【アロマ】クラリセージ精油
-植物の特徴・期待される効果効能とは?

【アロマ】クラリセージ精油<br />-植物の特徴・期待される効果効能とは?

ストレス対策・女性領域サポートに期待

クラリセージの精油は、ナッツのような、お酒のような、ちょっと癖のあるフルーティーな香りが特徴的。精油成分としては酢酸リナリルとリナロールの含有率が高く、ストレスケアや不眠対策などメンタル面サポートに期待されています。また、生理痛や更年期障害に伴う不快感など、女性領域のサポートにも活用されており、女性のためのオイルと称されることもあります。

クラリセージ(clarysage)のイメージ画像

クラリセージとは

クラリセージの特徴・歴史

フルーティーな印象でありながらナッツのような香ばしさ・ハーブ調っぽさも併せ持った、芳醇な香りを持つクラリセージ。香料として利用されることが多い植物で、ルームミストやバスソルトなどでもその表記を見かけることが多いのではないでしょうか。バジルなどのように料理用ハーブとして使われることは少ないものの、お酒類をはじめとした“食品香料”として使用されています。

ところで、私達が生活する中で単に「セージ」と呼んで、料理やハーブティーなどに使われているのは、和名ヤクヨウサルビア・英名コモンセージ(学名:Salvia officinalis)と呼ばれるシソ科アキギリ属の植物。アキギリ属(Salvia)は別名セージ属とも言われ、〇〇セージと呼ばれる植物が多く含まれています。クラリーセージも同じアキギリ属に分類されている植物ですが、学名Salvia sclarea、和名をオニサルビアという別種です。

クラリセージは、南フランスやイタリアなど地中海沿岸北部に自生する植物。原産地付近では紀元前から使われていたとされる、歴史あるハーブの1つでもあります。紀元前4世紀のギリシアの学者テオプラストスや、1世紀のローマの博物学者プリニウス・ザ・エルダーも、クラリセージを薬用植物として記録しています。クラリーセージの種小名sclareaや呼び名に使われているクラリー(Clary)も、ラテン語で「明るい・明晰な」を意味するクラルス(clarus)が語源という説が定説。その由来は抗菌作用が優れている、視界をよくするなど諸説ありますが、有用なハーブであると考えられていたのでしょう。

中世頃には、クラリーセージは「Oculus Christi(キリストの目)」と呼ばれ、目の薬草としても使われました。クラリーセージの種子は、水に浸すと出てくる粘液質に覆われる特徴があります。和名でメボウキと呼ばれているバジルなどと同じく、この粘液を洗眼剤として使用していたわけです、17世紀に活躍したハーバリストのニコラス・カルペパーも、自身の著書『Complete Herbal』の中で、クラリーセージについての記述を残しています[1]。

中世ヨーロッパでクラリーセージは「人を陶酔させるハーブ」として宗教儀式や、媚薬の原料として使われていた歴史もあります。クラリーセージの用途としてはお酒類の香り付けがありますが、これも元々は香りの良さだけではなく、陶酔作用を持つと考えられていたから取り入れられたとの見解も[2]。ドイツでは質の悪いワインを上質なマスカテルワイン風に調整するためにクラリーセージを使っていたそうですし、イギリスではビール醸造時にホップの代用品として用いていた時期もあります。

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現在でも、クラリセージは香料としての需要が高く、クラリセージの精油(エッセンシャルオイル)やアブソリュートは香水を始め石鹸・化粧品・飲食物の香り付けなど様々な分野で用いられています。伝統・民間療法としても多用されているハーブのため、アロマテラピーでもクラリセージは様々な効能を持つオイルとして活用されています。特にホルモンバランスに左右されやすい女性の体に対しての働きかけに注目されており、女性のための精油(the women’s oil)と称されることもあります。

セージの種類について

広義で“セージ”と呼ばれるアキギリ属植物には多くの種がありますが、精油原料としては以下の3種が主に用いられています。

そのほかにスピリチュアルな面での「浄化作用」が和街となったホワイトセージ(Salvia apiana)の精油も時々販売されていることがありますが、ポピュラーな精油かと言えば微妙なところです。この3種の中でハーブとしての利用で見れば、世界的に料理にも使用されているコモンセージがダントツで需要の高い存在。しかし、精油の場合はコモンセージは刺激が強く、ケトン類を含むことから扱いが難しい存在。刺激性が穏やかで皮膚利用にも使用しやすいクラリセージが多く使用されています。

