【アロマ】エレミ精油
-植物の特徴・期待される効果効能とは?

【アロマ】エレミ精油<br />-植物の特徴・期待される効果効能とは?

フランキンセンスと似た働きが期待

フランキンセンスを更にフルーティ&スパイシーにしたような香りが特徴的なエレミ。フィリピンが原産のカンラン科樹木の樹脂から抽出される精油で、古くから皮膚トラブルの使用に用いられてきた伝統薬の一つでもあります。リモネンを多く含むことからリラックスや胃腸サポートに、伝統的な効能と合わせてスキンケアに活用されていますが、精油についての研究はほとんどないため注意が必要。

ElemiEssOil

エレミとは

エレミの特徴・歴史

バルサム系(樹脂系)と呼ばれる精油でありながら、レモンフレーバーの焼き菓子のような印象の香りが特徴的なエレミ。同じカンラン科に分類されるフランキンセンス(オリバナム/乳香)ミルラ(没薬)と比べるとやや知名度は劣るものの、親しみやすい香りですよ。レモン様の香りを含むと称されるフランキンセンスよりも、エレミは更に柑橘系寄りな印象。スパイシーさを含んだ香りではありますが、全体的にはレモンやパインなどに例えられる爽やかでクールな芳香があります。バルサミック感が苦手な人でも、エレミやフランキンセンスは受け入れやすい香りと言えるのではないでしょうか。

フルーティーな芳香を持つエレミ精油ですが、原料は樹液が固まって出来た樹脂。元々“エレミ(Elemi)”という言葉は様々な樹脂を総称した言葉で、フランキンセンス・ソマリア(学名:Boswellia frereana))などにも使われていました。しかし現在はマニラエレミと呼ばれる種(学名:Canarium luzonicum)の樹脂もしくは樹脂から抽出された精油を指すのが一般的。原産地のフィリピンではマニラエレミの樹脂を香料やワニスに使用するだけではなく樹木全体を様々に活用しています。若い芽はサラダなどに、あまり味はしないものの食べられる果肉は煮物の具に使われるそう。現地で“ピリ(Pili)”と呼ばれる種子はナッツの一つとしてお菓子や飲料にも使われており、ローストするとアーモンドに風味が似ていることから“ジャワアーモンド(java almonds)”という別名も。そのほか果肉や種子からは油が絞られ、木部は建材にと余すところなく活用されています。

エレミの樹脂は心地よい香りを持つ香料であるだけではなく、ハーブの一つとして伝統医療の中で使用されてきた歴史もあります。古くから優れた抗菌・防腐作用が知られており、紀元前のうちにはアラビアを通ってエジプトにまでエレミ樹脂が伝わっていたと推測されています。古代エジプトではミイラを作るために防腐作用を持つハーブや樹脂を使用していましたが、エレミも乳香没薬ガルバナムなどとともに防腐剤として利用された初期の芳香剤の一つという説もあります。現在私達がエレミと呼んでいるCanarium luzonicumの樹脂か別種かは出さかではないものの、エジプトや中東では消毒や傷の手当・スキンケア・宗教儀礼時の薫香などにも活用されていたとの見解もありますよ。古代エジプトでの使用については可能性の域を出ませんが、紀元前から中東で皮膚のケアに使用されていたと伝えられています。

15~16世紀頃になるとエレミの樹脂はヨーロッパへと伝わり、ハーブ療法の中で皮膚に良い樹脂として軟膏原料に活用されるようになっていきました。皮膚感染症による潰瘍性創傷のケアに使われたほか、鎮静作用を持つ香油としても使われていたそう。ヨーロッパではペスト(黒死病)の流行が度々起きていた時期のため、エレミの特性が注目されたのかもしれませんね。エレミはかつてヨーロッパで有名だった治療軟膏「Baume au Fioravanti」や「Baume paralytique」にも配合されていたとも伝えられ、現在でも一部の軟膏類や貼り薬にはエレミ抽出物を配合した製品があります。樹脂から抽出された精油(エッセンシャルオイル)も同様に軟膏や皮膚様クリーム・石鹸などに香料を兼ねて配合されており、香りの良さから香水ほか芳香商品にも使われています。フィリピンからのマニラエレミ購入はフランスが最も多く、次いでドイツ、日本も輸入量が増加しているそうです。近年エレミは「ミルラと近い働きが期待できる精油」としてスキンケア面でも注目されていますが、一方で肌に対する刺激性も指摘されていますので使用には注意が必要です。

