【アロマ】ネロリ/オレンジブロッサム精油
-植物の特徴・期待される効果効能とは?

【アロマ】ネロリ/オレンジブロッサム精油<br />-植物の特徴・期待される効果効能とは?

「天然の精神安定剤」とも称される

フローラル系ではあるものの、柑橘系のような爽やかさがあるネロリの香り。芳香成分としてはリナロール・酢酸リナリル・リモネンなどが多く含まれ、ストレスケアに効果が期待できることから「天然の精神安定剤」とも称されています。自律神経バランス、更年期障害やPMSなどの女性領域サポートにも期待されています。

ネロリ(neroli)のイメージ画像

ネロリ/オレンジブロッサムとは

ネロリの特徴・歴史

ネロリは柑橘系の香りのようにも、フローラルなようにも感じられる柔らかい香りが特徵。ローズやジャスミンのように濃厚すぎない香りなので、好き嫌いも極端ではありません。このため、スキンケア商品や化粧品の香りとしても、入浴剤や芳香剤としても幅広く使われている存在です。

そんなネロリは、別名“オレンジ・ブロッサム”もしくは“オレンジ・フラワー”とも呼ばれる、オレンジの花もしくは抽出された精油・香料のことを指します。ただし、果物そのままの香りを持つオレンジ精油は私達がオレンジと呼んで食べている甘橙(学名:Citrus sinensis)の果実が原料となっていますが、ネロリの場合はビターオレンジと呼ばれるCitrus aurantiumの花が原料。ビターオレンジは、果実から採油されたオレンジ・ビター、葉や枝からはプチグレン、花からネロリと、部位別に三種類の精油が作られています。

ネロリ(橙の花)は五芒星のように開いた白色5弁の花。この白い花は西洋で古くから“純潔”を象徴するものと考えられ、伝統的に花嫁のブーケや髪飾りに用いられていました。現在もオレンジの花言葉に“純潔”や“花嫁の喜び”などがあるのは、そんな歴史的背景もあるのですね。結婚式に使われる花だったためか「オレンジの花を集める」というのが、花嫁を探すという意味の慣用句に使われた時期もあったのだとか。ともあれ、ネロリは見た目だけではなく香りの良さも人々に愛されてきた存在。12世紀には水蒸気蒸留でネロリの精油を生産するために、スペインのセビリアでビターオレンジの木が栽培されたことも分かっています[1]。

ちなみに、オレンジブロッサムではなく「ネロリ」と花だけを指す言葉ができたのは、スペイン語でオレンジの木を意味する「naranja」が訛ったという説、ビターオレンジの花の精油の香りを愛した王妃の影響だいう説があります。ネロリを語る上で外せないのがイタリアのネロラ公国のアンナ・マリア妃。彼女がビターオレンジの花の香りを自分の革手袋につけていたことから、香りをつけた手袋が「ネロリの手袋」と呼ばれるようになり、ビターオレンジの花の精油そのものがネロリという名前で定着したという逸話もあります。ネロラ公妃は手袋の香り付けだけではなく、香水やバスオイルなどにもネロリ精油をふんだんに利用したそうですよ。

また、“オーデコロン”という言葉は香料の割合を示す分類にも使われていますが、元々は18世紀にドイツのケルンで作り出された「Kölnisch wasser(ケルンの水)」という香水が始まりとされています。この元祖オーデコロンと言える商品も、ネロリとベルガモットの精油が主だったそうですよ。

現在でも甘く優しいフローラル調をベースに、柑橘系の爽やかさ・かすかな苦みが調和した優雅なネロリの香りは多くの方に愛されています。フローラル系特有の濃厚な甘さやパウダリー感が少ないため、フローラル系が苦手な方や男性にも親しみやすい精油と言えますね。香りももちろんですが、香りによる効果が期待できるという面でも評価が高く、アロマテラピー関連の書籍でも必ずと言って良いほど紹介される精油の一つでもあります。

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ネロリとオレンジブロッサムの違い

ネロリは基本的に、ビターオレンジの花を指す言葉として利用されています。
花々やドライハーブなど花そのものを指す場合にはネロリや(ビター)オレンジブロッサム・オレンジフラワーなど好きな呼び方で呼ばれることが多いですが、精油を呼ぶ場合にはネロリと言う場合が多いです。

ネロリの精油は1トンの花から摂れる精油は1kgと採油率が低いうえ、花一つ一つを手で採取するためコストがかかる存在。このためネロリ精油は非常に高価な精油の一つに数えられています。より効率的な溶剤抽出もしくはアンフルラージュでも香料を得ることは出来るので、水蒸気蒸留した“精油”はネロリ、溶剤や油脂を用いて抽出したものはオレンジフラワー(ブロッサム)と呼ぶことで区別する向きもあるのです[1]。

