【アロマ】レモンバーベナ精油
-植物の特徴・期待される効果効能とは?

【アロマ】レモンバーベナ精油<br />-植物の特徴・期待される効果効能とは?

レモン系ハーブの中でも華やかな香り

フランスで親しまれているハーブティー“verveine”として紹介されることも多いレモンバーベナ。南米が原産の植物で、日本では良い香りを持つことから香水木という和名が付けられています。レモンに似た香りがありますが、レモングラスなどと比べるとフローラル感もある華やかな香りが特徴。鎮静・抗不安作用や消化器サポートにも期待されていますが、土壌や栽培条件等によって精油成分に差があることも報告されています。

レモンバーベナ(Lemon Verbena)

レモンバーベナとは

レモンバーベナの特徴・歴史

レモンのような爽やかさと、少しフローラルっぽさも感じさせる甘さが特徴的なレモンバーベナ。ハーブティーやフレバーティーの原料としての方が精油よりは知られているかもしれません。料理用ハーブとしても多用されており、魚や鳥肉料理のほかマリネ・サラダ・プリンやケーキと主菜からデザートまで幅広く活用されています。酸味を感じされせる香りですが実際にレモン果汁を絞ったような酸っぱさが無いことから、レモンっぽい香りをつけたい・酸味を抑えてレモンの香りを強調したい時に用いられることも多いのだとか。また乾燥葉は香りの持続性が高いことからポプリの材料にもよく利用されます。

柑橘系の爽やかさとフローラル系にも通じる華やかさを持ち合わせているレモンバーベナは和名「香水木(コウスイボク)」と呼ばれています。葉っぱのハーブなので草本のように感じますが、レモンバーベナはクマツヅラ科の落葉低木なので“木”がつけられているのです。レモンバーベナという呼び名はもちろんのこと、種小名のcitriodoraも“柑橘(レモン)のような香り”というを持つことに由来しています。ハーブや香料原料植物にはいくつもレモンのようなと称されるものが存在していますが、日本でポピュラーなのはレモンバーベナとレモンバーム(メリッサ)レモングラスの3種類。このうちレモンバームはヨーロッパ・レモングラスはアジア南部が原産と、原産地が東西に分かれています。ちなみに近年見かけるようになったのレモンマートルレモンティーツリーはオーストラリアが原産です。

肝心のレモンバーベナはと言えば、南米原産。フランスで親しまれているハーブとして紹介されることも多いので少し意外ではないでしょうか。ヨーロッパに伝わったのは17~18世世紀頃で、植物学会では世界一周探検船に乗船して各国の植物を採集したフランスの植物学者フィリベール・コメルソンがレモンバーベナに初めて目を付けてAloysia citriodoraと命名しました。スペインでは当時の王と王妃に敬意を表して「Hierba de la Princesa(王妃のハーブ)」と呼ばれるようになったようです。18世紀のうちにはイギリスへも紹介され、ハーブガーデンなどで栽培もおこなわれるようになりました。18世紀から19世紀の間、新大陸産の素晴らしい香りを持つハーブとしてレモンバーベナはヨーロッパで大流行。貴族たちはハーブティーにしてその香りを楽しみ、香りの良さを生かしてリキュール類の香料やフィンガーボールの水に香りを付けるためにも活用しました。

ビクトリア朝時代にはレモンバーベナの精油が香水や化粧品に多用されていたようですし、フランスではレモンバーベナティーが“verveine(ヴェルヴェンヌ)”と呼ばれハーブティーの代表各となるほとに定着しました。日本にも明治に入ったことにレモンバーベナが伝わり、当時は園芸植物として売り出されました。和名では香水木のほか「防臭木(ボウシュウボク)」というものもありますが、こちらは東京でコレラが流行した際に臭気を防ぐ=コレラ避けに役立つ植物だと売り出された名称が定着したものだとか。コレラ避け効果の程はさておき、レモンバーベナはスッキリした香りがあり、精油成分には抗菌および抗真菌特も報告されていることからお掃除用品の香料にも使われていますよ。

レモンバーベナの精油は食品類・石鹸や化粧水などの化粧品類に利用されていますし、男女問わず好まれる香りから香水業界からも需要が高い存在です。しかし採油量が非常に低いため比較的高価な部類に属しており、偽和も多いことからレモンバーベナ100%の純粋なエッセンシャルオイルは手に入りにくいと言われています。「レモンの香り」を付けるのに使われるレモンバーベナですが、市販されている安価エッセンシャルオイルにはスパニッシュ・バーベナやレモンレモングラスシトロネラなどをブレンドしたものが「レモンバーベナ」として販売されているケースが多い事も指摘されています。こうした販売者側の偽装だけではなく単純に間違えて別の精油を買ってしまう場合もありますから、香りを確かめて納得した上で購入するのが確実なように思います。

