喉・鼻の不快感や空気清浄に
スコッチ・パインとは
パインと聞くと果物のパイナップルの香りを連想される方もいらっしゃるかもしれませんが、パインというのは松類を指す言葉。日本の赤松も英語ではJapanese red pineと呼ばれています。パイナップル(pineapple)という言葉も元々は“松(pine)”の“果実(apple)”で松ぼっくりを指していたそうですが、松ぼっくりに似た外見の果物の名前に転用されたと言われています。
上記の通り通常「パイン(pine)」というのはマツ属に属する樹木の総称として用いられます。しかしエッセンシャルオイルで単に「パイン」という場合は学名Pinus sylvestris、和名でヨーロッパアカマツと呼ばれる樹木を原料としたものを指すの場合がほとんど。英名からスコッチ・パイン(Scotch pine)とも呼ばれます。和名の通りヨーロッパの広い範囲に自生しており、北アメリカやニュージランドにも植林されたことで世界で最も広く分布するマツとも言われています。スコットランドの国木でもあり、モミではないものの50年位前にはアメリカでクリスマスツリー用の木としてもポピュラーな樹木だったのだとか。
そんなパインは人との関わりの歴史が長い樹木の一つ。古くから重要な木材として利用されてきたほか、魂を浄化するなどの宗教儀礼にも取り入れられてきた存在です。古代エジプトやギリシャでは感染症・気管支炎・肺炎・結核などの改善にと伝統医療の中で“薬”としても重宝されていた事がわかっていますし、アラブなど他の古代文明においても呼吸器系のケアに用いられてきたと伝えられています。またパインの葉を詰めて作られたマットレスもノミ・シラミ除けとして重宝されていたそうです。
現代では医療行為に用いられたりはしませんが、森の中にいるような気分を味わえる「癒し」の芳香として世界中で愛されています。またパイン精油は殺菌・消毒効果やデオドラント効果が期待できることから体臭対策系の石鹸・入浴剤・獣医用の消毒スプレー・殺菌剤・殺虫剤・洗剤などにも配合されています。そのほか近年はホルムアルデヒドを分解する作用も報告されていることから、シックハウス対策としての研究も行われているそうですよ。
パイン(松)系精油の種類について
エッセンシャルオイルで「パイン」と言う場合はスコッチパインを指すことが多いとご紹介しましたが、他にもドゥオーフパイン(マウンテンパイン)・ブラックパイン(ヨーロッパクロマツ)・スイスパインなどマツ属の樹木を原料とする精油は存在しています。スコッチパインが主力として扱われるのは毒性や刺激性が少ないとされており利用しやすいため。そのほかの精油は皮膚刺激性が高いため一般家庭での使用は適さないとされているものがほとんど。スコッチパイン以外に利用しやすいとされているのはロングリーフパイン(P.palustris)くらいでしょうか。
またスコッチパイン(P.sylvestris)を原料としたものであっても、木部から抽出された精油もあります。こちらは針葉から採油されたものよりも品質が悪く、アロマテラピーとしては利用しないほうが良い精油とされています。このため針葉から抽出されたエッセンシャルオイルを「パイン・ニードル」と呼んで区別する場合もあります。しかし単に「パイン・ニードル」という名称だけでは“どのパインか”がわかりませんから、購入時はしっかりと学名や抽出部位を確認することをお勧めします。
基本データ
- 通称
- パイン(Pine)
スコッチ・パイン(Scotch pine) - 別名
- リガパイン、パインニードル、ヨーロッパアカマツ(欧州赤松)
- 学名
- Pinus sylvestris
- 科名/種類
- マツ科マツ属/常緑針葉樹
- 主産地
- スコットランド、フランス、ロシア、オーストラリア、アメリカ
- 抽出部位
- 針葉
(球果を含む場合もあり) - 抽出方法
- 水蒸気蒸留法
- 色
- 無色~淡い黄色
- 粘性
- 低~中くらい
- ノート
- トップ~ミドルノート
- 香り度合い
- 中~強め
- 代表成分
- α-ピネン、リモネン、酢酸ボルニル、カンフェン、β-ピネン、カレン、ミルセン
- おすすめ
- 芳香浴・アロマバス・マッサージ・スキンケア・ヘアケア・ハウスキーピング
フレッシュかつドライ、ややバルサム調を含む森の香り
こんなお悩みにオススメ
【精神面】
- ストレス・神経疲労
- 気持ちの落ち込み
- 無気力・自己否定
- 緊張・イライラ・不安
- 情緒不安定だと感じる
- リラックスしたい
- リフレッシュしたい
- 集中力を高めたい
【肉体面】
- 鼻水・鼻づまり・鼻炎
- 気管支炎・咳・のどの痛み
- 風邪の初期症状ケアに
- 血行不良・むくみに
- 疲労回復のサポート
- 肩こり・筋肉痛・神経痛
- 温疹・皮膚炎症の軽減
- 肌くすみ・クマ対策
- 空気清浄・消臭剤として
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スコッチ・パインに期待される効果・効能
心への作用
