【アロマ】スターアニス精油
-植物の特徴・期待される効果効能とは?

【アロマ】スターアニス精油<br />-植物の特徴・期待される効果効能とは?

女性領域でも期待されるが、使用量注意

漢方シロップや中華料理を連想させる、甘くスパイシーな香りが特徴のスターアニス。欧米ではアニスやフェンネルの代用品として使われるスパイスでもあり、香りの成分も同じくトランスアネトールが主成分。胃腸や女性領域へのサポート、高い抗菌性が注目されている精油ではありますが、刺激性・毒性が懸念されている精油のため使用には注意が必要。

スターアニス(star-anise)のイメージ画像

スターアニス(八角茴香)とは

スターアニスの特徴・歴史

星のようにも、お花のようにも見える形が特徴的なスターアニス。独特の形状はちょっとオシャレに見えるので、インテリアやスパイス・クリスマスのイメージ写真として目にしたことがある方もいらっしゃいません。スターアニスという呼称は角があり星(スター)のように見えること、甘くスパイシーな香りから欧米ではアニスの代用品のような感覚で使われてきたことが由来です。

そんなスターアニスの原産地は中国南部からベトナム北東部にかけての地域。スターアニスは中国では紀元前から香辛料として、生薬としても活用されてきました。インドの伝統医療であるアーユルヴェーダでも同様に生薬として利用され、また悪を払って幸運を呼び込むという伝承もあったようです[1]。日本へもスターアニスは中国から生薬として伝わり「大茴香(八角茴香)」として利用されてきました。ちなみに、茴香(ウイキョウ)というのはフェンネルのことで、スターアニスとフェンネルは香りも成分組成も近いことが認められています。

日本にも古い時代に伝わっている、と言っても多くの方にとってスターアニスはあまり耳にすることはない呼称ではないでしょうか。スターアニスの標準和名は唐樒(トウシキミ)ですが、中華料理でよく用いられる“八角(ハッカク)”のほうが使われる機会は多いでしょう。八角は中華のミックススパイス「五香粉」にも含まれています。魯肉飯(ルーローハン )のどこか甘いような独特な風味も、八角によるもの。八角を入れるとそれだけで中華料理っぽい風味になりますが、実はマサラチャイやカレーなどインド料理でも使われています。

ところで、私達がスターアニスや八角と呼んでいる星型の部分は果実(袋果)。スターアニスを実らせる植物はモクレン科シキミ属に分類される樹木で、日本の特にお寺などで見かける樒(Illicium anisatum)の近縁種に当たります。このため樒を英名ではジャパニーズスターアニス(Japanese star anise)、中国原産の八角/トウシキミの方を“チャイニーズスターアニス(Chinese star anise)”と呼び分けることもあります。ただし、日本で植えられている樒は有毒物質を含むため摂取は厳禁。

スターアニスの8つの角の内側には、それぞれ丸い形状の種が含まれています。香辛料としては種ごとスターアニスの果実全体を使用することもありますが、種子部分にはほとんど香りがありません。このため香辛料にしろ精油にしろ、種子をきちんと避けて製造するかどうかで品質に差が生じるそう。果実を蒸留して製造される精油も、スパイスとしての八角とほぼ同じ印象、漢方シロップのような独特の甘くスパイシーな香り。方向はが強く独特なため好き嫌いは別れますが、オリエンタルで甘めの印象を作りたい時などに役立ちますよ。欧米ではお酒の香り付けのほか、歯磨き粉など口腔ケア用品に配合されることも多いのだとか。

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スターアニスの精油について

スターアニスは、数ある精油の中でも刺激が強い部類です。
主成分であるアネトールとメチルカビコールは毒性があり、過度の使用は循環系と呼吸器系に悪影響を与えることも報告されています。また、麻酔作用や神経系の損傷を引き起こす危険性も指摘されているため、使用を避けるべき精油に数えている書籍やWebサイトもあります[2]。スターアニスのエッセンシャルオイルは取り扱っていない、というショップも珍しくありません。

