蚊よけアロマとしても期待
レモンユーカリとも呼ばれるように、ユーカリと言われて想像する香りとはニュアンスの異なるレモン様の香り持つユーカリ・シトリオドラ。印象としてはシトロネラなどレモン感を持ったハーバル系の香りです。成分でもグロブルスやラディアータとは異なり1,8-シネオールをほとんど含んでいないことが特徴。主成分であるシトロネラールは蚊が嫌う香りであることから虫除けに用いられているほか、呼吸器ケアにも効果が期待されています。
Contents
ユーカリ・シトリオドラ(レモンユーカリ)とは
ユーカリ・シトリオドラの特徴
ユーカリと言えば鼻に抜けるような、人によってはメンタームなどを連想させるような薬品っぽさのある香りが特徴。…ではありますが、ユーカリと付く精油の中には一般的に想像する“ユーカリらしさ”をあまり感じさせないものもあります。ユーカリ・シトリオドラもその一つで、別名レモンユーカリとも呼ばれるようにレモン+カンファーとでも言うべき柑橘感のある香りが特徴です。種子名のシトリオドラも「レモンの(citri)香り(odora)」が由来なんですよ。薬臭さが弱く柑橘系のような爽やかな印象の香りのため、ユーカリ・シトリオドラは石鹸や洗剤、香水の原料など様々な芳香商品にも用いられています。
ユーカリという呼び名は植物分類でフトモモ科ユーカリ属(Eucalyptus)に分類される樹木の総称として使われています。属名の“ユーカリプタス”を短縮して言いやすい形にした言葉がユーカリなんです。ユーカリ属の樹木は約500種類、変種も含めると1000近くと非常に多くの種類が存在します。その中で一般的に単に「ユーカリ」と言った場合に想像される、メンタームなど薬品系の清涼感ある香りはユーカリ・グロブルス(Eucalyptus globulus)であることが大半。精油としては次いで流通量の多いユーカリ・ラディアータ(Eucalyptus radiata)はもう少し柔らかくフルーティーな印象がありますが、ユーカリ特有の清涼感も感じられるので「ユーカリ」と聞いて思い浮かべる香りから大きく外れるほどではありません。
ユーカリ・シトリオドラはユーカリっぽさの薄いレモン様の香りを持つだけではなく、植物としても少し異色の存在。精油メーカーさんの記載としては学名Eucalyptus citriodoraとユーカリ属の樹木の一つとして扱われることが多いですが、植物分類ではCorymbia citriodoraと同じフトモモ科ではありますがコリンビア属に含めるほうが一般的になっているそうです。芳香成分としてもシトロネラールやシトロネロールが主成分で、ユーカリの代表成分とも言われる1,8-シネオール(ユーカリプトール)の含有量はかなり少なめ。このため鼻の奥まで通るようなカンファー感が薄く、レモンやシトロネラなどとブレンドしたような印象の香りとなっています。
ユーカリ系精油の種類について
ユーカリと呼ばれる樹木は500以上、香料源として使用されているものだけでも片手で数え切れないくらいにユーカリは種類が豊富。そんなユーカリ系精油の中でも最も生産・流通量が多いのがユーカリ・グロブルス(Eucalyptus globulus)で、アロマテラピーで単に「ユーカリ」や「ブルーガム」と呼ぶ場合もグロブルス種を指すのが一般的。カンファー感とも表現される染み入るような強い清涼感+スパイシーさのある香りを持つユーカリがこちらですね。
精油としてユーカリ・グロブルスに次いで良く用いられているのがユーカリ・ラディアータ(Eucalyptus radiata)という種類。別名ブラックペパーミントなどとも呼ばれていますが、香りはグロブルスよりも柔らかく、柑橘系っぽさを含んだフルーティーな印象。香りだけではなく作用も穏やかであると考えられていることから、お子様やお年寄りがいる場合、ルームフレグランスを兼ねて香らせたい場合などにも適しています。
この二種類が流通しているユーカリ精油の大半を締めていますが、レモン系の柑橘系っぽさが強いレモンユーカリ(ユーカリ・シトリオドラ/Eucalyptus citriodora)であったり、消臭剤としても使われるユーカリペパーミント(ユーカリ・ディベス/Eucalyptus dives)などの精油販売されているお店もあります。レモンユーカリはシトロネラールやシトロネロールが主成分ですし、ユーカリ・ディベスは主成分がピぺリトンとα-フェランドレンで呼び名の通りミント系のシャッキリとした印象があります。