香料原料データ

通称
エレミ(Elemi)
別名
マニラエレミ(Manila elemi)、フィリピンエレミ(Philippines Elemi)
学名
Canarium luzonicum
科名/種類
カンラン科カンラン属/高木
主産地
フィリピン、インドネシア、マレーシア、オーストラリアなど
抽出部位
樹脂
抽出方法
水蒸気蒸留法
ほぼ無色~淡黄色
粘性
低い
ノート
トップ~ミドルノート
香り度合い
中~強め
精油成分
リモネン、エレモール、エレミシン、α-フェランドレン、α-ピネン、サビネン、パラシメン、α-テルピネオールなど
おすすめ
芳香浴・アロマバス・マッサージ・スキンケア・ハウスキーピング

レモンとパインニードルを混ぜたような、爽やかでスパイシーな香り

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エレミ精油に期待される働き・効能

精神面への作用と効果

古くは鎮静のための香油作りにも使われたというエレミ。エレミの精油も神経系の興奮を鎮める鎮静作用を持つと考えられ、気持ちを落ち着けたい時に活用されています。民間療法やヒーリングではグラウンディング作用(接地作用)を持つ香りであるとも称され、気持ちや自分のポジションをしっかりと固定したい時・平衡感覚を整えたい時に適した精油の一つに数えられることもありますよ。

成分的に見た場合、エレミの精油はフランキンセンスやミルラと比較してモノテルペン炭化水素類のリモネン(limonene)が多く含まれていることが認められています。製品によっても差があるでしょうが、2016年の『EXCLI Journal』に発表されたセルビアの研究チームによるGC/MS分析ではリモネン含有量が45.6%と、精油成分の約半分がリモネンだということが示されています。リモネンは柑橘系の精油に多く見られる成分で、鎮静作用や抗不安作用が期待されています。動物実験ではリモネンによる抗不安作用が見られたことも報告されており、2013年2月の『BMC Complementary and Alternative Medicine』にはリモネン含有率の高いビターオレンジ精油ではセロトニン受容体(5-HT1A受容体)との相互作用を通じて抗不安作用を発揮する可能性を示唆した報告もなされています。

リモネンの作用メカニズムは解明されておらず動物実験段階、エレミの芳香吸入による有効性は更に分かっていません。香りには好き嫌いもありますから、好きな香りであればリラックスタイムの演出を兼ねて取り入れてみるとストレスや不安の軽減をサポートしてくれるかもしれません。また、エレミは「乳香の代用品」として紹介されることもあるようにフランキンセンス様の作用が期待されている存在でもあります。その一つに眠気を誘発せず気持ちを落ち着けるという働きがあり、エレミも雑念を払って心を鎮めつつ集中力を高める=瞑想をサポートする芳香として用いられることもあります。瞑想時だけではなく、自分の感情や目標をしっかり見つめ直したい時・仕事中のリフレッシュや気持ちの切り替え用としても役立ってくれるでしょう。

肉体面への作用と効果

エレミ精油の主成分と言えるリモネンは健胃・消化促進・整腸など、胃腸機能のサポートに役立つと考えられている成分でもあります。ラットを使った実験ではリモネンの経口投与によって胃壁保護物質PGE2が増加したことが報告されており、胃粘液産生促進・胃保護作用を持つことが示唆されています。精油は飲用出来ませんのでこうした直接的な働きかけがあるかは不明ですが、アロマテラピーや自然療法の中でリモネンは唾液分泌や胃腸の活動を高める働きをもつと期待されています。

このためリモネンを含むエレミも食欲不振・消化不良・便秘・下痢・お腹の張りなど幅広い胃腸トラブルの緩和に役立つのではないかと考えられています。エレミの香りには高い鎮静作用があると考えられていることからストレス性の腹痛や胃痛の緩和にも効果が期待できます。そのほかリモネンやα-フェランドレンには抗炎症作用・エレモールは鎮痛作用を持つ可能性も示唆されているため、関節炎やリウマチの痛み軽減用として用いられることもあるようです。

冷え対策や風邪予防にも…?