香料原料データ

通称
クラリセージ/クラリーセージ(Clary sage)
別名
オニサルビア、マスカルテルセージ(muscatel sage/日本ではマスカット・セージとも)、クリアアイズ(clear eyes)など
学名
Salvia sclarea
科名/種類
シソ科アキギリ属/二年草
主産地
フランス、モロッコ、イタリア、ロシアなど
抽出部位
全草、もしくは花と葉
抽出方法
水蒸気蒸留法
無色~クリーム色
粘性
低い
ノート
トップ~ミドルノート
香り度合い
中くらい
精油成分
リナロール、酢酸リナリル、α-テルピネオール、ゲラニオール、、ゲルマクレンD、β-カリオフィレン、スクラレオールなど
おすすめ
芳香浴・アロマバス・マッサージ・スキンケア・ヘアケア

甘めのナッツを微かに感じさせる、フルーティーなハーバル調の香り

クラリセージ精油に期待される働き・効能

精神面への作用と効果

クラリセージの精油成分の中で含有率が最も高いのが、高い鎮静効果が期待される酢酸リナリルというエステル類です。次いで含有量が多いのも、同じく鎮静作用が報告されているリナロールという成分。体の成分は勿論違いますが、優れた鎮静効果を持つとされる酢酸リナリル、リナロールの含有率が高いという点ではラベンダーと似ています。クラリセージは、民間療法や伝統医療の中でも神経緊張を和らげるハーブとして利用されてきました[1]。

また、クラリセージの香りには気持ちを落ち着けるだけではなく、抗うつや神経強壮作用があるとする説もあります。2010年『Journal of Ethnopharmacology』にはラットを使った実験で“クラリセージオイルはラベンダーやカモミールなどの精油よりも強力な抗ストレス効果を発揮し、抗うつ薬のような効果を持つ可能性がある”という研究報告[3]も掲載されています。

研究では可能性が示されている段階ですが、伝統民間療法としての歴史も合わせて、クラリセージは抗ストレス・抗うつ精油として期待されています。プレッシャーやストレスによる緊張で心が強張ってしまっている時や、心配事・感情に振り回されてしまっている時などに香らせてみても良さそうですね。

睡眠のサポートにも期待

ストレスを軽減し、気持ちを落ち着ける働きが期待されているクラリセージ。深いリラックス効果を持つ癒やしのハーブとして、眠りにつきやすくしたり、睡眠の質を高めるサポートとにも期待されています。クラリセージ単体での研究ではありませんが、『The Journal of Alternative and Complementary Medicine』に掲載された132人のキャリアウーマンを対象とした研究では、ラベンダー・クラリセージ・スイートマジョラムのブレンドオイルが、ラベンダー精油単体よりも睡眠の質と生活の質(QOL)の改善率が高かったことも報告されています[4]。

肉体面への作用と効果

クラリセージは鎮静作用や抗うつ作用など、精神面でのサポートに優れた効果が期待されている精油。このためストレス性・神経性の腹痛や動悸など様々な不調の軽減に取り入れられてきました。駆風作用によって腹部膨満感(お腹にガスがたまる状態)を改善する、胃液と胆汁酸の分泌を増やして消化を促進する[1]など、より直接的な消化器系のサポートにも期待されています。

神経系の興奮を鎮めることから、クラリセージは鎮痙作用を持つ精油として、筋肉のけいれん、気道のけいれん、頭痛などの緩和にも用いられています[1]。酢酸リナリルはリナロールは鎮痛作用も期待されている成分。頭痛・偏頭痛・腹痛・筋肉痛・肩こりなど体の痛みの緩和にも効果が期待できるでしょう。そのほかストレスの緩和や、血管を拡張させ血液循環をよくすることで、収縮期血圧を低下させる可能性があることも報告されています[2]。

また、クラリセージに含まれている精油成分の多くは抗菌・抗真菌・抗ウィルス作用を持つ可能性が報告されている成分。クラリセージオイルについても抗菌性・抗真菌性を持つことが報告されています[2]。創傷および皮膚感染症の治療への応用を研究した実験も多いため、有効性については曖昧ですが、デュフューザーなどで拡散することで空間を綺麗に保つ手助けをしてくれる可能性はあります。

