肥満予防やスキンケア精油として注目
ローズマリーは地中海沿岸地域で古くから用いられていたハーブで、ハンガリー王妃が使った“若返りの水”ハンガリアン・ウォーターの材料としても使用されました。精油にはいくつかケモタイプが存在していますが、ベルベノンタイプはスキンケアやヘアケアが最も得意な精油とも称されています。代表成分のベルベノンには脂肪溶解作用を持つ可能性があると報じられたこともあって、美容サポーターとして注目されています。
Contents
ローズマリー・ベルベノンとは
ローズマリーの特徴・歴史
キッチンハーブ・スパイスとして日本人にも馴染みのあるハーブの一つ、ローズマリー。バラ(ローズ)よりもミントやマジョラムなどに近いシソ科マンネンロウ属に分類される低木植物で、原産は地中海沿岸地域とされています。分類でも見た目・香りにも近いところが無いのに呼び名にローズが付けられている由来は、古典ラテン語で海辺でも生育出来るローズマリーのことを「ros marinus(海の露、もしくは雫)」と呼んでいたため。バラではなく“雫”が語源であると言えますし、属名のRosemarinusはそのままラテン語の呼び名が採用された形です。地中海性気候でも育ちやすく、「モミの木(針葉樹)に似ている」と称されるスッキリとした香りを持つローズマリーは、古代ローマ帝国時代以前から地中海沿岸地域で親しまれてきた植物です。
古代には万能薬と考えられていたハーブの1つにもローズマリーは数えられますし、記憶を司る“思い出のハーブ”として死者を偲ぶ供え物としても使われ、古代エジプトではファラオと一緒に埋葬されていたことも分かっています。ギリシアにも同じ風習はあったようですし、記憶力を高める=頭の働きを良くするハーブとして学生たちが使用していた・結婚式の誓いに使ったという伝承もあります。古代ローマでは花嫁装束にもローズマリーの小枝や花輪が使われ、新居の庭に根付くと幸せな結婚生活をおくれる・家が繁栄すると信じられていたという説もあります。記憶や思い出に関わるだけではなく、神聖であり幸せを運んできてくれるハーブとしても大切にされていたのかもしれませんね。
キリスト教でもローズマリーにまつわる伝説があり、聖母マリアにちなんで「Rose of Mary(聖母マリアのバラ)」と呼ぶことがあります。元々ローズマリーは白い花を咲かせていたそうですが、ヘロデ大王の幼児虐殺から逃れるべく移動していた際に聖母マリアが青いマントをかけたことで、色が移って青い花を咲かせるようになったと伝えられていますよ。キリスト降誕のシンボルとしても大切にされ、キリストよりも長生きしない=33年経つと枯れてしまうという伝承もあります。ちなみにローズマリーの和名はマンネンロウ、漢字では万年朗や万年蝋、もしくは中国名そのまま“迷迭香”と書いてマンネンロウと読ませることもあります。英名や何らかのエピソードと関係ががあるのかと思いきや、元々は常に香りがする植物=万年香(マンネンコウ)と呼ばれていたとの説が主流。経緯については断定されていませんが、誤字もしくは転化したのではないかと考えられています。
それ以外にも悪魔除け・消毒薬としてペスト対策に使われたなど、ローズマリーに関わる逸話は数多くあります。その中で現在でも女性の心を惹き付ける逸話と言えば“若返りの水”とも称される「ハンガリアンウォーター」のエピソードではないでしょうか。70歳を超え手足の痛みに悩まされていたハンガリー女王エリザベートは、修道女から献上されたローズマリーを漬けた水を献上されます。これを試すと痛みが落ち着いただけではなく、なんと外見までも若々しくなり、ついには隣国の王子にプロポーズされたと伝えられています。このことからローズマリーは若返りの象徴としても女性に重宝され、現在でもスパイス類の中ではセージと並んで際立って高い抗酸化力を持つことが報告されています。化粧水などにも配合されているものがありますね。
ローズマリー精油の種類について
ローズマリーはハーブの中でも1、2を争うと言われるほど美しい花を咲かせることも特徴。このため観賞用としても世界中で広く栽培されており、同じRosemarinus officinalisという種の中でも様々な栽培品種が作られています。園芸用品種も含めると基本的には立性種と匍匐性に大別し、更に高さや花の色などで大まかなグループ分けをすることもあるそう。ただし精油の場合であれば品種は同じであっても育てる土地・遺伝などによって香りは変わってきます。このため精油は品種ではなく含有成分・その比率によってケモタイプとして分類するのが一般的です。