エレミは“体を温めてくれる精油”の1つにも数えられており、身体が冷える症状や冷えに起因する不調全般の軽減にも役立つ精油と言われています。体を温めると称される根拠は不明ですが、主成分のリモネンには自律神経を刺激することで血行を促すという説があります。希釈してマッサージなどに使用すると血行促進に繋がり、冷えや足のむくみ軽減などに役立つ可能性はあるでしょう。加えてリモネンには抗菌・抗真菌・抗ウィルス作用、免疫調節機能を持つことが示唆されている研究報告もあります。

エレミ精油全体として見た場合には同じく抗菌作用や免疫調節機能があると考えられているα-ピネンなどの成分も含まれています。こうした成分を含むことからエレミは風邪などの感染症予防、風邪の初期症状ケアにも役立つのではないかと期待されています。抗炎症作用を持つ成分が多く含まれていることから咳やくしゃみなど呼吸器症状の軽減に良いという見解もあります。ただし、こうした作用は各成分に示唆されている作用・伝統的効能を統合したものであり、有効性については認められていません。

その他に期待される作用

肌への働きかけ

エレミは古代から皮膚の治療に用いられてきたとも伝えられ、現代でも皮膚治療やスキンケアの面で注目されている精油の一つと言えます。抗菌・抗真菌・消毒作用や抗炎症作用が高いと考えられ、水虫(白癬)など真菌性の皮膚炎症やニキビケア、虫刺されのかゆみ対策などに有効とされています。エレミの特徴成分と言えるエレモール(elemol)も抗菌作用や抗真菌作用を持つ可能性が報告されている成分で、エレミ以外にはヒノキや杉などにも含まれています。2015年の『International Journal of Molecular Medicine』に掲載された韓国で行われたヒノキ抽出エレモールによる実験ではエレモールによって血清IgEレベルや炎症物質が抑制された事が示されており、DNCB誘発アトピー性皮膚炎治療に対しての有効性も示唆されています。

エレミは伝統的に傷の手当・潰瘍性創傷のための軟膏などに利用されてきたこともあり、癒傷・瘢痕形成作用が期待できる精油と目されています。上記の抗炎症作用と合わせて皮膚炎症や傷の手当に良いという見解もありますが、メチルオイゲノールが含まれている場合があり皮膚刺激性があることも懸念されています。塗布することでり炎症を悪化させてしまう危険性もりますので、自己判断で皮膚トラブルへの使用は避けたほうが良いでしょう。皮膚科で診断と適切な投薬・治療を受けましょう。

より身近なところでは保護特性(皮膚の保護作用)や皮脂バランス調整を持つという説もあります。瘢痕形成・癒傷作用は皮膚細胞の活性化促進とも捉えられること、リモネンなどの精油成分には抗酸化作用があることから、エレミは“肌を若返らせる精油”としてアンチエイジング・エイジングケア用に活用されることもあります。保湿効果と合わせて乾燥小じわ対策に、また皮膚の乾燥によるひびわれ・あかぎれ・角質化や乾燥性のかゆみ対策などにも用いられています。こちらも皮膚刺激性があるため使用には注意が必要ですが、皮膚の厚いかかとのケアなどには役立つ可能性があるでしょう。

エレミが利用されるシーンまとめ

【精神面】

  • イライラ・神経過敏
  • ストレス・緊張・興奮
  • 気持ちの落ち込み・不安
  • 気持ちを落ち着けたい
  • 自分を見つめ直したい
  • 気持ちを切り替えたい

【肉体面】

  • 食欲不振・消化不良
  • ストレス性の胃痛・腹痛
  • 風邪・インフルエンザ予防
  • 咳・風邪の初期症状軽減に
  • 乾燥・ヒビ・アカギレ
  • 肌のアンチエイジングに

エレミの利用と注意点について

相性の良い香り

原材料の性質からエレミ精油は樹脂系(バルサム系)に分類されますが、香りの印象としては柑橘系や樹木系を強く感じるという方も少なくありません。バルサミック感が強い精油よりはブレンド相手を選ばない存在ですし、柑橘系・ハーブ系・スパイス系とは特に馴染みやすいでしょう。

エレミのブレンド例

エレミ精油の注意点

  • 妊娠中・授乳中の方、小さいお子さんへの使用は避けましょう。
  • 皮膚刺激がある場合がありますので、敏感肌の方は注意してください。
  • 疾患がある方・投薬治療中の方は医師に確認してから利用して下さい。
  • アロマテラピーは医療ではありません。効果や効能は心身の不調改善を保証するものではありませんのでご了承ください。
  • 当サイトに掲載している情報は各種検定とは一切関わりがありません。

参考元