ウッディー調の香りは男性にも人気♪
ややドライな印象の香りが特徴のシダーウッド・アトラス。ソロモン王の神殿の建材に使われていたという伝説もあるほど古くから人々に親しまれてきた樹木で、心を深く落ち着けてくれる香りとして宗教儀礼などの中でも活用されてきました。近年は“セドロール”という成分が鎮静作用や睡眠の質を高める働きを持つ可能性があることも報告されています。男性に人気のある香りですが、鬱滞除去作用など女性に嬉しい働きも期待されていますよ。
Contents
シダーウッド・アトラスとは
シダーウッド・アトラス(ホワイトシダー)の特徴・歴史
くっきりとしたウッディー調の中に、甘さや樟脳のような刺激を含んだ香りが特徴のシダーウッド・アトラス。「サンダルウッドをライトにした」ような香りとも称される、ドライで微かに甘い木の香りは男性にも人気があります。精油は男性用化粧品や香料・香水などに使用されていることもあり、男性的なイメージを持つ方も珍しくありません。しかし全体的にスッキリとした印象のある香りですので、女性ももちろん香りを楽しんだり身にまとうことが出来ますよ。個人的には男っぽいというより、爽やかなユニセックス系と表現したほうが的確な気がします。
原料となるシダーウッド・アトラスは、呼び名の通りモロッコからアルジェリアにまたがるアトラス山脈が原産の樹木。日本では“アトラス杉”とも呼ばれていますが、杉=ヒノキ科スギ属ではなく、マツ科ヒマラヤスギ属(Cedrus)に分類されています。分類上近い植物としてはシダーウッド・ヒマラヤン(ヒマラヤ杉)や、『旧約聖書』でソロモン王が神殿を建てるのに使った記されているレバノン杉などがあります。シダーウッド・アトラスはレバノン杉の亜種という見解もあり、ソロモン王の神殿の建材に使われていたのもシダーウッド・アトラスだったのではないかという説もありますよ。
ソロモン王の伝説を除いたとしても、シダーウッド・アトラスは古代エジプト時代から使用されてきたとされる、歴史ある香料の一つ。古代エジプトではミイラを作る際の防腐剤として、また化粧品や香水用としてもシダーウッド・アトラスが利用されてきたと考えられています。古代ギリシャとローマでは書物の保存に利用され、宗教儀礼の際の薫香としても使われていたようです。ちなみにシダーウッドのシダー(Cedrus)も「霊的なパワー」を意味するセム語が語源だと考えられています。
宗教的にも実用的にも古くから使用されてきたアトラスシダーですが、近年は自然個体数が著しいことも報告されている絶滅危惧種。日本ではあまり触れられることはないものの、欧米ではローズウッドなどと同じく絶滅危惧種を保護するため精油の使用を控えるべきという見解も多くなってきているようです。Kelly M. Ablard博士はシダーウッド・アトラスの代替えに同属の“バージニア・シダーウッド”を提案していますよ。
シダーウッド系精油の種類について
シダーウッドという呼び名は直訳すれば「マツ科ヒマラヤスギ属(Cedrus)」の木。本ページで紹介しているシダーウッド・アトラスや、シダーウッド・ヒマラヤンなどの樹木が該当します。しかしシダーウッドという言葉は別属の針葉樹の呼称としても広く使われており、アロマ辞典・販売店などには沢山の“シダーウッド・XX”と命名された精油が数多く存在しています。
ヒマラヤスギ属に属さない植物として代表的なのが、ヒノキ科ビャクシン(Juniperus)属のシダーウッド・バージニア。シダーウッド・アトラスを“ホワイトシダー”と呼ぶのに対して、シダーウッド・バージニアは“レッドシダー”と対になるような別称がありますが別科の植物が原料。同じくヒノキ科ビャクシン属に分類される精油にはシダーウッド・テキサスもありますね。どちらも植物分類として見ればシダーウッド・バージニア(ホワイトシダー)よりもジュニパーに、抽出部位も考えるとヒノキに近い存在です。また、日本のスギも分類上はヒノキ科スギ(Cryptomeria)属ですが“ジャパニーズ・シダーウッド”と呼ばれることがありますよ。
同じ“シダーウッド”が付いてはるものの、これらは植物としては別物。同属のものであれば比較的香りの印象は近いという説もありますが、それでも香りも含有成分・比率は異なっています。精油としては単に「シダーウッド」と呼ぶ場合は、最もポピュラーで利用しやすいとされるシダーウッド・アトラスの事を指すのが一般的ではあります。しかし個体数の減少の影響などもありシダーウッド=アトラスシダーとして続いていくのかは定かではありません。購入時には大きく書いてある商品名だけではなく、学名や香りを確認して納得できるものを選んで下さい。
香料原料データ
- 通称
- シダーウッド・アトラス(Atlas Cedarwood)
- 別名
- ホワイトシダーウッド(white cedarwood)、アトラス杉、アトラスシダー、アトラスシーダーなど
- 学名
- Cedrus atlantica
(Cedrus libani var. atlantica) - 科名/種類
- マツ科ヒマラヤスギ属/常緑高木
- 主産地
- モロッコ、アルジェリア、フランスなど
- 抽出部位
- 木部(心材)
- 抽出方法
- 水蒸気蒸留法
- 色
- 黄色~赤茶色
- 粘性
- やや有り
- ノート
- ペースノート
- 香り度合い
- 弱~中
- 代表成分
- β-ヒマカレン、α-ヒマカレン、γ-ヒマカレン、α-セドレン、セドロール、アトラントン、カジネン、セドレンなど
- おすすめ
- 芳香浴・アロマバス・マッサージ・スキンケア・ヘアケア
ドライ寄りのウッディー調の中に、甘さ・スパイシーさを含む香り
