オレンジに似た、クセの無い爽やかな芳香
オレンジとは異なる、ぽんかんに近い柑橘類のマンダリン。精油はスイートオレンジをライトにしたような、爽やかさが強めのオレンジといった香り。リモネン含有量が高く、鎮静・リラックス効果が期待されている精油でもあります。抗菌作用があるγ-テルピネンを比較的多く含むので、お部屋の空気を綺麗に保つアロマとしても良いでしょう。
Contents
マンダリンとは
マンダリンオレンジの特徴・歴史
一般的なオレンジよりも皮が薄く、手でむいて食べることも出来るマンダリン。マンダリンオレンジと呼ばれることもありますし、風味も濃厚で、果皮や果肉の色もくっきりとしたオレンジをしています。日本人からすると「オレンジっぽい」果物であるマンダリンですが、実はマンダリンはオレンジ(Citrus sinensis)の品種ではありません。マンダリンの学名はCitrus reticulata、果物としてお馴染みのオレンジとは別種です。
ミカン属植物全体の起源はヒマラヤ山脈の南東麓と考えられていますが、マンダリンという種は中国原産と扱われています。これは中国南部の山岳地帯で野生のマンダリンが発見されているため。これを交配・改良することで果樹としてのマンダリンが誕生したと考えられます[1]。これが世界へと広まる中で、マンダリンの様々な栽培品種が誕生していきます。日本で“ポンカン”と呼ばれている柑橘類も、マンダリン(Citrus reticulata)の一変種と分類されていますよ。
マンダリン(Mandarin)という呼び名は、元々は中国清朝の高級官僚を指す言葉だったという説が有力視されています。当時彼らが着ていた服の色と似ていて、中国の特産品でもあった果物が“マンダリン”と呼ばれるようになったのだとか。マンダリンはそのまま食べる以外に、果皮を乾燥させて香料・香辛料としても使われています。中国医学・漢方ではマンダリン類の皮を生薬“陳皮”として利用することもありますよ。
中国で重宝されたマンダリンは中東を経てヨーロッパへも広がり、精油の抽出方法が考案されると香水の原料としても親しまれるようになりました。マンダリンから抽出されたエッセンシャルオイルは、爽やかでフルーティーな柑橘系の香りが特徴。リキュール類やアイスクリーム・ケーキなどのお菓子類など食品業界でも用いられています。マンダリンの香りは「スイートオレンジよりも甘さが少なめ」と称されることもありますから、多くの人が自然に受け入れやすい、クセがなくバランスの良い柑橘香と言えるかもしれません。
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精油におけるマンダリンとタンジェリンの違い
マンダリンと非常に近く、精油も生産されている柑橘類には「タンジェリン」があります。植物分類上、タンジェリンはマンダリンの系統品種群の中の一グループと扱われることが多い存在ですから、どちらもマンダリンも(Citrus reticulata)と表記されていても間違いではありません。
それでも世の中に“マンダリン精油”と“タンジェリン精油”が存在しているのは、香りの印象が異なるため。精油抽出に使う品種によっても差はあるので一概には言えませんが、マンダリンはオレンジスイートを軽やかにしたようなライトな印象、タンジェリンは甘い柑橘系・日本人が思う“みかん”に近い印象の香りと称されることが多くなっています。また、ヨーロッパではマンダリン、アメリカではタンジェリンのエッセンシャルオイルのほうが広く使われていると、地域差もあるようです[2]。
また、マンダリン精油は果実の熟し具合によって大きく2タイプに分けられます。単に“マンダリンオイル(精油)”と呼ばれている精油は、主に完熟もしくはその一歩手前のマンダリンの果皮を圧搾したものを指します。それ以外に、未完熟のマンダリンを原料にした「グリーンマンダリン」と呼ばれる精油も生産されています。熟したマンダリンを原料とした精油は少しフローラルさも感じるライトな柑橘系の香りなのに対し、グリーンマンダリンオイルは爽やかさが強く出た香りになっています。
