ストレス性の不調・セルライト対策に
マンダリンは植物としてはオレンジよりもみかんに近い柑橘類で、精油はオレンジスイートよりもフローラルな印象。みずみずしいジューシーさは控えめですが、どことなく華やかさを感じる香りです。精油成分で含有比率が高いのはリモネンで、リラックスや安眠・消化機能のサポートに役立つのではないかと考えられています。抗菌作用も期待でき、好き嫌いの少ない香りですからお部屋に香らせるにも適しているでしょう。

Contents
マンダリンオレンジとは
マンダリンの特徴・歴史
みかんと同じ様に手で皮が向けて、オレンジに近い濃厚な風味を楽しめるマンダリン。日本でもカラマンダリンなどの品種が流通していますから、果物の一つとして食べたことのある方も珍しくはないと思われます。マンダリン“オレンジ”とも呼ばれることや、その濃厚な風味・果肉の色の濃さからオレンジの仲間のように感じがちですが、実はマンダリンはネーブルオレンジなどのようにオレンジ(Citrus sinensis)の栽培品種の一つというわけではなく別種の植物です。ミカン属の中でも種の系統ごとに“オレンジ類”や“香酸柑橘類”などの分類がなされており、マンダリンは温州ミカンや紀州ミカンなどと同じく“ミカン類”に分類されています。マンダリンオレンジと呼ぶのはちょっと違和感のある存在ですね。
ミカン科ミカン属に分類される果物のルーツはインドのアッサム地方にあると考えられていますが、そこから世界中に広がり栽培されていく中で様々な品種が誕生しました。諸説ありますが、マンダリンと呼ばれている種(学名Citrus reticulata)が確率したのは中国ではないかと考えられています。というのも中国南部の山岳地帯にはマンダリンの原種とも言える野生種が存在しているため。中国で種として確立したマンダリンはユーラシア大陸の東西へと伝えられ、日本では温州ミカンやデコポンなど、地中海沿岸地域を中心としたヨーロッパでは地中海マンダリンやクレメンタインなど、と様々な特徴を持った栽培品種に分化していきました。
呼び名に使われているマンダリンという言葉も元々中国清朝の高級官僚を指す言葉だったのだそう。人ではなく果物をマンダリンと呼ぶようになった理由は彼らが君主に献上していた果物だったから・彼らの着ていた服の色に似ていたからなど諸説あります。ちなみに、日本では温州ミカンの皮が使われることもありますが、中国で漢方の生薬や香辛料として親しまれている「陳皮」はマンダリンの果皮が原料とされていますよ。中国で重宝されたマンダリンは中東を経てヨーロッパへも広がり、精油の抽出方法が考案されると香水の原料としても親しまれるようになりました。
マンダリンの精油は伝統医学や民間療法の中でも作用が特に穏やかな「子供のための精油(医薬)」として評価されるようになり、現代でも作用が穏やかで光毒性が非常に低い柑橘系精油として親しまれています。また、マンダリン精油は香料や芳香剤としてだけでなくレモネード・リキュール・アイスクリーム・ケーキなどのお菓子類など食品業界でも頻繁に用いられています。甘く華やかな柑橘系の香りは世界の多くの人にとって苦痛なく受け入れられる芳香でもあるでしょうしね。一般的に単に“マンダリンオイル(精油)”と言うと完熟もしくはその一歩手前のマンダリンの果皮を圧搾したものを指しますが、未完熟のマンダリンを原料にしたグリーンマンダリン精油もあります。熟したマンダリンを原料とした精油はフローラルさも感じる甘い柑橘系の香りなのに対し、グリーンマンダリンオイルは甘酸っぱい爽やかな香りが特徴。両マンダリン精油は成分比率や微量成分に多少の違いがありますが、主要成分については多いな違いはありません。
マンダリンとタンジェリンの違いについて
マンダリンと非常に近い果物、精油原料には「タンジェリン」と呼ばれる柑橘類があります。植物分類として見てもマンダリンとタンジェリンは近い存在で、田中長三郎氏による分類では別種として扱っていますが、タンジェリンはマンダリンの一品種であるという見方もあります。この分類法であればマンダリンもタンジェリンも同一品種であるCitrus Reticulata種とし、タンジェリンはマンダリンの栽培品種もしくはハイブリッドと考えられています。マンダリンとタンジェリンの違いは、マンダリンは成熟時の果皮の色が黄色~橙色で果皮がなめらかな形状、タンジェリンは果皮の色が赤みが強めでダークトーン・果皮に凹凸があることと言われています。その他にマンダリン系統は2月頃に、タンジェリン系統は11月頃に旬を迎える品種が多いとも。