その反面、スターアニスは生薬として中医学やアーユルヴェーダで使われてきた存在でもあります。現代でも伝統医療的な効能のように、芳香成分によって人体にプラスの働きをするという見解もあります[3]。

日本では、精油は医薬品ではなく雑貨品であるため普通に購入でき、良くも悪くも個人の判断で好きに使うことが出来てしまう存在。香りを楽しむために購入した場合であっても、使用が難しい精油として扱われていることを念頭に置き、高濃度・長時間利用を避けるなど注意して利用するようにして下さい。

香料原料データ

通称
スターアニス(Star Anise)
別名
大茴香油(ダイウイキョウ油)、八角茴香(ハッカクウイキョウ)、唐樒(トウシキミ)、スターアニシード(Star Aniseed)、チャイニーズスターアニス(Chinese star anise)、チャクラフール(Chakra Phool)など
学名
Illicium verum
科名/種類
マツブサ科シキミ属/常緑高木
主産地
中国、ベトナム、インドシナ半島、イタリア
抽出部位
果実
抽出方法
水蒸気蒸留法
ほぼ無色~クリーム色
ノート
トップ~ミドルノート
香り度合い
強い
精油成分
trans-アネトール、エストラゴール、メチルカビコール、シネオール、リモネン、リナロールなど
おすすめ
芳香

アニスに似た甘さとスパイシーさがある、鋭くも温かみのある香り

スターアニス精油に期待される働き・効能

精神面への作用と効果

スターアニスのエッセンシャルオイルは、伝統医療の中でヒステリーやてんかんなどの症状を抑えるための鎮静剤として利用されてきました[3]。これはスターアニス精油が鎮静作用と麻酔作用を持つと考えられていたため。同様の理由から、アロマテラピーほか民間療法の中では抑うつ、不安、ストレス、怒り、不眠など“気持ちを落ち着ける”ことで軽減できる諸不調の緩和に取り入れられてきた歴史があります。

ただし、スターアニスの鎮静作用や麻酔作用は、高濃度で使用した場合に発揮されるという見解もあります。スターアニスの精油は低濃度で使用した場合は刺激作用を有し、覚醒や強壮状態に導くと考えられています[2]。鎮静作用が期待出来るほどスターアニスの精油を高濃度で使用してしまうと、しびれや呼吸困難等の副作用を起こしてしまう危険性もあるため、主に低濃度=刺激・覚醒サイドで使用されています[2]。

とはいえ、こうしたスターアニスの働きについて研究はほどんど行われていません。有効性も未知数ですので、過度な期待は避けましょう。スターアニスの甘くスパイシーな香りがお好きであれば、ブレンドオイルなどに使用して精神的な疲労感や無気力感がある時に香らせてみると良いかもしれません。毒性が懸念される精油ですから、特にスターアニスを使いたい理由がない場合は、リラックス用ならラベンダー、リフレッシュ用ならレモンなど安全性の高い精油の使用がおすすめです。

肉体面への作用と効果

スターアニスの、漢方シロップを連想させるような独特の甘い香りの主成分はトランス-アネトールというフェノール類。このトランス-アネトールは胃腸機能の働きを助け、消化を促す可能性が示されている成分。2021年に発表された動物実験では食事にトランス-アネトールを加えると平均飼料摂取量が増加し、濃度が高いほど代謝可能エネルギー(AMEn)や総消化管消化率の上昇が見られたことが報告されています[4]。

人間もスターアニスを消化促進効果のあるスパイスとして活用してきた歴史があります。中華料理で八角が使われているのも、胃腸を整えて胃もたれを予防する意味もあるようです。摂取するのではなく、スターアニス精油の芳香を吸引した場合の有効性は分かっていませんが、スターアニス精油には同じく消化機能を助けるリモネンなどの精油成分も含まれています。このため、胃腸機能の働きを助け、消化不調、鼓腸(腸のガスが溜まりお腹が張った状態)や便秘の軽減に取り入れられています。

