ローズウッドの代用精油として注目
ライトでありつつ華やかなウッディー調の香りを持つリナローウッド。リナロールを多く含むカンラン科樹木から抽出された精油で、絶滅危惧から採油を控えているローズウッドと似た成分構成をしていることから代替品として多く流通するようになりました。リナロールを含むことから鎮静・抗ストレス作用によるメンタルサポートや、風邪予防、スキンケアなどに効果が期待されています。
Contents
リナローウッドとは
リナローウッドの特徴・歴史
大量伐採による減少や絶滅が危惧されているローズウッドの代替え品として近年注目されているリナローウッド。名前の由来ともなっているようにモノテルペンアルコール類の一種である“リナロール(Linalool)”を豊富に含み、ローズウッド同様にフローラル感を強く感じさせる香りが特徴です。ローズウッドと精油成分の比率が似ていることが注目されていますが、香りについてはラベンダー+ウッド系であるとも、レモンとジャスミンを混ぜたようなとも称される存在。ローズウッドに酷似しているかと言うと微妙なところでもあります。現在は間違いなくローズウッドだと言える精油の入手が困難なため比較しにくいですが、少なくとも爽やかな印象のあるリナローウッドの香りは嫌われることの少ないタイプだと思います。
原料となるリナローウッドは学名Bursera delpechiana、メキシコ原産のカンラン科ブルセラ属に分類される樹木です。20世紀の初めにインドへと植林されたことでインドでも多く栽培されていますし、工業用リナロール原料・ローズウッドに代わるエッセンシャルオイル原料として中南米でも広く栽培されています。日本では葉もしくは木部から蒸留された精油の流通が主ですが、リナローウッドの果実(果皮)からは「リナロエベリー」と呼ばれる精油が生産されています。これらのオイルはインドのマイソール地方において特産品の香水・石鹸の原料として用いられていることから“インディアンラベンダーオイル”と呼ばれることもあるそう。ただし近縁種のBursera penicillataもインディアン・ラベンダーと呼ばれており、リナロール含有量の多いブルセラ属(Bursera ssp.)抽出精油をまとめて「リナロー油」と呼ぶ場合もあります。
リナローウッドの特徴成分とも言えるリナロールはベルガモット・ラベンダー・スズランなどに似た華やかな印象の芳香を持つ香気成分。香水や芳香剤としてだけではなく、医薬品や工業製品・酒類やアイスクリームなどの食品フレーバーとしてまで幅広く活用されています。1960年代後半にリナロールの合成方法が確立したことでリナロール原料としての需要は減少しましたが、かつてリナローウッドはローズウッドと同じくリナロールの供給源として需要が高かった樹木。酢酸リナリルの供給源としても重要視されており、ベルガモットオイルの代替品もしくは偽和に用いられることもあるそうです。
ローズウッドの減少に伴ってリナローウッド精油を目にする機会が増えていますが、リナローウッドの木部を原料に精油を抽出する場合も樹齢20~30年になったものが切り倒されて使われる事が多いようです。リナローウッドはインドなどへは商業的栽培のために持ち込まれた植物のため減少が問題視されているわけでは有りませんが、木ではなく果実から抽出する「リナロエベリー」であったり、同じくローズウッド代用精油として注目されているものとしては木を伐採せずに採油できるホーリーフの方が環境的には優しいと言えるかもしれません。リナローウッド(木部)も木を伐採するのではなく部分的に使う、生産管理を行っている企業もあるようですが…消費者にはわからない部分が多いのも現実ですね。
香料原料データ
- 通称
- リナローウッド(Linaloe wood)
- 別名
- リナロエウッド、リナロウッド、Mexican Linaloe Tree(メキシカン・リナローツリー)、 Indian lavender(インディアンラベンダー)
- 学名
- Bursera delpechiana
- 科名/種類
- カンラン科ブルセラ属/樹木
- 主産地
- メキシコ、インド、中国、ほか中南米諸国
- 抽出部位
- 葉
(木部、果実を含むものも有) - 抽出方法
- 水蒸気蒸留法
- 色
- 無色~淡い黄色
- ノート
- ミドルノート
- 香り度合い
- やや弱い~中くらい
- 精油成分
- リナロール、α-テルピネオール、酢酸リナリル、ゲラニルアセテート、ゲラニオール、テルピネオール
- おすすめ
- 芳香浴・アロマバス・マッサージ・スキンケア・ヘアケア
甘めでドライなウッディ調の香り、ローズウッドよりもライトと評される
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リナローウッドに期待される働き・効能
精神面への作用と効果
