マンダリンよりも“みかん”っぽい香り
果物としても目にする機会のあるタンジェリン。マンダリン類の中の一品種グループとして扱われている柑橘類で、みかん文化のある日本人にとっては親しみやすい果物です。精油もオレンジと言うよりはミカンに近い印象のある、甘さと爽やかさを併せ持った柑橘系の香りがあります。主成分はリモネンなので気持ちを落ち着かせたり、血液循環を整えるサポートにも期待されていますよ。

Contents
タンジェリンとは
タンジェリンの特徴・歴史
オレンジよりも小振りで手でむける、日本で言うところの“みかん”に近い柑橘類タンジェリン。アメリカでも人気であることや濃厚な甘さが濃厚な甘さが話題となったピクシータンジェリンについても、みかんの味が濃いやつというイメージで日本人にとっては受け入れやすい存在だったのではないでしょうか。植物として見るとタンジェリンもミカン科ミカン属に分類される柑橘類のうち、オレンジ類ではなく“ミカン類”に分類されています。分類法によって学名の付け方に差異がありますが、タンジェリンはマンダリンと同一種、マンダリン系統品種群の中の一グループと見做すことが多くなっています。
ミカン科ミカン属に分類される果物のルーツはインドのアッサム地方にあると考えられていますが、そこから世界中に広がり栽培されていく中で様々な品種が誕生しました。諸説ありますが、マンダリンと呼ばれている種(学名Citrus reticulata)が確率したのは中国ではないかと考えられています。というのも中国南部の山岳地帯にはマンダリンの原種とも言える野生種が存在しているため。中国である程度主として確立したマンダリンはユーラシア大陸の東西へと伝えられ、日本では温州ミカンやデコポンなど、地中海沿岸地域を中心としたヨーロッパでは地中海マンダリンやクレメンタインなど、と様々な特徴を持った栽培品種に分化していきました。
タンジェリンも同じく中国南部の山岳地帯に自生していたマンダリンの原種(野生種)を祖先に持つグループで、モロッコの都市タンジールを通じてアメリカ大陸で栽培されるようになった品種群であると考えられています。タンジェリン(Tangerine)という呼び名も、1800年代にヨーロッパとフロリダに初めて果物が出荷された場所がタンジールだったことに由来しています。1870年代にアメリカ南部でG・Lダンシー大佐が栽培を始めたことで“ダンジータンジェリン”と呼ばれる品種が確立し、これにグレープフルーツをかけ合わせてミネオラ・オレンジをかけ合わせてピクシータンジェリンなどの品種が開発されていきました。ちなみにタンジェロ(tangelo/タンジェロ)という言葉はタンジェリンとポメロまたはグレープフルーツが交雑した柑橘類の総称です。
本題であるタンジェリンの精油はオレンジスイートやマンダリンと比べると濃厚さが少なく、甘みもありつつ爽やかな柑橘系の香りが楽しめます。温州ミカンから抽出された精油も若干流通していますが、温州ミカン精油はシャープな印象があるので「みかん」の香りとしてはタンジェリン精油の方がイメージが近いようにも感じます。タンジェリンは軽やかで親しみやすい柑橘系の香りでTPOを問わずに使用でき、お子様がいる場合でも使用できるほど作用が穏やかな精油としても評価されています。ただし妊娠中や乳幼児の利用もできるという見解もありますが、書籍・販売社によっては使用NGとしているものもありますので注意した方が良いでしょう。
タンジェリンとマンダリンの違いについて
タンジェリンとと非常に近い果物、精油原料には「マンダリン」と呼ばれる柑橘類があります。植物分類として見てもマンダリンとタンジェリンは近い存在で、田中長三郎氏による分類では別種として扱っていますが、タンジェリンはマンダリンの一品種であるという見方もあります。この分類法であればマンダリンもタンジェリンも同一品種であるCitrus Reticulata種とし、タンジェリンはマンダリンの栽培品種もしくはハイブリッドと考えられています。マンダリンとタンジェリンの違いは、マンダリンは成熟時の果皮の色が黄色~橙色で果皮がなめらかな形状、タンジェリンは果皮の色が赤みが強めでダークトーン・果皮に凹凸があることと言われています。その他にマンダリン系統は2月頃に、タンジェリン系統は11月頃に旬を迎える品種が多いとも。