精油の場合は原料とする品種によっても差があるので確実ではありませんが、一般的にマンダリンはフローラル感の混ざった華やかな香り、タンジェリンはマンダリンよりも柑橘感が高く軽さのあるデリケートな香りと称されています。成分や期待される作用に大きな違いはありませんので、甘めの香りが好きか軽めの香りが好きかで選び分けても問題はなさそうですね。また、タンジェリン=マンダリンの一種と捉えることも出来るためか、マンダリン精油を取り扱うメーカーに比べると、タンジェリン精油の流通は少ないように感じます。
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香料原料データ
- 通称
- マンダリン(Mandarin)
- 別名
- mandarin、mandarine
- 学名
- Citrus reticulata var.mandarin
(syn.Citrus nobilisなど) - 科名/種類
- ミカン科ミカン属/常緑低木
- 主産地
- イタリア、スペイン、アルゼンチン、ブラジルなど
- 抽出部位
- 果皮(果実の外皮)
- 抽出方法
- 圧搾抽出法
(稀に水蒸気蒸留/分留も有) - 色
- クリーム色~薄橙色
- 粘性
- 低い
- ノート
- トップノート
- 香り度合い
- やや弱め~中くらい
- 精油成分
- d-リモネン、γ-テルピネン、α-ピネン、β-ピネン、β-ミルセンなど
- おすすめ
- 芳香浴・アロマバス・マッサージ・スキンケア・ヘアケア・ハウスキーピング
微かにフローラル感も感るような、甘みのあるミカンの香り
マンダリン精油に期待される働き・効能
精神面への作用と効果
マンダリン精油も他の多くの柑橘系精油と同じく主成分はモノテルペン類に分類されるリモネンで、含有率はオレンジスイートよりもやや低めではありますが7割以上をリモネンが占めています。マウスを使った実験ではリモネンの吸引によって抗不安薬様活性が見られたという報告が2013年『Pharmacology Biochemistry and Behavior』に掲載されており、他にも抗不安作用および鎮静作用が見られたという研究報告があることからリモネンは気持ちを落ち着ける働きが期待されています。このためリモネンを含む精油を使って芳香浴をすることで、神経系の興奮や緊張を緩和しリラックスさせ精神疲労やストレス軽減の手助けになるのではないかと考えられています。
気持ちを落ち着けるという働きから、心配事や不安が頭から離れない時やイライラしやすくなっている時、寝付きが悪い時のベットサイドアロマとしてもマンダリンは活用されています。マンダリン精油は作用が穏やかなので、落ち着きがない・気分の変動が激しいなど精神的に不安定になりがちなお子さんのサポートに使われることもあるそう。そのほか気持ちを落ち着けることで元気さや自信・喜びを感じられるようになる手助けをしてくれるという説もありますし、PMSや生理中・更年期障害などに伴う精神的不快感の軽減などにも広く用いることが出来そうですね。マンダリンの香りは柔らかさのあるオレンジ・ミカン系。オレンジスイート同様に万人受けするタイプの芳香でもありますから、TPOや相手を選ばずに使いやすい精油であることも魅力と言えます。
肉体面への作用と効果
マンダリンに含まれているリモネンは健胃・消化促進・整腸など胃腸機能のサポートに役立つと考えられている成分でもあります。血行促進作用や唾液分泌を高める働きを持つという見解もあり、食欲不振・消化不良・便秘・下痢・お腹の張りなど幅広い胃腸トラブルの緩和に効果が期待されています。リモネンは鎮静・抗不安作用によってストレス対策にも役立つと考えられることから、特にストレス等に起因する神経性の胃痛・腹痛・消化不良・胸のつっかえ感などの軽減に繋がる可能性が高いと考えられます。
そのほかにマンダリン精油は血液循環を促すことで冷え性や高血圧・関節炎などの緩和にも役立つと考えられています。鎮痙作用を有するという見解も有り、筋肉痛や気管支炎、生理痛などの痛みの緩和にも効果が期待されています。消化機能のサポートに効果が期待されているのも血行促進作用や鎮痙作用との合わせ技という可能性もありそうですね。体液循環をサポートしデトックスを助けることからダイエットサポートに役立つという説もありますが、リモネンは胃腸機能を活発にすることで食欲増進作用を持つとも考えられますから、自分の体がどのように香りの影響を受けるか注意しながら使用することをお勧めします。
