【アロマ】アンジェリカルート精油
-植物の特徴・期待される効果効能とは?

【アロマ】アンジェリカルート精油<br />-植物の特徴・期待される効果効能とは?

“不安と力の精油”との別名も

アンジェリカかヨーロッパを中心に古くから香料・ハーブとして使用されてきたセリ科のハーブ。精油は根から抽出されたルートオイルと種子から抽出されたシードオイルがありますが、流通量が多いのはルートオイルの方です。アンジェリカルートはヨーロッパ当帰とも呼ばれるように伝統医療の中で女性領域での不調に用いられてきた歴史がありますし、メンタルサポートに用いられることから「不安と力の精油」とも呼ばれていますよ。

アンジェリカ(angelica)

アンジェリカ(西洋当帰)とは

アンジェリカの特徴・歴史

日本ではラベンダーほどポピュラーと言えない存在ながら、ヨーロッパ、特に北欧での伝統医療や自然療法ではオーソドックスなハーブの一つに数えられているアンジェリカ。ハーブティーやハーブチンキなどハーブ療法全般で利用されいるほか、香辛料のような感覚で使われることもあります。ケーキなどのトッピングに使われる「クリスタルアンゼリカ」という緑色のグミのようなものがありますが、これも元々はアンジェリカの堅い茎を砂糖で煮て乾燥させたものが原型[1]。日本では手に入らないためフキを使って作られているそうですよ。その他にアンジェリカを乾燥させたものは安眠用のハーブピローなどにも利用されているそう。

アンジェリカの精油も芳香剤やアロマテラピーへの利用だけではなく、シャルトルーズやベネディクテンなどのリキュール類の香り付けや調理スパイスなど食品分野にも活用されています。ジンの香料としてはジュニパーベリーが良く紹介されますが、アンジェリカもジンの主要な着香料の一つ。精油の芳香は製品・嗅ぐ人によって様々で、土っぽいアンダーな香りと称する方もいれば、パウダリーで甘いと表現する方も[2]いらっしゃいます。個人的な意見としては甘い方の漢方薬のような印象の香りであり、店頭で香りを確認して購入したい精油の1つです。好き嫌いは割れそうなアンジェリカ。植物としてはセリ科に分類されるハーブ、と言えば何となくクセのある感じを察せられるかもしれません。

アンジェリカと同じセリ科植物で、香りも似通った存在としてセロリが挙げらこともあります。しかしアンジェリカには根から採油されたルートオイル種子を原料としたシードオイルの2つがあり、セロリシードの精油と香りが近いのはアンジェリカシードの方。流通量が多く一般的に“アンジェリカオイル”と呼ばれているのはルートオイルの方で、香りはハーバルよりも土っぽい系統。ムスク系の芳香を持つシクロペンタデカノリド(エグザルトリド)を微量含むことから、ムスク調の香りを作りたい時にもアンジェリカは活用されていまs。

その他にもセリ科のハーブは沢山ありますが伝統的な用法が近いこともあり、アンジェリカは中国医学(漢方)で生薬として利用されている「当帰(トウキ)」の近縁種として紹介されることも。日本では当帰の方が古くから定着していたため和名ではアンジェリカを西洋当帰・ヨーロッパ当帰とも呼ばれます。当帰が中国を中心とした東側で古くから使用されていたのと同じく、アンジェリカも北ヨーロッパを中心に古くから使用されてきたハーブの一つ。呼び名や属名のアンジェリカ(Angelica)は天使、種小名のarchangelicaは大天使ミカエルが語源というのが定説になっていることからも重用されていたことがうかがえますね。ちなみに由来は天使が秘めたる力を人間に教えてくれたという伝説という説と、旧暦だと「大天使ミカエルの日」である5月8日頃に咲いたからという説があります。

呼び名だけではなくアンジェリカは古い時代の医療だけでなく、宗教的部分でも大切にされていたハーブ。古くから悪魔を退ける香りを持つ聖なる草と信じられ、かつては「精霊の根」や「天使の草」とも呼ばれていたのだとか。病気の原因が邪気や悪魔と考えられていた時代ですしね。中世には“最も有用性が高いハーブ”の一つとして悪霊、魔女、呪文、疫病などありとあらゆるものへの防御に使われたというエピソードも[3]あったりしますよ。16世紀に活躍した錬金術師・医学者のパラケルスも万能薬としてアンジェリカを評価していたと伝えられていますし、17世紀にはイギリス王室のハーブリストにも加えられペストの治療法に使われた歴史も。同時期にはイギリスで砂糖漬けのアンジェリカが「お腹を強くする」お菓子としても人気を博したそうです。

