【アロマ】ベンゾイン精油
-植物の特徴・精油に期待される効果効能とは?

【アロマ】ベンゾイン精油<br />-植物の特徴・精油に期待される効果効能とは?

どことなく懐かしい、甘い香りが特徴

日本では安息香とも呼ばれているベンゾイン。軽いバルサム感の中にバニラに似た甘さがある香りが特徴です。歴史が古い香料の一つで、食品香料から香水まで幅広く使用されている存在。安息香という呼び名の由来は「息(呼吸)を楽にしてくれる」という説もありますし、甘い香りは気持ちを落ち着ける手助けにも役立つと考えられています。保湿剤としても期待されており、古くはバレリーナがかかとの保湿に用いたというエピソードもありますよ。

benzoin

ベンゾイン(安息香)とは

ベンゾインの特徴・歴史

バニラを使った焼き菓子のような、甘い香りが特徴のベンゾイン。原料となるのは東南アジア地域に生育しているツツジ科エゴノキ属に分類される樹木で、樹皮を傷つけると滲み出てくる樹液を固形化した樹脂が香料として使われています。ベンゾインは家庭薬の防腐剤、お酒の香り付けをはじめとする食品分野、天然保湿成分としてハンドクリームやナイトパックなどの化粧品など幅広く利用されている香料。日本では安息香という和名で呼ばれることも多く、お香などにも香料兼保留剤として使われています。

ベンゾイン(安息香)は世界的に見て、古い歴史を持つ香料の一つでもあります。原産地である東南アジアは勿論のこと、紀元前のうちにはエジプトやギリシア・ローマなどへも伝わっていました。ユーラシア大陸に存在した古代文明のほとんどで、各地で香料・医薬品として珍重されていたと考えられています。また、古い時代には「悪霊を追い払う力を持つ」と信じられ、宗教儀礼用の薫香としてフランキンセンス(乳香)ミルラ(没薬)と並んで重宝された存在でもあります。原産地を挟んで東側にある中国にも古い時代にベンゾインは伝わり、安息香という呼び名で香料・生薬として利用されるようになっています。

ベンゾインが安息香と呼ばれるようになった理由については諸説ありますが、16世紀頃に記された『本草綱目』には“諸邪を安息する(様々な病や風邪を落ち着ける)効能があること”が由来であると記されています。そのほか呼吸を楽にする働きがあるから、漢名で安息と書いていたパルティア王国のものだと考えられた、などの説があります。ちなみにベンゾインの特徴成分は安息香酸(benzoic acid)と呼ばれる芳香族カルボン酸ですが、この安息香酸という呼び名はベンゾインから得られたことで命名されています。ベンゾイン(Benzoin)という呼び名については「ジャワ島渡来の香り」もしくは「ジャワの乳香」を意味するアラビア語から変化したという説が有力。

樹脂を原料とするバルサム系香料の中としてはクセがなく、バニラやお菓子を連想させる甘い香りを持つベンゾイン。香りの保留性も高いことから、現代では女性向けのフローラル調もしくはオリエンタル調の香水などにも使われています。実際には合成成分が使われていることがありますが、イブ・サン=ローランやサルヴァトーレ・フェラガモなどの高級ブランド香水でもラストノートの香調として登場しますね。オリエンタル調でバニラ系の甘い香りがありますが、お香などにも使われているためかどことなく懐かしさも感じる香りですよ。

ベンゾインの種類について

ベンゾインという言葉は広義ではエゴノキ(Styrax)属に分類される樹脂、もしくはそれを原料とした香料全般を指す言葉として利用されています。一般的に香料として「ベンゾイン」と呼ばれるのはタイやベトナムなどのインドシナ半島に分布するベンゾイン・スマトラ(Styrax benzoin)と、インドネシアのスマトラ島を中心にベンゾイン・シャム(Styrax tonkinensis)の二種類。日本で安息香と称されているのはアンソクコウノキ(学名Styrax benzoin)が原料なので、スマトラタイプ(スマトラ安息香)の方ですね。

