【アロマ】タラゴン(エストラゴン)精油
-植物の特徴・期待される効果効能とは?

【アロマ】タラゴン(エストラゴン)精油<br />-植物の特徴・期待される効果効能とは?

甘くスパイシーな香りが魅力的

エストラゴンという呼び名でも知られるタラゴン。中国やインドの伝統医療では生薬として活用されてきた植物でもあります。精油も様々な効果効能が囁かれてはいるものの、エストラゴールなど毒性・刺激性が危惧される成分を含んでいることから使用には注意が必要。香りを楽しむ目的でのみ、少量使うのがおすすめです。

タラゴン(エストラゴン)イメージ

タラゴン(エストラゴン)とは

タラゴンの特徴・歴史

タラゴンは、フランス料理のレシピでも時折見かける、甘苦いような複雑な芳香が特徴的なハーブ。料理用ハーブとしては英名タラゴンよりも、フランス語の“エストラゴン”と言ったほうがピンとくる方もいらっしゃるかもしれません。フレンチではタラゴンビネガー、オムレツなどの卵料理、肉・魚料理など様々な料理に使われていますし、フランス以外でもヨーロッパやアジアにかけての地域で多用されているハーブです。

そんなタラゴンは、植物としてはキク科ヨモギ属に分類される植物。日本でもお馴染みのハーブ・薬草と言える“蓬(ヨモギ)”と近い種であることから、日本では西洋ヨモギや、ホソバアオヨモギなんて呼び方もされています。とは言え、ホソバ(細葉)と付くようにヨモギよりも葉は細長く、香りも甘さ・苦さ・スパイシーさの入り混じった独特のもの。あまりヨモギと共通点は感じられません。

タラゴン(taragon)という呼び名や種小名のdracunculusは、ラテン語の「小さなドラゴン」が由来という説が有力視されています[1]。ドラゴンが語源であること、淡白な味を引き立てて料理の味を劇的に変化させてくれることにちなんで、ハーブとしては「魔法の竜」なんてファンタジックな呼び方をされることもありますよ。

タラゴンがヨーロッパで料理に使うハーブとして記録されるようになったのは、16世紀頃から。ただし、それ以前から薬草としては活用されており、1世紀に活躍した古代ローマの博物学者である大プリニウスなども記録に残しています。古代ギリシアの医者ヒポクラテスが、蛇や狂犬に噛まれた時の毒消しとして利用していたという説もあります。アラブの植物学者であり医師であるイブン・バイタールも、タラゴンを口臭予防や睡眠導入に良いとしていますし、インド伝統医学アーユルヴェーダでは強壮剤や免疫賦活剤・月経調整などにも使われています[2]。

日本でタラゴンの香りは、ポピュラーとは言い難い存在。しかし、ユーラシア大陸の広範囲で、タラゴンは古くから伝統医学の中で取り入れられてきた薬用植物と言えます。タラゴンの香りを使った香水や石鹸なども流通しており、比較的“タラゴンの香り”というのも馴染のある存在のようです。

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タラゴン(エストラゴン)の精油成分について

Artemisia dracunculusを原料としたタラゴン精油と一口に言っても、精油成分の含有率は産地や収穫時期によって大きく異なることが分かっています。トランス-アネトールの含有率が高いという分析結果もある[3]ものの、基本的にはエストラゴール(メチルチャビコール)の含有率が高いと考えておくと良いでしょう。

エストラゴール(メチルチャビコール)は香水や香料に用いられていますが、欧州ハーブ薬委員会(HMPC)からは発癌性や遺伝毒性がある可能性が指摘されています[2]。曝露レベルによって重篤性は下がるとされていますし、アメリカ食品医薬品局(FDA)はタラゴン油および抽出物を安全に使用できるものとしてリストしています[3]。ただし、毒性が懸念される成分を含んでいることは念頭に置き、妊娠中の方やお子様への使用、高濃度や長期間に渡る使用は避けましょう。日本では元々禁じられていますが、精油を経口摂取することもNGです。

香料原料データ

通称
タラゴン(Tarragon)
別名
エストラゴン(Estragon)、フレンチタラゴン(French Tarragon)、西洋ヨモギ
学名
Artemisia dracunculus
科名/種類
キク科ヨモギ属/多年草
主産地
フランス、オランダ、ハンガリー、イタリアなど
抽出部位
全草
抽出方法
水蒸気蒸留法
無色~淡黄色
粘性
低め
ノート
トップノート
香り度合い
中~強め
精油成分
エストラゴール(メチルチャビコール)、メチルオイゲノール、イソエレミシン、エレミシン、トランス-アネトール、リモネン、β-ピネン、4-テルピネオールなど
おすすめ
芳香浴・アロマバス・マッサージ・ハウスキーピング

フェンネルやアニス系の甘さと、シャープなスパイシーさが混じった香り

タラゴン(エストラゴン)精油に期待される働き・効能

精神面への作用と効果

タラゴンのエッセンシャルは伝統療法の中で催眠薬のように用いられてきた歴史があります[2]。現代でもアロマテラピーなど民間療法において、タラゴン精油は心と体を落ち着かせるリラクゼーション効果があると考えられています[4]。このため、ストレスや不安を軽減し、睡眠の質を向上させる働きが期待されています。

