【アロマ】エレミ精油
-植物の特徴・期待される効果効能とは?

【アロマ】エレミ精油<br />-植物の特徴・期待される効果効能とは?

フランキンセンスに似た柑橘系の印象、かつスパイシーさも持つ香りが特徴的なエレミ。フィリピンが原産のカンラン科樹木の樹脂から抽出される精油で、古くから皮膚トラブルの使用に用いられてきた伝統薬の一つでもあります。伝統的な活用方法から瞑想や精神安定、肌の若返りなどにも期待されていますが、精油の有効性を示す研究はほぼないため注意が必要です。

エレミイメージ画像

Zinnmann, CC BY 4.0, via Wikimedia Commons

エレミとは

エレミの特徴・歴史

少し苦めのレモンのような、それでいてスパイシーさもある、何系とも言い難い香りが特徴的なエレミの精油。精油原料となっているのはフランキンセンス(オリバナム/乳香)ミルラ(没薬)と同じ、カンラン科樹木の樹液が固まって出来た樹脂です。“透明感がありレモンのような印象”と例えられるフランキンセンスと比べると、エレミはよりスパイシーで樹木系のような印象も。人によっては「バルサミコのような香り」と表現されることもあります。

現在はエレミは、主にマニラエレミ(学名:Canarium luzonicum)の樹脂、もしくは抽出された精油を指す言葉として使われています。ただし、古い時代には“エレミ(elemi)”という言葉は、いくつかの芳香性樹脂に使われていました[1]。このため、現在私達が使っているマニラエレミであるかは定かではないのものの、エレミと呼ばれる樹脂は古代から使われていました。抗菌・防腐作用を持つと考えられ、紀元前のうちにはアラビアを通ってエジプトにまでエレミ樹脂が伝わっていたと推測されています。

古代エジプトではミイラを作るために防腐作用を持つハーブや樹脂を使用されていましたが、エレミもまた乳香没薬ガルバナムなどと共に防腐剤に配合されていたと考えられています。エジプトや中東では消毒や傷の手当・スキンケア・宗教儀礼時の薫香などにも活用されていたとの見解も[1]ありますよ。古代エジプトでの使用については可能性の域を出ませんが、紀元前から中東で皮膚のケアに使用されていたと伝えられています。

15~16世紀頃になるとエレミの樹脂はヨーロッパへと伝わり、ハーブ療法の中で皮膚に良い樹脂として軟膏原料に活用されるようになっていきました。皮膚感染症による潰瘍性創傷のケアに使われたほか、鎮静作用を持つ香油としても使われていました。フランキンセンスと似た性質があり、比較的安価なエレミは「the poor man’s frankincense(貧乏人の乳香)」と呼ばれることもあります。

現在でも一部の軟膏類や貼り薬には、エレミ抽出物を配合した製品があります。ただし、樹脂から抽出された精油(エッセンシャルオイル)は香水・芳香剤としての使用が主。近年エレミは皮膚へのメリットがあるのではないかとスキンケア面でも注目されていますが、一方で肌に対する刺激性も指摘されています。使用には注意が必要です。

香料原料データ

通称
エレミ(Elemi)
別名
マニラエレミ(Manila elemi)、フィリピンエレミ(Philippines Elemi)
学名
Canarium luzonicum
科名/種類
カンラン科カンラン属/高木
主産地
フィリピン、インドネシア、マレーシア、オーストラリアなど
抽出部位
樹脂
抽出方法
水蒸気蒸留法
ほぼ無色~淡黄色
粘性
低い
ノート
トップ~ミドルノート
香り度合い
中~強め
精油成分
リモネン、エレモール、α-フェランドレン、エレミシン、p-シメン、α-ピネン、サビネン、α-テルピネオールなど
おすすめ
芳香浴・アロマバス・マッサージ・スキンケア・ヘアケア・ハウスキーピング

柑橘系のような爽やかさを含んだ、スパイシーな樹木系に近い香り

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エレミ精油に期待される働き・効能

精神面への作用と効果

エレミは「フランキンセンスと似た」「貧乏人のフランキンセンス(乳香の代用品)」なんて紹介されることも多い精油で、フランキンセンスと同様に瞑想時の香りとしても親しまれています。気持ちを落ち着ける働きがあると考えられ、民間療法やヒーリングではグラウンディング作用(接地作用)を持つ香りと称されることもあります。気持ちや自分のポジションをしっかりと固定したい時、精神を安らかに保ちたい時に用いられています[2]。

成分的に見た場合、エレミの精油に最も多く含まれている精油はd-リモネン。製品によってもさはありますが、2020年に公開された研究では行われたGC/MS分析では36.4%がリモネンとなっています[3]。そのほかメーカーに掲載されている成分表でも、35%~45%くらいをリモネンが占めているものが多いので、エレミ精油の主成分はリモネンと言って問題ないでしょう。

リモネンは、オレンジなど柑橘系の精油に多く見られる成分で、鎮静作用や抗不安作用を持つ可能性を示唆した研究報告もあります。例えば、2012年には「リモネンを吸入したマウスは、不安レベルが大幅に低下した」という報告があり[4]、アロマテラピー上の“効能”も理にかなっているのではないかと注目されました。

