筋肉痛や関節痛などのケアに
かつては安価なラベンダー風香料として利用されていましたが、近年そのハーバル調のスッキリとした香りが評価されつつあるラバンジン。真正ラベンダーとスパイクラベンダーの交雑種で、フランスほかヨーロッパで多く精油が作られています。ラバンジンの特徴はカンファーを含み、筋肉痛などの痛みのケアにはラベンダー以上の効果が期待されているという点。ラベンダーと同じくリナロールや酢酸リナリルも含まれていますよ。

Contents
ラバンジン(ラバンディン)とは
ラバンジンの特徴・歴史
ラベンダーに少しツンとするようなシャープさを加えて、ワイルドにしような印象のあるラバンジン。安いラベンダーオイルだと思って購入して、家に帰ってよく見たらラバンジンだったという経験をしたことがあるのは筆者だけではないはず。精油のパーッケージなどで目にする写真もラベンダーと区別がつかないくらいに似ていますし、植物としてもラバンジンはラベンダーと非常に近い関係にあります。ラバンジンは学名はLavandula x Intermediaで、真正ラベンダー(Lavandula angustifolia)とスパイクラベンダー(Lavandula latifolia)の交雑によって誕生した種であることが分かっています。
ラバンジンは1900年頃にフランスで栽培され始め、痩せた土地や寒い土地でも育つ強靭さ・ラベンダーよりも背丈が高く大きな花を沢山付けることから商業用として脚光を浴びたそう。現在の主産地もフランスで、スペインやイタリア産の精油も若干流通しています。育てやすく大きめのサイズであることに加えて、ラバンジンには真正ラベンダーよりも香りが強いというメリットもあります。このため抽出された精油は安価な香料として各業界で使用されてきましたが、真正ラベンダーのな繊細かつ華やかな香りとは異なることから「ラベンダーよりは劣る」という評価をされてきた存在でもあります。
かつてはラベンダーの香りを高めることがラバンジンの主な用途であり、ラベンダー調の香り・ラベンダーの偽和剤というマイナスイメージが根強いということもラバンジンの評価を下げている一因のように感じます。しかし、近年ではラバンジンはラバンジンとしてきちんと評価されるようになってきており、アロマテラピーでも1つの種として扱われています。こうしたラバンディンが再評価された理由としては、ハーブ感があり力強いラバンジンの香りが男性用香水や化粧品として需要があること・ラベンダーにはほぼ含まれていない精油成分が含まれていることの2点が挙げられます。もちろん女性でもフローラル系よりもスッキリとしたハーバル調が好きな方もいらっしゃいますしね。
ちなみにラバンジンは単に“Lavandin”とだけ表記される以外に、
- グロッソ(Lavandula x intermedia ‘Grosso’)
- アブリアリス(Lavandula x intermedia ‘Abrialis’)
- スーパー(Lavandula x intermedia ‘Super’)
- シール(Lavandula x intermedia ‘Seal’)
- レイドバン(Lavandula x intermedia ‘Reydovan’
など品種名を加えた表記がなされる場合もあります。この際にはラバンジン・スーパーとなる場合もあれば、ラバンジンではなくラベンダーを付けて“ラベンダー・スーパー”や“ラベンダー・レイドバン”と表記される事もあります。広義ではラベンダー=Lavandula属植物なので間違いではありませんが、ラベンダー(真正ラベンダー)とラバンジンを分けて考えている中では少々ややこしいですよね。ラバンジンは品種ごとでも成分や香りに若干の差があり、ラバンジン系の精油の中では“ラバンジンスーパー”が最もラベンダーに近いと高評価を得ています。
ただし、ラバンジンスーパーが優れていると評価されているのは酢酸リナリル(リナリル・アセテート)とリナロールの割合が高く真正ラベンダーに成分組成と香りが最も近いというのが理由です。真正ラベンダーが最上という考え方に基づいた評価であるとも言えます。逆の味方をすれば鎮痛や呼吸器系のケアなど、ラバンジンが得意とされている作用についてはグロッソなどシャープな香りのものの方が高いと考えられます。香りの良し悪しも個人の好みによる部分が大きいですから、特にこだわらず好みや用途に合わせて選ぶと良いでしょう。
ラベンダー系精油の種類について
ラベンダーと付く植物は数多くしていますが、ラヴァンドラ属の精油は
