作用も香りも穏やかな、優しいミント
お菓子を連想するような、サッパリとしつつ甘いハーブ系の香りを持つスペアミント。マイルドな香りはペパーミントよりも使用するシーンを選びにくく、作用も穏やかで使いやすい精油です。同じ“ミント”とは付きますが、主成分はメントールではなくカルボン。リフレッシュにも役立ちますが、ストレス対策やリラックスしたい時にも適した香りですよ。胃腸の調子が良くないときやお部屋の空気を綺麗に保ちたい時にも◎。

Contents
スペアミントとは
スペアミントの特徴・歴史
ミント類の中でも柔らかく甘い印象のある芳香を持つスペアミント。刺激や辛味が少ないのでそのまま葉をハーブティーとして利用したり、アイスクリームなどのお菓子などに添えて使うことが多いですが、ドレッシング・モヒートなどのカクテルなどにも広く利用されていますね。精油はガムや歯磨き粉などのフレーバーとしても用いられており、刺激よりもマイルドさや爽やかさを強調したい場合によく使われています。ミントらしいくっきりとした清涼感が欲しい場合にはペパーミント、マイルドな爽やかさが欲しい時にはスペアミントという使い分けが多いのではないでしょうか。日本でミントというとペパーミントの印象のほうが強いですが、欧米、特に主産地であるアメリカはスペアミントのほうが一般的な“ミント”であるとも言われています。
ミントというハーブ名は私達にとっても馴染みのある存在ですが、ミントという呼び名はシソ科ハッカ属に分類される植物の総称。ハッカ属の植物は自然交配しやすく、様々な栽培品種も作られているため世界には数多くのミントが存在しています。その中でハーブ・香料原料として利用されるのはペパーミント系とスペアミント系の2種類が大半。日本の場合はこれに在来種である和ハッカ(日本薄荷)を加えた3つがミント類として親しまれています。スペアミントは数多いミントの中でも比較的原種に近い種と言われており、需要を二分するペパーミントもウォーターミントとスペアミントの自然交配種と考えられています。外見では名前の由来ともなっているスペア(spear/槍)尖った葉先が特徴で、種子名のspicataも同じく槍が語源とされています。
香りとしても日本で使用されている3大ミントのうち、ペパーミントやニホンハッカの主成分がメントールなのに対して、スペアミントはℓ-カルボンが主成分であるという違いもあります。このため刺激的とも言えるくっきりとした清涼があるペパーミントと比べると、スベアミントは甘みのある穏やかな香りがあるのです。スベアミントの柔らかい香りはシーンを選びにくいというメリットもありますし、強い刺激感が苦手な方やお子様向けの商品にも活用されていますね。香りだけではなく作用も穏やかとされているため、お子さんがいるご家庭での利用についてもペパーミントよりもスペアミントの方が適した精油として扱われています。甘めで柔らかい香りは3つのミント類の中では最もブレンドに使いやすい存在でもあります。
ミント類は“料理用および医薬品用に使用される最も古いハーブの1つ”とも称されるほど人との関わりの深い植物。古代には現在ほどミント類の区分が明確ではなかった関係もあり、伝承に登場するミントが何ミントであるのか、スペアミントの交配でからペパーミントが誕生したのはいつごろかは断定されていません。しかし、スペアミントはミント類の中でも原種に近く、ペパーミントの親となる存在でもあることから、もっとも古くから使われてきたミント類の一つであると推測されています。『新約聖書(マタイによる福音書23章)』でイエス・キリストが律法学者とパリサイ人たちを“ミント、ディル、クミンなどの十分の一を納めているが、律法の中ではるかに重要なもの、すなわち正義もあわれみも誠実もおろそかにしている”と非難するシーンがあります。それよりも古い『旧約聖書』にもミントは登場しますが、どちらもスペアミントを指しているという説が有力です。
