バルサムペルーとは
バニラを連想させる温かく甘い香りが特徴的なバルサム・ペルー。原料となるのは中南米で育つマメ科のペルーバルサム(学名:Myroxylon balsamum var.pereirae)という樹木で、香料・精油原料として利用されるのは主に樹脂。名称からペルー特産のような印象も受けますが実は「ペルー」というのは誤称だそう。中南米をスペインが支配していた時代にペルーのリマ辺りで収集してヨーロッパへと出荷されていたため、ペルー産という扱いになったと言われています。
バルサムペルーは同じく中南米に自生する近縁種トルーバルサム(Myroxylon balsamum var.balsamum)と共に、古くから中央~南アメリカで生活していた人々に用いられてきました。先住民たちはバルサムノキ属の樹脂を傷や皮膚病のケアからリウマチ軽減・ダニ対策・風邪や気管支炎などの呼吸器系の症状緩和に利用してきたと伝えられています。17世紀にはドイツ薬局方にも収載され、ヨーロッパでも傷の治療などに取り入れられるようになります。
現在でもバルサムペルー樹脂から抽出される精油もしくは抽出物はヨーロッパで傷やかぶれ用の軟膏に配合され、医薬品にも使われているそう。そのほか甘くスモーキーな香りから清涼飲料やアルコール飲料類・お菓子などに食品香料として用いられていますし、オリエンタル調の香水・石鹸や化粧品類・脱臭芳香剤などの香料としても広く使われています。
採油は蒸留装置内の圧力を下げることで沸点を下げ蒸留する真空蒸留もしくは減圧蒸留で抽出されているものが一般的。200mmHg以下の圧力下であれば真空蒸留・200mmHg以上の場合には減圧蒸留と呼ばれています。ちなみに“分子蒸留”と呼ばれるのは真空蒸留よりもさら圧力が下がった状態(0.1Pa以下)で行う高真空蒸留のこと。圧力が下がるほど沸点が下がる=低い温度で蒸留が行われるため成分の損失・化学変化を起こしにくいことがメリットとして挙げられています。そのほか木部から水蒸気蒸留で得られた精油もありますが、品質が落ちると評されています。
バルサム系精油の種類について
バルサムというのは粘稠性の樹脂全般を指す言葉ため、バルサム樹脂を採取することが出来る樹木というのは非常に多くの数が存在しています。精油でも名称に「バルサム」と付けられているのもはいくつかありますが、比較的ポピュラーなものとしてはバルサムキ属に属すバルサム・ペルーとバルサム・トルー、同科別属のバルサムコパイバ、マツ科のバルサムモミ(カナディアンファー)などが挙げられます。このうちバルサムモミは一般的に枝葉が原料のため、香りとしてはバルサムではなく爽やかな印象のウッディー系。同科で樹脂を原料とするコパイバも軽い甘さを持ちつつウッディー寄りの香りとなっています。このように名前に同じ“バルサム”が付いていても香りや成分には大きな違いがあるため注意が必要です。
種としては非常に近いバルサムペルーとバルサムトルーは香りも似た傾向にありますが、トルーバルサムはややフローラル感のあるライトな甘さ・ペルーバルサムはよりバニラ感のあるお菓子っぽい香りと称されています。また似たような作用を持つとされる2つですが、トルーバルサムは呼吸器系・ペルーバルサムは皮膚炎症に良いという見解もあります。ただしどちらの精油も皮膚刺激性が高く感作性がある・接触性アレルギーを起こしやすいことが指摘されています。皮膚に対する有効性も報告されていますが、皮膚に触れるような利用には注意が必要。敏感肌・アレルギー体質の方であれば芳香浴や手作り香水として使用する場合も注意したほうが良いでしょう。
基本データ
- 通称
- バルサムペルー(Balsam of Peru)
- 別名
- ペルーバルサム(Peru balsams)、ブラックバルサム(Black Balsam)
- 学名
- Myroxylon balsamum var.pereirae
(Myroxylon pereirae) - 科名/種類
- マメ科バルサムノキ属/高木
- 主産地
- アメリカ合衆国、エルサルバドル
- 抽出部位
- 天然樹脂
- 抽出方法
- 真空蒸留法/溶剤抽出法
(※木部・樹皮を水蒸気蒸留したものも有) - 色
- 淡めの琥珀色~赤褐色
- 粘性
- 高い
- ノート