ビターオレンジの花から水蒸気蒸留するネロリの精油は高価で生産量も少ない存在。このためスイートオレンジから取れるポルトガルネロリ、もしくはレモン・マンダリンなど柑橘類の花から採油されたものも「ネロリ」と称しているメーカーもあります。このため、一緒くたにネロリにされてはたまらないと、ビターオレンジを意味するフランス語Bigaradeをつけ“ネロリ・ビガラード”とビターオレンジから採れたことを強調する名称で販売されているメーカーさんもあります。

香料原料データ

通称
ネロリ(Neroli)
別名
オレンジブロッサム(Orange blossom)、ビターオレンジフラワー(bitter orange flower)、ネロリ・ビガラード(Neroli Bigarade)、橙花油(とうかゆ)
学名
Citrus aurantium
科名/種類
ミカン科ミカン属/常緑低木
主産地
フランス、イタリア、チュニジア、モロッコ、エジプト
抽出部位
抽出方法
水蒸気蒸留法
淡黄色~淡褐色
粘性
低~中くらい
ノート
ミドルノート
香り度合い
中~強め
精油成分
リナロール、リモネン、β-ピネン、酢酸リナリル、α-テルピネオール、ゲラニオール、ネロール、ネロリドール、酢酸ネリルなど
おすすめ
芳香浴・アロマバス・マッサージ・スキンケア・ヘアケア

フローラル調の中に柑橘系の爽やかさを含む、優雅で軽やかな香り

ネロリ精油に期待される働き・効能

精神面への作用と効果

ネロリは「天然の精神安定剤」と言われるほど、感情・精神的なサポートに用いられることが多い精油。ネロリの香りを構成する主成分は優れた鎮静・抗不安作用を持つとされるリナロールで、次いで含有量が多いのも鎮静作用が期待されている酢酸リナリル・リモネンなどの成分。アロマテラピーではこれらの成分を含むネロリは強い精神安定作用を発揮すると考えられ、慢性的なストレスや不安の軽減に利用されています。

研究でも、ネロリを含んだブレンドエッセンシャルオイルの吸引によって、被験者の唾液中のコルチゾールレベルが大幅に低下したことが2013年『Evidence-Based Complementary and Alternative Medicine』に掲載されています[2]。民間療法上の効能だけではなく、ネロリ精油はストレス軽減に対して何らかの働きを持つ可能性もあるでしょう。また、陶酔感があり心地よい香りはネロリの香りはセロトニンの分泌を促すとの見解もあり[3]、ストレスや不安などに負けない強いメンタル状態を保つサポートにも使われています。

安眠のサポートにも

ネロリに含まれる酢酸リナリルには交感神経系の興奮を鎮める作用が示唆されていることから、ネロリの香りは不眠症対策としても役立つと考えられています。2013年に『Evidence-Based Complementary and Alternative Medicine』に掲載された韓国乙支大学の研究論文では、ラベンダーローマンカモミール・ネロリの精油をブレンドした香りによって集中治療室の患者の不安レベルが低下し、睡眠の質に向上が見られたことが報告されています[4]。

レポート内では代替療法としての活用には更なる研究が必要だということが指摘されていますが、ネロリはラベンダーなどと共に「子どもに使える安全性の高い精油」とされている存在。セルフケアの一つとして、ちょっと寝付きが悪いと感じる時などに香らせてみても良さそうですね。お子さんの寝付きの悪い時をはじめ、学校・勉強などのストレスで不安定にっている時のケアとしても活用してみても良いかもしれません。

肉体面への作用と効果

ネロリに含まれているリナロールや酢酸リナリルなどは不安や心配を無くして精神状態を安定させる・交感神経系を鎮静させ自律神経のバランスを整える働きが期待されています。こうした働きからネロリは神経・精神面に起因する不調全般の軽減に役立つと考えられています。唾液中のコルチゾール減少が報告されている2012年の研究論文でも、リラクゼーションによる血圧コントロール効果が示唆されています[2]。

アロマテラピーでネロリ精油は血圧だけではなく、吐き気、発汗、動悸、息切れ、頭痛、目眩など精神・神経から起こる不調に対して幅広く利用されています。これもリラックス効果に起因しているのでしょう。

また、動物実験ではネロリ精油は発作やけいれんを軽減するのに役立つ可能性があることも示されています[3]。消化器に働きかけるリモネンも含まれていますから、リラックス効果と合わせて胃痛や腹痛・便秘・下痢・食欲不振など消化機能のサポートにも役立ってくれるでしょう。特にストレスなどによる神経性の消化器トラブルがある方や、過敏性腸症候群の方のケアに用いられることもあります。

女性特有の不調・不安定さにも

リラックス効果に加えて、ネロリには女性ホルモン(エストロゲン作用)があるのではないかと考えられている“ネロール”や“ネロリドール”という成分が含まれています。このためアロマテラピー関連の書籍にもネロリはホルモンバランスを整える精油と記載されていることがあります。しかし「ネロリドールには男性ホルモン用作用がある」という説もありますし、ホルモン様作用自体について否定的な見解も多くあります。エストロゲン増加による月経不順や更年期障害を緩和するという説に対して、過度な期待は避けるべきでしょう。

