アロマ】タイム(コモンタイム/ホワイトタイム)精油
-植物の特徴・期待される効果効能とは?

アロマ】タイム(コモンタイム/ホワイトタイム)精油<br />-植物の特徴・期待される効果効能とは?

抗菌性が注目されるが、刺激性が高い

身近なハーブの一つ、タイム。精油は植物そのものよりも濃厚なハーバル調の香りがあります。抗菌活性・抗真菌活性・抗ウイルス活性が報告されていることから、空気浄化や風邪予防などに用いられることも。ただし、チモールやカルバクロールなどのフェノール類を含み、やや扱いの難しい精油にカテゴライズされるため注意が必要。

コモンタイム(Common Thyme)のイメージ画像

コモンタイムとは

コモンタイムの特徴・歴史

爽やかさがありつつ、どことなくフローラルな印象もある、グリーンで“ハーブっぽい”香りが特徴的なタイム。ハーブティーや料理用ハーブとしても使われていますし、抗菌作用と香りを活かして手作りのサシェやポプリなどにも使われています。タイムは消臭芳香剤・石鹸・入浴剤などの香りにも使われていますから、何かと馴染のあるハーブの一つと言って過言ではないでしょう。

タイム(thyme)という呼び名は、広義ではシソ科のイブキジャコウソウ属(Thymus)に分類される植物全般を指す言葉。イブキジャコウソウ属には約350種もありますが、その代表格と言えるのがタチジャコウソウ(学名:Thymus vulgaris)。お料理のレシピやハーブとして単に「Thyme」と言えばThymus vulgarisを指すと思っても問題ありません。英語でも一般的・普通などの意味がある“Common”をつけて、コモンタイムと呼んでいます。

タイム(コモンタイム)は人間が薬用植物として活用してきた歴史が古いハーブの1つ。タイムの原産地付近で栄えた古代エジプトでは防腐処理にタイムを活用し、古代ギリシアでは神殿でお香のようにタイムを焚いていたなんて話もあります。諸説ありますが、学名(属名)や呼び名のThymusも、ギリシア語で燻蒸を意味する“thymos”が語源ではないか[1]という説もあります。

ペダニオス・ディオスコリデスの『薬物誌』や、大プリニウスの『博物誌』にはタイムの医学的使用に関する記述がある[1]ことから、少なくとも1世紀には“薬草”として活用されていたのでしょう。古代ギリシア人が神殿で焚いていた・入浴剤として使ったという逸話も、抗菌作用や呼吸器系に対しての薬効を期待した部分もあったという見解もあります。

また、タイムは象徴的な意味合いを持つ植物としても人々に愛されてきました。古代ローマでタイムは「勇気の象徴」と考えられ、兵士がタイムの香りを嗅いだり、入浴に使っていたというエピソードもあります。出兵する兵士にタイムを与えたり、騎士にタイムを刺繍したスカーフを渡す、なんて風習はヨーロッパで中世まで行われていたそうですよ[1]。

タイム精油の種類について

「タイム系統」とまとめられる精油は、10種類以上とかなり多くの種類があります。一口にタイム系統の精油とは言っても、大きくは原料植物、コモンタイム(Thymus vulgaris)を原料とした精油類、同属別種の植物を原料とした精油(レモンタイムタイムマストキナなど)の2タイプに分けることが出来ます。

精油としても単に「タイム」と呼ぶ場合は、コモンタイム(Thymus vulgaris)を原料とするものを指すのが一般的です。ただ、同じコモンタイムが原料であっても、精油は含有成分の違いによって“ケモタイプ(Chemotype)”として別々に扱われています。これは、同じ原料植物でも生育条件等によって精油成分の組成が大きく異なり、芳香や作用についても変わってくると考えられるためです。

タイム精油の代表的なケモタイプとしては、以下のようなものが挙げられます[2]。

ケモタイプは、それぞれ呼び名に入っている精油成分の含有率が高いことが特徴。タイムの成分には、刺激性が高い・毒性の懸念が指摘されているチモールやカルバクロールなどのフェノール類が含まれています。ケモタイプ精油とは言われるものの、タイム精油としてはフェノール含有率が低く流通量も多いリナロールもしくはゲラニオールタイプが扱いやすく、一般的に使われるタイム精油と言える存在です。

