筋肉痛や肩こり・関節痛などのケアに
ローズマリーは地中海沿岸地域で古くから大切にされてきたハーブで、古代ギリシアでは記憶力アップのお守りのように使われていたという逸話もあります。精油にはいくつかケモタイプが存在しますが、カンファー(ボルネオン)タイプは1,8-シネオール+カンファーの働きで記憶力や集中力アップに効果が期待されています。また、カンファーには循環促進や抗炎症作用が期待できることから、筋肉や関節の痛みのケアにも活用されていますよ。
Contents
ローズマリー・カンファーとは
ローズマリーの特徴・歴史
観賞用としても料理用としても親しまれているハーブの一つ、ローズマリー。フレッシュハーブとしてはバジルやタイムと並んで認知度の高い存在であり、ウッディーな印象もあるハーバル系の香りは肉や魚の臭み消しにも、パンなどを作る時の風味付けとしても活躍してくれます。風味の良さはもちろんのこと、ポリフェノールが豊富な抗酸化ハーブとしてとして若々しさと健康を願う人々から注目される存在でもあります。ハンガリー王妃が若返ったという伝説のあるローズマリーのチンキ(浸出液)を使った「ハンガリアンウォーター(ハンガリー水)」も、アンチエイジング効果が期待できる“若返りの水”として手作り化粧水レシピなどで紹介されることがありますね。
そんなローズマリーは、名前にローズと付くもののバラ(ローズ)よりもミントやマジョラムなどに近い、シソ科マンネンロウ属に分類される低木植物です。原産は地中海沿岸地域で、原産地周辺で栄えた古代エジプトや古代ギリシアなどでは既に重要なハーブとして扱われていたと考えられています。呼び名も「ros marinus(海の露、もしくは雫)」という古典ラテン語が語源。元々はroseではなくros=露を意味する言葉だったものが変化して英名になっているのです。ちなみに和名はマンネンロウ、漢字では万年朗や万年蝋、もしくは中国名そのまま“迷迭香”と書いてマンネンロウと読ませることもあります。元々は常に香りがする植物=万年香(マンネンコウ)と呼ばれていたとの説が主流。経緯については断定されていませんが、誤字もしくは転化したのではないかと考えられていますよ。
ローズマリーが自生していた地中海沿岸地域では、その香りの良さと、体に対してもメリットがあったことから、古くはローズマリを万能薬の一つとして多用していたと考えられています。また、体を癒やしてくれることから神秘的な力を持つ“聖なる木”として大切にしていたという説もありますよ。この考えは悪魔・悪夢がやってくるのを防いでくれるという思考に繋がり、ペストなどの疫病除けに役立つハーブとしても重宝されました。当時は良い香り=邪気を追い払うという思想もありましたしね。キリスト教でも聖母マリアが幼いイエスを抱いてエジプトへ逃れる最中、彼女の着ていた青いマントに触れたことで白かった花が青くなったという伝説があるのだとか。このためローズマリーは「Rose of Mary(聖母マリアのバラ)」とも呼ばれています。
またローズマリーはキリスト教以前から記憶や思い出を象徴する植物と考えられ、頭の働きをよくするハーブとしてギリシアでは試験を受ける学生が髪にローズマリーの花輪を飾る習慣もありました。忘れないという意味を込めて故人へと手向けることも多く、古代エジプトでは王の埋葬時にローズマリーを入れていたようですし、ギリシアやローマでも墓に供える植物として定番だったそう。中世のシェイクスピア作品にも思い出・記憶を象徴する植物としてローズマリーが多用されています。青空文庫に掲載されている坪内逍遙訳『ロミオとヂュリエット』でも、死んでしまったジュリエットを見て取り乱すキャピュレット(ジュリエットの父)に修道僧ロレンスが“さ、涙を乾乾かして、迷迭香を死体に挟ましゃれ”という場面がありますよ。余談ですが、この『ロミオとヂュリエット』は昔に訳されたためか、時代劇のような、ロミオが丁髷を結っていそうな独特の雰囲気があって面白い作品です。迷迭香を挟む=死に水を取るみたなセリフですしね。
ローズマリー精油の種類について
ローズマリーはハーブの中でも1、2を争うと言われるほど美しい花を咲かせることも特徴。このため観賞用としても世界中で広く栽培されており、同じRosemarinus officinalisという種の中でも様々な栽培品種が作られています。園芸用品種も含めると基本的には立性種と匍匐性に大別し、更に高さや花の色などで大まかなグループ分けをすることもあるそう。ただし精油の場合であれば品種は同じであっても育てる土地・遺伝などによって香りは変わってきます。このため精油は品種ではなく含有成分・その比率によってケモタイプとして分類するのが一般的です。