そのほかα-ピネン含有量が高いユーカリブルー(ユーカリ・ビコスタータ/Eucalyptus bicostata)、レモンシロップの様な香りがあり作用が穏やかなハニーレモンユーカリ(ユーカリ・スタイゲリアナ/Eucalyptus staigeriana)、ユーカリ・スミシーなどの精油も流通しています。最も流通量の多いグロブルスとラディアータの2種については成分や特性が似ていますが、同じ「ユーカリ」であっても全く成分が異なるものもあります。それぞれ禁忌・注意などが異なりますので購入時は学名を確認するようにした方が良いでしょう。
香料原料データ
- 通称
- ユーカリ・シトリオドラ(Eucalyptus citriodora)
- 別名
- ユーカリプタス・シトリオドラ、レモンユーカリ(Lemon Eucalyptus)、レモンセンティッドガム(lemon-scented gum)
- 学名
- Corymbia citriodora
(syn.Eucalyptus citriodora) - 科名/種類
- フトモモ科コリンビア属(ユーカリ属)/高木
- 主産地
- オーストラリア、ブラジル、中国、マダガスカル
- 抽出部位
- 葉、小枝
- 抽出方法
- 水蒸気蒸留法
- 色
- 無色~淡黄色
- 粘性
- 低い
- ノート
- トップ~ミドルノート
- 香り度合い
- 中くらい
- 精油成分
- シトロネラール、シトロネロール、イソプレゴール、1,8-シネオール、ゲラニオール、リナロールなど
- おすすめ
- 芳香浴・マッサージ・スキンケア・ヘアケア・防虫
レモンに似た印象のある、ハーバル感の強い香り
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ユーカリ・シトリオドラに期待される働き・効能
肉体面への作用と効果
レモンユーカリ(ユーカリ・シトリオドラ)の主成分はテルペン系アルデヒド類に分類されるシトロネラールで、含有率は50~80%程度。次いで含有率が高いのはモノテルペンアルコール類のシトロネロールで、グロブルス種やラディアータ種に多く含まれる1,8シネオールはほとんど含まれていません。成分的に見れば全く別タイプの精油であるとも言えます。ただしシトロネラールとシトロネロールも抗菌・抗真菌・抗ウィルス作用があると考えられている成分のため、レモンユーカリも空気浄化や風邪・インフルエンザ予防に役立つと考えられています。
またシトロネラールは抗炎症作用や局所鎮痛作用に優れた成分であるという説がありますし、レモンユーカリは伝統的に幅広い痛みの緩和に使用されてきたそう。ラットを使った実験でも抗炎症性と鎮痛性が見られたという報告がなされていることもあり、キャリアオイルで希釈するなどして塗布することで筋肉痛・腱鞘炎・神経痛・関節痛・リウマチなどの“痛み”緩和にも用いられています。抗炎症作用を持つとされる精油であることから、風邪に伴う発熱や咳などの症状緩和、花粉症・鼻詰まりなどの緩和にも期待されていますよ。
このためレモンユーカリも他のユーカリ類とほぼ同様の用途に用いられています。ただしグロブルス種やラディアータ種と比較すると実験報告の数が少ないですし、グロブルスに報告された働きをレモンユーカリの効能として紹介されているサイトも見受けられます。日本で精油は効能が認められた医薬品として販売されているわけではありませんし、働きについても根拠・データ数が少ないものが大半。心地よい香りを楽しみながら、+αのメリットが期待出来るかもしれない程度に考えておくことをお勧めします。
精神面への作用と効果
呼び名の由来ともなっているようにレモンユーカリ(ユーカリ・シトリオドラ)はレモンもしくは柑橘系を連想させるような、フルーティーかつ爽やかな芳香があります。知らずに香りだけを嗅いだ場合には「ユーカリ」だと感じるよりも、シトロネラのようなレモンっぽさのあるハーブを連想される方もいらっしゃると思います。スッキリとした印象の香りはリフレッシュ用としても活用できますが、シトロネラールには鎮静作用が、シトロネロールには鎮静作用と抗不安作用が期待されています。