香料原料データ

通称
レモンバーベナ(Lemon Verbena)
別名
コウスイボク(香水木)、ボウシュウボク(防臭木)、lemon beebrush
学名
Lippa citriodora
(syn.Aloysia citrodora / Verbena triphyllaなど)
科名/種類
クマツヅラ科コウスイボク属/落葉低木
主産地
フランス、モロッコ、スぺイン、アルジェリア、アルゼンチン
抽出部位
抽出方法
水蒸気蒸留法
淡い黄色~薄オレンジ色
粘性
ノート
トップノート
香り度合い
強め
精油成分
リモネン、ゲラニアール、シトロネラール、ネラール、1,8-シネオール、α-クルクメン、β-カリオフィレンオキシド、シトラールなど
おすすめ
芳香浴・アロマバス・マッサージ・スキンケア・ヘアケア

甘めのレモンジュースのような、フルーティーかつフローラルな香り

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レモンバーベナ精油に期待される働き・効能

精神面への作用と効果

スッキリとしたレモン系の香りを持つことから、レモングラスと同様にレモンバーベナもアルデヒド類のシトラール(ネラールとゲラ二アールを合わせたもの)が多く含まれているようなイメージがあります。しかし、2017年『Biochemical Systematics and Ecology』に発表されたGC/MS分析ではアルゼンチン北西部のレモンバーベナ精油だけでも組成に大きな違いがあり、4つの異なるケモタイプに分類できることが示されています。36個のサンプルのうち主成分としてシトラールが含まれていたのは2個だけだったことも報告されていますから、精油の成分や作用は製品によって大きな差があると考えられます。そのほかシラーズ医科大学の分析では露地栽培・温室栽培・水耕栽培によって揮発性油成分に違いが見られたことも2014年に発表されています。

精油は製品によって成分比率に差があるものですが、レモンバーベナの場合は顕著である可能性が高いと言えます。このため伝統的に期待されているレモンバーベナ精油の効能・レモンバーベナ精油の作用を示唆した報告についても「どのレモンバーベナ」かという問題が出てくるでしょう。レモンバーベナについての研究数も多くありませんので、作用についての信憑性は低い・ハーバリストたちの経験と体感ベース部分が大きいと言えそうです。下記ではそうした効能も含めてご紹介していますことを予めご了承下さい。

レモンバーベナの香りは伝統的に心を落ち着ける=鎮静作用を持つと考えられてきました。精油も鎮静作用・副交感神経を高める働きが期待されており、ストレス対策やイライラ・気持ちの落ち込みなどの不安定感がある場面でのサポーターとして用いられています。気持ちを安定させ心身のリラックスを促してくれる精油として、なんとなく落ち着きがない時・睡眠関係のトラブルがある時にも役立つ精油の1つにも数えられています。ゲラニオールなどの抗うつ作用が期待される成分も含まれているため、嫌な過去を思い出して傷ついたり自己嫌悪に陥ってしまう時・気持ちが落ち込んでしまった状態からの回復サポートに使われることもあります。レモンバーベナはサッパリした明るい香りが魅力ですから、お疲れ気味の時にお部屋に香らせてみても良さそうですね。

研究ではレモンバーベナによる抗不安作用と抗うつ作用が見られた・鎮静作用が見られたという報告もあり、2019年2月の『Phytotherapy Research』にはレモンバーベナが不眠治療に役立つ可能性を示唆したイランの研究報告も掲載されています。こうした研究は伝統的効能を裏付けするように思えますが、有効性を示している研究報告の大半が“レモンバーベナ抽出物の経口摂取”によるもの。植物として見るとレモンバーベナには精油成分以外にフラボノイドなどの化合物も含まれていますから、芳香を吸引することで同様の効果が得られるかは疑問です。リモネンなどリラックス効果や抗不安作用が示唆されている成分が含まれているためメンタルサポートに有益な働きを持つ可能性はありますが、過度な期待は避けましょう。

肉体面への作用と効果

レモンバーベナには柑橘系精油などにも多く見られるモノテルペン炭化水素類の一種、リモネンが含まれています。リモネンは健胃・消化促進・整腸など、胃腸機能のサポートに役立つと考えられている成分でもあります。ラットを使った実験ではリモネンの経口投与によって胃壁保護物質PGE2が増加したことが報告されており、胃粘液産生促進・胃保護作用を持つことが示唆されています。精油は飲用出来ませんのでこうした直接的な働きかけがあるかは不明ですが、アロマテラピーや自然療法の中でリモネンは唾液分泌や胃腸の活動を高める働きをもつと期待されています。

