ブラックバーチ(スイートバーチ)とは
ブラックバーチ、もしくは単にバーチオイルと呼ばれる精油は、ウィンターグリーンと共に使用に注意が必要な精油として紹介されることの多い存在。ブラックバーチの精油が要注意精油とされるのは精油成分のうち約95~99%を“サリチル酸メチル”という成分が占めているため。よくセットで紹介されるウィンターグリーンの精油と同等以上にサリチル酸メチル含有量が高い=毒性・刺激性が高いため、アロマテラピーでは使用されません。バーチと共に要注意精油とされており使用自体避けるべき・専門家の監修がない場合の使用を避けることが推奨されていることからも、その作用や刺激性の高さがうかがえますね。
ブラックバーチは“バーチ”が付く通り、カバノキ科カバノキ属に分類される樹木です。学名はBetula lenta、カナダ南部からアメリカ北東部にかけてのエリアが原産とされる白樺やカンバの仲間の植物です。バーチもしくはブラックバーチやスイートバーチという呼び方が定着していますが、和名はアメリカミズメ。その他にもチェリーバーチ・マホガニーバーチ・アメリカンブラックバーチなど様々な呼称があるため全て別種のように思いがちですが、全て同じブラックバーチのことを指しているんですね。
ブラックバーチは北米では一般的に見かける樹木で、木材として内装や家具などをはじめ製紙用パルプにも利用されています。またアメリカの先住民族であるチェロキー族は風邪や胃の病気の際に、強壮剤のような感覚でブラックバーチの樹皮から煮出していたお茶を飲んでいたとも伝えられています。そのほか種や葉などの伝統医術の中で用いられていたという話もあるようですから、民間医薬の一つのような感覚だったのかも知れません。サリチル酸メチルの効能についても経験的に知られ鎮痛にも用いられていたそうですし、化学合成技術が確立するまでの間はサリチル酸メチルの抽出・ウィンターグリーンの採取源として需要が高かったのだとか。現在でもアロマテラピーでは使用されませんが、ガムや歯磨き粉、男性用香水などには用いられることがあります。
ちなみに同じくカバノキ属に分類される植物を原料とする精油、通称「バーチオイル」と呼ばれるものは原料植物の違いからホワイトバーチ(シルバーバーチ/学名:Betula platyphylla)、イエローバーチ(学名:Betula alleghaniensis)、ブラックバーチ(スイートバーチ/学名:Betula lenta)の三種類があります。どのバーチオイルも刺激があり要注意と言える存在ですが、この三つの中ではセルライトケア・痩身マッサージ用としても注目を集めたホワイトバーチが比較的使いやすい精油とされています。逆に最も扱いが難しいのがブラックバーチで、利用法によっては高い有効性を持つものの毒性の高い精油とされています。
一昔前までは取り扱いの難しさからバーチオイル(ブラックバーチ精油)は一般向けとしての流通はほとんどされていませんでしたが、近年インターネット店舗の普及などの関係もあり日本国内でも見かけるエッセンシャルオイルとなっています。欧米では有資格者にしか販売しないというメーカーもあるようですが、日本では“雑貨”扱いのため普通に購入できるのも良し悪しかも知れません。当サイトでは知識としてブラックバーチやサリチル酸メチルに期待される働きを紹介していますが、使用を推奨するものではありません。安全性についての懸念も多い精油ですから、ウィンターグリーンと共に自己判断での使用は避けるべき精油と考えて下さい。
基本データ
- 通称
- ブラックバーチ(Black birch)
- 別名
- Sweet birch(スイートバーチ)、Cherry birch(チェリーバーチ)、アメリカミズメ、レンタカンバ
- 学名
- Betula lenta
- 科名/種類
- カバノキ科カバノキ属/落葉高木
- 主産地
- アメリカ、カナダ、ロシア
- 抽出部位
- 樹皮(木部を含めたものも有)
- 抽出方法
- 水蒸気蒸留法
- 色
- ほぼ無色~淡黄色
(※まれに赤みを帯びたものもあるようです) - ノート
- トップ~ミドルノート
- 香り度合い
- 強い
- 代表成分
- サリチル酸メチル、サリチル酸エチル、オイゲノール
- おすすめ
- 基本的には使用を避ける。
ウィンターグリーンに似た、甘さのある湿布薬系の香り
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こんなお悩みにオススメ
【精神面】
