花粉症軽減にも注目されている
ニアウリはティーツリーと似た働きを持ち、香りと作用が穏やかなと評されている精油。原産地であるオーストラリアやニューカレドニアでは古くから伝統療法の中でも使用されてきたハーブでもあり、樹木の分布とマラリアなどの罹患率に注目する方もいらっしゃるそう。精油はティーツリーと同じく呼吸器系のサポートに優れていると考えられており、風邪・インフルエンザ予防や花粉症軽減アロマとしても取り入れる方も。
Contents
ニアウリとは
ニアウリの特徴・歴史
ティーツリーと似た働きをもち、かつ穏やかであることが注目されるニアウリ。旅行先として人気の「天国に一番近い島」と称されるニューカレドニアが原産地の一つであることから、精油や石鹸・入浴剤・バームなどをお土産として購入される方も少なくないのだとか。ティーツリーと同じくすーっと染み透るようなイメージの香りではありますが、軽く甘さも感じられることでライトな印象があるのも人気の秘訣かもしれません。香料として以外に花は蜜源植物としても使われており、ニアウリの蜂蜜も販売されていますね。
植物としてもニアウリはフトモモ科メラレウカ属(Melaleuca)に分類されるティートリーの近縁種と言えます。同じメラレウカ属にはカユプテやマヌカ、ラベンダーティートリーなど、香料源として使われている樹木が多く含まれていますね。別名として“Paperbark(ペーパーバーク)”もしくは“Broad-leaved paperbark(広い葉のペーパーバーク)”と呼ばれることもありますが、これは特徴とされている白樺のよう樹皮が何層にも重なっているためで、古くは紙や包帯代わりとして使われていたこともあるそうですよ。ちなみに反対の“Narrow-leaved paperbark(細い葉のペーパーバーク)”というのはティーツリーのことを指します。
また原産地とされるオーストラリアやニューカレドニアなどではニアウリが古くから伝統医学・自然医療の中で用いられていたと伝えられています。万能薬と呼ばれることもあるほど民間薬の中ではポピュラーな存在だそうですから、日本で言うヨモギやドクダミのような感覚だったのかもしれませんね。葉は現在で言う風邪やインフルエンザなどの感染症やそれに伴う炎症に用いられていたと言われていますし、水の防腐剤として井戸などに葉を入れることもあったそう。現在でもニアウリの葉に殺菌作用があることが報告されており、「ニアウリの木がある地域は空気が清浄なためインフルエンザやマラリアの蔓延が少ないのでは」「ニューカレドニアでマラリアが無いのはニアウリが生えているからでは」という説もありますよ。
イギリスの海洋探検家ジェームズ・クック(キャプテン・クック)によってニアウリは発見・命名されたと言われており、ヨーロッパへと紹介されると防腐・消毒・鎮痛効果などをもつハーブとして注目されるようになります。ちなみにニアウリの別名には“ゴメノール(gomenol)”というものもありますが、これはフランスに占領されていたインドのゴメン周辺で精油を抽出し、ゴメン港から船に載せて出荷されていたことが由来。かつては殺菌消毒効果が高いとしてフランスの病院で空気感染予防としても使われていたそうですよ。現在は自然療法の中で扱われることがほとんどですが、ニアウリはティートリーよりも香りは強いものの、刺激が弱く穏やかに作用するためお子様にも使用できる精油としても支持されているようです。また優れた抗菌・抗真菌効果や刺激の少なさからデリケートゾーン用のケア商品に配合されることもあります。
ニアウリ精油の種類について
ニアウリは生育環境によって成分比率が大きく異なります。このためニアウリ精油にも芳香成分や香りの異なる“ケモタイプ”が存在しており、大きくは「シネオールタイプ」と「ネロリドールタイプ」の2つに分けられています。このうち一般的にニアウリ精油として扱われているのはモノテルペノイド・オキサイド類のシネオール(1.8-シネオール)を多く含むシネオールタイプの方。
対してネロリドールタイプはセスキテルペンのネロリドールを多く含んでおり、より柔らかい印象の香りが特徴です。ネロリドールは草と花を混ぜた生花・ブーケのような香り物質とも称されていますし、シネオールの含有量が少ない=清涼感が少なくなるので、何となく華やかな印象になるというわけですね。こちらのほうが女性に好まれそうな香りであるとも言えますが、ネロリドールには男性ホルモンと似た作用があるという指摘があります。ただしネロリドールには女性ホルモン様作用があると書かれているサイトもありますし、男性ホルモンと類似する成分は存在しないという見解も多く、実際の働きかけについては分かっていません。
