膚に付ける場合には事前に狭い範囲でパッチテストを行うことをおすすめします。
シトロネラが利用されるシーンまとめ
【精神面】
- ストレス・神経疲労
- 不安・緊張・倦怠感
- 無気力・集中できない
- 気持ちが落ち込んでいる
- リフレッシュしたい
- 前向き・楽観的になりたい
【肉体面】
- 頭痛・肩こり・腰痛などのケアに
- 風邪予防や空気浄化に
- 手作り蚊除けスプレーに
- 制汗・デオドラントに
- お部屋やトイレの消臭に
- 犬のノミ・ダニ予防に
シトロネラの利用と注意点について
相性の良い香り
樹木系・フローラル系の香りと特に相性が良いとされており、柑橘系の香りとのブレンドも失敗しにくいでしょう。とは言えあまりクセのない香りなのでどの香りとも比較的組み合わせやすい存在で、重めの香りにスッキリ感を加えたい時にも活躍してくれます。
シトロネラのブレンド例
- 精神的な疲労感に⇒ベルガモット、ネロリ、レモン、サイプレス
- 風邪などの予防に⇒シダーウッド、スコッチパイン、ユーカリ
- 頭痛・痛みの軽減に⇒ラベンダー、ラバンジン、パルマローザ
- 虫除け・消臭用に⇒ゼラニウム、レモングラス、ペパーミント
シトロネラ精油の注意点
- 妊娠中・授乳中の方、小さいお子さんへの使用は避けましょう。
- 持病・疾患のある方、医薬品を服用している方は医師に相談することをお勧めします。
- 皮膚刺激となる場合がありますので、低濃度で利用してください。
- 猫を飼われている場合は精油に近づけないようにしましょう。
- アロマテラピーは医療ではありません。効果や効能は心身の不調改善を保証するものではありませんのでご了承ください。
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参考元