また、フェノール類(アネトール、エストラゴール、メチルオイゲノールなど)には覚醒作用があるという説もあります。このため、メンタルバランスを整えてくれる、刺激を与えて活力を取り戻す手助けをしてくれる、なんて見解もあります。

“タラゴン(Artemisia dracunculus)がうつ病のマウスモデル心理的回復力を促進した”という研究報告はあるものの、実験はタラゴン抽出物をマウスに摂取させたもの。効果についてもポリフェノールが関与している可能性が挙げられています[2]から、タラゴン精油の芳香吸引による効果は未解明。タラゴンは毒性が懸念されるエストラゴール(メチルカビコール)を多く含む精油でもありますから、リラックス目的であれば別の精油を使ったほうが良いでしょう。

肉体面への作用と効果

タラゴンは伝統的に食欲増進剤や、鎮痙薬・駆風薬として消化器系のケアに用いられてきたハーブ[1]。精油もまた消化器系のサポートに役立つと考えられ、食欲がないときや消化が悪いと感じる時、お腹が痛い時に活用されることがあります。

『Pharmaceutical Biology』に発表されたマウスを使った研究でも、タラゴン精油に末梢および中枢の抗侵害受容活性が見られたことが報告されています[5]。タラゴンやタラゴン抽出物が鎮痛作用や抗炎症作用を持つ可能性を示唆した報告はその他にもあり[2]、タラゴンが伝統的に痛みを伴う症状の治療に用いられてきたのは“信仰”以上の根拠があると考えられています。

また、発癌性などの懸念がある一方で、エストラゴール(メチルカビコール)も抗炎症活性を持つ可能性があることが報告されています[6]。このため、タラゴン精油は筋肉痛や神経痛・リウマチなどのケアに、マッサージや温湿布と使われることもあります。

ただし有効性が示唆される研究の多くは、投与や摂取によるもの。芳香吸引やマッサージに精油を利用した場合の働きについては、ほとんど分かっていません。皮膚に対しての刺激性がある精油でもありますから、アロママッサージなどに利用する場合は注意が必要。皮膚利用の安全性が高い精油を使ったほうが良いでしょう。

その他に期待される作用

皮膚利用について

エストラゴールやメチルオイゲノールなど、タラゴン精油の大半を占めているフェノール類は抗菌・殺菌・消毒作用を持つと考えられています。このため、タラゴン精油は。ニキビ・吹き出物などのケアに効果が期待されており、精神面への働きかけと合わせてストレス性の肌トラブル全般に良いとする見解もあります。

実際にタラゴン精油はスキンケア剤の成分として利用されています[2]が、皮膚刺激性が強いため、化粧水やフェイシャルスチームを自作する場合には注意が必要です。逆に、皮膚炎症を起こす原因となってしまうこともあります。スキンケア用としては別の精油を選ぶようにした方が無難でしょう。

女性の身体への働きかけについて

タラゴンは伝統医学の中で通経薬や月経困難症のケアにも利用されてきた歴史があります[1]。タラゴン精油も精油も通経作用のある精油に数えられ、月経促進作用から無月経・生理不順など月のリズムが気になる時のケアに役立つのではないかと期待されています。また鎮痙作用・筋肉の緊張を和らげる働き[4]から、生理痛の緩和に良いという説もあります。

とは言え、女性器系・神経系どちらの働きかけについても根拠と呼べるほどの研究は行われていません。タラゴンは刺激・毒性のある精油にも数えられている存在ですから「すごくこの香りが好きで、気分が落ち着く」という方以外は、あえて使用するメリットはないでしょう。なお、妊娠中や授乳中の使用は禁忌とされています。小さいお子さんが近くにいる際の使用も避けましょう。

タラゴンが利用されるシーンまとめ

【精神面】

  • ストレスを感じている
  • 不安・消耗感がある
  • 無気力・神経疲労
  • ストレスで寝付きが悪い時

【肉体面】

  • 食欲がない
  • 消化不良・腹部膨満感に
  • お腹の痛みのケアに
  • 筋肉痛・肩こりなどの緩和

タラゴン(エストラゴン)の利用と注意点について

相性の良い香り

柑橘系やスパイス系の香りと相性が良いとされています。ハーブ系やウッディー系の香りとも比較的組み合わせやすいですが、香りが強めなのでブレンド時に多く加えすぎないように注意しましょう。成分的に見ても、ほんの少しを“隠し味”程度に加えるのがおすすめ。

タラゴンのブレンド例

タラゴン精油の注意点

  • 妊娠中・授乳中の方、お子さんへの使用はできません。
  • 皮膚を刺激する可能性があるため、敏感肌の方は使用に注意が必要です。
  • 毒性が指摘されている精油です。
    少量・低濃度で体調に違和感がないか注意して使用し、常用は避けるようにしましょう。
  • 疾患がある方・投薬治療中の方は医師に確認してから利用して下さい。
  • アロマテラピーは医療ではありません。効果や効能は心身の不調改善を保証するものではありませんのでご了承ください。
  • 当サイトに掲載している情報は各種検定とは一切関わりがありません。

参考元