ともあれネロリドール含有率の高いニアウリ精油を使用すると、一部の女性は過剰反応を起こしたという臨床報告があることからポピュラーな精油としては使われていないということですね。このためニアウリとしか表記されていない精油を買う場合には念のため成分を確認することが推奨されています。ただしニアウリの精油は偽和も多いことが指摘されていますから、香りを楽しむ方であれば気に入った香りのものを、抗菌や消毒効果を期待する方・体のことが気になる方であれば信頼できるメーカーのものを購入することをおすすめします。
香料原料データ
- 通称
- ニアウリ・シネオール(Niaouli ct.cineol)
- 別名
- ゴメノール(gomenol)、ブロードリーフ・ペーパーバーク(Broad-leaved paperbark)
- 学名
- Melaleuca quinquenervia
Melaleuca viridiflora - 科名/種類
- フトモモ科メラレウカ属(コバノブラシノキ属)/常緑樹
- 主産地
- ニューカレドニア、オーストラリア、マダガスカル、タスマニアなど
- 抽出部位
- 葉、小枝
- 抽出方法
- 水蒸気蒸留法
- 色
- 無色~淡い黄緑色
- 粘性
- 低い
- ノート
- ミドルノート
- 香り度合い
- 中~強め
- 精油成分
- 1,8-シネオール、α-ピネン、リモネン、α-テルピネオール、ビリディフロロールなど
- おすすめ
- 芳香浴・アロマバス・マッサージ・スキンケア・ヘアケア・ハウスキーピング
ユーカリに似たクリアなカンファー感の中に、軽い甘さを含む香り
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ニアウリ・シネオールに期待される働き・効能
精神面への作用と効果
すーっと鼻が通るような感覚になる、さっぱりとした香りのニアウリ精油はリフレッシュ用として利用されています。また頭をスッキリとさせることで意識をはっきりさせて、集中力を高める効果が期待できるとも言われていますよ。製品によっても差はあるものの、精油成分のうち45%~60%程度を占めている1,8-シネオール(別名:ユーカリプトール)も集中力や記憶力を高める働きが期待されている成分。ニアウリの実験ではありませんが、2014年の日本感性工学会論文誌に掲載された論文でも芳香が脳活動に何らかの影響を与える可能性があることが認められています。記憶力がアップするとは言い難いのが現状ですが、クリアな香りでもありますからリフレッシュしたい時や仕事中の芳香として利用してみても良いでしょう。思考が散漫でぼんやりしている時にも適しています。
またニアウリ(ct.cineol)精油の主成分は1,8-シネオールですが、精油成分としてはα-ピネンやリモネンなども含まれています。刺激作用がある精油として紹介されることが多いですが、落ち込んでいるとき・嫌なことが頭から離れない時などのサポートとしても役立ってくれる可能性があると言えます、刺激作用のある精油と称されることもありますから、心を強く持ちたい時や何かに失敗してしまった時・壁にぶつかって気力が萎えてしまった時など、自分を立て直したいという意味でのリフレッシュやリセットにも用いられることがあります。心に元気と活力を与えてくれるかもしれません。ただし、やる気を出したり集中したいシーンには合いますが、就寝前のリラックスタイムに利用すると寝つけない可能性があるという声もあります。
肉体面への作用と効果
ニアウリの精油はかつてフランスの病院で殺菌消毒剤として使われていたと紹介されるように、現在でもニアウリは風邪をはじめとした呼吸器系の不調に効果が期待されている精油です。主成分の1.8-シネオールはユーカリの代表成分でもあり殺菌・抗菌・抗ウィルス作用が高いと考えられていますし、α-ピネンやリモネン抗菌作用が期待できる成分を多く含んでいることから風邪やインフルエンザだけではなく、膀胱炎ほか泌尿器系の感染症などに効果的という説もあります。感染症全般に使われる精油の一つでもありますね。
また1.8-シネオールやα-テルピネオールは抗炎症作用や抗アレルギー作用が期待されている成分でもあります。こうした成分の相乗効果が期待できるとして鼻炎・喘息・気管支炎・喉の痛みなど呼吸器系の不調全般に用いられている精油でもありますし、近年は花粉症やアレルギー性鼻炎などアレルギー症状の軽減用として取り入れる方もいらっしゃいます。科学的根拠・確証と言える段階にまでは至っていませんが、ニアウリ精油は白血球の抗体の活性を高める(免疫力を向上させる)という報告もあることから、エボラ出血熱などウィルス性感染症に対する研究も行われています。風邪予防だけではなく風邪のぶり返し予防、病後やストレスで抵抗力が落ちていると感じている時には加湿器に加えて見ると良いかもしれません。