ローズマリーのケモタイプ精油はマイナーなものを含めると6種類前後ありますが、小売されているのはシネオールタイプ・ベルベノンタイプ・カンファー(ボルネオン)タイプの3種類が主。最もポピュラーなのが、カンファーなどのケトン類の含有量率が低く扱いやすいとされるローズマリー・シネオールです。ベルベノンタイプはシネオールタイプよりも若干ケトン類含有量が多いのですが、肝機能向上・ダイエットやスキンケアに対して高い効果が期待できるという説もあり、美容サポートにも注目されています。カンファータイプは呼び名の通りカンファー含有率が高いため使用に注意は必要ですが、筋肉痛・神経痛の緩和、記憶力ややる気向上など心身のサポートに有益に働く部分もあると考えられています。
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香料原料データ
- 通称
- ローズマリー・カンファー(Rosemary ct.Camphora)
- 別名
- ローズマリー・ボルネオン、迷迭香(マンネンロウ/メイテツコウ)、万年朗(マンネンロウ)
- 学名
- Rosemarinus officinalis(ct.Camphora)
- 科名/種類
- シソ科マンネンロウ属マンネンロウ属(ロスマリヌス属)/常緑性低木
- 主産地
- スペイン、クロアチア、フランスなど
- 抽出部位
- 全草(葉・花・茎)
開花時の先端部分のみを使用したものが高品質とも。 - 抽出方法
- 水蒸気蒸留法
- 色
- ほぼ無色~淡い黄色
- 粘性
- 低
- ノート
- トップ~ミドルノート
- 香り度合い
- 中~強め
- 精油成分
- カンファー(ボルネオン)、1,8-シネオール、α-ピネン、カンフェン、リモネン、ボルネオール、β-カリオフィレン、ベルベノンなど
- おすすめ
- 芳香浴・アロマバス・マッサージ・消臭・防虫
カンフル感を強めに感じる、清涼感あるややウッディーな香り
ローズマリー・カンファーに期待される働き・効能
精神面への作用と効果
ローズマリー・カンファーは呼び名の通りケトン類のカンファーを多く含んでいるケモタイプ精油。このためローズマリーのケモタイプ精油の中では樟脳もしくはメンソールに例えられる、薬品系の清涼感が強めに出た香りとなっています。ちなみに、カンファーではなくボルネオンタイプと呼ばれることもありますが、これはカンファーの別名。ボルネオンが正式名称だと紹介されることもありますが、呼称の表記としては“2-Bornanone(2−ボルナノン)”もしくは“Bornan-2-one(ボルナン-2-オン)”となっていますし、スペルも無いので日本だけなのではないかと…。
特徴成分とも言えるカンファーはシャープで覚醒芳香の印象が強い香りですが、、鎮静作用も持ち合わせているという説もあります。ストレスや緊張などで過剰に神経が興奮している時にはリラックス方向に働くことで、イライラや神経過敏のような状態の時のサポーターとしても期待されています。また、クールな香りは脳・交感神経を刺激して頭をスッキリとさせることで認識力や集中力を高めつ働きが期待されています。無気力状態や気分が落ち込んでいて、自分を鼓舞したい時にも役立ってくれそうですね。やりたくないけれど頑張らなくてはいけない仕事・勉強などを頑張る際に選んでみると良いかもしれません。
製品にもよりますがローズマリー・カンファーのカンファー含有率は20%前後。α-ピネンの含有率の方がカンファー含有率よりも高いものもありますし、1,8シネオールを15~20%程度と多く含まれています。1,8シネオールも気分をスッキリとさせて集中力や記憶力を高める働きが、α-ピネンには鎮静作用や神経強壮作用が期待されています。この3成分をほぼ同比率で含んでいるカンファータイプはローズマリーのケモタイプ精油の中で最も集中力・記憶力向上や頭脳疲労回復に優れているという見解もあります。反対に1,8シネオール濃度の高い方が認知能力を向上させるという報告もありますし、カンファータイプの精油については実験報告がほとんどないのが現状です。体調や自分との相性・使用したいシーンなどを考慮して選んでみてください。
肉体面への作用と効果
ケトン類のカンファー(ボルネオン)は刺激性・神経毒性が懸念されるとして使用を控えるべき、注意が必要である精油と表記されていることもありますが、人体に対して有用な働きも報告されている成分です。カンファーはかつて強心剤(カンフル剤)にも利用されている成分で、心臓強壮(鼓動を強める)作用を持つと考えれています。このため血液循環を促すことで低血圧の軽減、血行不良に起因する冷え性や肩こりなどの軽減に効果が期待されています。カンファーには鎮痛作用と抗炎症作用が期待できることも合わせて、筋肉痛・関節痛・リウマチ・神経痛などのケアに用いられることもありますよ。