ローズマリーのケモタイプ精油はマイナーなものを含めると6種類前後ありますが、小売されているのはシネオールタイプ・ベルベノンタイプ・カンファー(ボルネオン)タイプの3種類が主。中でも最もポピュラーなのが、カンファーなどのケトン類の含有量率が低く扱いやすいとされるローズマリー・シネオールです。ベルベノンタイプはシネオールタイプよりも若干ケトン類含有量が多いのですが、肝機能向上・ダイエットやスキンケアに対して高い効果が期待できるという説もあり、美容サポートにも注目されています。カンファータイプは呼び名の通りカンファー含有率が高いため使用に注意は必要ですが、筋肉痛・神経痛の緩和、記憶力ややる気向上など心身のサポートに有益に働く部分もあると考えられています。
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香料原料データ
- 通称
- ローズマリー・ベルベノン(Rosemary ct.Vervenone)
- 別名
- 迷迭香(マンネンロウ/メイテツコウ)、万年朗(マンネンロウ)
- 学名
- Rosemarinus officinalis(ct.Vervenone)
- 科名/種類
- シソ科マンネンロウ属(ロスマリヌス属)/常緑性低木
- 主産地
- コルシカ島・フランス、モロッコ、スペイン、チュニジアなど
- 抽出部位
- 全草(葉・花・茎)
開花時の先端部分のみを使用したものが高品質とも。 - 抽出方法
- 水蒸気蒸留法
- 色
- ほぼ無色~淡い黄色
- 粘性
- 低
- ノート
- トップ~ミドルノート
- 香り度合い
- 中~強め
- 精油成分
- α-ピネン、ベルベノン、1,8-シネオール、カンファー、カンフェン、リモネンなど
- おすすめ
- 芳香浴・アロマバス・マッサージ・スキンケア・ヘアケア・ハウスキーピング・防虫
ハーブとしてのローズマリーの印象に近い、フレッシュな香り
ローズマリー・ベルベノンに期待される働き・効能
精神面への作用と効果
ローズマリー・ベルベノンはケトン類のベルベノン(verbenone)という成分を多く含んでいることからベルベノンタイプとは呼ばれていますが、最も成分比率が高い成分はベルベノンではなくα-ピネンです。製品によっても差はありますがα-ピネンの含有率は20~30%前後で、ローズマリー系精油の中では最もα-ピネン含有率が高い精油でもあります。α-ピネンは俗に“森林浴効果”と表現される、森林浴をしている時と同じようなリラックス効果とリフレッシュ効果が期待されている成分。神経に対しての強壮作用を持つという説もあり、ストレスが多くお疲れな現代人のサポーターとしても注目されてます。
ローズマリー・ベルベノンはα-ピネン含有率が高いことから、ローズマリー系精油の中ではストレス対策や緊張緩和が得意であると考えられます。イライラ・不安・気持ちの落ち込みを感じている時のサポーターとして役立ってくれるでしょう。脳機能や記憶力アップという面では他のケモタイプよりも弱いと考えられますが、気持ち的に疲れていたり自信を失っている時の癒やしの香りとしては期待できます。また、脳に対する刺激作用を持つとされる1,8-シネオールの含有率が3種のメモタイプ精油の中では最も低いため、リラックスタイムや夜のバスタイムでの使用に適したオイルだという評価もあります。香りとしても三種のケモタイプ精油の中では最もマイルドで、穏やかな印象があります。
肉体面への作用と効果
ローズマリー・ベルベノン精油の主成分とも言えるα-ピネンは、第七の栄養素とされる“ファイトケミカル”の一つとしても注目されている存在。血流改善・胃液の分泌を促すことで食欲を高めるなど様々な働きを持つ可能性が報告されている成分でもあります。また、ベルベノンタイプにも10%程度のカンファーは含まれています。カンファーはケトン類で神経毒性を持つ可能性がある・刺激が強いことから使用に注意が必要という指摘もある成分。しかし、心臓強壮(鼓動を強める)作用を持つことも認められており、低血圧の軽減や脳への血流を増やすことで記憶力を高めるなどのメリットも期待されていますよ。
このためα-ピネンの働きと合わせて血液循環を促し、低血圧や血行不良性の冷え性・肩こり・腰痛などの軽減に繋がる可能性があります。α-ピネンは抗菌・免疫力向上作用を持つ可能性が報告されている成分でもありますから、血液循環を良くして体を温めることと合わせて風邪やインフルエンザ予防にも効果が期待できるでしょう。そのほか利尿効果によるむくみ解消・通経作用による月経不順の改善に役立つという説もあります。
肝臓強壮・ダイエットサポートにも期待