精油の場合は原料とする品種によっても差があるので確実ではありませんが、一般的にマンダリンはフローラル感の混ざった華やかな香り、タンジェリンはマンダリンよりも柑橘感が高く軽さのあるデリケートな香りと称されています。成分や期待される作用に大きな違いはありませんので、甘めの香りが好きか軽めの香りが好きかで選び分けても問題はなさそうですね。また、タンジェリン=マンダリンの一種と捉えることも出来るためか、マンダリン精油を取り扱うメーカーに比べると、タンジェリン精油の流通は少ないように感じます。
香料原料データ
- 通称
- タンジェリン(Tangerine)
- 別名
- ダンシータンジェリン(Dancy tangerine)
- 学名
- Citrus reticulata var.tangerina
(syn.Citrus Tangerinaなど) - 科名/種類
- ミカン科ミカン属/常緑低木
- 主産地
- アメリカ、イタリア、ギニア、ブラジルなど
- 抽出部位
- 果皮(果実の外皮)
- 抽出方法
- 圧搾抽出法
(稀に水蒸気蒸留/分留も有) - 色
- 淡い黄色~オレンジ色
- 粘性
- 低い
- ノート
- トップノート
- 香り度合い
- やや弱い~中くらい
- 精油成分
- d-リモネン、ミルセン、γ-テルピネン、α-ピネン、リナロール、α-フェランドレン、アルデヒド類など
- おすすめ
- 芳香浴・アロマバス・マッサージ・スキンケア・ヘアケア
温州みかんをイメージする、爽やかさと甘みを持つ香り
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タンジェリン精油に期待される働き・効能
精神面への作用と効果
製品によっても異なりますが、タンジェリン精油はモノテルペン類に分類されるリモネンという成分の含有率が高く、(成分表を提示している)日本の主要メーカーの製品であれば精油成分のうち90%以上がリモネンとなっているものが多くなっています。リモネンは柑橘系の精油に多く見される成分であり、鎮静作用・リラックス効果が期待されています。マウスを使った実験ではリモネンの吸引によって抗不安薬様活性が見られたという報告が2013年『Pharmacology Biochemistry and Behavior』に掲載されており、他にも抗不安作用および鎮静作用が見られたという研究報告も存在しています。このためリモネンを含む精油を使って芳香浴をすることで、神経系の興奮や緊張を緩和しリラックスさせ精神疲労やストレス軽減の手助けになるのではないかと考えられています。
鎮静作用によって中枢神経のバランスを整えることにも繋がると考えられますから、タンジェリン精油はイライラ・不安・気持ちの落ち込みなど精神的な部分での支えとなってくれる精油として扱われています。気持ちを落ち着けることで元気さや自信・喜びを感じられるようになる手助けをしてくれるという説もありますし、タンジェリンもオレンジスイートと同様に元気を貰えるような明るくフレッシュな香りが特徴の精油。リフレッシュしたい時やら元気や前向きな気持を取り戻したい時のサポートに繋がる可能性もあるでしょう。遊び心が欲しい時、想像力を高めたい時に適した香りだという声もあるようですよ。
鎮静させリラックスさせる働きが高いと考えられることから、不眠や眠りが浅い時のサポートにも優れていると考えられています。ストレスが多いと感じる時だけではなく、PMSや生理中・更年期障害など女性ホルモンのバランスの乱れに起因する精神的な不快感の軽減にも活用できるでしょう。香りもクセの少ない爽やかな柑橘系ですから、場所やシュチュエーションを選ばずメンタルサポートとして取り入れやすいのも魅力ですね。
肉体面への作用と効果
タンジェリン精油の代表成分とも言えるリモネンは健胃・消化促進・整腸など胃腸機能のサポートに役立つと考えられている成分でもあります。血行促進作用や唾液分泌を高める働きを持つという見解もあり、食欲不振・消化不良・便秘・下痢・お腹の張りなど幅広い胃腸トラブルの緩和に効果が期待されています。リモネンは鎮静・抗不安作用によってストレス対策にも役立つと考えられることから、特にストレス等に起因する神経性の胃痛・腹痛・消化不良・胸のつっかえ感などの軽減に繋がる可能性が高いと考えられます。
