1,8-シネオールの含有率が高い
ラヴィンサラは“ラベンサラ”と混同されがちな精油ですが、原料となる植物はマダガスカルに生えているクスノキ。ホーリーフと同じくクスノキのケモタイプ精油であり、学名をCinnamomum camphoraBS 1,8-cineoleと表示されるように1,8-シネオールを多く含むことが特徴です。このため優れた抗菌・抗ウィルス作用が期待されており、風邪が気になる時期のサポーターとしても注目されています。
Contents
ラヴィンサラ(Cinnamomum camphora)とは
ラヴィンサラの特徴・歴史
ティツリーやユーカリのような優れた抗菌・抗ウィルス性を持つ精油として注目されているラヴィンサラ。マダガスカルを代表する精油の一つであり、ユーカリに似たツンと染み入るような清涼感が特徴的です。精油名としてはラヴィンサラもしくはラヴィンツァラという呼称がよく使われていますが、実はそういった名前の植物があるわけではありません。ラヴィンサラの学名はCinnamomum camphora、植物分類上は日本でも見かけるクスノキ(カンファーウッド)の一種として扱われています。とは言え、樟脳の元ともなるカンファーの含有量が高いクスノキの香りとラヴィンサラの香りは別物。これはマダガスカルに生育するCinnamomum camphoraは精油成分の組成が異なり、1,8-シネオールが多く含まれているためです。
ラベンサラやラヴィンサラという呼称は、18世紀にマダガスカルの植物を調査していたフランスの植物学者がマダガスカルの言葉“Ravina(葉)”と“tsara(良い)”を組み合わせて作ったもの。明らかにカンファーツリーとは香りが異なるため呼称もカンファーウッドct.シネオールではなく“ラヴィンサラ(Ravintsara)”が採用されたのだと推測されています。しかし、同じくマダガスカル産のクスノキ科樹木の葉を原料とした精油にはラヴィンサラがあり、ラベンサラとラヴィンサラは長らく混同されてきたという歴史もあります。更に日本では“Ravintsara”をラヴィンサラもしくはラヴィンツァラとカタカナ書きにするので、ますます分かりにくいですよね。ラベンサラは学名でラベンサラ・アロマティカ、ラヴィンサラはカンファーウッドct.シネオールなどにしてくれると分かりやすいように感じます。
ラベンサラ精油には「強力なウイルス予防薬」という評価がありますが、成分的に見ると1,8-シネオールが豊富なラヴィンサラのことではないか=混同されていたためラベンサラと言われていたのではないかという見解もあります。ちなみに、ラヴィンサラと同じくC. camphoraのケモタイプ精油としては、台湾や中国南部に分布しリナロールを豊富に含むホーリーフ(芳樟)もあります。そのほかC. camphora自体にはボルネオール型とイソボルネオール型もあり計5つのタイプに分けられており、生育環境や土壌によって異なった香りや特性を持つと考えられています。シネオールタイプであるラヴィンサラはカンファーなどのケトン類をほとんど含まないという特徴もありクスノキのケモタイプの中では穏やかな精油と称されています。作用の穏やかさについては諸説ありますが、少なくともラベンサラやカンファーよりは扱いやすいでしょう。
ラヴィンサラとラベンサラの違いについて
ラヴィンサラと名前が似ているラべンサラという精油があります。この2つはどちらもマダガスカルが原産の芳香を持つ樹木を原料としており、呼び名が似通っていることもあって消費者だけではなく生産者・市場の中でも混同され続けてきた歴史がある精油。ラベンサラとラヴィンサラは同じものであるという誤った紹介もなされるほど混乱を極めていました。近年「ラベンサラ」として市場に出回っていた多くの精油が成分的に見て「ラヴィンサラ」であったことが発覚し、学名や商品名の訂正が行われつつありますが統一されたとは言えない状態が続いています。販売者側から出される商品名や学名などの情報を完全に信用できるかというと微妙なところ。
混同されがちな2つの植物ですが、植物分類では
- ラベンサラ(Ravensara)
