心と体の疲労回復・リフレッシュに
オレンジジュースを濃厚にしたような、親しみやす柑橘系の香りが人気のオレンジスイート精油。万人受けする香りであることに加えて、価格も安め・刺激性が低く妊娠中の方やお子さんにも利用できると使い勝手の良さも魅力です。精油成分としてはリモネンの含有率が高く、ネガティブさや神経の緊張を緩和したり、胃腸機能を整える手助けも期待されています。抗菌作用を持つ成分が多いので、風邪予防を兼ねたルームアロマとしても活躍してくれますよ。

Contents
オレンジスイートとは
オレンジスイートの特徴・歴史
フルーティーで甘酸っぱい、柑橘系の香りが楽しめるオレンジスイートの精油。スイートオレンジというのは食用に適したオレンジのことを指しているので、果物として普段食べているオレンジそのものの香りと言っても過言ではないでしょう。オレンジの香りはお菓子や飲料類から入浴剤・芳香剤など様々なシーンで馴染みのある香りですし、苦手な方もほとんどいないオレンジ精油は老若男女問わずに人気があるアロマオイルの代表格とも言われていますよ。また刺激が少ないことからお子様に対する使用にも適しており、アロマテラピーでもラベンダーと並んで入門編・初心者向けオイルとされています。
オレンジなど柑橘類の原種はインドのアッサム地方原産と考えられています。オレンジがヨーロッパに伝えられた時代・経路については諸説ありますが、2世紀頃に中国からローマへと伝わり、7世紀頃にイスラムを通じてヨーロッパに持ち込まれたという説が有力なようです。余談ですがギリシャ神話で最も美しい女神に捧げられた「黄金のリンゴ」の正体はオレンジだったのではないかという説もあります。スイートオレンジは15~16世紀にインドで誕生したと言われており、中国からポルトガルを経由し地中海沿岸に広がった・17世紀頃に十字軍遠征の戦利品としてヨーロッパにもたらされた説があるそう。
現在は原産地のインドよりもアメリカ西海岸やフロリダ、地中海沿岸などが主要産地となっており、世界で最も多く栽培されている果樹とも言われるほど世界中で愛されている存在です。欧米ではクリスマス~年末にかけてオレンジやレモンなどの柑橘類にクローブを刺した“ポマンダー”を贈ったり飾る風習がありますが、元々はペストなどの疾病予防や魔除けとして利用されていました。ペストはさておき、現在でも抗菌・抗ウイルス作用があることから、ヨーロッパの病院ではオレンジのアロマを散布しているところもあるのだとか。市販されている精油(エッセンシャルオイル)も一年中安定の地位ではありますが、冬場により需要が高まると言われています。
万人受けする香り・価格も安め・妊娠中の方やお子さんが居ても希釈濃度に気をつければ利用できると、デイリーに色々と活躍してくれるオレンジスイートの精油。様々な精油が販売されていますが、品質には結構バラつきがあるため注意が必要なんだとか。というのも精油を作るためだけにオレンジを使用したものだけではなく、ジュースを絞った後のオレンジ果皮を蒸留して精油を抽出している場合もあるからだとか。廃棄物の再利用とも言えますから、こちらの方が安値。品質・香りともに劣るとは言われているものの、アロマオイルや芳香剤・食品用の香料などに広く活用されています。皮膚利用に適した精油として水蒸気蒸留されたオレンジスイート精油も販売されていますが、悪質なメーカーでは再利用オレンジ果皮のものを販売しているケースもあるそうです。
オレンジ種類について
柑橘類の分類として“オレンジ類”は大きくスイートオレンジ(Citrus sinensis)とビターオレンジ(Citrus aurantium)の2つに分かれ、その下に各々品種群があります。精油の場合は品種に関わりなくスイートオレンジと呼ばれていますが、バレンジアオレンジを原料として抽出されたものが多いようです。ブラッドオレンジやネーブルオレンジ果皮を原料にしたものは販売社によってスイートオレンジとして販売しているもの・品種名を商品名として表記しているもの、両方の場合があります。基本的な組成は大きく変わりませんが、品種や産地などによって各成分の含有量・香りは若干異なります。
ちなみにビターオレンジはプチグレン(葉)とネロリ(花)が主に利用されています。果皮から採油された“ビターオレンジ”の精油もありますが、スイートオレンジとは異なり毒性が高いことなどから一般家庭での使用にはあまり適していないという評価が主。専門家の指示のもとで利用されたり、食品や芳香商品などの製品用として用いられることが多くなっています。