- 真正ラベンダー:Lavandula offinalis/Lavandula angustifolia
- スパイクラベンダー:Lavandula latifolia/Lavandula spica
- フレンチラベンダー/ストエカスラベンダー:Lavandula stoechas
- ラバンジン(ラバンディン)系統:Lavandula hybrida/Lavandula flagrans
の4種類が主。
この中でも「ラベンダーの香り」言われてイメージするものに近く、最もポピュラーな存在と言えるのが真正ラベンダー。フローラル調で柔らかい香りがあり、作用が穏やかで扱いやすいとされていることもあってアロマテラピーほか自然療法の中では最重視されている種と言っても過言ではありません。対してラバンジンはカンファー調の刺激感があり、真正ラベンターよりも筋肉疲労や関節痛の軽減には優れているという見解もあります。余談ですが、価格的な問題から洗剤や消臭剤など日用品の「ラベンダーの香り」にはラバンジンを用いることが多いと言われています。ラバンジンのほうがラベンダーよりも香りの保留時間が長いので、せっけん作りなどにも保留剤を兼ねて加えることがあるそう。意外と親しみのある香りと言えるかもしれませんね。そのほかスパイクラベンダーは男性的な強い香り、フレンチラベンダーはカンファー系のフレッシュな香りが特徴的です。
香料原料データ
- 通称
- ラバンジン(lavandin)
- 別名
- ラバンディン、ラヴァンディン、ダッチラベンダー(Dutch lavender)
- 学名
- Lavandula x Intermedia
(syn.L.hybrida/L.flagrans) - 科名/種類
- シソ科ラベンダー属(ラヴァンドラ属)/小低木
- 主産地
- フランス、スペイン、イタリア
- 抽出部位
- 花・葉
- 抽出方法
- 水蒸気蒸留法
- 色
- 無色~クリーム色
- 粘性
- 低い
- ノート
- ミドルノート
- 香り度合い
- 中~強め
- 精油成分
- 酢酸リナリル、リナロール、カンファー、1,8-シネオール、ボルネオール、ラバンデュロールなど
- おすすめ
- 芳香浴・アロマバス・マッサージ・スキンケア・ヘアケア・防虫・ハーブ湿布
真正ラベンダーよりも薬草っぽい、シャープなハーバル調の香り
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ラバンジン(ラバンディン)に期待される働き・効能
精神面への作用と効果
ラベンダーよりは低いものの、ラバンジンも精油成分の半分以上を“リナロール”と“酢酸リナリル”が占めています。この2つの精油成分はどちらも優れた鎮静作用を持つ可能性が報告されていますから、ラバンジンも鎮静作用を持ちストレスや緊張の緩和・不眠の軽減などをサポートする働きがあるのではないかと考えられています。ラバンジンの実験報告はあまりありませんが、ラベンダーの香りを使った実験では副交感神経刺激作用が見られたこと・リラックス状態を示すα波が増加したことが報告されています。このためラベンダーと成分組成が近いとされているラバンジン・スーパーは特にストレスや疲労感がある時のサポーターとして優れていると考えられます。
ちなみにラバンジンは基本的にラベンダーと同じ用途で使用できる、と紹介されることがある反面、真正ラベンダーは夜のリラックスタイムの香り・ラバンジンは昼間の活動中の香りというような分け方をされている場合もあります。ラバンジンが活動時のサポートに適していると評されるのは、脳や神経を刺激して頭をスッキリとさせる働きが期待されるカンファーが含まれているため。香りの印象としてもラバンジンのほうがシャープでリフレッシュ系という印象がありますし、成分的にもリフレッシュや脳機能向上が期待できるというわけです。リフレッシュ用や活動時の香りとしては真正ラベンダーの香りとは離れた、カンファー感が強いものの方が適していると考えられます。
肉体面への作用と効果
ラバンジンに含まれているケトン類のカンファーは神経毒性の危惧があるため禁忌事項が多く、アロマテラピーの教本などでは要注意成分として紹介されいることもあります。しかし危険なだけではなく有益な働きもあり、代表的なものとして心臓強壮(鼓動を強める)作用があります。この働きから以前は強心剤(カンフル剤)にも利用されていましたし、医薬品として使用されなくなった現在では血行促進や血行不良による肩こり・頭痛などの改善などに効果が期待されています。