→学名:Ravensara aromatica - ラヴィンサラ(Ravintsara)
→学名:Cinnamomum camphora
と同じクスノキ科には分類されつつも、属名からして違う離れた存在です。
販売されている精油が本当に表記通りのものかを見極めたい場合は、香りを確かめるか成分表を見るのが確実です。ラヴィンサラは1,8-シネオールが多いクスノキのケモタイプ精油ですから、当然1,8-シネオールが多くなりユーカリなどに近い清涼感ある樹木系の香りがします。対してラベンサラは柑橘系の香りを持つリモネン・スパイシーな芳香を持つサビネンの含有率が高く、甘めのフルティー&スパイシーな印象です。この2つは芳香も精油成分も大きく異なることから、人体に対して期待できるメリットも異なると考えられます。どちらも風邪などの感染症予防効果が期待されているほか、ラヴィンサラは花粉症などの軽減に、ラベンサラは精神面のサポートに強い可能性が高いと考えられます。
また、ラヴィンサラはメチルチャビコール(エストラゴール)などの毒性が懸念される成分が含まれていることが分かってきており、安全性という面ではラヴィンサラ/マダガスカル・カンファーウッドの方が高いと考えられています。オキシド類に分類される1,8-cineoleも皮膚刺激性がありますし、ラヴィンサラ精油としても妊娠中や授乳中・子どもに対しての安全性については分かっていません。ラベンサラとラヴィンサラは混同されてきたこともあり、有効性や安全性については分かっていないことが多い存在。謳われている効能を鵜呑みにせず、十分に注意して使用することが必要です。
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香料原料データ
- 通称
- ラヴィンサラ(Ravintsara)
- 別名
- ラヴィンツァラ、マダガスカル・カンファーウッド(Madagascar camphorwood)など
- 学名
- Cinnamomum camphora
※区別のためCinnamomum camphoraBS 1,8-cineoleとも - 科名/種類
- クスノキ科ニッケイ属/常緑高木
- 主産地
- マダガスカル
- 抽出部位
- 葉、枝
- 抽出方法
- 水蒸気蒸留法
- 色
- >ほぼ無色~淡黄色
- ノート
- トップノート
- 香り度合い
- 中~やや強め
- 精油成分
- 1,8-シネオール、α-テルピネオール、サビネン、α-ピネン、β-ピネン、テルピネン4オールなど
- おすすめ
- 芳香浴・アロマバス・マッサージ・ハウスキーピング・防虫
ユーカリに似た清涼感を持つウッディーな香り
ラヴィンサラに期待される働き・効能
精神面への作用と効果
ラヴィンサラは成分的に見ると1,8-シネオール(1,8-cineole)というオキシド類を多く含んでいることが特徴。1,8-シネオールは別名“ユーカリプトール”とも呼ばれるようにユーカリに多く含まれている成分でもあるため、ラヴィンサラの精油もクスノキ油よりはユーカリに近い印象の香りとなっています。ラヴィンサラに含まれている1,8-シネオールの比率は精油成分全体のうち概ね50~60%程度で、それ以外にはサビネンやα-ピネンなどのモノテルペン炭化水素類の比率が多くなっています。
ラヴィンサラの主成分と言える1,8-シネオールは抗ウィルス作用や抗炎症作用が注目され多くの研究が行われている成分ですが、ヒト試験で抗不安作用を持つ可能性も示唆されています。2014年『Evidence-Based Complementary and Alternative Medicine』に発表されたランダム化比較試験では1,8-シネオールの吸引が不安の低減に効果的だったことが示されています。α-ピネンも鎮静作用や強壮作用が期待されている成分のため、合わせてストレスや不安の軽減に役立つのではないかと期待されています。
自然療法の中でラヴィンサラの精油はストレスや緊張・不安などで疲れている心身両面に活力を与え、気分が落ち込んでいる状態から前向きになるための手助けをしてくれる精油とも称されています。ラヴィンサラはラベンサラ精油と混同されていた期間が長いためこうした経験的効能についても混同が疑われますし、ラヴィンサラ精油を使用した有効性の評価試験もありません。作用や働きについては分かっていない部分が大半ですが、心身のこわばりをほぐす働きが期待されているのでリラックスタイムに香らせてみても良いかもしれません。
