アーユルヴェーダで利用される、聖なるハーブ
ホーリーバジル(トゥルシー)とは
神聖なハーブ・万能のハーブとして紹介されることもあるホーリーバジル。インドの伝統医術アーユルヴェーダで用いられるハーブとしても紹介される事の多い植物ですし、近年はストレスへの抵抗力を高めてくれるアダプトゲンの一つとしても注目されている存在です。料理用ハーブやハーブティーなどで見かけたことのある方もいらっしゃるのではないでしょうか。タイ料理でお馴染みの「ガパオ」というのも、基本的にはホーリーバジルのことを指しています。スイートバジルの代用品として使われることもあるそうですが、日本ではむしろホーリーバジル(ガパオ)の代用品としてスイートバジルを使うことの方が多いかも知れません。
風味以外にアダプトゲンやメディカルハーブとして自然療法派の方を中心に注目されているホーリーバジルですが、植物としてはシソ科のうち学名をOcimum tenuiflorumという種とされています。一般的に料理に使われているバジル(スイートバジル/O.basilicum)とは別種で、紫がかった花をつけること・茎葉に軟毛があることが特徴とされています。茎の色は赤が多いですが緑色のものもあり、葉の色については緑色の「ラクシュミー・トゥルシー 」と、紫色をした「クリシュナ・トゥルシー」の2タイプがあるそうです。
ホーリーバジルの原産地はアジアからオーストラリアにかけての熱帯地域と考えられており、インドを中心に紀元前から大切にされてきたハーブです。アーユルヴェーダでは癒やしのパワーを持つ“不老不死の霊薬”と考えられていた時期もあるそう。またヒンドゥー教においても重要な役割を持つ存在で、神に捧げる聖なる植物・女神の化身として扱われていると言われています。インドでは「ホーリーバジルを植えている家には病気や不幸が入って来られない」「ホーリーバジルの葉を毎日食べると医者いらず」などの言葉もあり、現在でも寺院に植えられているほか、お庭に植えている家庭も少なくないそうです。ヨーロッパでのセージに近い感覚かも知れませんね。
ホーリーバジルは別名トゥルシーとも呼ばれますが、これはホーリーバジルの他にヒンディー語に倣った「Tulsi(トゥルシー)」もしくはサンスクリット語の「Tulasi(トゥラシー)」の音を拾ったもの。この呼び方は“比類なきもの”を意味するそうで、呼び名からも大切にされてきた存在であることがうかがえますね。英名のホーリーバジルという呼称も、インドで神聖な植物として扱われていたことから命名されたと言われています。和名でもバジルをメボウキと呼ぶのに対し、ホーリーバジルはカミメボウキ(神目箒)と呼ばれていますよ。
日本では21世紀に入るまでほとんど知られていないハーブでしたが、近年ホーリーバジルはエスニック料理の調味料・健康食品として注目されるようになっています。そのきっかけはもだま工房さんによると2006年のワールド・ツアーで日本を訪れた“抱きしめる聖人”の聖女アマチが「地球を浄化するために、トゥルシーを世界に広めよう」という活動を行ったことがきっかけだったと言われています。そこからトゥルシーを植えるプロジェクト・普及が進行し、アーユルヴェーダで使われるハーブとしても注目されることになったそう。最近ではこのプロジェクトとは関係なく、使いたいけれど手軽に入手できるものではないため家庭菜園で栽培にチャレンジしている方も少なくないようです。
基本データ
- 通称
- ホーリーバジル(Holy basil)
- 別名
- Sacred Basil(セイクリッドバジル)、Tulsi(トゥルシー/トゥラシー)、ガパオ(Gaprao)、カミメボウキ(神目箒)
- 学名
- Ocimum tenuiflorum
(Syn.Ocimum sanctum) - 科名/種類
- シソ科メボウキ属/多年草(※日本では一年草扱い)
- 主産地
- インド、ネパール
- 抽出部位
- 花、葉
- 抽出方法
- 水蒸気蒸留法
- 色
- 淡黄色~淡黄緑色
- ノート
- トップ~ミドルノート
- 香り度合い
- 強め
- 代表成分
- オイゲノール、β-カリオフィレン、α-フムレン、ゲルマクレンD、リナロール
- おすすめ
- 芳香浴・アロマバス・マッサージ・防虫
ほのかに甘さがある、スパイシーで濃厚なハーバル調の香り
こんなお悩みにオススメ
【精神面】
- ストレス・神経疲労
- 心身共にぐったりしている
- 気持ちを明るくしたい
- 集中力を高めたい
- 心のバランスを整えたい
- 直感力が欲しい
【肉体面】
- 消化不良・吐き気に
- ストレス性胃腸トラブルに
- 歯痛や関節炎などの緩和に
- 冷え・むくみの軽減に
- 風邪・インフルエンザ予防
- 防虫・防カビ剤の代わりに
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ホーリーバジルに期待される効果・効能
