優れた抗菌・抗真菌性について研究されている
イタリアンなどの料理に使用するハーブとしてもお馴染みのオレガノ。精油はハーブよりもドライで刺激的な印象があり、刺激性や毒性が強いことから扱いに注意が必要な存在としても紹介されることがあります。しかし主成分であるカルバクロールやチモールというフェノール類には優れた抗菌作用や抗真菌作用が見られたことが報告されており、天然の抗菌座・抗生物質として活用できるか様々な研究が行われています。
Contents
オレガノとは
オレガノの特徴・歴史
少し苦味を感じるようなスパイシーさが特徴敵でトマトとの相性も非常に良い香辛料、オレガノ。メキシコやラテンアメリカ、トルコ料理など様々な所で使用されているスパイスで、イタリア料理でもお馴染みの存在。アメリカでは「ピザハーブ」として広まったという逸話もあるほどで、特に南イタリアではよく使われているスパイスのひとつなのだとか。精油の場合はハーブとして感じるオレガノの香りよりも更にドライでスパイシーな印象があり、ハーバル感の中にどことなくブラックペッパーに似た雰囲気も感じます。
植物として見るとオレガノはシソ科ハナハッカ属に分類される多年草で、学名はOriganum vulgare。別名ワイルド・マジョラムとも呼ばれるようにマジョラムの近縁種でもあります。オレガノをワイルド・マジョラムと呼ぶ場合には、マジョラムは“スイート・マジョラム”と呼ぶことで区別することもありますよ。また、マジョラムの原産地はキプロスとトルコ南部とされているのに対して、オレガノの原産地はユーラシア大陸南西部・地中海沿岸地域。そのため地中海沿岸に栄えた古代文明でもオレガノは薬草として重宝されてきた歴史があり、古代エジプトではミイラを作る際の防腐剤として使われた・バスハーブとしても人気があったという説もあります。
オレガノの歴史の中で重要視されているのは古代ギリシア。栽培を始めたのは古代ギリシア人であるというのが通説となっており、ギリシアでオレガノは女神アフロディーテによって作られた薬草と信じられていたそう。オレガノという呼び名についてもギリシャ語で山を意味する“oros”と喜びを意味する“ganos”という言葉が語源とされています。オレガノ=山の喜びと紹介されるのはこのためなんですね。古代ギリシアでオレガノはは魂の平穏を祈って墓所に植える植物としても大切にされていたと伝えられていますし、医学の父と呼ばれるヒポクラテスがオレガノを薬用ハーブとして利用したそう。頭痛などに対しての鎮痛剤や消化機能サポートにも古くから活用されていたと考えられていますから、薬用・料理用として、時には宗教でも大切にされていたハーブの一つだと言えますね。
オレガノは古代ギリシアからローマへ、そしてローマの拡大とともにヨーロッパや北アメリカでも栽培・利用されるようになっていきました。古くからハーブ・スパイスとして広く用いられてきた歴史があり、現在はワールドワイドなスパイスとも言えるオレガノですが、実は精油はアロマテラピーの中でポピュラーな存在ではありません。これはオレガノ精油はフェノール類(カルバクロール、チモールなど)の含有性が高く、神経や肝臓に対して負担がかかる恐れがある・皮膚刺激性が高いと考えられるため。アロマテラピー関連の教本では「使用を避けたほうが良い精油」として紹介されていることもあります。
その反面、オレガノ精油は抗菌・抗ウィルス作用や耐性菌に対する有効性が報告され“天然の抗生物質”として注目もされています。ただし前記の通り刺激性が高く毒性が危惧される=扱いが難しいため使用されていなかった経緯のある精油ですから、もしも使用する場合はは希釈濃度や販売元の指導する用法容量・注意事項を順守し、注意して用いるようにしましょう。
香料原料データ
- 通称
- オレガノ(Oregano)
- 別名
- 花薄荷(ハナハッカ)、ワイルド・マジョラム(wild marjoram)、オリガナム(Origanum)
- 学名
- Origanum vulgare
- 科名/種類
- シソ科ハナハッカ属/多年草
- 主産地
- イタリア、スペイン、ロシア、エジプト、モロッコなど
- 抽出部位
- 葉
(花の咲いた先端部分を含むものも) - 抽出方法
- 水蒸気蒸留法
- 色
- 淡黄色~褐色
- 粘性
- 低~中
- ノート
- ベース~ミドルノート
- 香り度合い
- 中くらい
- 精油成分
- カルバクロール、モチール、パラシメン(p-シメン)、y-テルピネン、β-カリオフィレン、α-ピネン、β-ピネン、リナロールなど
- おすすめ
- 芳香浴・アロマバス・マッサージ
(※どれもごく低濃度希釈で使用する)
ドライでスパイシーな印象の、漢方薬を思い浮かべるような香り
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オレガノ精油に期待される働き・効能
精神面への作用と効果
オレガノの精油は精神面・神経機能のサポーターとしての働きを期待して用いられることはほぼ有りません。オレガノのやや苦味のあるスパイシーな香り、微量含まれている成分に期待されている働きから、神経系を刺激して元気さや活力を取り戻す手助けをするのではないかという見解がある程度。神経系を心地よく刺激することで幸福感をもたらす精油として、気分の落ち込みや無気力感・倦怠感があるときに使用されることもあるようです。ストレスや精神疲労を振り払いたい時などに薄っすらと香らせてみても良いかもしれません。