肉体面への作用と効果
ラヴィンサラの主成分である1,8-シネオールは優れた抗菌・抗ウイルス作用を持つと考えられている成分。2019年6月の『Molecules』に発表された精油の抗菌性についてのレビューでは、1,8-シネオールやユーカリ精油にはウイルス・細菌・酵母・糸状菌に対する抗菌活性が報告されいること・インフルエンザウィルスに対しての阻害活性を示したとの報告もあることが紹介されています。こうした評価試験に使用されているのは1,8-シネオールもしくは1,8-シネオールの含有率が70%以上のユーカリ精油ですから、ラヴィンサラの精油組成とは異なります。ユーカリ精油と同等以上の効果が得られるかは定かではありませんが、作用成分と考えられる1,8-シネオールを含んでいることからラヴィンサラも風邪やインフルエンザなどの感染症予防に役立つ可能性があります。
また、1,8-シネオールは抗炎症作用や免疫調整作用が期待されている成分でもあります。このことから免疫機能の低下が気になる時のサポートや花粉症・アレルギー性鼻炎の緩和、喘息・気管支炎・咳など呼吸器系の不調ケアにも役立つのではないかと考えられています。抗炎症作用のほかラヴィンサラには筋肉のこわばりをほぐしリラックスさせる働きがあると信じされていることから、筋肉痛や肩凝り・関節リウマチの緩和にも用いられています。とは言え、1,8-シネオールの炎症誘発性サイトカインのレベル低下・気管支炎や喘息改善への有効性を示唆した報告の多くが蒸気吸引ではなく投与によるもののため、芳香浴でどの程度作用するかは分かっていません。ラヴィンサラの精油についても研究は行われていませんので過度な期待は避けましょう。
その他に期待される作用
皮膚利用について
ラヴィンサラの精油は皮膚刺激性や安全性についての十分な評価がなく、利用者も少ないことからスキンケア目的での利用は基本的になされていません。成分的に見ると高い抗菌作用・抗真菌作用・抗ウィルス作用を持つと考えられる1,8-シネオールが含まれていることから、ニキビ予防や水虫・カンジダなどの皮膚感染症予防に役立つのではないかという見解もあります。そのほかた傷口からの感染症を予防する目的で使用されることもあるようですが、有効性が認められているものではありませんから医薬品の使用をお勧めします。
ラヴィンサラが利用されるシーンまとめ
【精神面】
- ストレス・神経性疲労
- 緊張・心身の強張り
- 不安・気持ちの落ち込み
- 自信喪失・無気力
- 前向きさが欲しい時に
- 気持ちを整えたい時に
【肉体面】
- 風邪・インフルエンザ予防に
- 気管支炎の予防に
- 花粉症・咳呼吸器系の不調に
- 関節痛・リウマチの軽減に
- 筋肉痛や肩こりのケアに
- (水虫・ニキビ予防に)
ラヴィンサラの利用と注意点について
相性の良い香り
やや薬っぽい清涼感が強い程度で香りに極端なクセのないラヴィンサラの精油は、較的どの系統の香りともブレンドしやすい存在です。特に同系統、爽やかな印象があるハーブ系や樹木系の香りであれば違和感なくマッチするでしょう。
ラヴィンサラのブレンド例
- 風邪予防に⇒フランキンセンス、レモン、ヒソップ
- 花粉症対策に⇒ペパーミント、ホーリーフ、コパイバ
- 関節痛などのケアに⇒ラバンジン、ウィンターグリーン
- 気持ちを整える⇒ラベンダー、ベルガモット、パイン
- 前向きになりたい⇒クラリセージ、ローレル、オレンジ
ラヴィンサラ精油の注意点
- 妊娠中・授乳中の方、小さいお子さんへの使用は避けましょう。
- 疾患がある方・投薬治療中の方は医師に確認してから利用して下さい。
- 皮膚刺激性があるため敏感肌の方は注意が必要です。
- アロマテラピーは医療ではありません。効果や効能は心身の不調改善を保証するものではありませんのでご了承ください。
- 当サイトに掲載している情報は各種検定とは一切関わりがありません。
参考元