ただし、ネロリ精油は自律神経のバランスを整える働きがあると考えられていますから、自律神経を整えることでホルモンバランスの乱れを改善することに繋がる可能性はあります。2014年に『Evidence-Based Complementary and Alternative Medicine』に掲載された健康な閉経後女性を対象にした韓国の実験では、5日間1日2回5分間ネロリ精油を吸引することでMENQOL尺度(肉体的、血管運動、心理社会的、性的)の改善や血圧の低下が見られた事が報告されています[5]。

同研究では“血清エストロゲンレベルはネロリオイル治療後に有意に増加しませんでした”と報告されていますが、更年期に起こる不快症状の軽減に役立つ可能性は示唆されています。精神面の働きと合わせて更年期障害に伴う気分の落ち込みや不安・イライラ・涙もろさなど精神面の諸症状緩和用として期待されています。そのほか、イランのシラーズ医科学大学が行った62人の月経前症候群(PMS)の大学生を対象とした臨床試験でも、症状の改善が見られたことが報告されています[6]。

その他に期待される作用

肌への働きかけ

ネロリに含まれている精油成分には抗菌・抗微生物作用や抗炎症作用を持つとされるものが多いため、ニキビ予防に役立つと考えられています。また、皮膚細胞成長促進作用、皮膚を柔らかくさせて弾力を与える働きも期待されており、皮膚のたるみやゴワつきを緩和してくれる精油としてエイジングケアに用いられることもあります。皮膚細胞の成長を促すことはターンオーバーの促進・正常化にも繋がるため、肌のキメを整えたり、シミやニキビ跡などの改善促進用としても効果が期待できるでしょう。そのほか傷跡のケアや妊娠線の予防・解消マッサージ用としても取り入れられています。ストレスによる肌荒れ予防にも効果が期待できるでしょう。

ネロリ精油は比較的肌への刺激が少ないとされていますし、上記の働きのほか保湿作用もあるため、肌タイプを選ばず敏感肌や乾燥肌などにも適した成分と考えられています。柑橘系の植物から抽出されますが、ネロリには光毒性がないのでスキンケア・スキントリートメントへの利用に安心感が高いというのもメリットですね。ただしすべての人に刺激がないというわけではありませんので、肌が弱い方は低低濃度に希釈する・心配な方はフローラルウォーター(芳香蒸留水)を使うなどした方が無難ではあります。

催淫作用について

ネロリも催淫作用がある精油と言われていますが、イランイランジャスミンなどのように男女生殖器の強壮作用を持つとされる成分はほとんど含まれていません。ネロリの場合、催淫作用と言われるのは不安やストレスを鎮める作用が強いので、精神面から起こる性的障害の解消に効果的であることが大部分を占めているようです。香水用としても非常に需要が高い精油ですし、相手を選ばない香りでもありますが、モテる香り(異性が惹かれる香り)だとは思わない方が良いかもしれません。

ネロリが利用されるシーンまとめ

【精神面】

  • ストレスを感じている時に
  • 緊張・精神的な疲れに
  • 不安・プレッシャーを感じる
  • イライラしやすい時に
  • 憂鬱感・気持ちの落ち込みに
  • 情緒不安定だと感じる時に
  • 寝付きが悪いと感じる時に

【肉体面】

  • ストレス性の不調緩和に
  • 神経痛・頭痛の軽減に
  • 胃腸関係のトラブルに
  • PMS・更年期の諸症状緩和に
  • 若々しい肌を保ちたい
  • ニキビ・肌のたるみに
  • 妊娠線のケアに

ネロリの利用と注意点について

相性の良い香り

柑橘系寄りのフローラル調で、ライトな印象のあるネロリはほとんどの香りと問題なく合わせることが出来ます。特に同系統と言えるフローラル系・柑橘系の香りを持つ精油との相性は抜群ですし、甘めの香りであればブレンドすることで全体的な印象を軽くしてくれる存在でもあります。樹脂系やスパイス系でも比率に気をつければマッチしますね。

ネロリのブレンド例

ネロリ精油の注意点

  • 車の運転時など集中力が必要な場面での使用は避けましょう。
  • 人によっては頭痛・吐き気を誘発する可能性があります。
  • 妊娠中・授乳中の方、疾患がある方、投薬治療中の方は医師に確認してから利用して下さい。
  • 皮膚を刺激する可能性があるため、敏感肌の方は使用に注意が必要です。
  • アロマテラピーは医療ではありません。効果や効能は心身の不調改善を保証するものではありませんのでご了承ください。
  • 当サイトに掲載している情報は各種検定とは一切関わりがありません。

参考元