リナローウッド(リナロエウッド)の特徴成分と言えるのが鎮静・抗不安作用を持つとされているリナロール。リナローウッド精油や芳香についての研究は少ないですが、リナロールについては1998年『Neurochemical Research』にリナロールが中枢神経系において用量依存的な顕著な鎮静作用を有することを示したという研究報告が掲載されています。その他にも2時間ストレス誘発拘束したラットにリナロールを吸引させた実験では、リナロール吸引有りのマウスにストレスレベルの低下が見られたなどの報告もあり、リナロールは抗不安薬(不安軽減薬)としての作用を持つ可能性が高いという見解も少なくなりません。
このためリナローウッドの芳香もローズウッドと同様に気持ちを落ち着け、心のバランスを整える手助けをしてくれるのではと期待されています。ストレス・精神的な負担を軽減することで、明るく前向きな気持ちへの切り替えを手助けにも繋がるでしょう。また、リナロールは鎮静・リラックス作用によって睡眠の改善をサポートする働きを持つ可能性がある成分でもあります。2008年『Phytomedicine』に掲載されたブラジルの研究ではリナロール吸引によってマウスに催眠鎮静作用が見られたことが報告されています。そのほか徐波睡眠が増加するなどリナロールによって睡眠の質を高める可能性を示唆した実験報告も多くあることから、リナロールを含むリナローウッドも安眠サポートに役立つのではないかと期待されています。
肉体面への作用と効果
リナローウッドに含まれているリナロールは炎症と痛みを軽減する働きが期待されています。2002年『Journal of Phytomedicine』にはリナロールに抗炎症剤として優れた作用が見られたことが、2003年の後続研究では鎮痛作用が見られた事が報告されています。痛み信号を脳に伝達する脊髄内の細胞の興奮性を低下させることで麻酔的な鎮痛作用を発揮する可能性を示唆した報告や、筋弛緩作用を持つという見解もあるため、リナロールは様々な痛みの軽減に効果が期待されています。
加えてリナロールは優れた抗菌・抗真菌作用を持つことが報告されているほか、抗ストレス作用によって健康な免疫システムを保持する可能性も示唆されています。このためリナローウッドは風邪やインフルエンザなどの感染症予防にも役立つと考えられています。リナロールだけではなく抗炎症作用や鎮咳作用などが期待されるα-テルピネオールも含まれていますから、咳・気管支炎・発熱など風邪の初期症状ケアをサポートしてくれる可能性もありそうですね。リナローウッドは呼吸器の健康をサポートが得意な精油であるという評価もあります。
その他に期待される作用
肌への働きかけ
リナローウッドの精油はスキンケアにも活用されています。リナロールによって高い抗菌作用・抗真菌作用が期待できることからニキビ予防、水虫(白癬)・脂漏性皮膚炎などの真菌性皮膚感染症などのケアにも使用されています。また、細胞成長促進・組織再生を促進する作用を持つのではないかという説もあり、傷跡を目立ちにくくする働きが期待できることから傷跡や火傷跡・妊娠線のケアなどにも活用されています。
肌細胞を活発化させる働きからシミやシワの改善などお肌のアンチエイジング・エイジングケアのサポートにも役立つのではないかと考えられています。乾燥肌と脂性肌両方のバランスを整える精油として紹介されている事もありますが、リナロールは皮膚刺激または直接接触時のアレルギー反応を起こす事も報告されています。炎症を起こしている部位への使用は避け、敏感肌の方は皮膚の厚い部分からしっかりとパッチテストを行うようにすることをお勧めします。特に開封後時間が経って酸化してしまった精油は皮膚炎症の原因になりやすいため注意が必要。
リナローウッドが利用されるシーンまとめ
【精神面】
- ストレス・精神疲労
- 不安・気持ちの落ち込み
- 気分にムラがあると感じる
- 前向きさになりたい
- 心に癒やしが欲しい
- 寝付きが悪いと感じる
【肉体面】
- 風邪・インフルエンザ予防に
- 咳・気管支炎などの軽減に
- 免疫力のサポートに
- 若々しい肌を保ちたい
- 傷跡・妊娠線ケアに
- 乾燥肌・ニキビ予防に
リナローウッドの利用と注意点について
相性の良い香り
リナローウッドの香りはどの系統ともブレンドしやすい香りです。特に似たニュアンスのある軽めのウッディ系や柑橘系の香り、ラベンダーなどハーバルな印象のあるフローラル系の香りとは組み合わせやすいでしょう。イランイランなど甘さが強く濃厚な香りとの組み合わせは好き嫌いが分かれるところかもしれません。
リナローウッドのブレンド例
- やる気を高める⇒レモン、ジンジャー、ローズマリー
- 感染症予防に⇒シダーウッド、アンジェリカ、コパイバ
- スキンケア用として⇒ゼラニウム、ラベンダー、パイン
- 乾燥肌のケアに⇒ベチバー、ネロリ、サンダルウッド
リナローウッド精油の注意点
- 妊娠中・授乳中の使用における安全性は断定されていません。
リナローウッドの精油は利用された歴史が浅く、安全性や副作用などについては解明されていない部分も多い精油です。使用者のデータ自体が少ないことも指摘されていますので、体調を確認しながら使用するようにしましょう。
- アロマテラピーは医療ではありません。効果や効能は心身の不調改善を保証するものではありませんのでご了承ください。
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参考元