心への作用
ホーリーバジルの主成分はオイゲノールで、精油成分全体の半分以上をフェノール類のオイゲノールが占めています。クローブのような香りがすると称されるのもオイゲノール含有量が高いことが大きいでしょう。オイゲノールは鎮痛作用や防虫作用などが紹介されることの多い成分ですが、精神的・肉体的なストレスや疲労感を軽減する働きも期待されています。また脳神経を刺激することで気分を高揚させたり、集中力や記憶力を高める作用があるという説もあります。
こうしたオイゲノールの働きからホーリーバジルの精油は心身をリラックスさせバランスを整えたり、ストレスへの抵抗力を高める働きが期待されています。ストレス性の疲労やぐったり感を感じている方にも適していそうですね。アダプトゲン(ストレスへの抵抗力を高める)ハーブとされるのも、オイゲノールを始めとする精油成分の働きが大きく関係していると考えられています。またアーユルヴェーダでは第六チャクラ(第三の目)を開き直感力を高める・セルフコントロールをサポートするとも言われているそうですよ。
体への作用
ホーリーバジルの主成分であるオイゲノールは心身のストレスを和らげるほか、加温作用や消化促進作用を持つと考えられている成分です。このため消化不良や冷えに起因する腹痛などの胃腸の不調、神経性の胃痛などストレス性のトラブルの緩和効果が期待できるでしょう。オイゲノールは制吐作用や鎮痛作用を持つとも言われていますから、胃腸系トラブル全般に役立ってくれる可能性がありますね。
またオイゲノールには鎮痛作用以外に神経麻痺・局所麻酔作用を持つという説もあり、歯痛・頭痛・関節炎・リウマチなどの痛み軽減にも役立つと考えられえています。体を温めてくれる働きもあるので、特に冷えによって悪化している関節炎・リウマチ・月経痛などの痛みの緩和に効果が期待できるでしょう。発汗促進作用や利尿作用を持ち、むくみや冷え性の軽減・デトックス・肥満予防に良いという説もあるようです。
風邪などの感染症予防にも
オイゲノールは高い抗菌・抗ウイルス作用を持つことや、免疫賦活作用を持つ可能性があることも報告されています。このため体を温める作用(加温作用)との相乗効果で、風邪やインフルエンザを始めとする感染症予防にもホーリーバジルは役立つと考えられています。オイゲノールはそのほか軽度の感染症(バクテリア性大腸炎など)にも有効性が示唆されている成分ですから、インドで「家にホーリーバジルを植えていると病気や不幸が入って来ない」と言われているのもまんざら迷信ではないのかも知れません。
その他作用
皮膚利用について
ホーリーバジル精油はオイゲノールによる抗炎症作用や鎮痛作用が期待できるため、希釈して関節炎やリウマチなどの局所的マッサージに取り入れると良いと言われています。また抗菌・抗真菌作用からニキビ予防や水虫ケアに良いという説もありますが、皮膚感作性がある精油でもあるため使用には注意が必要です。利用する場合は0.5%以内に希釈して、パッチテストを行って下さい。粘膜周りには使用しないようにします。
防虫・防カビ
オイゲノールは抗菌作用だけに加えて抗カビ特性というカビの繁殖を抑える働きもあり、優れた昆虫忌避作用を持つ成分でもあります。このためお部屋やタンスに香らせておくと衣服などを虫やカビ臭さから守ってくれると考えられます。ゴキブリ避けとしての有効性も報告されているので、クローゼットの香りにも適しているでしょう、特に虫や湿度が気になる梅雨時期~夏に良さそうですね。ただしクローブなど他のオイゲノールを含む精油でも同様の作用が期待できますから、あえて流通量の少ないホーリーバジルが使われることはあまりありません。
ホーリーバジルの利用について
相性の良い香り
柑橘系の香りと相性がよく、フローラル系やハーブ系の精油とも比較的よく合います。またバルサム感のあるウッディー系オイルとも組み合わせやすいと言われていますが、そのタイプとブレンドするにしろ香りが強めなので少量ずつ加えるようにすると良いでしょう。
【ホーリーバジルのブレンド例】
- お疲れ時のケアに⇒クラリセージ、ゼラニウム、ローズマリー
- 気持ちを明るく⇒バルサム・ファー、カルダモン、ホーリーフ
- 胃腸の不調軽減用に⇒オレンジ、ブラックペッパー、ジンジャー
- 風邪予防に⇒フランキンセンス、ヒソップ、オレガノ、ライム
ホーリーバジル精油の注意点
- 妊娠中・授乳中の方、小さいお子さんへの使用は出来ません。
- 疾患のある方・医薬品を服用中の方は使用を避けましょう。
- 敏感肌の方の場合は皮膚への刺激となる可能性があります。
- アロマテラピーは医療ではありません。効果や効能は心身の不調改善を保証するものではありませんのでご了承ください。
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