タイム系精油の中で最もポピュラー
タイムと聞いて思い浮かべるグリーンな清々しさと、お花畑を連想させるフローラルな印象を併せ持ったタイム・リナロールの精油。タイム系精油の中では最もポピュラーな精油であり、コモンタイム(ホワイトタイム)よりも扱いやすい精油とされています。名前の通りモノテルペンアルコール類のリナロールの含有率が高いことが特徴で、ストレスケアや天然の抗菌剤としての活躍も期待されていますよ。

Contents
タイム・リナロールとは
タイムの特徴・歴史
料理の風味を整える香辛料としてはもちろんのこと、プリ・サシェ類や芳香剤など“香り”のみの部分でもお馴染みのタイム。ローリエと共にブーケガルニを作る時に使うベーシックなハーブの一つでもあり、香草焼きやスープなどにも広く利用されています。タイムはシソ科ハーブの一つですが、料理に使用する頻度と認知度としてはラベンダーやミントを抜くほどの存在と言えるかもしれません。調理や芳香剤のように使われるのはスッキリとしたハーバルな香りが楽しめるだけではなく、抗菌性がある=食あたり予防や空気浄化に役立つという昔の人の知恵でもあるのだとか。
タイムは紀元前から香辛料・薬・香料と広く利用されてきたハーブの一つで、古代ギリシア人は宗教儀式や入浴時の香りとしても利用していたと推測されています。諸説ありますが、学名(属名)や呼び名として使われているThymusという言葉も、ギリシア語で香らせる・燻蒸する事を意味する“thymos”もしくは“thurmo”が語源ではないかと言われていますよ。古代ローマ時代には勇気と強さを刺激するハーブだと信じられるようになり、中世イギリスでも女性が騎士に渡す刺繍の図案としてタイムが使われていたのだとか。また、経験的にタイムは抗菌・消毒効果を持つと考えられ、中世頃にはペスト予防としてタイムの枝を焚いて空気を浄化すると良いと信じられてもいました。19世紀にもタイムを滲出した水で包帯を洗うなど、感染症対策に利用されてきた歴史が長い植物でもあるんです。現在でもタイムの精油は風邪やインフルエンザ対策・空気浄化を兼ねたルームフレグランス感覚で使われることがありますね。
そんなタイムはシソ科のイブキジャコウソウ属(Thymus)に分類される植物全般を指す言葉ですが、この条件にあてはまるものは約350種。原産地もヨーロッパ・アジア・北アフリカと広く、観賞用・園芸品種なども存在しています。その中で狭義でのタイム、単に「タイム」と言った場合には和名をタチジャコウソウという種(T.vulgaris)を指すのが一般的となっています。英名でもコモンタイムと一般や普通を意味する“Common”が付けられていおり、料理用ハーブとして最もよく使われているのもこのコモンタイムです。香料もしくは精油の名称としても単に「タイム」と呼ぶ場合はコモンタイム(T.vulgaris)を原料とするものを指すのが一般的です。
しかし、精油の「タイム」の場合は植物としての区分だけではなく含有成分から更に細かく区分しています。これは生産地などによってタイムに含まれている精油成分や含有比率に大きな差があるためで、こうした同種でありながら成分の異なる精油を“ケモタイプ”と呼んでいます。例えばこのページでご紹介している“タイム・リナロール”もコモンタイムが原料ではありますが、成分や香りが違いすぎるので単にコモンタイムと呼ぶことは少ないのです。精油でコモンタイムと呼んだ場合はホワイトタイムを指すことが多いですが、精油の流通量としては刺激性や毒性が危惧される成分の少ないタイム・リナロールが最もポピュラーではあります。
タイム精油の種類について
タイム系統の精油は一般にあまり流通していないものも含めると約10種類と多くの種類がありますが、コモンタイム(Thymus vulgaris)を原料とした精油類、同属別種の植物を原料とした精油(レモンタイムやタイムマストキナなど)に大別できます。このうちコモンタイム(Thymus vulgaris)が原料ではあるものの、ホワイトタイムとは含有成分が大きく異なる“ケモタイプ精油”としては下記の五種類が代表的です。
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- タイム・リナロール
- タイム・ゲラニオール