ちなみにミントの属名Menthaはギリシア神話でハーデスの妻ペルセポネーに草に変えられてしまった妖精“Minthes(メンター)”のエピソードが由来。これも古い話ですからスペアミント系のミントが元である可能性が高いと考えられます。古代ギリシアでもスペアミントは香料植物として親しまれていたようですし、ローマ帝国でも盛んに栽培・収穫が行われていたようです。古代から香味野菜や薬用ハーブ、お部屋の消臭剤など様々に活用されていたと考えられています。14世紀頃には既に歯磨き粉としても使用していたのだとか。ヨーロッパで愛されたスペアミントは移民たちによってアメリカ大陸へも持ち込まれ、1893年にリグレー社がスペアミントガムを発売し大ヒットしたのをきっかけに大量栽培・工業的な精油生産が盛んに。現在でもスペアミントの主産地はアメリカで、年間約2000トンの精油が生産されています。
香料原料データ
- 通称
- スペアミント(Spearmint)
- 別名
- ミドリハッカ(緑薄荷)、オランダハッカ、ガーデンミント(garden mint)
- 学名
- Mentha spicata
- 科名/種類
- シソ科ハッカ属/多年生植物
- 主産地
- アメリカ、スペイン、ハンガリー、ロシアなど
- 抽出部位
- 全草(もしくは葉と花の咲いた先端部分のみ)
- 抽出方法
- 水蒸気蒸留法
- 色
- 淡いクリーム色
- 粘性
- 低い
- ノート
- トップノート
- 香り度合い
- 中~強め
- 精油成分
- ℓ-カルボン、リモネン、ミルセン、1.8-シネオール、α-ピネン、メントール、メントンなど
- おすすめ
- 芳香浴・アロマバス・マッサージ・スキンケア・ヘアケア・虫よけ
ミント類の中では甘みのあり、ハッカ飴のような優しい香り
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スペアミントに期待される働き・効能
精神面への作用と効果
スペアミントの精油はカルボン(Carvone)を主成分とした、甘く柔らかい香りが特徵。カルボンは鎮静作用を持つと考えられており、スペアミント精油はリラックスを助けてくれる自然のストレス緩和剤として活用されています。ストレスで疲労感を感じてぐったりしている時や、不安や緊張感が抜けない時の手助けとしても役立ってくれるでしょう。また若干の刺激・高揚作用があるとする説もあることから、心が疲れたり落ち込みがちな時に元気や活力を取り戻すサポートにも使用されています。
サッパリした香りはリフレッシュにも繋がるので、嫌なことを引きずってしまったりショック状態から気持ちを切り替える手助けもしてくれるでしょう。スペアミントとペパーミントはどちらも鎮静・リフレッシュに使われますが、ペパーミントはシャッキリ意識を冴え渡らせ活動モージに持ち込むのに対し、スペアミントは頭をクリアにして心を落ち着かせることに優れているという説もあります。スペアミントも眠気覚ましなどに利用できますが、疲れや心配事で頭がモヤモヤする時などストレスなどで思考低下している時により効果が期待できるでしょう。頭をクリアにしつつ気持ちを落ち着かせてくれるので瞑想・自分と向き合いたい時に香らせてみても良いかもしれません。
肉体面への作用と効果
スペアミントもペパーミント同様に消化器系の働きかけに優れた働きが期待できる精油です。スペアミントのエッセンシャルオイルには平滑筋弛緩特性があるとされており、胃腸の平滑筋が収縮することで起こる痛み・痙攣の軽減に活用されています。胃腸機能のサポート効果が報告されているリモネン、鎮静・鎮痛作用を持つとされれる成分が多いことと合わせて、けいれん性の胃腸の痛みをはじめ、消化不良・下痢・食欲不振・吐き気など様々な胃腸トラブルの軽減に効果が期待されています。鼓腸(腹部膨満感)の緩和に良いという説もありますよ。また、スッキリとした香りと合わせて乗り物酔いや二日酔いによる不快感の緩和、夏バテ時のサポートなどにも使われています。
鎮静・鎮痙作用から頭痛や偏頭痛の緩和・しゃっくりが止まらない時に、冷却作用を持つ精油に数えられることから風邪による発熱、発熱に伴う頭痛などのケアにもスペアミント精油が活用される場合があります。スペアミントは抗真菌性・抗菌性・抗ウイルス性があり消毒剤としても役立つ精油のため、風邪予防にも役立ってくれるでしょう。全体的な作用としてはペパーミントよりも弱いと言われていますが、香り・作用ともに穏やかなのでデイリーに利用する場合や、お子さんがいるご家庭での使用にも良いですね。
女性領域にも…?