- リフレッシュに
- 心の疲労感・倦怠感に
- 気持ちを落ち着けたい
- 前向きになりたい
【肉体面】
- 神経痛・関節炎・リウマチ
- 筋肉痛・肩こり・腰痛
- 血行不良・血行不良性の頭痛など
- むくみ軽減・デトックス
ブラックバーチに期待される効果・効能
心への作用
ブラックバーチオイルは心のサポートに用いられることは少ない精油です。しかし微かな甘さを含んだ強い清涼感のある爽香りは、疲れた心のリフレッシュにも役立つと言われています。また涼やかな香りから心をクールダウンさせてくれるという説・強壮や抗鬱作用があり気持ちを前向きにしたい時に役立つという説もあります。ただしサリチル酸メチルが大半を占めている芳香浴には適さないとされていますし、心への作用についてもハッキリしたことは分かっていません。
某湿布薬を連想させるような香りのため好き嫌いはありますが、メンズコロンなどにも使われているように他の精油と組み合わせると良いアクセントになってくれる存在でもあります。推奨されているマッサージや湿布などの使用法については取り扱いが難しいですし、芳香浴には適さない精油ですので、アロマスプレーや香水作りが目的で購入される方もいらっしゃるそう。香りの印象としては通学・出勤前などにも適していそうですね。
体への作用
ブラックバーチオイルの精油成分のほぼ全てを占めているサリチル酸メチルは、湿布やアスピリン様成分と紹介されることもあるように鎮痛作用や抗炎症作用を持つことが認められています。頭痛などの痛み健和効果が期待されていますし、血管拡張作用もあるため特に坐骨神経痛や神経痛・関節炎・リウマチ・筋肉痛・肩こり・腰痛など血行不良により生じる、もしくは悪化するタイプの痛み軽減に優れた働きを持つと考えられています。
こうした目的で使用される場合は、芳香浴ではなくマッサージや湿布・バスアロマとしてなど希釈して皮膚に直接塗布するような方法が取られます。ウィンターグリーンと同様にブラックバーチも皮膚刺激が高い精油ですので、必ず低濃度に希釈して利用するようにしてください。最大濃度は5%・1%未満に希釈して利用するなど諸説ありますが、バスアロマとして利用する場合は浴槽いっぱいのお湯に1~2滴程度、マッサージ用の場合は10mlのキャリアオイルに対して1滴(0.05ml=0.5%)くらいの量で使うことをお勧めします。
そのほか腎臓機能を助けることで尿量を増やし結石を予防する・利尿効果に繋がることから血行促進と合わせてむくみ軽減・解毒(デトックス)に良いという説もあります。血行促進作用や消毒作用があることから風邪の予防やケアなどにも用いられる場合があるそうですが、これらのサポートとしてであれば別の精油をメインに使ったほうが確実でしょう。むくみやデトックス目的であればジュニパーベリー、風邪予防であればティーツリーなどを使用したほうが安全性が高いです。
その他作用
皮膚利用について
Floracopeiaさんなど海外のサイトでは、ブラックバーチオイルは収斂作用を持つ精油として毛穴対策やシワ・たるみ予防に良いと紹介されています。海外では数世紀に渡り皮膚の引き締め剤として使用されてきた歴史もあるのだとか。そのほか消毒作用がありニキビケアや頭皮のケア・抜け毛予防のヘアリンスとしてなども使用されているようですが、皮膚刺激・感作作用も指摘されているため使用には注意が必要です。
ブラックバーチの利用について
相性の良い香り
同系統のスッキリとした印象がある柑橘系・ハーブ系の精油とよく合います。樹木系の香りともブレンドしやすい精油ですが、刺激や毒性が懸念されていること・香りが強いこともありますので、ブレンド時にはごく少量を加える程度にしておきましょう。
【ブラックバーチのブレンド例】
- 清涼系の香水作り⇒ペパーミント、シトロネラ、スプルース
- 前向きになりたい⇒シダーウッド、ホーリーフ、レモン
- 筋肉痛・関節痛に⇒カモミール、スペアミント、パロサント
- お肌の引き締めに⇒ミルラ、フランキンセンス、ジュニパー
ブラックバーチ精油の注意点
- 自己判断での使用はおすすめできません。
- 妊娠中・授乳中の方・お子さんへの使用はできません。
- アスピリンアレルギーの方、疾患のある方・医薬品を服用中の方も利用を避けましょう。
- 高濃度・長期間の使用は厳禁です。
- アロマテラピーは医療ではありません。効果や効能は心身の不調改善を保証するものではありませんのでご了承ください。
- 当サイトに掲載している情報は各種検定とは一切関わりがありません。