- タイム・ツヤノール
- タイム・チモール
- タイム・パラシメン
(※タイム・カルバクロールを入れて6種類とする説も有)
それぞれ呼び名として使われている成分含有が高いことが特徴で、精油成分の含有成分もしくは含有比率が異なるため香りにも違いがあります。タイム・リナロールはモノテルペンアルコール類のリナロールの含有率が高いことから、少しフローラルな柔らかい香りが特徴。このため「スイート・タイム」と呼ばれることもあります。刺激性の高いフェノール類の含有率が低いこともあり、作用が穏やかで一般家庭でも扱いやすい精油として広く利用されています。コモンタイムを原料とする精油の中で最もポピュラーな精油と言っても過言ではないでしょう。
リナロールタイプ以外にもゲラニオール・ツヤノールタイムはタイム類の中では作用が穏やかで使いやすい精油とされていますが、フェノール類を多く含むチモール・カルバクロールタイプは皮膚刺激性・肝毒性があるので取扱に注意が必要とされています。またコモンタイム(ホワイトタイム)やタイム・パラシメンもチモールとカルバクロールの含有率が高めになっていますので、特別な目的や理由がない限り使用は控えたほうが無難。
香料原料データ
- 通称
- タイム・リナロール(Thyme linalool)
- 別名
- スイート・タイム(Sweet Thyme)、立麝香草(タチジャコウソウ)
- 学名
- Thymus vulgaris
- 科名/種類
- シソ科イブキジャコウソウ属/小低木
- 主産地
- フランス、アメリカ、イギリス、スペインなど
- 抽出部位
- 葉、開花した花の先端
- 抽出方法
- 水蒸気蒸留法
- 色
- 無色~淡い黄色
- ノート
- トップ~ミドルノート
- 香り度合い
- 中~強め
- 精油成分
- リナロール、チモール、カルバクロール、p-サイメン、テルピネン-4-オール、γ-テルピネン、カンフェン、ミルセンなど
- おすすめ
- 芳香浴・アロマバス・マッサージ・スキンケア・ヘアケア
フローラル感を含む、フレッシュで柔らかいハーブの香り
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タイム・リナロールに期待される働き・効能
精神面への作用と効果
タイム・リナロールの代表成分であるモノテルペンアルコール類のリナロールは、ラベンダーやベルガモット様とも称される華やかな香りを持つ芳香性成分。このためタイム・リナロールはコモンタイムよりも柔らかい印象の香りとなっていますし、ホワイトタイムとはまた別の働きが期待されています。リナロールは神経系の興奮を鎮める鎮静作用を持つとされていますから、タイム・リナロールの香りはストレスや精神的な疲労感・緊張を和らげたい時に適しているでしょう。香りもマイルドですからリラックスタイムの演出にも役立ってくれそうですね。
タイム精油を使った実験というわけでは有りませんが、1998年『Neurochemical Research』に掲載された研究では、リナロールが中枢神経系において用量依存的な顕著な鎮静作用を有することを示したという報告がなされています。2時間ストレス誘発拘束したラットにを使った実験では、リナロールを吸引したマウスにストレスレベルの低下が見られたことも報告されており、リナロールに抗不安薬(不安軽減薬)としての作用を持つ可能性が示唆されていますよ。こうした働きからリナロールの芳香は気持ちが落ち込んでいる時、イライラしていたり落ち着きがなくソワソワしている時のサポートとして役立つと考えられています。
また、タイム系の精油は脳を活性化させ集中力をアップさせる精油として紹介されることもあります。タイム・リナロールの場合はコモンタイムなどのように刺激性が高いわけではありませんが、思考をクリアにしたい時のサポートに役立つ可能性もあります。おなじ「タイム・リナロール」であってもリナロールやフェノール類の含有率は製品によって差があります。精油の成分表が添付されている精油でもPLANT THERAPY社の商品はリナロール50%以上、生活の木社のものでは25%前後。こうした差によって香り、精油成分によるサポートにも差が生じると考えられます。精油成分の効果については可能性段階の報告が大半でもありますから、自分が心地よく感じる精油・使用したい場面に合っているように感じる精油を選んでみてください。