タンジェリン精油全体として見ると循環や解毒・洗浄という言葉が登場します。これは血液を浄化して循環を促進する働きが期待されているためで、デトックスのサポートや冷え性予防、高血圧・関節炎などの緩和に役立つ可能性があるオイルとしてマッサージなどに使用されています。成分としてもリモネンにも血行促進作用が期待されており、特に末梢血管の血流を良くする働きが高いと考えられています。このためタンジェリンの精油もキャリアオイルで希釈して血行促進・手先や足先の冷え対策、むくみやセルライトケア、ダイエットサポートなどのマッサージオイルなどに取り入れられています。
そのほかに鎮痙作用を有するという見解も有り、筋肉痛や気管支炎、生理痛などの痛みの緩和にも効果が期待されています。消化機能のサポートに効果が期待されているのも血行促進作用や鎮痙作用との合わせ技という可能性もありそうですね。リモネンやγ-テルピネン・α-ピネンなど抗菌作用が芳香されている成分を多く含んでいること、血行促進作用は体を温めることにも繋がることから、タンジェリン精油は風邪やインフルエンザなどの呼吸器感染症予防にも効果が期待されています。
その他に期待される作用
肌への働きかけ
タンジェリンは抗菌作用・抗真菌性を持つと考えられることからニキビ予防に役立つ精油の一つに数えられています。加えて皮膚の強壮作用や細胞成長を促進する働きがあるとする説もあり、傷跡や妊娠線の予防やケアに使用する方もいらっしゃるようです。そのほか肌の血行を良くして強壮することから美肌・アンチエイジングに良い、肌を明るく見せてくれるなどの見解もありますが、リモネンは皮膚に対しての刺激物となる可能性もあるため注意が必要。また光毒性を持つことも指摘されていますので、日中やスキンケア(顔用)としての利用には注意した方が良いでしょう。使用後24時間は紫外線を避けるようにするのが確実です。
頭皮・髪への働きかけ
リモネンは髪の健康な成長をサポートし、抜け毛を予防する働きが期待されています。日本の大学からもリモネンには髪の成長を阻害し抜け毛を促進する悪玉酵素(5αリダクターゼ)の減少作用が見られたことが報告されており、リモネン配合の育毛剤も販売されています。このためリモネンを含むタンジェリン精油も抜け毛予防に役立つ可能性がありますし、血行促進の方面からも髪や頭皮に栄養を行き渡らせる手助けが期待できます。また、頭皮に詰まった油や汚れを取り除くなどの働きも期待できるため、頭皮や毛髪のベタつき・ニキビなどが気になる際のケアにも活用されています。
タンジェリンが利用されるシーンまとめ
【精神面】
- ストレス・神経疲労
- イライラ・興奮
- 不安・気持ちの落ち込み
- 情緒不安定だと感じる
- 不眠・寝付気が悪い時に
- リラックスしたい時に
- 前向きになりたい時に
【肉体面】
- 腹痛・消化不調
- 便秘・食欲不振
- 神経性の胃痛や下痢に
- 血行不良・冷え性に
- 風邪・インフルエンザ予防
- 妊娠線やセルライトケアに
- 脂性肌・頭皮トラブルに
タンジェリンの利用と注意点について
相性の良い香り
タンジェリンもマンダリンと同じく同系統のシトラス系精油と相性がよく、組み合わせることで香りに奥行きを加えられます。ハーブ系・フローラル系の香りとも相性が良いとされていますが、実際のところは何系の香りであっても相手を選ばずにフレンドに使いやすい存在。マンダリンよりはライトな印象でもありますから、軽やかさやフルーティーさを加えたい時にも役立ってくれるでしょう。
タンジェリンのブレンド例
- ストレスケアに⇒ベルガモット、カルダモン、ベンゾイン
- 眠りのサポートに⇒オレンジ、カモミール、ラベンダー
- 便秘や下痢に⇒コリアンダー、ブラックペッパー、バジル
- 冷え性ケアに⇒シナモン、マジョラム、レモン、ナツメグ
- 妊娠線ケアに⇒ネロリ、ラベンダー、ローズ、サンダルウッド
タンジェリン精油の注意点
- 肌へ使用した後は日光や紫外線を避けましょう。
- 妊娠中・授乳中の使用、小さいお子さんへの使用における安全性は断定されていません。
- 皮膚を刺激することがあるので高濃度での使用は避け、敏感肌の方は注意して使用してください。
- アロマテラピーは医療ではありません。効果や効能は心身の不調改善を保証するものではありませんのでご了承ください。
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参考元