鎮痛作用も期待…
ニアウリは空気清浄や風邪予防に対する役割が注目されている精油ですが、実は痛みを和らげる働きを持つと考えられている精油でもあります。かつてフランスの病院で使用されていた時にも、病棟の殺菌消毒だけではなく、リウマチや神経痛の治療に使われていたという話もありますよ。現在でも鎮痛作用を持つ精油として神経痛や関節炎・リウマチ・筋肉痛・肩こりなどの緩和に利用されていますが、こうした目的の場合はニアウリの精油をディフューザーどで拡散するのではなく、キャリアオイルで希釈してマッサージしたり入浴剤代わりに精油をお風呂に落とすなどの方法で用いられることが多いようです。
その他に期待される作用
肌・頭皮への働きかけ
優れた抗菌特性をもつと考えられることから、ニアウリの精油はニキビの予防やケア・虫刺され・傷口の感染症予防などにも有効とされています。また傷の治りを早めて傷跡の修復を促す働き(瘢痕形成作用・癒傷作用)を持つと考えられた事から、伝統的に軽度の傷・切り傷・火傷・湿疹の手当にとありとあらゆる皮膚トラブルに用いられてきたとも言われています。現在では医師の診断と医薬品の処方を受けられますから自己判断で怪我関係の治療に利用することはお勧めできませんが、ニキビ跡・火傷痕・妊娠線のケアなどに用いられています。
またニアウリの精油は水虫などの真菌性の皮膚炎症、皮膚疾患などの慢性的な症状の改善にも役立つと考えられています。抗炎症作用が期待できることと合わせてアトピー性皮膚炎のケアにも利用されることがありますが、皮膚刺激が低いとは言え無いわけではありませんので使用時には注意が必要です。ニキビ・吹き出物対策や水虫予防として使う場合でもきちんとパッチテストを行いましょう。そのほか脂性肌で頭皮の脂っぽさが気になる方・脂っぽいのに乾燥するタイプ・フケが出る方に良いとも言われています。こちらはヘアローションやシャンプーに混ぜて使用すると良いでしょう。
消臭剤代わりとしても
ニアウリ精油の主成分である1.8-シネオールは抗菌作用が高いことから、消臭作用を持つと考えられています。悪臭の原因の一つとして、温度や湿気などの関係から雑菌が繁殖して悪臭物質を発生させることが挙げられます。洗濯物の生乾き臭やカビ臭が代表的ですし、体臭についても皮脂や垢を雑菌が分解することで発生する悪臭物質によるものが多いと言われています。このため雑菌を繁殖させないようにすることで消臭剤としての機能を持つことに繋がり、抗菌・殺菌力が高いとされるニアウリ精油もデオドラント効果があると考えられています。
ニアウリ・シネオールが利用されるシーンまとめ
【精神面】
- リフレッシュしたい
- 頭をスッキリさせたい
- 集中力を高めたい
- 注意散漫・ぼんやり
- 気持ちの落ち込み・無気力
- 前向きさが欲しい
- やる気を高めたい
【肉体面】
- 風邪・インフルエンザ予防に
- 呼吸器系の不調に
- 花粉症などのアレルギー軽減
- 神経痛・関節炎・リウマチ
- 筋肉痛・肩こり
- ニキビ・湿疹・水虫予防
- 火傷痕や妊娠線ケアに
- 頭皮の脂っぽさ・フケ対策
ニアウリ・シネオールの利用と注意点について
相性の良い香り
どのような系統の香りとも組み合わせやすいですが、特にティートリーやカユプテなどメラレウカ属(Melaleuca)の近縁種・香りの近いユーカリ系の精油とは組み合わせやすいです。同じ様にさっぱりとした印象のハーブ系・樹木系・柑橘系とも違和感なくブレンドできますよ。
ニアウリのブレンド例
- 頭をすっきりさせたい⇒ペパーミント、ライム、コリアンダー
- 風邪予防・空気浄化に⇒ユーカリ、レモン、ヒノキ、ジュニパー
- 呼吸器の不快感に⇒ティーツリー、タイム、マートル、ヒソップ
- 肌トラブル対策に⇒ラベンダー、フェンネル、パインニードル
ニアウリ・シネオール精油の注意点
- 妊娠中の方、小さいお子さんへの使用は避けましょう。
- 持病のある方は医師に相談しましょう。
- 芳香浴の場合でも、高濃度で使用すると肌へ刺激を与える場合があります。
- アロマテラピーは医療ではありません。効果や効能は心身の不調改善を保証するものではありませんのでご了承ください。
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参考元