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香料原料データ
- 通称
- マンダリン(Mandarin)
- 別名
- マンタリンオレンジ(Mandarin orange)、mandarin、mandarine
- 学名
- Citrus reticulata
(syn.Citrus reticulata var.mandarin) - 科名/種類
- ミカン科ミカン属/常緑低木
- 主産地
- イタリア、スペイン、アルゼンチン、ブラジルなど
- 抽出部位
- 果皮(果実の外皮)
- 抽出方法
- 圧搾抽出法
(稀に水蒸気蒸留/分留などの精油も有) - 色
- 薄黄色~琥珀色
- 粘性
- 低い
- ノート
- トップノート
- 香り度合い
- やや弱め~中くらい
- 精油成分
- d-リモネン、γ-テルピネン、α-ピネン、β-ピネン、β-ミルセンなど
- おすすめ
- 芳香浴・アロマバス・マッサージ・スキンケア・ヘアケア・ハウスキーピング
微かにフローラル感もある、軽くフルーティーな柑橘系の香り
マンダリン精油に期待される働き・効能
精神面への作用と効果
マンダリン精油も他の多くの柑橘系精油と同じく、主成分はモノテルペン類に分類されるリモネン。なのですが、リモネンの最大含有率7割程度と、オレンジスイートなどよりも低めになっています[3]。マンダリンはオレンジスイートと比較されることが多い存在ですが、精油成分の組成はオレンジスイートやタンジェリンとは少し異なる存在と言えます。
とは言え、マンダリン精油も主成分はリモネン。リモネンはアロマテラピーにおいて鎮静作用や抗不安作用を持つと考えられている成分で、2014年『Rejuvenation Research』に発表されたマウスを使った研究でも“リモネンの吸引によって抗不安薬様活性が見られた”という報告がなされています[4]。他にも抗不安作用および鎮静作用が見られたという研究報告はあり、リモネンの芳香は気持ちを落ち着けるサポートが期待されています。
マンダリンなどリモネンを含む精油の香りが、リラックスさせ精神疲労やストレス軽減をサポートしてくれる可能性もあるでしょう。マンダリン精油で、リモネンに次いで含有率の高い芳香成分“γ-テルピネン”も鎮静作用を持つ可能性が示唆されている成分で、マンダリン精油も動物実験でリラックス効果・催眠作用をもつ可能性が示されています[5]。心配事や不安が頭から離れない時やイライラしやすくなっている時、寝付きが悪い時のサポートとして香らせてみても良いでしょう。
肉体面への作用と効果
柑橘類の多くは民間療法の中で、消化器系のサポートとして利用されていました。アロマテラピーでも柑橘系精油に多く見られるリモネンには健胃・消化促進・整腸などが期待されており、食欲不振・消化不良・便秘・下痢・お腹の張りなど幅広い胃腸トラブルの緩和に使用されることもあります。
リモネンに胃保護作用や抗炎症作用を持つ可能性を示唆した研究報告もあります[6]が、実験の多くは服用や投与によるもの。芳香吸引による有効性についてはほぼ分かっていません。リモネンは鎮静作用や抗不安作用が期待されている成分ですから、ストレス・精神的な問題に起因する神経性の胃痛・腹痛・消化不良・胸のつっかえ感などの予防や緩和を手助けしてくれる可能性はあるでしょう。
空気浄化のアロマとしても
マンダリン精油の特徴としてγ-テルピネンを比較的多く含むことが挙げられます。このγ-テルピネンはティートリーなどの精油に多く含まれている成分で、抗菌・抗ウイルス作用や抗炎症作用が見られたという報告もあります。主成分と言えるリモネンにも抗菌・抗ウィルス作用が報告されていますから、お部屋の空気を綺麗に保ちたいときのアロマとしてもマンダリン精油は役立ってくれます。柔軟仕上げ剤や香水などの芳香とケンカせず、違和感なく馴染むのも柑橘系精油のメリットと言えます。
その他に期待される作用
肌への働きかけ
マンダリンの主成分であるリモネンには血行促進作用が、リモネンの次に含有用が多いγ-テルピネンにも血行促進作用や鬱滞除去作用が期待されています。このためマンダリン精油はキャリアオイルなどで希釈され、冷えやむくみのケアのマッサージに活用されることもあります。抗菌作用や抗炎症作用が期待される成分が多く含まれていますから、ニキビ予防に役立つ可能性もあるでしょう。