香料原料データ
- 通称
- オレンジ・スイート(Sweet oange)
- 別名
- アマダイダイ
- 学名
- Citrus sinensis
- 科名/種類
- ミカン科/高木
- 主産地
- イタリア、スペイン、フランス、イスラエル、アメリカ、ブラジル
- 抽出部位
- 果皮
- 抽出方法
- 圧搾法/水蒸気蒸留法
- 色
- 薄~濃いオレンジ
- 粘性
- 低い
- ノート
- トップノート
- 香り度合い
- 中~強め
- 精油成分
- d-リモネン、ミルセン、α-ピネン、リナロール
- おすすめ
- 芳香浴・入浴・マッサージ・ハウスキーピング
- おすすめ
- 芳香浴・アロマバス・マッサージ・スキンケア・ヘアケア・ハウスキーピング
フレッシュで甘い、果物のオレンジそのままの香り
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オレンジスイートに期待される働き・効能
精神面への作用と効果
オレンジスイートは「ハッピーな香り」とも言われ、ネガティブな感情を一掃して気分を明るく前向きにしてくれる精油とされています。香りにも、オレンジそのものにも、明るさやポジディブさを連想される方が多いのではないでしょうか。成分的に見てもオレンジスイートの主成分であり、柑橘系精油に多く見られる“リモネン”には鎮静作用(リラックス効果)が認められています。2014年に『Journal of Complimentary Therapy of Medicine』に発表された女子大学生20人を対象に行われた研究報告では、オレンジオイルによる嗅覚刺激が生理学的・心理的緩和を誘発することを示唆しています。
このためオレンジスイートは不安や落ち込んでしまった状態から、気持ちを切り替えるサポートをしてくれると考えられています。緩和作用によってイライラや怒りを落ち着ける働きも期待できますので、精神的な不快感全般に役立ってくれるでしょう。明るい香りはリフレッシュにも効果が期待できますし、気持ちを前向き・明るくするサポートをしてくれることから完璧主義で常に気を張っていたりストレスを溜め込みやすい方に適しているとも言われています。気持ちが落ち込みがちな時だけではなく、仕事や心配事が頭から離れない時などに使用してみては如何でしょうか。
安眠のサポーターとしても
オレンジスイートの精油は気分を明るくポジティブにしてくれる精油と称されていますが、脳を刺激して活性化させるようなタイプではありません。主成分のリモネンには脳のα波を増加させる働きが、オレンジ精油には心理的緩和をもたらす可能性が示唆されていることから、リラックス状態をサポートしてくれる精油と考えられます。このため一日の終りに使用することで神経系を落ち着け、寝付きを良くしたり睡眠の質を高めてくれる働きも期待されていますよ。2015年に発表されたアロマテラピーに使用されるエッセンシャルオイルの系統的レビューでも、不眠緩和に使用するエッセンシャルオイルの一つとしてスイートオレンジが掲載されています。
肉体面への作用と効果
オレンジスイートの主成分であるリモネンは健胃・消化促進・整腸など胃腸機能サポートに役立つと考えられています。そのほかに血行促進作用や唾液分泌を高めることで食欲増進効果も期待できますから、食欲不振・消化不良・便秘・下痢・お腹の張りなど幅広い胃腸トラブルの緩和に役立ってくれるでしょう。精神面への働きかけと合わせて特にストレス等に起因する胃腸不調に高い効果が期待されており、神経性の胃痛・消化不良・胸のつっかえ感などの軽減に有効とされています。ただし胃腸機能を活発にすることで食欲増進作用を持つと考えられますから、ダイエット中の方や過食傾向の方であれば注意して使用してみてください。
その他には血流を良くすることで高血圧改善、精神面の働きかけと合わせてPMS(月経前症候群)の諸症状軽減、抗炎症作用と合わせて気管支炎や花粉症などのアレルギー性の呼吸器疾患・関節痛や神経痛などの痛みの軽減にも効果が期待されています。また精神面への働きかけによるものか、性ホルモン系に働きかけるかはハッキリしていないようですが、欧米では軽度の催淫作用があるという見方もあるようです。
風邪予防や回復サポートにも