- ベースノート
- 香り度合い
- 中~やや強め
- 代表成分
- 安息香酸ベンジル、桂皮酸ベンジル、ベンゾイン酸ベンジル、ネロリドール、ファルネソール、バニリン
- おすすめ
- 芳香浴・アロマバス・マッサージ・スキンケア・ヘアケア
温かみのあるスモーキーさを含む、バニラに似た甘い香り
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こんなお悩みにオススメ
【精神面】
- ストレス・神経疲労
- 緊張・不安・イライラ
- 気持ちの落ち込み
- リラックスしたい時に
- 心のバランスを整えたい
- 前向きになりたい時に
【肉体面】
- 咳・風邪のひきはじめに
- 気管支炎や喘息の緩和に
- リウマチなどの軽減に
- 傷・ひび割れのケアに
- 水虫・疥癬などの皮膚感染症予防
バルサムペルーに期待される効果・効能
心への作用
温かく甘いパルサムペルーの香りは不安や緊張を和らげることで、心を穏やかに保つサポートをしてくれると考えられています。精神的なストレスによる疲労感やイライラ・気持ちの落ち込みを軽減し、前向きさを取り戻す手助けにもなってくれるでしょう。香りとしても成分としてもベンゾインに近い感覚の精油と言われており、高い鎮静作用が期待されていますから瞑想用にも使えそうですね。不眠対策に良いという説もあります。
体への作用
バルサムペルーもバルサムトルーと同様に消毒・去痰・抗炎症作用などがあると考えられています。古くは中南米の先住民が風邪や気管支炎などの呼吸器系に用いていたとも言われ、現在でも呼吸器系のケアに役立つ精油とされています。また抗炎症作用を持つとされる成分を含むことに加え、身体の各器官を刺激・覚醒させるという見解もあることから関節リウマチなどの慢性疾患の軽減や低血圧の改善サポートに用いられることもあるようです。
その他作用
皮膚利用について
バルサムペルーは優れた癒傷・瘢痕形成作用を持つと考えられ、軟膏などの成分にも配合されています。この働きから切り傷・擦り傷をはじめ、床ずれ・オムツかぶれ・乾燥肌・肌のひび割れケアなど様々な用途で用いられています。加えて抗細菌・抗真菌作用があるとされており、安息香酸ベンジルの割合が高いことから抗寄生虫作用も高いと考えられています。このためシラミやダニ対策・ヒゼンダニによる疥癬などの皮膚疾患軽減にも効果が期待されていますし、白癬(水虫など)やマラセチア対策に繋がる可能性もあるでしょう。
バルサムペルーオイルは皮膚を清潔に保つサポートをしてくれる他、酸化防止・防腐作用もあるため手作り石鹸・自然派コスメなどに加えられることもあります。皮膚に対して様々な働きが期待されている精油ですが、上記でもご紹介したとおり感作性(アレルギー誘発性)があり刺激も強い精油とされています。バルサムペルーの利用が多い欧米では接触皮膚炎についての報告も多く、欧州委員会他いくつかの機関から注意喚起もなされているようです。いきなり希釈したオイルを皮膚・炎症部位に利用すると炎症を悪化させてしまう可能性もありますので、しっかりとパッチテストを行った上で利用するようにしましょう。
バルサムペルーの利用について
相性の良い香り
オリエンタル系の香りとの相性が非常に良い精油です。そのほかフローラル系やスパイス系などとも組み合わせやすく、揮発保留剤としてもブレンドに使われています。
【バルサムペルーのブレンド例】
- リラックスしたい時に⇒イランイラン、プチグレン、サンダルウッド
- 気持ちを明るくしたい⇒ローズ、ジャスミン、クローブ、シナモン
- 風邪・咳などのケアに⇒メイチャン、ジンジャー、ブラックペッパー
- 肌を清潔に保ちたい⇒ラベンダー、レモン、パチュリ、シダーウッド
バルサムペルー精油の注意点
- 妊娠中・授乳中の使用は避けましょう。
- 刺激・感作性ともに強いと考えられている精油ですから、体調を確認しつつ低希釈で使用しましょう。芳香浴として利用しても精油成分が皮膚に付くことでアレルギーを起こす場合があります。
- アロマテラピーは医療ではありません。効果や効能は心身の不調改善を保証するものではありませんのでご了承ください。
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