このためレモンユーカリの香りは精神が昂ぶっている・イライラしているときなどに気持ちを落ち着ける手助けをしてくれるのではないかと考えられています。有効性についての根拠は少ないですが、ユーカリ類の中ではリラックスタイムに向いた精油として扱われています。ストレスや緊張などによって疲労を感じている時、不安になったり気持ちが落ち込んでいる時に適した精油と表現されることもありますよ。抗菌作用なども期待できますから、リラックスタイムに心のサポートを兼ねて香らせてみても良いでしょう。
その他に期待される作用
肌への使用について
レモンユーカリ(ユーカリ・シトリオドラ)は抗菌・抗真菌作用や抗炎症作用を持つ成分を含んでいることから、ニキビ予防や虫刺されのケア、カンジダや水虫(白癬菌)・脂漏性皮膚炎(マラセチア菌)などの真菌性皮膚炎症のケアに役立つと考えられています。
レモンユーカリは1,8シネオールを含まないことからユーカリ系精油の中では皮膚刺激が低い部類とする説もありますが、シトロネラール(テルペン系アルデヒド類)も皮膚感感作性が強いことが指摘されています。いわば皮膚刺激性のある成分が多い精油ですから、炎症を起こしている部位への使用・敏感肌への使用などは逆に炎症を起こす原因となってしまう危険性もあります。マッサージに使用するにせよ、スキンケアに使用するにせよ、使用には注意が必要な精油であることに違いありません。
虫除け・消臭用としても
レモンユーカリが他のユーカリ系精油よりも優れている働きとして、昆虫忌避性、特に“蚊よけ”としての働きが挙げられます。昆虫忌避性の高い精油としてはシトロネラ精油が挙げられますが、シトロネラの有効成分として主なものもシトロネラール。製品によっても差異はありますがレモンユーカリのシトロネラール含有率は多いものでは80%と、シトロネラの2倍近い量となっています。このため虫除け・蚊よけとしてはレモンユーカリの方が強い効果を発揮してくれると考えられており、化学製品よりも安全性の高いマラリアやデング熱予防策としても注目されています。
ただしシトロネラールは皮膚感感作性が強いことから肌に直接スプレーするような使い方には適していません。シトロネラールやシトロネラールは菌類の繁殖を抑えることで悪臭を抑える働きも期待されていますし、レモンユーカリは消臭作用のある精油にも数えられている存在。香りも柑橘系のニュアンスがあり人を選びませんから、お部屋の芳香剤兼虫除けとして香らせたり、カーテンなどにスプレーするなどして利用してみてください。
レモンユーカリが利用されるシーンまとめ
【精神面】
- ストレス・緊張
- イライラ・興奮
- 不安・落ち込み
- リラックスしたい
- リフレッシュしたい
- 集中力を高めたい
- 気持ちを落ち着けたい
【肉体面】
- 喉・鼻の不快感に
- 風邪予防や初期症状ケアに
- 筋肉痛・肩こりの緩和に
- リウマチ・神経痛・関節痛に
- 水虫予防・虫刺されに
- 蚊よけアロマとして
- お部屋の消臭剤として
ユーカリ・シトリオドラの利用と注意点について
相性の良い香り
ユーカリ・シトリオドラはレモンユーカリという別名の通り、レモンのような爽やかな香りが特徴。このため香りによるカテゴライズとして、書籍や販売社によって樹木系ではなく柑橘系精油に分類されていることもあります。ニュアンスの似たハーブ系・樹木系・柑橘系とのブレンドは失敗する危険性が低いです。と言ってもクセのない香りですので相手を選びにくく、重くなりがちなエキゾチック系の香りなどともブレンドしやすいですよ。
ユーカリ・シトリオドラのブレンド例
- リラックス用に⇒ラベンダー、クラリーセージ、マジョラム
- 集中力が欲しい時に⇒ペパーミント、ジンジャー、ニアウリ
- 筋肉痛や神経痛のケアに⇒ブラックペッパー、ラバンジン
- 虫除けアロマに⇒クスノキ、ヒノキ、ゼラニウム、パイン
ユーカリ・シトリオドラ精油の注意点
- 妊娠中・授乳中の方、小さいお子さんへの使用は避けましょう。
- 皮膚刺激がある精油のため、芳香浴の場合でも濃度に注意しましょう。
- 人により、拡散すると目のかゆみを感じることがあることも報告されています。
- アロマテラピーは医療ではありません。効果や効能は心身の不調改善を保証するものではありませんのでご了承ください。
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参考元