筋肉痛や関節痛のケアにも期待
料理様スパイスとしてもお馴染みのナツメグ。歯医者さんを連想するような薬っぽいスパイシーさと甘さが入り混じった香りが特徴的です。香りの印象通りに気分を高める手助けが期待されているほか、消化機能サポートやリウマチなどの痛み軽減、女性領域の不調の軽減など幅広いメリットが期待されています。ただし向精神作用を持つと考えられているミリスチンなどを含み、多量の使用では中毒症状を起こす危険性もあるので注意が必要。
Contents
ナツメグとは
ナツメグの特徴・歴史
ハンバーグを作る時に使うスパイスとして知られているナツメグ。甘さのある香りが特徴的なため、肉・ひき肉系の料理をはじめ、コンポートやクッキーなど様々なお菓子類の香り付けとしても用いられています。ナツメグという呼び名も“Nut(豆)”と“meg(ムスク)”を組み合わせたものが語源であると言われており、甘くローストしたような、どことなくムスク(麝香)系の雰囲気を漂わせていると表現されることもありますね。その特徴的な香りから精油を含めるとリキュール類の香り付け・歯科用材料・化粧品・ヘアローションなど様々なところで使われている存在でもあります。
料理用スパイスは粉末状で販売されているものが一般的ですが、ホールのナツメグは丸みの強いアーモンドのような形状をしています。ナツメグが採れるのはニクズク科ニクズク属の熱帯性常緑樹で、私達が普段ナツメグと呼んで利用しているのは種子の中にある“仁”と呼ばれる部分で、種子を網目状に包んでいる赤色の仮種皮は「メース」と呼ばれる香辛料として利用されています。メースもナツメグも似た風味を持つ香辛料ですが、メースのほうが若干風味が穏やかで繊細、収穫量も少ないためナツメグよりも少し高価となっています。ちなみにナツメグやメースが入っている果実は黄色くスモモやアンズに似た外見で、青果として食べられることっことないもののジャムやジュースなどに使われているそうですよ。
ナツメグの原産地は東インド諸島・モルッカ諸島(マルク諸島)とされており、現在は西インド諸島やインド・スリランカなどでも栽培されています。西洋東洋ともに古くから利用されていた香辛料と言われますが、いつ頃からナツメグが大陸の人々に使われていたかは分かっていません。記録としてはアラブやベルシアで10~11世紀・ヨーロッパでは12世紀以降に登場しますが、古代エジプトの副葬品の中にナツメグが発見されておりミイラを作る際の防腐剤として利用されていたと考えられています。またローマでもクローブ・ジュニパー・ミルラ(没薬)などとナツメグを合わせた薫香を魔除けとして焚かれていたという説があるようですし、インド伝統医学であるアーユルヴェーダでも古くから生薬の一つとして腸の不調などに処方されていたと伝えられています。
ナツメグはアーユルヴェーダ以外に、中医学においても“肉荳蔲(ニクズク)”という生薬として胃腸の不調や気管支炎などに利用されています。ともあれ中世にはユーラシア大陸の広範囲で重宝される香辛料の一つであったと考えられますし、大航海時代には胡椒などと共に各国が狙ったスパイスの一つでもあります。ちなみにナツメグはニクズクの木の播種後7年くらいで採取が可能になると言われています。植物としては成長の遅い部類ですが、採油率は高く11kgのナツメグから1kg程度の精油を蒸留することが出来るそう。
ナツメグ精油は安価な部類に入りますが、刺激が強く多量・長期間の使用は健康に対しての悪影響を与える可能性があることが指摘されています。香辛料としても大量摂取が危険なことが知られていますが、この中毒症状を起こす原因と考えられているミリスチシンという成分は精油にも含まれています。このため精油も同様に使用量に注意して利用すべき存在と言えます。様々な働きが期待されている精油でもありますが、短期間の使用向きです。
香料原料データ
- 通称
- ナツメグ(Nutmeg)
- 別名
- 肉荳蔲(ニクズク)、ミュスカード(muscade)、ナッツメッグ、ナットメグ
- 学名
- Myristica fragrans
- 科名/種類
- ニクズク科ニクズク属/常緑高木
- 主産地
- インドネシア、スリランカなど
- 抽出部位
- 種子(仁)
- 抽出方法
- 水蒸気蒸留法
- 色
- 淡黄色~薄オリーブ色
- ノート
- トップノート
- 香り度合い
- 強い
- 精油成分
- サビネン、α-ピネン、β-ピネン、ミリスチシン、リモネン、テルピネン4オール
- おすすめ
- 芳香浴・アロマバス・ヘアケア
温かみのある甘さを含んだ、シャープでスパイシーな香り
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ナツメグに期待される働き・効能
精神面への作用と効果
ナツメグ精油は向精神作用や幻覚作用が疑われるミリスチンやエレミシンなどのフェノール化合物を含み、多量に使用すると毒性や刺激性があることが紹介される精油。しかし、ナツメグ精油の主成分はα-ピネン・サビネンを筆頭とするモノテルペン炭化水素類。鎮静作用を持つと考えられている成分が多く含まれていますから、ナツメグの香りも心を落ち着けて穏やかさや安定感を取り戻す手助けが期待されています。また、吐き気や精神障害などの中毒症状が認められているミリスチンについても、ごく少量の摂取であれば気分を高める手助けと考えられています。香り自体もスパイシーで温かみのあるものですから、モチベーションや集中力を上げたい時に香らせるという方もいらっしゃいます。