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シダーウッド・アトラスに期待される働き・効能
精神面への作用と効果
シダーウッドアトラス(ホワイトシダー)は心を深く落ち着けてくれる香りとして、古くから宗教儀礼などでも用いられてきました。現在でも鎮静作用を持つ精油として神経性の緊張やストレスなどが気になる時に利用されていますし、不安に苛まれている時にも立ち直る手助けが期待できます。ゆったりとした気分でリラックスできる香りですから睡眠用のアロマにも適しているでしょう。
またシダーウッド・アトラスの香りは鎮静作用によって気持ちを落ち着けるだけではなく、散漫とした意識を落ち着けて集中をサポートしてくれるという見解もあります。意識を強く持って自分の決意や目標を見極めたい時にもサポートが期待できますし、ヨガや瞑想をする時のサポートに使われる機会の多い精油でもありますよ。不安やショック状態、疎外感や孤独感などを感じている時に香らせてみても良いかもしれません。
安眠サポートにも期待
シワーウッドに含まれているセドロールという成分は、自律神経系に作用する可能性を持つと注目されている成分でもあります。花王株式会社ヘルスケア第2研究所が行った実験ではセドロールの香りを嗅ぐことによって心拍数・呼吸数・血圧の低下が見られたことが報告されています。セドロールは芳香成分ではありますが感知できないほどに香りは弱いものの、香りを“感じない”場合でも鎮静作用を発揮したのだそうです。
また嗅ぐことで脳波のα波の増加が見られたこと、寝付くまでの時間の短縮や、睡眠の質の向上効果が見られたとの報告もあり、鎮静作用を持つ成分として注目されている存在。セドロールが自律神経系に作用することで心身ともにリラックス状態になるよう促し、気持ちを落ち着けるだけではなく、寝付きを良くしたり、睡眠の質を高めてくれるのではないかと期待されていますよ。
肉体面への作用と効果
成分的に見るとシダーウッド・アトラスはβ-ヒマカレンを筆頭としたヒマカレン(セスキテルペン炭化水素)類が多く含まれていることが特徴。ヒマカレン類やα-セドレンなどにはリンパや静脈の強壮作用・鬱滞除去作用が期待されています。体液の循環を整える働きが期待できることからむくみ軽減に利用されているほか、アトラントン(ケトン類)を含むことから脂肪溶解を促す働きが期待できる精油としてセルライトケア用のマッサージオイルに使われることもあります。筋肉の緊張を緩める働きもあり、動物実験では局所的に使用すると筋肉痛や関節痛の軽減効果を持つ可能性が報告されていますよ。
またシダーウッド・アトラスの精油は抗菌・消毒作用や去痰作用を持つと考えられることから、呼吸器系の不調緩和や風邪予防に役立つと考えられています。鼻の鬱血を軽減する事から鼻詰まりの緩和に良いという説もあります。シダーウッドは利尿作用を持つ精油の一つにも数えられており、抗菌・消毒作用から膀胱炎や尿道炎など泌尿器系の感染症予防としても注目されています。
その他に期待される作用
肌への働きかけ
シダーウッドの精油はスキンケアに対して様々な働きが期待されている精油でもあります。皮膚への働きとしては抗菌・抗真菌作用に加えて収斂作用と皮脂泌調節作用があると考えられています。このため脂性肌やニキビケアに役立つ精油とされており、真菌が原因とされる脂漏性皮膚炎やマラセチア毛包炎・白癬(水虫など)予防にも使用されることがあります。
そのほか収斂作用によって皮膚を引き締めてくれることから、肌のたるみやシワ予防などエイジングケアにも用いられることがありますよ。水分の蒸発を抑えて潤いを保持し肌を柔らかい状態に保ってくれるエリモント効果も期待されていますし、頭皮や髪の脂っぽさの改善・フケ防止にも利用されています。
シダーウッド・アトラスが利用されるシーンまとめ
【精神面】
- 緊張・ストレス
- 精神疲労・不安
- 落ち着かない時に
- 寝付きが悪い・眠りが浅い
- リラックスしたい時に
- 疎外感・孤独感を感じる
【肉体面】
- 風邪予防・初期症状ケア
- 喉・鼻の不快感に
- むくみ・セルライトに
- 脂性肌・ニキビ予防に
- お肌のエイジングケアに
- フケ・抜け毛予防に
シダーウッド・アトラスの利用と注意点について
相性の良い香り
甘さがあるものの、ややシャープな印象のシダーウッド・アトラス。ブレンド相性としてはハーブ系・オリエンタル系の香りと組み合わせやすいですが、柑橘系ともよく合います。香りの系統を問わずブレンドしやすい部類の精油と言えるでしょう。
シダーウッド・アトラスのブレンド例
- 心のバランスに⇒パルマローザ、カモミール、イランイラン
- 心を強く持ちたい⇒クラリーセージ、ローズマリー、ヤロウ
- セルライトケアに⇒サンダルウッド、ジュニパー、サイプレス
- 肌のケアに⇒フランキンセンス、ネロリ、ベチバー、パチョリ
シダーウッド・アトラス精油の注意点
- 妊娠中・授乳中は使用を避けましょう。
- てんかん・持病がある方は使用を避けましょう。
- 高濃度で使用した場合は肌を刺激する場合があります。
- アロマテラピーは医療ではありません。効果や効能は心身の不調改善を保証するものではありませんのでご了承ください。
- 当サイトに掲載している情報は各種検定とは一切関わりがありません。
参考元
- Atlas Cedar Oil Benefits and Uses
- Atlas Cedarwood Essential Oil: Get grounded in the midst of change
- セドロールという奇異なる香り
- 幸せを呼ぶアロマ×カラーセラピー(マイナビ文庫/色映みほ著)