レモンバーベナは自然療法の中では消化器系の問題の治療に活用されており、レモンバーベナ精油も補助療法として用いられています。鎮静作用や抗不安作用が期待できることと合わせてストレス性の胃痛や腹痛などの軽減に役立つ可能性もあるでしょう。そのほかにリモネンやシトラールによる血行促進作用も期待されており、筋肉疲労回復促進・むくみ軽減やデドックスなどの目的で使用されることもあります。血行改善や老廃物の排出促進を助けること・リモネンや1,8-シネオールには抗炎症作用が報告されていることから関節炎や神経痛・リウマチの痛み軽減にも使われています。ただし有効性を示す研究はありませんし、皮膚刺激性があるためマッサージなどに使用する際には注意が必要です。

風邪などの感染症予防にも

レモンバーベナは比較的含有率の高いリモネンやシトラールのほか、30種類以上もの精油成分を含んでいます。リモネンやシトラールは抗菌作用・抗真菌・抗ウイルス作用を持つ事が報告されてており、レモンバーベナの精油にも抗菌・抗真菌作用が見られたとの研究発表があることから、空気中に拡散することで消毒剤のようにして働き有害な菌・ウィルス類の増殖を抑制してくれるのではないかと期待されています。またリモネンは抗酸化作用と抗炎症作用以外に動物実験では免疫細胞刺激・マクロファージ増加など免疫機能に対する働きかけが示唆されている成分。1,8-シネオールも優れた抗炎症作用・免疫調整作用が注目されている成分のため、合わせて風邪予防や花粉症軽減などにも効果が期待されています。

その他に期待される作用

肌への働きかけ

レモンバーベナの精油は抗菌・抗真菌作用が高いと考えられることから皮膚を清潔に保つ働きが期待されています。加えて皮脂分泌を整える働きがあるという見解があること、ゲラニアールやシトラールにはと抗炎症(抗ヒスタミン作用)作用も期待されているため脂性肌やニキビ・皮膚トラブルのケアにも役立つのではないかという説もあります。また2008年『18th International Congress on Food Technology』で発表されたイランの“エッセンシャルオイルの化学組成と抗酸化特性”という研究で抗酸化活性が見られたことが発表され、レモンバーベナの精油は抗酸化作用によって皮膚を酸化による損傷から保護する=アンチエイジングに役立つのではないかとも期待されています。

しかし、レモンバーベナ精油に含まれているシトラールやシトロネラールなどのアルデヒド類は皮膚刺激性が高いこと・感作作用(アレルギー性)があることが指摘されています。アレルギー性接触皮膚炎ほか炎症を起こす原因ともなりますので、スキンケア目的での使用はお勧めできません。レモンバーベナに含まれているアルデヒド類は酸化しやすく、酸化することでより皮膚刺激性が高く性質があります。敏感肌の方は芳香浴でも皮膚に刺激を感じる場合もありますから、開封後はきちんと保管し早めに使い切った方が良いでしょう。

虫除け・防虫に

レモンバーベナに含まれるゲラニオールやシトロネラールなどの成分は昆虫忌避作用があり、特に蚊が嫌う香りとされています。このため天然の虫よけ成分として網戸にスプレーしたり、虫除けスプレー作りなどにも重宝されています。蚊取り線香のような蚊よけ効果があるかは定かではありませんが、2006年9月『Parasitology Research』に発表された研究ではレモンバーベナ精油がネッタイシマカ、ハマダラカ、ネッタイイエカの第三齢幼虫に対して殺幼虫効果を発揮したことが示されています。

レモンバーベナが利用されるシーンまとめ

【精神面】

  • ストレス・精神疲労
  • 緊張・不安・イライラ
  • 気持ちの落ち込み
  • 自己嫌悪・無気力
  • 落ち着かない時に
  • 前向きになりたい時に

【肉体面】

  • 消化不良・胃痛・腹痛
  • 血行不良・冷え・むくみ
  • 関節炎やリウマチの軽減
  • 風邪予防・花粉症軽減に
  • (脂性肌・ニキビケア)
  • 虫よけアロマとして

レモンバーベナの利用と注意点について

相性の良い香り

ハーブ系・フローラル系と特に相性が良いとされていますが、柑橘系やオリエンタル系の精油ともブレンドしやすい香りです。レモンに近い香りを持つ精油なので比較的相手を選ばない精油と言えるでしょう。

レモンバーベナのブレンド例

レモンバーベナの注意点

  • 妊娠中・授乳中の方、小さいお子さんへの使用は避けましょう。
  • 皮膚刺激があるため注意して利用してください。
  • 疾患がある方・投薬治療中の方は医師に確認してから利用して下さい。
  • アロマテラピーは医療ではありません。効果や効能は心身の不調改善を保証するものではありませんのでご了承ください。
  • 当サイトに掲載している情報は各種検定とは一切関わりがありません。

参考元