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香料原料データ

通称
アンジェリカ・ルート(Angelica Root)
別名
アンゼリカ、西洋当帰(セイヨウトウキ)、Holy Spirit Root(ホーリースピリットルート/精霊の根)、Angel grass(エンジェルグラス/天使の草)など
学名
Angelica archangelica
科名/種類
セリ科シシウド属/多年草
主産地
フランス・ドイツ・ベルギー・オランダなど
抽出部位
根・根茎
抽出方法
水蒸気蒸留法
無色~淡いクリーム色
粘性
低い
ノート
ミドル~ベースノート
香り度合い
強め
精油成分
α-ピネン、β-フェランドレン、サビエン、ミルセン、リモネン、ミルセン、α-テルピネン、3-カレン、p-シメン、シクロペンタデカノリドなど
おすすめ
芳香浴・マッサージ・ヘアケア

土っぽさの中に漢方薬系のスパイシーさと甘さを感じる、独特の香り

アンジェリカ・ルートに期待される働き・効能

精神面への作用と効果

アロマテラピーの書籍などでアンジェリカは「不安と力の精油」と称されることもある精油。古くから悪魔祓いのような用途で用いられてきたのも、神経系・心のバランスを整える働きがあったためではないかと考えられます。現在でも自然療法の中でアンジェリカの芳香は優れた鎮静・神経強壮作用を持つと考えられ、不安や緊張で強張ってしまっている心をリラックスさせる・不安定な気分を落ち着ける目的で使用されています。副交感神経を活発化することで自律神経のバランスを整える働きが期待できるという説もありますよ。

2005年に学術雑誌『Pharmacology Biochemistry and Behavior』に掲載された中国の比較研究でも、アンジェリカの精油に幅広い抗不安作用があり、不安関連障害および社会的失敗に対しての有用性が示唆[4]されています。こうした研究や伝統的に使用されてきたことから、アンジェリカ精油はストレスや神経疲労・頑張り過ぎで参ってしまった状態からの回復・ストレスへの耐性やメンタル面での打たれ強さが欲しい時のサポーターとして使用されています。気持ちを落ち着ける働きもありますから、イライラや過興奮・ショック状態などの緩和にもつながる可能性もあるでしょう。ハーブピローに用いられることがあるのもこうした鎮静・リラックス効果を期待しての部分が大きいのかもしれません。

また、アンジェリカは少量で刺激作用・量が増えると鎮静作用をもたらすという説もあります。このため憂鬱感から抜け出せない時・不安感に苛まれている時に、心を落ち着けると共に前向きさ・やる気を蘇らせるサポートも期待できるでしょう。不安と力の“力”の部分と言えますね。上で紹介した中国の研究でも示唆されているように、アンジェリカは失敗や過去の嫌な思い出の影響を抑えてくれる精油と評すからもいらっしゃいます。有効性が認められたものではありませんが、精神的に弱っていて嫌なことを思い出す・引きずっているという時に香らせてみても良さそうですね。

肉体面への作用と効果

伝統的にアンジェリカは鼓腸・食食不振・胃炎など消化器系の不調に対して用いられてきました。現在でもリラックス効果が期待できること、2010年にはマウスを対象としたインドの研究で抗痙攣作用が示されている[5]ことから、消化器系の不調を和らげる働きを持つのではと期待されています。精神面への働きかけと合わせて拒食症の改善サポートなどに取り入れられることもあるそうですし、神経性の消化不良や下痢・便秘・胃痛などの緩和につながる可能性もあるでしょう。体内システムの働き全体を高める=体全体の強壮効果がある精油であると紹介されることも[6]あります。

加えてA. archangelicaの根から抽出された精油、つまりアンジェリカルートオイルにはクロストリジウム・ディフィシレ菌やカンジダ・アルビカンスなどに対しての抗菌活性があることも報告されています[5]。こうした抗菌性からも古い時代には消化器系の治療に用いられていた可能性がありますし、伝統医療の中では去痰・鎮咳作用を持つと考えられていることから風邪やアレルギー性鼻炎などの呼吸器系の不調ケアにも活用されています。抗炎症作用が期待できることから花粉症軽減に、抗ウイルス作用が期待できるという説から空気浄化や風邪予防に使われることもあるようです。