ナツメグ精油はふんわりとした芳香を楽しむ程度であれば向精神薬もしくは幻覚などの副作用を起こす可能性は低いとされています。しかし成分に対しての反応には個人差もありますし、強い作用を持つ成分であることにも違いありません。常時香らせる香りというよりは、ここ一番の頑張りどころ・緊張感のある会議や発表前などメンタル面での強さが欲しい場面でのサポートに短期間香らせるのをお勧めしたいところ。古くは失神したときの気付け薬としても用いられていたのだとか。鎮静作用もあると紹介されることもありますが、リラックスタイムよりも自分を元気付けたい時に適した精油と言えそうです。
肉体面への作用と効果
ナツメグ精油の主成分であるモノテルペン炭化水素類、特にα-ピネンやリモネンなどは食欲増進作用や消化促進など胃腸機能を促進する働きが見られたことが報告されている成分です。ミリスチンにも消化器系へと作用し消化促進・食欲増進に働きかけるのではないかという説もあります。このためナツメグの精油は消化機能のサポーターとして活用されることがあり、消化不良以外に腹部膨満感・便秘・吐き気などの軽減にも取り入れられています。アーユルヴェーダや漢方ではナツメグを胃腸薬のような形で使用する場合がありますが、こちらも芳香成分による働きの部分が大きいようです。
加えてナツメグに含まれているピネン類・サビネン・テルピネオールなどのモノテルペンは抗炎症作用が報告されており、ナツメグ精油自体も抗炎症作用を持つのではないかと研究されている精油。2016年『Food & Nutrition Research』には炎症性疼痛モデルラットを使った実験で、ナツメグオイルの投与によって抗炎症および鎮痛効果が見られたという実験報告が掲載されています。人間に対しての有効性や潜在的影響については研究数が少なく未知数ですが、リウマチケアなどに伝統的に用いられてきた歴史もあるため鎮痛・抗炎症作用を持つ精油にも数えられています。筋肉痛や関節炎軽減、精神面でのサポートと合わせて心因性の胃痛や腹痛軽減などにも活用されています。
血行不良・女性領域の不調にも
ナツメグは血液の循環を良くして体を温める働きが期待できる精油に数えられ、鎮痛・抗炎症作用が期待できることからむくみや冷え性ケア、リウマチ・関節痛などの軽減に使われることがあります。またα-ピネンなど免疫力向上や抗菌・抗ウィルス作用を持つとされる成分も多いため風邪やインフルエンザの予防にも一役買ってくれる可能性があります。ナツメグの精油は皮膚刺激性が高いため芳香浴としての利用が主となりますが、バスオイルとして利用される場合もあります。肌が弱い方であれば精油を浴槽に入れるのではなく、小皿などに数滴落としてお風呂場の隅・風呂蓋の上などに置く方法もあります。こちらの方法でも敏感肌の方であれば刺激になってしまう可能性があるので注意しながら使用して下さい。
そのほかナツメグには女性ホルモンと似た働きを持つ成分が含まれているという説もあり、ホルモンバランスを整える働きも期待されています。作用秩序や有効性が認められるような十分な研究報告はありませんが、血行促進による冷え軽減・鎮痛作用などと合わせて生理痛やPMS(月経前症候群)の緩和に繋がる可能性もあるでしょう。芳香浴をすると月のリズムを整えて月経不順の軽減に繋がるという説もある反面、分娩促進にもつながってしまう可能性があるため妊娠中の使用は禁忌とされています。女性ホルモン様作用については不明点が多いですが、安全のため妊娠中や授乳中の使用は避けて下さい。
その他に期待される作用
皮膚利用について
ナツメグの精油は殺菌作用や皮脂分泌抑制作用を持つ成分を含んでいることから、オイリーな頭皮や毛髪をさっぱりさせて清潔な状態に保ってくれるとも考えられています。ヘアトニックなどヘアケア用品にも配合されていることがありますが、皮膚刺激性が高い精油のため自作トニックなど自己判断での使用は避けることをおすすめします。同様にキャリアオイルに希釈してマッサージに用いるなど、皮膚に直接付く形でのナツメグ精油の使用もおすすめできません。芳香浴用としてのい利用するのが無難です。
ナツメグが利用されるシーンまとめ
【精神面】
- ストレス・精神疲労
- 気持ちの落ち込み
- 情緒不安定・緊張
- 前向きになりたい
- メンタル面の強さが欲しい
- 自分を元気付けたい
【肉体面】
- 食欲不振・消化不良
- 腹部膨張感・便秘
- 風邪予防・初期症状ケア
- 血行不良・冷え性
- 関節痛・神経痛・筋肉痛
- 生理痛やPMS軽減に
ナツメグ精油の利用と注意点について
相性の良い香り
スパイス系・柑橘系の香りと相性が良い精油です。また軽めの印象があるウッディー系やハーブ系の精油ともブレンドしやすいでしょう。
ナツメグのブレンド例
- 元気になりたい時に⇒シナモン、マートル、ライム
- リフレッシュ用に⇒ブラックペッパー、グレープフルーツ
- 便秘・お腹のハリに⇒オレンジ、マンダリン、プチグレン
- 冷え性サポートに⇒ジンジャー、マジョラム、ターメリック
- 女性特有の不調緩和に⇒メリッサ、ゼラニウム、ローレル
ナツメグ精油の注意点
- 妊娠中・授乳中の方、お子さんがいる場面での使用は避けましょう。
- 持病がある方や医薬品を服用中の方は医師に相談の上利用して下さい。
- 敏感肌の方は芳香浴でも肌に刺激を感じる恐れがあります。
- ナツメグは刺激が強い精油です。大量または高濃度での使用は吐き気、恍惚、幻覚、頻脈、けいれんなどを引き起こす場合がありますので、使用量や使用期間には注意しましょう。
- アロマテラピーは医療ではありません。効果や効能は心身の不調改善を保証するものではありませんのでご了承ください。
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参考元