女性領域でのサポートにも期待

クラリセージは女性のための精油(the women’s oil)や女性の親友(woman’s best friend)と称されることもある[1]ほど、女性特有の不調ケアにも活用されている精油です。鎮静作用や抗うつ作用によってストレスを軽減し、気持ちを明るくする働きが期待されていることから、マタニティブルーやPMS、更年期障害による憂鬱感やパニックなど精神的な不調軽減に役立つのではないかと注目されています。更年期障害の女性を対象とした実験では、クラリセージオイルの吸引でコルチゾール濃度低下・うつ状態自己評価尺度に有意な改善が見られたことも報告されています[2]。

また、鎮痙作用や血液循環を整える働きが期待出来ることから、生理痛・月経困難症のケアにクラリセージが活用されてることもあります。2012年『Evidence-Based Complementary and Alternative Medicine』には、女子高生を対象にクラリーセージ・マジョラムシナモンジンジャーゼラニウムのブレンドオイルをアーモンドオイルで希釈し、腹部へマッサージを行って月経痛の緩和度合いを測定するという研究が掲載されました。被験者をアセトアミノフェン群とアロママッサージ群に分けたところ、月経痛の軽減はアロマテラピー群の方が有意に高かったことが報告されています[5]。

そのほか、クラリセージには女性ホルモンのエストロゲンと似た構造を持つ「スクラレオール(sclareol )」という成分が含まれているという説もあります。ただし、スクラレオールがエストロゲン活性(エストロゲン作用)を持つかについては定かではなく、エストロゲン活性を阻害する可能性も示唆されており、ホルモンバランス調整作用を持つ可能性は信憑性が低いと考えられます[6]。高い抗ストレス効果が報告されている精油ですから、ストレスによる自律神経の乱れを防ぎ、ホルモンバランスを整える手助けをしてくれる可能性はあります。

その他に期待される作用

肌への働きかけ

クラリセージは中世頃から皮膚トラブルに対して利用されてきた歴史もあります。抗菌・抗真菌作用から、傷や皮膚感染症をケアする軟膏としてクラリセージ抽出物が配合されていた事もあるようです。現在でも、クラリセージは破傷風などの創傷や皮膚感染症の治療に役立つ可能性を示唆している研究報告があります[1]。

成分的に見ても、酢酸リナリルは抗炎症作用が期待されている成分[2]。クラリセージ精油は収れん作用や皮脂分泌調節作用を持つと考えられていることと合わせて、ニキビ予防・軽度のニキビケアにも使用されています。脂性肌の方にも適しているでしょう。

クラリセージが利用されるシーンまとめ

【精神面】

  • ストレス・緊張
  • 気分の落ち込み
  • 不安・緊張・イライラ
  • 情緒不安定だと感じる時に
  • 精神的に疲れている時に
  • リラックスしたい時に
  • 寝付きが悪いと感じる時に

【肉体面】

  • ストレス性の不調に
  • 胃痛・腹痛・腹部膨満感などに
  • 筋肉痛・神経痛・頭痛の緩和に
  • 血行不良・血圧が気になる方に
  • PMS、更年期障害の軽減に
  • 生理痛の軽減に
  • 脂性肌・ニキビケアに

クラリセージの利用と注意点について

相性の良い香り

クラリセージは何系の香りとも組み合わせやすい精油ですが、外れる心配が最も低いのは柑橘系。ライトな香りと組み合わせることでクラリセージの持つ芳醇なニュアンスがしっかりと残ります。そのほか、軽くスッキリした樹木系・ハーブ系・フローラル系などともブレンドで失敗はしにくいでしょう。

クラリセージのブレンド例

クラリセージ精油の注意点

  • 妊娠中・授乳中の方、小さいお子さんへの使用は避けましょう。
  • 月経過多・多量月経方気味の方は使用を避けましょう。
  • 医薬品と相互作用を起こす危険性があります。
  • 疾患がある方・投薬治療中の方は医師に確認してから利用して下さい。
  • 多量・高濃度での使用、アルコール摂取と前後して使用すると頭痛や吐き気を起こす危険性があります。
  • アロマテラピーは医療ではありません。効果や効能は心身の不調改善を保証するものではありませんのでご了承ください。
  • 当サイトに掲載している情報は各種検定とは一切関わりがありません。

参考元