また、カンファーには鬱血除去薬(充血除去薬)のような形で作用することで鼻詰まりを改善する働きが期待されていますし、鎮咳・消炎作用を持つと考えられる事と合わせて咳・気管支炎などの呼吸器系の不調緩和にも役立つ可能性があるでしょう。ラバンジン精油の主成分である酢酸リナリルにも抗炎症作用を持つ可能性が報告されていますし、リナロールやラバンジュロールには免疫調整作用が期待されています。共に抗菌性が報告されている成分でもありますので、風邪やインフルエンザ予防にも役立ってくれるでしょう。
筋肉痛・神経痛に
ラバンジンの特徴成分と言えるカンファーは血液循環を良くする手助け、抗炎症作用が期待されている成分。ラバンジンに含まれている鎮静作用を持つ成分と合わせて、筋肉を緩め血行を整えることで肩こりや筋肉痛の緩和、関節痛、リウマチ、神経痛、こむらかえりなどの軽減にもラバンジンが役立つと考えられています。カンファーによる循環系刺激・神経系強壮が期待できることもあって、特に筋肉痛・筋肉疲労・関節痛・リウマチなどに対してはラベンダーよりも高い効果が得られるという見解もありますよ。芳香浴に使うだけではなく、アロマバスやマッサージオイルに加えるなどして患部に直接接するようにすると高い効果が期待できるでしょう。
その他に期待される作用
皮膚利用について
ラバンジンもラベンダーと同様に瘢痕形成作用が期待されている精油であり、傷を治す・傷跡を残しにくくするケアに取り入れられています。また、抗菌・殺菌作用と抗炎症作用が期待できることからニキビや皮膚炎症・内出血などのケアに、殺真菌作用により水虫予防に役立つという説もあります。しかし、ラバンジンに含まれているカンファーや1.8-シネオールは皮膚刺激性が高いことが指摘されている成分でもあります。火傷や皮膚炎症など炎症を起こしている部位に使用すると症状を悪化させる危険性もありますので、自己判断での使用はおすすめできません。ラベンダーとラバンジンの違いについては「火傷にを治すか否か」と記載している方もいらっしゃいます。
虫除けとして
1,8-シネオールやカンファーを含むことから、ラバンジンは昆虫忌避作用や殺虫作用を持つ精油とされています。蚊除けだけではなくノミ・シラミ対策にも良いのだとか。妊娠中の方や乳児がいらっしゃる場合は注意が必要ですが、ラバンジンはコストパフォーマンス良い精油なのでデイリーに利用しやすいのも魅力ですね。デオドラント作用があるとする説もありますので、夏場などは虫除けと体臭対策が同時に出来るかもしれません。
ラバンジンが利用されるシーンまとめ
【精神面】
- ストレス・神経疲労
- 不安・緊張・気詰まり
- 気分の落ち込み・無気力
- 心のバランスを取りたい
- リフレッシュしたい時に
- 集中力を高めたい時に
- 冷静に頑張りたい時に
【肉体面】
- 筋肉痛・筋肉疲労
- 関節痛・リウマチ・神経痛
- 血行不良・肩こり・腰痛
- 咳・痰などの呼吸器系トラブル
- 風邪・インフルエンザ予防
- 内出血・ニキビ跡のケアに
- 白癬(水虫・たむしなど)予防に
- 虫除けとして
ラバンジン(ラバンディン)の利用と注意点について
相性の良い香り
柑橘系やフローラル系の香りと相性が特に良いとされていますが、比較的どの系統の香りとも合わせやすいでしょう。個人的にはややカンファー感を感じるので、同じような印象のある樹木系やハーブ系とブレンドするのが最も安定しているように感じられます。ラバンジンはブレンド相手の精油と、香りと互いを引き立て合うと言う説もありますよ。
ラバンジンのブレンド例
- リフレッシュに⇒レモン、バルサムファー、タイムマストキナ
- 集中力を高めたい⇒ローズマリー、クローブ、コモン・タイム
- リラックス用に⇒オレンジ、ゼラニウム、サイプレス、ローレル
- 花粉症の軽減に⇒ライム、ペパーミント、ティートリー、ヒソップ
- 筋肉痛のケアに⇒シトロネラ、ウィンターグリーン、マヌカ
- 空気浄化・風邪予防⇒ラベンダー、ミルラ、パチュリ、パイン
ラバンジン精油の注意点
- 妊娠中・授乳中の方、お子さんへの使用は避けましょう。
- 持病のある方は使用を避けるか、医師に相談しましょう。
- 多量・高濃度・長時間の使用は控えてください。
- 敏感肌の方は肌への刺激を感じる場合もあります。
- アロマテラピーは医療ではありません。効果や効能は心身の不調改善を保証するものではありませんのでご了承ください。
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参考元