とは言え、リモネンの作用メカニズムは解明されておらず、動物実験段階です。エレミ精油の芳香吸入による有効性については、更に分かっていません。香りには好き嫌いもありますから、好きな香りであればリラックスタイムの演出を兼ねて取り入れてみるとストレスや不安の軽減をサポートしてくれるかもしれません。

肉体面への作用と効果

エレミ精油に多く含まれているリモネンは、鎮静作用から痛みを緩和する働きが期待されている成分。分娩中の女性を対象にした研究では、リモネンの吸引で痛みの重症度に軽減が見られたなどの報告もあります[5]。エレミ自体も鎮静作用を持つと考えられている精油ですから、ストレスや神経・筋肉の緊張によって起こる痛みの緩和に役立つ可能性はあるでしょう。リモネンやα-フェランドレンには抗炎症作用・エレモールは鎮痛作用を持つ可能性も示唆されているため、関節炎やリウマチの痛み軽減に用いられることもあるようです。

また、アロマテラピーでリモネンを含む精油は健胃・消化促進・整腸など、胃腸機能のサポートに優れていると考えられています。リモネンに胃粘液産生促進や胃粘膜保護作用がある可能性を示している発表もありますが、こうした研究はほとんどが投薬による結果精油は飲用出来ませんし、リモネンを含むエレミ精油となると有効性は更に不明です。医薬品のように考えて利用するのは避けましょう。

冷え対策や風邪予防にも…?

エレミは“体を温めてくれる精油”の1つにも数えられており、身体が冷える症状や冷えに起因する不調全般の軽減にも役立つ精油と言われています。体を温めると称される根拠は不明ですが、主成分のリモネンには自律神経を刺激することで血行を促すという説があります。希釈してマッサージなどに使用すると血行促進に繋がり、冷えや足のむくみ軽減などに役立つ可能性はあるでしょう。

加えて、リモネンには抗菌・抗ウィルス作用、免疫調節機能を持つ可能性も示唆されています。エレミ精油には同じく抗菌作用や免疫調節機能が期待されているα-ピネンなどの成分も含まれています。15世紀ころのヨーロッパでは免疫強化や呼吸器ケア・疲労回復にエレミが用いられていた歴史もあります[2]。このため、エレミ精油は風邪などの感染症予防、風邪の初期症状ケアにも期待されています。ただし、こうした作用は各成分に示唆されている作用・伝統的効能を統合したものであり、有効性については認められていません。

その他に期待される作用

肌への働きかけについて

エレミは古代エジプトから皮膚軟膏やスキンケアに用いられていた存在。現代でも皮膚治療やスキンケアの面で注目されている精油の一つです。リモネンやエレモール(elemol)など抗菌・抗真菌・消毒作用や抗炎症作用を持つ可能性が報告されている成分が含まれていることから、ニキビケア、水虫(白癬)など真菌性の皮膚炎症、虫刺されケアなどに活用されています。

また、エレミは伝統的に傷の手当・潰瘍性創傷のための軟膏などに利用されてきたこともあり、癒傷・瘢痕形成作用が期待できる精油に数えられることもあります。より身近なところでは、瘢痕形成・癒傷作用は皮膚細胞の活性化促進とも捉えられること、リモネンなどの精油成分には抗酸化作用があることから、エレミ精油を“肌を若返らせる精油”としてアンチエイジング・エイジングケアに勧めている方もいます。

ただし、エレミ精油には皮膚刺激性があるメチルオイゲノールが含まれている場合があることも懸念されています。塗布することでり炎症を悪化させてしまう危険性もりますので、皮膚トラブルを起こしている箇所への使用は避けてください。自己判断ではなく、皮膚科で診断と適切な投薬・治療を受けましょう。

エレミが利用されるシーンまとめ

【精神面】

  • ストレス・不安・緊張
  • イライラしている時に
  • 気持ちを落ち着けたい時に
  • 自分を見つめ直したい時に
  • 精神安定や瞑想のサポートに

【肉体面】

  • ストレス性の胃痛・腹痛
  • 緊張性の痛みの緩和
  • 血行促進のマッサージに
  • 水虫やニキビのケアに
  • 老化予防・エイジングケアに

エレミの利用と注意点について

相性の良い香り

原材料の性質から樹脂系(バルサム系)に分類されますが、エレミ精油は柑橘系や樹木系のイメージに近い香り。バルサミック感が強い精油よりはブレンド相手を選ばない存在ですし、柑橘系・ハーブ系・スパイス系とは特に馴染みやすいでしょう。

エレミのブレンド例

エレミ精油の注意点

  • 妊娠中・授乳中の方、小さいお子さんへの使用は避けましょう。
  • 皮膚を刺激する可能性があるため、敏感肌の方は使用に注意が必要です。
  • 疾患がある方・投薬治療中の方は医師に確認してから利用して下さい。
  • アロマテラピーは医療ではありません。効果や効能は心身の不調改善を保証するものではありませんのでご了承ください。
  • 当サイトに掲載している情報は各種検定とは一切関わりがありません。

参考元