スペアミントは“エメナゴーグ(Emmenagogue)”と呼ばれる、骨盤領域と子宮の血流を刺激する月経促進ハーブとしてヨーロッパで利用されてきた歴史があるハーブの一つでもあります。作用秩序などについては分かっていませんが、伝統的な利用の延長として月経を刺激し子宮を引き締めるハーブとして月経不順や過多月経・早すぎる更年期障害のケアに精油を利用することがあるようです。スペアミントは鎮静・鎮痙作用が期待できる精油でもあることから、生理痛や月経に関連した吐き気・腹痛などのケアにも活用されています。女性の体への働きかけについては分かっていませんが、柔らかく爽やかな香りなのでブルーデイを快適に過ごすサポーターとして取り入れてみても良いでしょう。
その他に期待される作用
肌への働きかけ
スペアミントは収れん作用と皮脂分泌のバランスを整える働きがあり、脂性肌のケアに適した精油とされています。毛穴の角栓・黒ずみが気になる時にも効果が期待できますし、抗菌・抗真菌作用を持つ精油でもありますからニキビができやすい方のケアにも役立ってくれるでしょう。脂っぽさを抑えて地肌を清潔に保ってくれることから、頭皮・頭髪のお手入れにも使われます。スッキリとした香りは夏場にデオドラントも兼ねてくれますよ。
そのほか、ある程度のかゆみを抑える作用も期待できますので、虫刺されなどかゆみを伴う皮膚炎証のケアに良いという説もあります。ただし若干の皮膚刺激性がありますので敏感肌・炎症が重い方は使用に注意が必要です。低濃度に希釈してパッチテストを行った後に利用するようにしてください。
虫除けとして
スペアミント精油にも昆虫忌避作用があるとされており、虫よけ剤代わりに利用できるとされています。ゴキブリを寄せ付けない天然物質の研究では、ニホンハッカやスペアミントの精油に含まれるテルペン化合物に臭覚的忌避効果が高いとの報告がなされていますから、水回りや物陰などに香らせると良いかもしれません。
スペアミントが利用されるシーンまとめ
【精神面】
- ストレス・精神疲労
- 気持ちの落ち込みに
- 気持ちを切り替えたい時
- 思考をクリアにしたい
- リフレッシュしたい時に
- 不安・情緒不安定
- 眠気・寝起きの悪さ
- 冷静さがほしい時に
【肉体面】
- 消化不良・食欲不振
- 便秘・お腹の張り
- 胃もたれ・胸焼け・吐き気
- 二日酔い・乗り物酔い緩和
- 頭痛・偏頭痛・生理痛に
- 風邪・発熱時のケアに
- 脂性肌・ニキビケア
- 虫刺されなどの痒み緩和
スペアミントの利用と注意点について
相性の良い香り
甘さがありライトな印象のスペアミント精油は、ブレンド相手を選びにくい精油の一つでもあります。特に柑橘系・ウッディー系・ハーブ系などスッキリとした印象の香りであれば失敗する心配は低いです。重めの香りに隠し味のような感覚で加えることも出来ますよ。また、主成分が異なっているのでペパーミントや和ハッカとブレンドすることでも奥行きのある“ミントの香り”を作ることが出来ます。
スペアミントのブレンド例
- ストレス対策用に⇒ラベンダー、レモン、リンデン、バジル
- 頭をシャッキリ⇒ローズマリー、タイム、ウィンターグリーン
- 消化器系の不調に⇒グレープフルーツ、ペパーミント、ディル
- ニキビケアに⇒ジャスミン、ラベンサラ、マートル、和ハッカ
スペアミント精油の注意点
- 妊娠中・授乳中の使用は避けてください。
- 高濃度で使用した場合、頭痛・めまい・吐き気などの原因となる可能性があります。
- 皮膚への刺激が強いため事前にパッチテストを行い、敏感肌の方は芳香浴の場合でも使用量に注意してください。
- アロマテラピーは医療ではありません。効果や効能は心身の不調改善を保証するものではありませんのでご了承ください。
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参考元