肉体面への作用と効果
リナロールの働きからリナロールタイプの精油はストレスに起因する不調の軽減に役立つと考えられます。他のタイム系と同様に消化促進作用など消化器系の働きかけが期待されていることと合わせて消化器系のサポート、特に特にストレス性の食欲不振や消化不良・下痢・便秘などの軽減に役立つのではないかと考えられています。また、リナロールが鎮静作用を発揮する作用秩序について「局所麻酔的な作用を持つ」ことを示唆した報告があること、抗痙攣作用や抗炎症作用を持つという説もあることから、頭痛や神経痛などの痛み軽減にも役立つのではないかと考えられています。
風邪などの感染症予防にも
タイム・リナロールはコモンタイムと比べるとチモールやカルバクロールなどフェノール類の含有率が低くなっています。風邪予防や空気浄化などには適さないように感じがちですが、リナロールもまた抗菌・抗真菌・抗ウイルス作用を持つ成分。免疫力を高める働きが期待できるとする説もあります。このためタイム・リナロールも風邪やインフルエンザなどの感染症予防をサポートしてくれる精油として活用されていますし、膀胱炎や腟カンジダなど膀胱・尿道の感染症に良いと言われていますよ。
抗菌作用や免疫力を高める働きが期待できること・去痰薬としての働きが期待されているチモールやカンフェンなどの成分も含まれていることから、喉の痛みや咳・気管支炎の緩和などにも役立つ可能性があるでしょう。タイム類の中では作用・香りともに穏やかで活用しやすい精油ですから、周囲で風邪が流行っている時や空気の乾燥が気になる時などの拡散用としても適しています。なるべく穏やかなものを使いたい方、お子さんがいらっしゃる場合にはタイム・リナロールを選ぶと良いでしょう。
その他に期待される作用
肌・頭皮への働きかけ
タイム・リナロールの精油にはリナロールを筆頭に、チモールやカルバクロールなど抗菌・抗真菌作用が報告されている成分を多く含んでいます。このため皮膚を清潔に保つ手助けとしてニキビや水虫・爪水虫(爪白癬)などの予防に役立つと考えられています。頭皮のできものやフケ予防、脱毛予防などに使用されることもあるようです。
タイム系精油の中で見るとタイム・リナロールは刺激性が低く皮膚利用も可能な精油とされていますが、刺激となる成分を全く含んでいないわけではありません。敏感肌の方・体質によっては皮膚刺激を感じる場合もあります。使用する場合はきちんと低濃度に希釈し、パッチテストを行うようにしましょう。
タイム・リナロールが利用されるシーンまとめ
【精神面】
- ストレス・神経疲労
- イライラ・興奮・緊張
- 気持ちが落ち込みに
- 不安・落ち着かない時に
- リラックスタイムに
- 頭をクリアにしたい
【肉体面】
- ストレス性の不調に
- 食欲不振・便秘・下痢
- 風邪・インフルエンザ予防に
- 免疫力が気になる時に
- 喉の不快感・咳の軽減に
- ニキビ予防・水虫対策に
タイム・リナロールの利用と注意点について
相性の良い香り
似た印象を持つハーブ系・フローラル系の精油と相性が良いとされています。そのほか柑橘系ともブレンドしやすい香りですし、軽めの印象のウッディー系とも馴染みます。タイム系精油の中では刺激性が低く扱いやすいだけではなく、他の香りとも最も組み合わせやすいと言えるかもしれません。
タイム・リナロールのブレンド例
- ストレス対策として⇒フランキンセンス、レモンバーム、パイン
- 風邪・感染症予防に⇒ティートリー、ゼラニウム、ジュニパーベリー
- お腹の調子が悪い時⇒ペパーミント、カモミール、オレンジスイート
- フケ予防・頭皮ケアに⇒ラベンダー、シダーウッド、ロザリーナ
タイム・リナロール精油の注意点
- 妊娠中・授乳中の方、小さいお子さんへの使用は避けましょう。
- てんかん、喘息ほか持病のある方は医師に相談の上利用してください。
- 皮膚を刺激性する可能性があります。
- アロマテラピーは医療ではありません。効果や効能は心身の不調改善を保証するものではありませんのでご了承ください。
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参考元