ローズマリー・ベルベノンの特徴成分であるベルベノン(verbenone)はケトン類に分類されます。しかし、ケトン類の中では刺激性や毒性が低いと考えられている成分で、肝機能調整や胆汁分泌促進作用など肝臓機能のサポートに優れた働きが期待されています。二日酔いの軽減や、暴飲暴食が続いた・消化機能が弱っていると感じている時に取り入れることをお勧めしているセラピストさんもいらっしゃるそう。
また、ベルベノンは脂肪溶解作用を持つ成分としても注目されている存在。ローズマリー・ベルベノンの精油には循環器系に対して刺激作用を持つ可能性があるとされているカンファー、血液循環を整えるα-ピネンも含まれていますから、合わせて代謝促進やデトックスにも効果が期待されています。デトックスやセルライトケア・ダイエットのサポートとして、ローズマリー・ベルベノン精油をキャリアオイルで希釈してマッサージに使用してみても良いかも知れませんね。
ただし上記でご紹介したベルベノンの作用については根拠が曖昧で、有効性を示した実験報告などもほとんどありません。民間療法の一種的な扱いとなっていますから、過度な期待は避けましょう。ベルベノンもカンファーもケトン類ですから高血圧やてんかんの方は使用を避ける必要がありますし、肝臓への働きかけを持つ可能性があるため肝臓疾患のある方も使用は厳禁です。
その他に期待される作用
肌・髪への働きかけ
ローズマリー・ベルベノンはスキンケア&ヘアケアに対して、3種のケモタイプ精油の中で最も適した精油であるとの見解が主となっています。これは皮膚刺激性が指摘されている1,8-シネオール含有量が低いということも関係していますが、1,8-シネオールを全く含んでいない訳ではありません。ケトン類にも皮膚刺激を感じる場合がありますから、きちんと低濃度希釈・パッチテストを行って使用してください。
ベルベノンタイプがスキンケアに優れた精油とされる2つ目の理由は、瘢痕形成作用と皮膚組織再生作用が期待できるため。この働きからお肌のシワやハリ低下が気になる際のエイジングケアにも役立つと考えられています。ハンガリーの女王が若返ったという伝説がある「ハンガリアン・ウォーター」に準じた形で精油を希釈してローションを作ることもありますが、その場合はベルベノンタイプが最も期待できそうではありますね。
そのほかα-ピネンやカンファーによる抗菌作用・皮脂分泌調整作用なども期待できますから、他のケモタイプ精油と同様に脂性肌のケアやニキビケアにも役立ってくれるでしょう。瘢痕形成・皮膚組織再生作用からニキビ跡の軽減や肌荒れの回復促進に役立つのではという説もあります。また、頭皮や毛髪についても皮脂分泌を適切に保つ働きが期待できますし、皮膚の代謝・再生を促すことでフケや抜け毛の防止・発毛促進・白髪予防などにも効果が期待されています。
ローズマリー・ベルベノンが利用されるシーンまとめ
【精神面】
- ストレス・精神疲労
- イライラ・興奮・緊張
- 不安・自信喪失・無気力
- 気分の落ち込み・抑うつ気味
- 気分の切り替えが上手くいかない
- リフレッシュしたい
- 癒しが欲しい
- ゆったりした気分になりたい
【肉体面】
- 消化不良・胸焼けに
- 血行不良・低血圧・冷え性
- 風邪・インフルエンザ予防
- 二日酔い・肝臓サポートに
- むくみ・セルライト対策
- ダイエットのサポーターに
- 肌のエイジングケアに
- 脂性肌・ニキビケアに
- フケ・白髪・抜け毛予防に
ローズマリー・ベルベノンの利用と注意点について
相性の良い香り
ローズマリー・ベルベノンは3種のケモタイプ精油の中でも、最もフレッシュで刺激感のない香りです。シネオールタイプと同様に相手を選びにくい香りではありますが、特に柑橘系やハーブ系の香りであればブレンドしやすいと思います。ウッディー系やスパイス系など少し強め、アクセントになるような香りとの組み合わせもお勧めです。
ローズマリー・ベルベノンのブレンド例
- ストレス対策として⇒ベルガモット、ラベンダー、バジル
- 肩こり・筋肉痛に⇒ラブダナム、ペパーミント、ジンジャー
- セルライトケアに⇒シダーウッド、プチグレン、レモン
- 肌のエイジングケアに⇒フランキンセンス、ゼラニウム
ローズマリー・ベルベノン精油の注意点
- 妊娠中・授乳中の方、お子さんへの使用は避けましょう。
- 高血圧・てんかんのある方は使用を避けるか、医師に相談しましょう。
- 肝臓疾患や持病のある方も医師に相談してから使用してください。
- 芳香浴の場合でも、高濃度で使用すると肌へ刺激を与える場合があります。
- アロマテラピーは医療ではありません。効果や効能は心身の不調改善を保証するものではありませんのでご了承ください。
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参考元