また、呼吸器系・循環器系に対しての刺激作用を持つとと考えられることから、カンファーを含む精油は鬱血除去薬(充血除去薬)のような形で作用して鼻詰まりを改善する働きも期待されています。ローズマリー・カンファーには去痰・抗炎症・抗菌・抗ウィルス作用など呼吸器系のサポートに役立つとされる1,8シネオールも含まれていますから、合わせて咳・気管支炎などの呼吸器系の不調緩和、風邪予防や初期症状ケアにも活用されています。そのほか循環器系の刺激作用からむくみの緩和、ケトン類の働きから肝胆汁の分泌・排泄促進によるデトックスや脂肪溶解作用が期待できるという説もあります。
とは言え、カンファーには毒性がないという声もある一方で危険性を指摘する書籍・サイトも多くあります。このため用途としては風邪予防などのために高頻度で拡散するよりも、筋肉の疲労・関節や筋肉の痛みをケアするためのマッサージに使用されることが主。呼吸器系の不調や風邪っぽい時のケアとしても拡散するのではなく、キャリアオイルで希釈してトリートメントとして使われることが多いようです。様々な有効性を持つ可能性がある一方で、危険性の指摘もある成分だということを念頭に置いて利用してください。
その他に期待される作用
皮膚利用について
カンファーは消炎・鎮痛作用を持つ成分として、かゆみ止めや皮膚炎症ケアの軟膏などにも利用されてきました。その他に抗菌作用や皮脂分泌調整作用が期待できることと合わせてニキビや吹き出物の予防・ケアに使用されることもあります。1,8-シネオールも抗菌作用や皮脂分泌調整作用が期待されていますから、合わせて脂性肌の方やニキビができやすい方に適した精油だという声もあります。
そのほか瘢痕形成作用を持つ・アンチエイジングに役立つという説もありますが、カンファーも1,8-シネオールも皮膚刺激性の高さが指摘されている成分。お顔など皮膚の薄い部分や、敏感になっている箇所に自己判断で使用する場合は炎症を悪化させてしまう可能性もあるため、使用はおすすめできません。スキンケアやヘアケアとして活用する場合は皮膚刺激性が低いとされるローズマリー・ベルベノン、より使用しやすいラベンダーやフランキンセンスなどの方が利用者も多く無難ではあるでしょう。
消臭・防虫剤としても
カンファーは日本語で“樟脳(ショウノウ)”とも呼ばれ、衣類の防虫剤の原料にも使われていた成分。現在でもカンファーは衣服につくカツオブシムシやイガなどの虫が嫌う香りとして活用されていますし、衣服を食べる虫だけではなくゴキブリ(チャバネゴキブリ)が忌避するという報告もなされています。
加えてカンファーにも抗菌作用があり、1.8-シネオールも高い抗菌・抗真菌作用が報告されている成分。悪臭の原因の一つとして、温度や湿気などの関係から雑菌が繁殖して悪臭物質を発生させることが挙げられます。洗濯物の生乾き臭やカビ臭が代表的ですし、体臭についても皮脂や垢を雑菌が分解することで発生する悪臭物質によるものが多いとの見解が主流。このため、こうした精油成分が雑菌を繁殖させないようにすることで消臭剤としての機能を持つことに繋がると考えられます。
ローズマリー・カンファーが利用されるシーンまとめ
【精神面】
- ストレス・神経疲労に
- 集中力・記憶力を高めたい
- 気分の落ち込みに
- 無気力・やる気が出ない時に
- モチベーションを上げたい
- 頭をスッキリさせたい
- 心が不安定になっている時に
【肉体面】
- 血行不良・低血圧・冷え性
- 筋肉痛・肩こり・腰痛
- 関節痛・神経痛・リウマチ
- 鼻詰まり・喉の痛みや咳に
- デトックス・肥満予防
- 脂性肌・ニキビ対策
- 消臭・防虫用に
ローズマリー・カンファーの利用と注意点について
相性の良い香り
カンファー感を感じさせるホワイトカンファーの精油は、相手を選ばない柑橘系やスッキリした印象のハーブ系精油とブレンドしやすいです。スパイシーさを感じさせるもの同士として軽めのスパイス系、カンファー感やグリーン感を持つ樹木系の香りとも比較的組み合わせやすいでしょう。
ローズマリー・カンファーのブレンド例
- 気持ちを明るくしたい⇒レモングラス、オレガノ、シトロネラ
- 記憶力・集中力サポートに⇒レモン、ペパーミント、タイム
- 血行不良・むくみケアに⇒オレンジ、シナモン、プチグレン
- 神経痛・筋肉痛ケア⇒ラバンジン、パイン、フランキンセンス
ローズマリー・カンファー精油の注意点
- 妊娠中・授乳中の方、お子さんへの使用は出来ません。
- てんかん・喘息のある方は使用を避けるか、医師に相談しましょう。
- 高血圧・肝疾患ほか持病のある方は医師に相談しましょう。
- 芳香浴の場合でも、高濃度で使用すると肌へ刺激を与える場合があります。
- アロマテラピーは医療ではありません。効果や効能は心身の不調改善を保証するものではありませんのでご了承ください。
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参考元