また、トランス-アネトールは抗菌・抗ウィルス効果を持つことが報告されています[5]。胃腸機能を整える働きからも免疫力の向上につながることから、合わせて風邪などの感染予防にも効果が期待できるでしょう。トランスアネトール、リモネンなどの成分は抗炎症性を持つ可能性も示唆されていることから、民間療法では咳や気管支炎・鼻詰まりなどなど呼吸器系の[6]。ケアにも利用されています。スターアニスの精油は少量で使えば覚醒作用によって循環を促進し、体の強壮やバランスを整えるという説もあります[2]。

女性の身体への働きかけも

スターアニスの精油成分のうち90%前後を占めているトランス-アネトールは、人間の女性ホルモンと似た働きを持つと考えられている植物性エストロゲンの一つでもあります[6]。実際に人体に対して、特に芳香吸引やマッサージに精油を使用した場合における有効性は分かっていませんが、スターアニスも伝統医療の中で同じくトランスアネトールを含むフェンネルやアニスとともに母乳分泌促進や月経トラブルのケアに利用されてきました。

スターアニスは現在、毒性の関係から妊娠中・授乳中の使用は控えるべき精油に数えられています。女性ホルモンのバランス整える働きを持つ可能性があること、循環を促進する働きや抗炎症作用が期待できることから、アロマテラピーや民間療法では月経痛や月経不順・月経前症候群(PMS)・更年期障害などの緩和に取り入れられることもあります[3]。

ただし、スターアニスは強力かつ毒性が懸念される精油。多量・長時間の使用は神経系を刺激しすぎたり循環を鈍らせる可能性があるとも言われています。同じくトランス-アネトールを含み、女性領域でのサポートが期待されている精油の中で、比較的作用が穏やかとされるフェンネル・スイート(フェンネルシード)を用いるようにした方が無難と言えるでしょう。

その他に期待される作用

皮膚利用について

スターアニス精油の主成分であるトランス-アネトールはフェノール類に分類される成分。優れた抗菌・抗真菌特性が報告されている成分ではありますが、皮膚刺激性の高さも指摘されています。鎮痙作用や抗炎症作用も期待できることから筋肉や関節の痛みケアに良いとする声もありますが[3]その有効性や刺激性については分かっていません。

想定される有用性よりも皮膚に炎症を起こしてしまう可能性が高いことから、スターアニス精油をマッサージやスキンケアに使用することはほとんどありません。バスアロマとして使用される場合もありますが、お湯に直接混ぜてしまうと刺激になる可能性がありますから、皮膚が弱い方であれば小皿などに数滴落として浴室の隅に置いておく方が無難でしょう。

スターアニスが利用されるシーンまとめ

【精神面】

  • ストレス
  • だるさ・疲労感
  • やる気が起きない
  • 気持ちが落ち込んでいる
  • 前向きになりたい時に
  • イライラ・落ち着かない

【肉体面】

  • 食欲不振・胃もたれ
  • 消化不良・下痢・吐き気
  • 便秘・お腹の張り・腹痛
  • 風邪予防に
  • 生理痛の緩和に
  • PMS・更年期障害ケア

スターアニスの利用と注意点について

相性の良い香り

スターアニスは強力な精油とされ、一般的には使用されにくい精油です。ブレンド用にアクセントとして利用する程度での使用が無難ではあります。組み合わせる香りの系統としてはスパイス系・樹木系との相性が良く、甘い香りが好きな方であればバニラ・フェンネルローズなどと組み合わせるのも良いでしょう。香りが強いので、どの精油とブレンドする場合でも、ごく少量を加えるのがおすすめです。

スターアニスのブレンド例

スターアニス精油の注意点

  • 大量・長時間の使用は危険なため避けましょう。
  • 妊娠中の方、小さいお子さんへの使用はできません。
  • 授乳中の場合は自己判断での使用を避けましょう。
  • 皮膚を刺激する可能性があるため、敏感肌の方は使用に注意が必要です。
  • 疾患がある方・投薬治療中の方は医師に確認してから利用して下さい。
  • アロマテラピーは医療ではありません。効果や効能は心身の不調改善を保証するものではありませんのでご了承ください。
  • 当サイトに掲載している情報は各種検定とは一切関わりがありません。

参考元