また、マンダリンオイルには抗酸化物質が多く含まれています。血行促進作用と合わせてくすみ対策や肌のアンチエイジング用として、セルライト対策、妊娠線のケアなどを目的としたマッサージにも利用されています。とは言え、リモネンは皮膚に対しての刺激物となる可能性もありますし、マンダリン精油の光毒性についても完全に安全と判定できない[2]ため使用には注意が必要です。
頭皮・髪への働きかけ
リモネンは髪の健康な成長をサポートし、抜け毛を予防する働きが期待されています。d-リモネンには髪の成長を阻害し抜け毛を促進する悪玉酵素(5αリダクターゼ)の減少作用を持つという報告もあり、リモネン配合の育毛剤が特許申請されていたこともあります[7]。
リモネンが主成分であるマンダリン精油も、シャンプーやヘアトニックなどに加えることで抜け毛予防効果が期待されています。血行促進の方面からも、髪や頭皮に栄養を行き渡らせるサポートをしてくれる可能性はあるでしょう。ただし、精油を塗布しての有効性を示すデータはありませんので、過度な期待は避けましょう。
マンダリンが利用されるシーンまとめ
【精神面】
- ストレス・神経疲労
- 気分の落ち込み・不安
- イライラしやすい
- 情緒不安定だと感じる
- 寝付きが悪いと感じている
- リラックスしたい時に
【肉体面】
- 神経性の胃痛や下痢予防に
- ストレスから不調を起こしやすい
- 空気をきれいに保ちたい時に
- 冷え・むくみ緩和に
- ニキビ予防に
- 頭皮・毛髪ケアに
マンダリンの利用と注意点について
相性の良い香り
甘い果物を連想させるようなマンダリン。同系統であるシトラス系との相性が抜群に良く、ライトで爽やかな香りとブレンドすることで香りに奥行きが出ます。それ以外の精油とも組み合わせやすい香りです。香りが飛んでしまうのが速いので、揮発性の低いスパイス系・フローラル系などの組み合わせも○。
マンダリン精油のブレンド例
- ストレス対策⇒イランイラン、プチグレン、ローズウッド
- 安眠サポートに⇒オレンジ、ベルガモット、バレリアン
- 風邪予防に⇒レモンマートル、フランキンセンス、タラゴン
- むくみケアに⇒コリアンダー、サイプレス、パチュリー
マンダリン精油の注意点
- 妊娠中・授乳中の使用、小さいお子さんへの使用における安全性は断定されていません。
- 皮膚を刺激する可能性があるため、敏感肌の方は使用に注意が必要です。
- 光毒性については文献によって有り無し両方の記載があります。念のため、肌につけたあとは日光や紫外線を避けるようにすることをおすすめします。
- 疾患がある方・投薬治療中の方は医師に確認してから利用して下さい。
- アロマテラピーは医療ではありません。効果や効能は心身の不調改善を保証するものではありませんのでご了承ください。
- 当サイトに掲載している情報は各種検定とは一切関わりがありません。
参考元
- [1]Mandarin orange – Wikipedia
- [2]The Difference Between Mandarin And Tangerine Essential Oils
- [3]Citrus Essential Oils: How to Choose the Right Citrus Oil
- [4]Anti-stress effects of d-limonene and its metabolite perillyl alcohol
- [5]Citrus Essential Oils in Aromatherapy: Therapeutic Effects and Mechanisms
- [6]D-limonene: A multifunctional compound with potent therapeutic effects
- [7]Use of d-limonenes as testosterone-5-alpha-reductase inhibitor and as hair grower