森の空気のような清々しいパインの香りには木々の香りの元とも言われるピネン類が豊富に含まれ、森林浴に近いリラックス効果とリフレッシュ効果を得ることが出来ると言われています。刺激作用や強壮作用もあるとされていますから、精神的なストレスや緊張などで心が疲れきってしまって無気力な時・落ち込んでいる時に力をくれる精油とも言われています。シャープな香りにはリフレッシュ効果もあり頭をクリアな状態に冴えさせてくれるとされていますから、思考を切り替えたい時・集中力が欲しい場面にも適しています。内向的になってしまっていたり自己否定してしまっている時などに適しているという見解もあります。
またパイン精油の主成分といえるのがα-ピネンとリモネンで、メーカーや産地により差がありますが大体同じくらいの比率となっています。リモネンは鎮静作用によるリラックス効果を持つとされる成分ですし、松脂系の臭いで森林系っぽい香りを構成するために重要な成分とされる酢酸ボルニル(ボルニルアセテート)も鎮静作用が期待できると言われていますから、興奮していたり神経が昂ぶってイライラしている時には気持ちを落ち着けるサポートとしても役立ってくれるでしょう。こうした働きからパイン精油は精神面の不調を幅広くサポートしてくれる精油とされており「心身の浄化に役立つ精油」とも称されています。
体への作用
パイン精油の主成分と言えるα-ピネンとリモネンは共に抗菌作用や抗ウィルス作用を持つとされる成分で、免疫力を高める働きも期待されています。全体として見ると去痰作用や抗炎症作用もあると言われていますから、古代ギリシアなどで用いられていた通り呼吸器全般の不調・炎症の軽減効果が期待できるでしょう。風邪などの感染症による鼻水や喉の痛みのほか、気管支炎や喘息などにも有効とされています。
またα-ピネンやリモネンなどモノテルペン炭化水素類の働きで血行促進効果が期待できること・心拍を整える働きが期待される酢酸ボルニルを含むことなどから、パイン精油は冷え性や循環不全の改善にも役立つと考えられています。血液循環の悪さから起こるだるさや倦怠感軽減、精神面の働きかけと合わせて疲労回復のサポートなどにも役立ってくれそうですね。
鬱滞除去作用を持つとする説もありますから、むくみの軽減にも役立ってくれるでしょう。殺菌作用と合わせて膀胱炎などの尿道感染症、子宮内膜炎など生殖器の疾患にも用いられることがあるようです。そのほか肩こりを和らげる・こりから起こる頭痛の緩和に、鎮痛・鎮静作用もあることからリウマチ痛や関節炎などの痛みの緩和にも用いられています。
その他作用
肌への働きかけ
近年パイン(ヨーロッパアカマツ)とブラックスプルースは優れた抗炎症作用を持つことから、ステロイドに代わってアトピー性皮膚炎やアレルギー性の皮膚炎症による炎症・痒みを抑えてくれるのではないかとして注目されています。これは強力な抗アレルギー作用がある副腎皮質ステロイドホルモンの一種「コーチゾン(コルチゾン)」に似た働き(コルチゾン様作用)を持つためとされており、ステロイド剤のように副作用の心配は少ないとされています。
加えてパインには殺菌・消毒作用もあるためアトピー性皮膚炎や乾燥性湿疹などの皮膚トラブルに取り入れられることが増えているようです。ニキビ予防やケアなどにも役立ってくれるでしょう。パイン系の精油の中ではスコッチパインが最も皮膚に利用しやすい精油と言われていますが、それでも皮膚刺激がある精油であることに違いはありません。特に炎症を起こしている部位はデリケートになっていますから、きちんとパッチテストを行い濃度などに注意して用いるようにしてください。
そのほか毛細血管を拡張することで血行を促す働きもありますので、肌のくすみや目の下のクマが気になる場合に取り入れてみても良いと思います。お顔は皮膚が薄いので皮膚刺激性の問題がありますから、最初は手や足裏などのマサージなどから取り入れてみるという方法もあります。アロマバスやマッサージオイルとして利用すると、肌トラブルの緩和と血行不良・冷え性の改善両方が期待できますよ。
空気浄化剤として
パインの精油は優れた抗菌特性とデオドラント作用があり、低濃度で香らせるとあまり好き嫌いのない香りでもある事からお部屋の空気清浄用としても優れています。清々しさだけではなく風邪・インフルエンザ予防としても役立ってくれるでしょう。
樹木系の精油の多くにはシックハウスの原因物質であるホルムアルデヒドを分解する作用があることが判明しています。ヒノキが有名ですが、パイン(松科)の精油もヒノキの精油と並んで高い効果を示したと報告されていますから、シックハウス対策として利用してみても良さそうですね。
スコッチ・パインの利用について
相性の良い香り
同系統である樹木系、香りに軽さを出してくれる柑橘系との相性が良いとされています。似た印象を持つハーブ系・樹脂系の香りとも比較的組み合わせやすいでしょう。
【スコッチ・パインのブレンド例】
- 心のサポートに⇒フランキンセンス、ミルラ、シダーウッド
- 集中力を高めたい⇒ペパーミント、レモン、ローズマリー
- 血行不良・むくみに⇒シナモン、ジュニパー、スパイクナード
- 風邪予防に⇒ニアウリ、クローブ、マートル、シトロネラ
- お肌のケアに⇒ラベンダー、ティートリー、サンダルウッド
パイン精油の注意点
- 妊娠初期の使用は避けましょう。
- 膚刺激が強いので低濃度で用いるようにしましょう。敏感肌・皮膚アレルギーがある場合は特に注意が必要です。
- アロマテラピーは医療ではありません。効果や効能は心身の不調改善を保証するものではありませんのでご了承ください。
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