香料として世界的に見ても、スマトラ安息香の流通量が圧倒的に多くなっています。しかし香料としての品質は、バニリン含有量が高くバニラ様芳香の強いシャム安息香の方が優れているという評価されています。特にスマトラ安息香の最高級品はほのかにアーモンドのような香りがあり、他のベンゾインと区別するため「ベンゾイン・アーモンド」と呼ばれています。しかし稀少な高級品のため、一般にはほとんど流通していません。

こう書くとスマトラ安息香は手軽な存在のようにも感じますが、樹液が抽出できるのは木を植えてから7年後以降とされています。樹液にも限りがありますから、スマトラ安息香も貴重な自然資源ではありますね。そのためこの二種類以外にも芳香を持つ樹脂を産する近縁種、もしくは全く別物のフタバガキ科やナンヨウスギ科樹木の樹脂を使った偽和ベンゾインも少なからず流通しているという指摘もあります。

香料原料データ

通称
ベンゾイン(Benzoin Abs.)
別名
安息香(アンソクコウ)、スマトラ安息香
学名
Styrax benzoin
Styrax tonkinensis
科名/種類
エゴノキ科エゴノキ属/常緑高木
主産地
スマトラ、ジャワ、マレーシアなど
抽出部位
樹脂
抽出方法
揮発性有機溶剤抽出法(アブソリュート)
オレンジ~赤茶色
粘性
非常に高い
ノート
ベースノート
香り度合い
中~強
精油成分
安息香酸、安息香酸エステル、桂皮酸エステルベンジル、、セドロール、バニリン
おすすめ
芳香浴・アロマバス・マッサージ・スキンケア・ヘアケア

甘いバニラ調の中に樹脂っぽさを微かにを感じる、濃厚な香り

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ベンゾインに期待される働き・効能

精神面への作用と効果

ベンゾインの香りに気持ちをほっと和らげ、神経を落ち着かせる働きがあると考えられています。高い鎮静効果が期待できるほか、精神面に対しての温熱作用や強壮作用があるという見解もあり、精神的な疲労やストレスで消耗してしまった心を楽にしてくれる精油として用いられています。緊張やストレスで神経がピリピリと張り詰めたように感じる時や、イライラしやすさ、不安定さを感じた時にリラックスの手助けとして取り入れてみて下さい。精神的プレッシャーから生じる冷淡さ、無感情になりがちな時にも役立ってくれそうですね。

好き嫌いはありますが、バニラを連想させる甘く温かみのあるベンゾインの香りは、孤独感や喪失感などネガティブな感情を癒やし、多幸感を取り戻すためのサポートとしても適していると考えられています。周囲の人と溝があるような、距離感がつかめない気分の時に香らせてみても良いかもしれません。精神的な疲労回復をはじめ、心を深く鎮めてくれることから瞑想用の香りとしても適しています。ストレスから開放されたい週末などにもオススメです。

安眠サポートにも期待

ベンゾインに微量含まれているセドロールという成分は、自律神経系に作用する可能性を持つと注目されている成分でもあります。花王株式会社ヘルスケア第2研究所が行った実験ではセドロールの香りを嗅ぐことによって心拍数・呼吸数・血圧の低下が見られたことが報告されています。セドロールは芳香成分ではありますが感知できないほどに香りは弱いものの、香りを“感じない”場合でも鎮静作用を発揮したのだそうです。

また嗅ぐことで脳波のα波の増加が見られたこと、寝付くまでの時間の短縮や、睡眠の質の向上効果が見られたとの報告もあり、鎮静作用を持つ成分として注目されている存在。セドロールが自律神経系に作用することで心身ともにリラックス状態になるよう促し、気持ちを落ち着けるだけではなく、寝付きを良くしたり、睡眠の質を高めてくれるのではないかと期待されていますよ。

肉体面への作用と効果

安息香という呼び名の由来に「息を安らかにする(楽にする)」という説があるように、ベンゾインは伝統医療の中では喉・呼吸器の不調に利用されてきた存在でもあります。去痰作用や抗炎症作用があると考えられている他、抗感染症作用を持つとする説もあり、ベンゾインは呼吸器の不調軽減や風邪予防などに利用されています。抗炎症作用も期待できるため気管支炎や喘息などのケアに活用されることもありますよ。