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商品として単にタイム(コモンタイム)と呼ばれている精油は、ケモタイプ名を省略されているタイプのもの、リナロール・カルバクロール・チモールなどの中でどの成分含有が高いとも言い難いもの、2タイプあります。このページでは、後者の精油を“タイム(コモンタイム)”として紹介していきます。

また、タイム精油は“レッドタイム”や“ホワイトタイム”と表現されることもあります。これは、基本的には精油の抽出方法の違いによる区分です。レッドタイムはコモンタイムをそもまま蒸留(抽出)したもの、ホワイトタイムはレッドタイムを再蒸留して作られた精油です。レッドタイムの段階だと刺激性・毒性のある成分量が多いため、再蒸留によってフェノール類の含有が低下し安全に取り扱えるホワイトタイムが小売のメイン。

ただし、精油の製法ではなく、フェノール類の割合でレッドタイム・ホワイトタイムと区分する、スパニッシュタイム(タイムマストキナ)を鉄製蒸留器で蒸留することで赤みがかった精油をレッドタイムと呼ぶ[2]など、メーカー・販売者によって呼称が紛らわしいケースもあるようです。信頼できるメーカー製のものを選ぶ、成分分析表を確認するなど、自衛が必要ですね。

香料原料データ

通称
タイム(Thyme)
別名
コモンタイム(Common Thyme)、ガーデンタイム(garden thyme)、立麝香草(タチジャコウソウ)
学名
Thymus vulgaris
科名/種類
シソ科イブキジャコウソウ属
主産地
フランス、スペイン、モロッコ、イギリスなど
抽出部位
葉、開花した花の先端
抽出方法
水蒸気蒸留法(レッドタイムを再蒸留)
ホワイトタイム:無色~淡い黄色
(レッドタイムはオレンジ~赤茶色)
ノート
トップノート~ミドルノート
香り度合い
強め
精油成分
フェノール類(チモール、カルバクロール)、y-テルピネン、パラシメン、リナロール、ボルネオール、カンフェン、α-ピネンなど
※精油成分含有率は気候、収穫時期、保管条件等によって大きく異なります
おすすめ
芳香浴・マッサージ・ヘアケア・ハウスキーピング・防虫

アニスに似た甘さを含む、重厚なハーブ調の香り

タイム(コモンタイム/ホワイトタイム)精油に期待される働き・効能

精神面への作用と効果

古代には兵士に勇気を与えると信じられていたタイム。現在でもアロマテラピーなどの民間療法において、タイム精油はストレスを和らげ、不安の軽減・リラックスの増進に役立つと考えられています。そのほかに集中力や記憶力を高める働きがある[3]という説もあり、疲労やストレスを和らげ、集中力を維持する手助けをしてくれる精油として期待されています。

ちなみに、研究でタイム精油に抗不安薬様活性が見られたことが報告されている、と紹介されることもありますが、このエビデンスは食餌にタイム精油を混ぜたマウスを使った実験です[4]。論文ではリナロールなどの精油成分の関与も示唆されているものの、ポリフェノールやフラボノイドなどの働きがある可能性も考慮されています。

タイム精油の効果についてはさらなる研究が必要と結論付けられていますし、日本では精油の飲用・食用は禁じられています。芳香吸引による何らかの“効果”は「自分にとってどう感じられるか」以上のものは求めないようにしましょう。タイム精油は抗菌・抗ウィルス作用なども期待されている精油ですので、香りが心地よいものであれば仕事や勉強などの香りに取り入れてみても良いかもしれません。

肉体面への作用と効果

風邪・喉の不調に

タイムの精油はフレッシュハーブとしてイメージするタイムよりも濃厚な香りで、人によっては薬品臭い・鼻にツンと刺さるようなと表現される事もあります。このタイムのスパイシーさを含んだハーバル調の香りを形成しており、特徴成分と言えるのがチモール(Thymol)やカルバクロール(carvacrol)というフェノール類。この2つの成分は抗菌活性・抗真菌活性・抗ウイルス活性が多く報告されており[5]、空気を清潔に保ったり、感染症の予防に役立つのではないかと期待されています。