肉体面への作用と効果
オレガノはヨーロッパを中心に、伝統的に健胃・消化促進剤のような感覚で使用されてきたハーブでもあります。このため精油も胃腸機能のサポートに役立つのではないかと考えられ、お腹の調子が良くないときや胃もたれなど消化器系にちょっとした不調がある際に使用されることがあるのだとか。人への有効性については分かっていませんが、動物実験ではオレガノ精油に鎮痛作用が見られたという報告があること・カルバクロールやβ-カリオフィレンには抗炎症作用を持つ可能性が報告されていることから、腹痛や頭痛・生理痛・リウマチ・筋肉痛などの痛み軽減にも効果が期待されています。
ちなみに、オレガノ精油の主成分であるカルバクロールは2002年に“高脂肪食を与えられたマウスの脂肪生成と炎症に関与する遺伝子発現を調節する”という韓国の研究が『The Journal of Nutritional Biochemistry』に掲載されており、肥満予防成分としても注目されている存在。この研究ではカルバクロール添加食事が使用されていますから芳香による有効性は分かっていませんが、研究が進めばオレガノ由来のカルバクロールを配合した機能性食品などが出回るかもしれませんね。とは言え、日本で一般的に流通している精油は飲用NG・雑貨扱いのものですから、ダイエット目的で経口摂取はしないようにしましょう。
風邪などの感染症予防にも
使用が難しいとされているオレガノ精油が高く評価され、注目されるようになった理由としては優れた抗菌・抗ウイルスが報告されているという事が挙げられます。オレガノがハーブとして活用されてきた理由としても、カルバクロールやチモールによって寄生虫や食中毒を防いでくれるという側面があったからではないかという見解もあるほど。研究でも2016年の『Frontiers in Microbiology』にはオレガノエッセンシャルオイルが黄色ブドウ球菌と表皮ブドウ球菌を筆頭とした、多剤耐性株を含む試験したすべての細菌株の増殖を阻害したことが掲載されています。こうした報告は他にもあることから、オレガノ精油の蒸気吸引によって風邪や気管支炎などの呼吸器感染症に役立つのではないかと考えられています。
加えてカルバクロールには抗酸化作用によって白血球活性増作用=免疫力向上効果が期待できること、オレガノ精油全体としては去痰作用や抗炎症作用を持つと考えられることから、咳や喉の痛みなど呼吸器系の不調にも効果が期待されています。ただしオレガノ精油は入手しにくい存在ですし、刺激の強さ・毒性も気になる精油。成分的に見た場合は近縁種であるマージョラムよりもタイムの方がオレガノとの共通点が多いため、刺激性や毒性が気になる場合はタイムやタイム・リナロールを使用してみるという方法もあります。
その他に期待される作用
肌への働きかけ
オレガノ精油に含まれているフェノール類(カルバクロールやチロール)は優れた抗菌・抗真菌・抗ウィルス作用を持つ可能性が報告されている成分。このためニキビや水虫(白癬)・脂漏性湿疹などの真菌性皮膚炎症の予防にも役立つのではないかと期待されています。ブラジルで行われたインビトロ(in vitro)実験ではオレガノ精油が5種類のカンジダ種に対して効果的でだったことが報告されており、オレガノ精油がカンジダ症の治療のための優れた代替品となる可能性を示唆した報告もあります。
またチモールとカルバクロールは強力な抗酸化物質として働くことも認められており、抗酸化作用によるアンチエイジング効果なども期待されています。しかし、オレガノは皮膚刺激性が高く、皮膚や粘膜に炎症を起こす危険性が指摘されている精油でもあります。抗炎症作用を持つという見解もありますが、オレガノ精油自体が炎症誘発物質にもなり得る存在。自己判断での使用は危険な精油の一つでもありますから、どうしても使用したい場合は必ず低濃度希釈に希釈して皮膚の厚い部分からパッチテストを行ってから利用するようにしましょう。敏感肌・アレルギーのあるの方は利用を避けることをお勧めします。
オレガノが利用されるシーンまとめ
【精神面】
- ストレス・神経疲労
- 無気力・倦怠感
- リフレッシュしたい
- 前向きになりたい
- 精神面を強くしたい
【肉体面】
- 風邪・インフルエンザ予防
- 呼吸器系の不調緩和に
- 消化器系のサポートに
- ニキビ・皮膚感染症予防に
- 水虫・カンジダ対策に
オレガノの利用と注意点について
相性の良い香り
似た印象のある、ハーブ系もしくはスパイス系の香りとブレンドしやすい精油です。ライトな印象のある柑橘系や樹木系の香りとも組み合わせやすいでしょう。
オレガノのブレンド例
オレガノ精油の注意点
- 妊娠中・授乳中の方、お子様への使用は出来ません。
- 持病のある方・医薬品を服用中の方は医師に確認の上利用して下さい。
- 刺激が強い精油のため低濃度に希釈して、短時間のみ使用するようにしましょう。
- 皮膚・粘膜に炎症を起こす危険性があります。アレルギーを起こす可能性も指摘されていますから、特にシソ科植物にアレルギーのある方は使用を避けましょう。
- アロマテラピーは医療ではありません。効果や効能は心身の不調改善を保証するものではありませんのでご了承ください。
- 当サイトに掲載している情報は各種検定とは一切関わりがありません。
参考元