リモネンは抗菌・抗ウィルス作用や、免疫細胞の働きを正常に整え免疫力を高める働きが報告されています。血行を促すことで体を温める働きも期待できるため、オレンジスイート精油は風邪やインフルエンザなどの感染症予防としてもは活用されています。赤ちゃんやお子様にも利用できる精油でもありますから、家族みんなの健康のためにディフューザーなどで室内に拡散するのも良いでしょう。抗炎症作用があるとも言われていますし、血行促進作用から解熱にも繋がりますから、風邪などの初期症状時のケア・回復促進用としてもにも役立ってくれるでしょう。
その他に期待される作用
肌への働きかけに
オレンジスイート精油は血行を良くすることで発汗促進・老廃物排出促進(デトックス)効果があると考えられており、血行不良による肌のくすみ改善や、むくみ・セルライト対策などにも有効とされています。また皮膚へ直接塗ることでも抗炎症作用や殺菌作用を発揮すると考えられており、保湿・皮脂分泌調整の両方に役立つという見解もあります。こうした働きからニキビケア用の化粧品などにもオレンジ精油が配合されています。ローションのような形で利用するだけではなく、ボディウォッシュなどに加えると使いやすいでしょう。
加えてオレンジスイート精油はビタミンCの含有量が多くコラーゲン形成を促進する。メラニン色素を抑制するという説もあり、肌のアンチエイジング用としても注目されています。血液循環が良くなり肌に栄養が行き渡ることからも肌の新陳代謝向上にも繋がりますから、肌を若々しく滑らかな状態に保つ働きも期待できるでしょう。
頭皮・髪への働きかけ
リモネンは髪の健康な成長をサポートし、抜け毛を予防する働きが期待されています。日本の大学からもリモネンには髪の成長を阻害し抜け毛を促進する悪玉酵素(5αリダクターゼ)の減少作用が見られたことが報告されており、リモネン配合の育毛剤も販売されています。このためリモネンが主成分であるオレンジスイートの精油についても、シャンプーやヘアトニックなどに加えることで抜け毛予防に役立つのではないかと考えられています。またオレンジスイート精油には血行を良くすることで髪に栄養を行き渡らせる・頭皮に詰まった油や汚れを取り除くなどの働きも期待できますから、フケや髪のベタつき・パサつきなどが気になる方にも適しているでしょう。
オレンジスイートが利用されるシーンまとめ
【精神面】
- 気持ちの落ち込み・抑鬱
- ストレス・精神疲労
- イライラ・怒りっぽい
- 不安・緊張・神経過敏
- ネガティブ思考の切り替え
- リフレッシュしたい時に
- 前向きになりたい
- 元気さ・明るさが欲しい
- 寝付きが悪い・不眠時に
【肉体面】
- 食欲不振・消化不良
- 下痢・便秘・腹部膨満感
- 胃痛・過敏性腸症候群
- 風邪・インフルエンザ予防
- 咳・気管支炎・発熱
- 血行不良・冷え性に
- 肌のくすみ・むくみケア
- 脂性肌・ニキビ予防に
- 肌の乾燥・老化予防に
- 抜け毛・フケ予防に
オレンジスイートの利用と注意点について
相性の良い香り
ハーブ系、フローラル系との相性が良いとされています。オレンジスイート単体で使用すると香りが抜けやすいため、ベースノート系のオイルとブレンドして香りの持続時間を伸ばすのもおすすめ。余談ですがオレンジスイートはビンに入ってても開封したものは酸化が早く、時間が経つほど香りも失われてしまいます。開封後はできるだけ早めに、長くても半年以内を目安に使い切るようにしましょう。
オレンジスイートのブレンド例
- 明るい気分に⇒ゼラニウム、シナモンリーフ、ローズウッド
- 心地よく眠りたい⇒マジョラム、ラベンダー、カモミール
- 胃腸サポートに⇒コリアンダー、シナモン、ジンジャー
- 風邪予防に⇒タイム、クラリセージ、メイチャン、クローブ
- スキンケア用として⇒ローズ、ミルラ、ネロリ、パチュリ
オレンジスイート精油の注意点
- 基本的な精油の利用法を守っている場合は特に注意や禁忌事項はなく、適切に希釈すれば妊娠中の方やお子様でも使用できる精油とされています。
- 妊娠中の方やお子さんには、低低濃度(0.1〜0.3%程度)希釈で使用してください。
- 長期間もしくは多量に使用した場合は肌を刺激することがあります。
- 一般的にオレンジスイート精油には光毒性はないと言われています。しかし毒性を示す場合も稀にあるという指摘がありますから、念の為に使用後は紫外線を避けたほうが確実です。
- アロマテラピーは医療ではありません。効果や効能は心身の不調改善を保証するものではありませんのでご了承ください。
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参考元