タイムは伝統的に呼吸器トラブルのケアに利用されてきた歴史があるハーブ。特徴成分のチモールは鎮痙効果(筋肉収縮を和らげ、痙攣を抑える働き)や、抗炎症作用、免疫調節作用を持つ可能性が示唆されています[6]。去痰剤としてタイム抽出物が使われていること、優れた抗菌・抗ウィルス作用があること合わせて、現代でも風邪気味で喉に不快感がある時、咳や気管支炎のケアに使用する方もいらっしゃいます。

そのほか期待される作用

料理用に利用されている多くのハーブと同様に、タイムも健胃・食欲増進など消化器系への働きかけを持つと考えられています。筋弛緩作用やストレスを和らげる働きも合わせて、胃腸の調子が良くない時にも用いられますが、こちらも芳香吸引だけでどの程度の働きがあるかは未解明。タイムというハーブ全体で考えれば、チモールとカルバクロールによる抗菌作用や抗寄生虫作用なども、今よりも衛生状態が悪い時代には一役買っていたのでしょう。

また、体内のプロゲステロンレベルを上昇させる働きがあり、キャリアオイルで希釈してマッサージに使うとPMSや月経の症状緩和に役立つという説もあります[3]。そのほか血管収縮を和らげ、血液循環を活性化することで血行促進・血行不良性の痛み・こわばりの緩和に良い、などの説もあります。ただし、根拠や有効性については不明瞭な部分が多く、伝統医療・民間療法上の“効能”からきているもの多いので過信は禁物。

その他に期待される作用

皮膚利用に関して

コモンタイムの精油は皮膚刺激性が高いため、スキンケアなどに利用されることはあまりありません。しかし消毒作用や強い抗菌・抗真菌作用を持つと考えられることから、虫刺されのケア、水虫など真菌性の皮膚トラブルに対して有効と考えられています。

ただし、敏感肌の方の場合はきちんと希釈して利用した場合でも、皮膚を刺激してしまい炎症を起こす原因となる危険性もあります。肌に使用する場合は少量ずつ、パッチテストと併用して取り入れるようにしましょう。肌への使用を考えている場合はタイム・リナロールなどを選んだほうが無難です。

虫よけとして

タイム精油は蚊、ノミ、トコジラミ、蛾などを遠ざける目的で、手作りの虫よけ剤としても使われています[3]。ただしタイム精油は刺激性がある精油とされていますし、アレルギー性接触皮膚炎の原因ともなります。高濃度で多量に振りかけるような使用は避けましょう。

コモンタイムが利用されるシーンまとめ

【精神面】

  • ストレスを感じている時に
  • 精神的な疲労感に
  • 集中力を高めたい時に
  • やる気を高めたい時に
  • 前向きになりたい時に

【肉体面】

  • 喉の不快感・咳の軽減に
  • お部屋の空気浄化に
  • PMSや生理痛の緩和ケアに
  • 食欲不振・消化不良気味の時に
  • 天然成分の虫よけとして

タイム(コモンタイム/ホワイトタイム)の利用と注意点について

相性の良い香り

ハーブ系の香りと相性が良いです。コモンタイムはタイム系精油の中でもスパイシーさを強く感じさせる香りですから、同系統の香りを持つスパイス系ともブレンドしやすいでしょう。
香りの濃厚さ・クセが気になる場合は柑橘系の香りと組み合わせると中和されます。

コモンタイムのブレンド例

コモンタイム精油の注意点

  • 妊娠中・授乳中の方、お子さんへの使用はできません。
  • 皮膚を刺激する可能性があるため、敏感肌の方は使用に注意が必要です。
  • 刺激・作用が強い精油です。使用量や濃度に注意しましょう。
  • 疾患がある方・投薬治療中の方は医師に確認してから利用して下さい。
  • アロマテラピーは医療ではありません。効果や効能は心身の不調改善を保証するものではありませんのでご了承ください。
  • 当サイトに掲載している情報は各種検定とは一切関わりがありません。

参考元