呼吸器系全体の強壮作用がある精油と考えられ、喉が弱い方、喉の腫れや痛み・声がかすれている時のケアに用いられることもあります。日常的な喉の不快感から慢性的な症状まで幅広い“喉の不調”緩和に利用されている精油と言えるでしょう。スチームなどで蒸気を吸引することで呼吸器の粘膜を刺激し痰の排出を促すとも言われていますので、不快感が強い場合には試してみてください。ただし医学的に作用が認められているわけではありませんから、症状が重い場合は医師の診察・投薬を受けるようにしましょう。

そのほか血行促進作用が期待できることから冷え性や悪寒のケア、抗炎症作用と合わせて関節炎・神経痛・リウマチなどの緩和にも使われています。抗菌作用だけではなく利尿・尿量を増やす働きがあるとする説もあり、膀胱炎や尿道炎など泌尿器系の感染症のケアにも用いられる場合もあるようです……が、この辺りについては使用例・信憑性共に微妙。

その他に期待される作用

肌への働きかけ

ベンゾインは古くから石鹸やクリームなどの化粧品にも活用されてきました。保湿効果や皮膚軟化作用があるとして、昔はバレリーナがフットケア(ひび割れのケア)に利用していたのだそうです。現在でも優れた保湿作用や癒傷・瘢痕形成作用を持つと考えられ、ひび割れ・あかぎれ・しもやけ(凍瘡)などのケアに利用されています。バレリーナに倣って冬に多い指先のパックリ割れ・かかとのガサガサやひび割れ予防に取り入れている方もいらっしゃるようですよ。

そのほか抗炎症作用からニキビや皮膚炎症・痒みの緩和などにも利用されています。傷の治りを促してくれますのでニキビ跡や傷跡の回復を早める・目立ちにくくするなどの効果がある、ニキビ予防やお肌のエイジングケアに良いという説もあります。

ただし一般的に販売されているベンゾインは“精油(エッセンシャルオイル)”と呼ばれていることもありますが、基本的には溶剤抽出したアブソリュート炎症を起こしている肌に使用すると刺激となってしまう可能性もあります。皮膚感作性と接触性皮膚炎の可能性があることも指摘されていますから、炎症部の使用は避け、皮膚の薄い顔のケアに利用したい場合にも注意しながら取り入れるようにして下さい。

ベンゾインが利用されるシーンまとめ

【精神面】

  • ストレス・神経疲労に
  • 不安・孤独感・疎外感に
  • 気持ちの落ち込みに
  • 緊張・イライラしやすい
  • リラックスしたい時に
  • 心が荒んでいる気がする時に

【肉体面】

  • 声枯れ・喉の痛み・気管支炎
  • 風邪予防や初期症状ケアに
  • 関節炎・神経痛・リウマチに
  • ひび・あかぎれ予防
  • かかとのケアに
  • 乾燥肌・ニキビ予防に

ベンゾイン・アブソリュートの利用と注意点について

相性の良い香り

バニラ調のニュアンスがある甘めのベンゾイン。その香りを主役として香りを組み立てても素敵ですが、香りの持続力が高いので保留剤としても活躍してくれる存在です。どの香り系統の精油とも合わせやすいですが、濃さが気になる方は柑橘系や軽めのウッディー系と、濃厚な香りが好きな方はオリエンタル系やバルサム系とのブレンドがおすすめです。

ベンゾインのブレンド例

ベンゾイン・アブソリュートの注意点

  • 妊娠初期は使用を避けてください。
  • 集中力が必要なシーンでの使用は控えましょう。
  • 香りが強いので少量ずつ使用しましょう。
  • 肌が弱い方は注意して利用して下さい。
  • アロマテラピーは医療ではありません。効果や効能は心身の不調改善を保証するものではありませんのでご了承ください。
  • 当サイトに掲載している情報は各種検定とは一切関わりがありません。

参考元