ちなみに、伝統的に血中の過剰な尿酸を低下させ痛風やリウマチ・関節炎の軽減に良いハーブとして使用されてきた[2]と紹介されることもありますが、こちらはおそらくチンキや精油を服用する海外の情報。日本では精油の飲用は禁止されていますから、有効性はあまり期待しない方が良いでしょう。ただし血行促進・加温作用があるという説もありますから、冷えによって悪化している関節炎やリウマチなどの痛みの軽減に役立つ可能性はあります。そのほかリンパ系の働きを高めるという説もあり、血行促進とあわせてむくみ・セルライトケアのマッサージに使用する方もいらっしゃるようです。

女性領域でのサポートも期待

アンジェリカは和名で西洋当帰と呼ばれます。当帰と言えば“当帰芍薬散”のように冷えや女性特有の不調改善の漢方薬に使われている生薬であり、アンジェリカもマジョラムなどと同じく“エメナゴーグ(Emmenagogue)”と呼ばれるハーブの1つに数えられています[6]。エメナゴーグは子宮を刺激することで月経や子宮出血を促したりホルモン調整を行うなどの作用の事。このためアンジェリカは女性領域のサポートに用いられることも多い精油であり、中国ではアンジェリカの根を「女性の高麗人参」と評する[2]こともあるようです。

アンジェリカにはエストロゲンの分泌バランスを調整する働きが期待されており、民間療法ではエストロゲン分泌低下によって起こる更年期障害の諸症状軽減・PMS(月経前症候群)や月経不順など幅広い月経トラブルの改善にも取り入れられています。ただしアンジェリカがホルモンバランスへの働きかけを持つかについては十分なデータがなく信憑性が低いことも指摘されていますから、過剰な期待は避けましょう。精神面への働きかけと合わせて更年期障害やPMSによる精神的不快感の軽減サポートに香らせてみる程度にすることをお勧めします。

その他に期待される作用

皮膚利用について

皮膚刺激性・光毒性があることから、あまりアンジェリカ精油の皮膚利用はされていません。作用としては代謝促進作用があると考えられており、肌の再生促進・くすみをなくして透明感を与えると言われています。ただし刺激性などの問題からスキンケアに利用するのではなく、血液循環を促すことで冷え性やむくみケア、関節痛や神経痛の軽減など、ボディマッサージ用としての利用がおすすめです。

アンジェリカが利用されるシーンまとめ

【精神面】

  • ストレス・神経疲労
  • 神経過敏・情緒不安定
  • 不安・憂鬱・気持ちの落ち込み
  • イライラ・ショック
  • 心を強く持ちたい
  • 過去から抜け出したい
  • ストレス性の不眠

【肉体面】

  • 消化不良・食欲不振
  • 腹部膨満感・便秘
  • 鼻炎・喉の不調に
  • 風邪予防や初期症状ケアに
  • 冷え・むくみ
  • 神経痛・関節痛
  • 月経痛・生理不順
  • 更年期障害・PMS

アンジェリカ・ルートの利用と注意点について

相性の良い香り

アンジェリカルートはムスク感・甘さ・土っぽさ・スパイシーさが入り混じった香りで単体で香りを嗅ぐと好き嫌いが分かれやすい存在。ですが少量を加えるのであればブレンドしやすい精油であり、ほかの精油と組み合わせることで香りに深みが出ます。特に相性が良いのは柑橘系・ウッディー系の香り、甘い香りやアロマっぽ香りが苦手な方は柑橘系の香りと組み合わせるところから始めてみてください。

アンジェリカのブレンド例

アンジェリカ・ルート精油の注意点

  • 妊娠中・授乳中の方、小さいお子さんへの使用は避けましょう。
  • 皮膚を刺激する可能性があるため、敏感肌の方は使用に注意が必要です。
  • 光毒性があるため肌につけた後紫外線に当たらないようにしてください。
  • 疾患がある方・投薬治療中の方は医師に確認してから利用して下さい。
  • アロマテラピーは医療ではありません。効果や効能は心身の不調改善を保証するものではありませんのでご了承ください。
  • 当サイトに掲載している情報は各種検定とは一切関わりがありません。

参考元