感染症予防にも
マンダリンの精油成分の大半をリモネンが占めていますが、リモネンに次いで含有量が多い成分としてγ-テルピネンがあります。製造メーカー等により差はありますがマンダリンのγ-テルピネン含有量は概ね全体の10~20%程度となっています。このγ-テルピネンはティートリーなどに多く含まれている成分で、抗菌・抗ウイルス作用や抗炎症作用が見られたという報告もなされているモノテルペンの一種。加えて主成分と言えるリモネンにも抗菌・抗ウィルス作用や免疫力を高める働きを持つ可能性が報告されており、血行を促すことで体を温める働きも期待されています。
このためマンダリン精油をお部屋に拡散すると風邪やインフルエンザの予防、風邪気味の時の悪化防止に役立つと考えられています。成分的に見て効果は劣ると推測できますがティーツリーやユーカリ系の香りが苦手な方、お部屋の雰囲気大事にしたい方は芳香剤を兼ねてマンダリンの香りを拡散させてみても良いかもしれません。柔軟仕上げ剤や香水などの芳香とケンカせず、違和感なく組み合わさってくれやすいのも柑橘系精油の魅力ですしね。
その他に期待される作用
肌への働きかけ
マンダリンの主成分であるリモネンには血行促進作用が、リモネンの次に含有用が多いγ-テルピネンにも血行促進作用や鬱滞除去作用が期待されています。このためマンダリン精油をキャリアオイルなどで希釈してマッサージなどに使うことで、冷えやむくみの改善にも役立つと考えられています。抗菌および抗真菌を持つ成分が多く含まれていますから、ニキビ予防に役立つ可能性もあるでしょう。
加えてマンダリンオイルは抗酸化作用を豊富に含んでおり、皮膚軟化作用や細胞の成長を促進する働きが期待されている精油でもあります。皮膚を滑らかにしたり、小ジワや肌荒れの修復を促してくれるのではないかとも考えられています。血行促進作用と合わせてくすみ対策や肌のアンチエイジング用として、セルライト対策、妊娠線のケアなどを目的としたマッサージにも利用されています。
頭皮・髪への働きかけ
リモネンは髪の健康な成長をサポートし、抜け毛を予防する働きが期待されています。日本の大学からもリモネンには髪の成長を阻害し抜け毛を促進する悪玉酵素(5αリダクターゼ)の減少作用が見られたことが報告されており、リモネン配合の育毛剤も販売されています。このためリモネンを含むマンダリンの精油も抜け毛予防に役立つ可能性がありますし、血行促進の方面からも髪や頭皮に栄養を行き渡らせる手助けが期待できます。
マンダリンが利用されるシーンまとめ
【精神面】
- ストレス・神経疲労
- イライラ・緊張
- 気分の落ち込み・不安
- 情緒不安定だと感じる
- 寝付きが悪い時に
- リラックスしたい時
- 前向きさが欲しい時に
【肉体面】
- 食欲不振・消化不良
- 便秘・お腹の張り
- 神経性の胃痛や下痢に
- 風邪・インフルエンザ予防
- 冷え性・むくみ対策
- 肌荒れ・くすみケアに
- セルライト対策に
- 妊娠線の予防・ケアに
マンダリンの利用と注意点について
相性の良い香り
甘い果物を連想させるようなマンダリンは同系統であるシトラス系との相性が抜群に良く、ライトで爽やかな香りとブレンドすることで香りに奥行きが出ます。それ以外の精油とも組み合わせやすい香りですし、柑橘系の精油は香りが飛んでしまうのが速いというデメリットがあるので揮発性の遅いスパイス系・フローラル系などの組み合わせても良いでしょう。
マンダリンのブレンド例
- ストレス対策⇒イランイラン、プチグレン、ローズウッド
- 安眠サポートに⇒オレンジ、ベルガモット、バレリアン
- 風邪予防に⇒レモンマートル、フランキンセンス、タラゴン
- むくみケアに⇒コリアンダー、サイプレス、パチュリー
- お肌のケアに⇒ネロリ、ラベンダー、ゼラニウム、ミルラ
マンダリン精油の注意点
- 妊娠中の方やお子さんには、低低濃度(0.1〜0.3%程度)希釈で使用してください。
- 皮膚を刺激することがあるので敏感肌の方は芳香浴の場合でも注意して利用して下さい。
- 光毒性については文献によって有り無し両方の記載があります。念のため肌につけたあとは日光や紫外線を避けるようにすることをおすすめします。
- アロマテラピーは医療ではありません。効果や効能は心身の不調改善を保証するものではありませんのでご了承ください。
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参考元