アガーウッド/沈香とは
心と身体を浄化するとも称されるオリエンタルな香りから、世界中で愛されているアガーウッド。香水やインド系ショップのお香などでもよく見かける名前ですね。アガーウッドと言うと聞き馴染みのない植物のように感じますが、日本では“沈香”もしくは高品質の沈香を指す“伽羅”と呼ばれている樹木のことです。白檀と並んで香木やお香としてもよく使われており、香道になくてはならない存在でもあります。近年はスピリチュアルな面での働きかけが期待できるとして、瞑想用のお香やパワーストーンの浄化用などにも使われています。
沈香や伽羅の原料となるのは熱帯アジア原産の、ジンチョウゲ科ジンコウ属の常緑高木です。特定の種のみを利用しているわけではなく、ジンコウ属のうち15種類くらいが香料として利用できるくらいアガーウッド(沈香)を産生することが認められています。特にインドで多く見られる学名Aquilaria agallochaが有名ですが、シャム沈香と呼ばれるインドシナ半島産のAquilaria crassnaは甘さがある・インドネシア産のタニ沈香Aquilaria malaccensisは少しビターで辛味のある香りがあるとも言われています。これは香道で「六国五味」と呼ばれる沈香の産地等による分類で表現されているもので、最上級とされる伽羅は五味(甘・酸・辛・苦・鹹)に通じる奥深い香りを持つものを指すそうです。
沈香(伽羅)は日本で古くから高級香木として重宝されてきた存在で、推古天皇には推古天皇の時代には流れ着いた沈香木が宮廷に献上されたということが『日本書紀』に書かれています。また正倉院には天下第一の名香と謳われる沈香の香木“蘭奢待(黄熟香)”が納められていることも知られていますね。仏教でもニルヴァーナへと導く香りであるとして重宝されたそうですし、アラビアではかつて王族以外の使用が認められていなかったことから”香りのダイヤモンド”と呼ばれていたそう。キリスト教と関わりが深い香料としては没薬や乳香が知られていますが、イエスの遺体を亜麻布(聖骸布)で包んだ際に「没薬と沈香を混ぜた物」を身体に塗ったという記述がありますよ。
現在でもアガーウッドは世界中で高級品として扱われており、精油も「最も稀少かつ最も高価なエッセンシャルオイル」とも称される存在。これは乱獲によって樹木が減少しているという問題だけではなく、沈香樹は元々芳香を持つ樹木ではなく時間をかけて一部が芳香を持つように変化することも関係しています。沈香樹は風雨や害虫・病気などによる刺激があると、自分自身を守るためにその部位に樹脂を分泌する性質があります。その分泌され蓄積した樹脂は、時間をかけてバクテリアや胞子などによって分解・変質されることで香気物質となるそう。香料として利用出来るようになるまでには樹脂の蓄積と変性という工程が必要なため、沈香樹全体のうち“沈香”を採取できる部分は1%以下であるとも言われています。ちなみに沈香という呼び名は「沈水香木」=水に浮くほど軽かった木に樹脂が沈着することで比重が増して水に沈むようになることが由来。
沈香は種・産地だけではなく、同じ木から採取されたものでも香りには微妙な差異が生じるそうですよ。近年は植林が行われている他、幹に人工的に傷をつけ地中に埋めるなどして作られている沈香もありますが、それでも大量生産向きとは言い難く高価になるのも納得ですね。アガーウッドの精油は高価であることに加えて、香り・粘性が強いことから原液ではなくオイルやエタノールなどで希釈したものも販売されています。天然物・人口生産物でも価格は大きく異なりますし、同じ木が原料でも香りが異なると言われるように芳香も様々。香木にしろ精油にしろ、なるべく香りを確かめて納得できるものを購入することをお勧めします。
基本データ
- 通称
- アガーウッド(Agarwood)
- 別名
- 沈香(ジンコウ)、伽羅(キャラ)、アロエウッド(aloeswood)、イーグルウッド(Eaglewood)、ガハル(Gaharu)、ウードオイル(Oud oil)
- 学名
- Aquilaria agallochaなど
- 科名/種類
- ジンチョウゲ科ジンコウ属/常緑高木
- 主産地
- インド、ラオス、ベトナム、インドネシア
- 抽出部位
- 木部(芯材)
- 抽出方法
- 水蒸気蒸留法
- 色
- 黄色~濃い琥珀色
- 粘性
- 高い
- ノート
- ベースノート
- 香り度合い
- 強い
- 代表成分
- アガロール、アガロスピロール、クスノール、エレモール、ジジンコー、ジンコホール
など - おすすめ
- 芳香浴
温かみのあるバルサミック感を含んだ、深く濃厚な木の香り
こんなお悩みにオススメ
【精神面】
- ストレス・神経疲労
- 気持ちの落ち込み・不安
- 気持ちを落ち着けたい
- 心をクリアに保ちたい
- 自分を見つめ直したい
- 寝付きが悪いと感じる
【肉体面】
- 気管支炎・喘息の軽減に
- 風邪予防や初期症状ケアに
- 花粉症を緩和したい
- 胃腸機能のサポートに
- 関節炎などの痛みに
- 心身をデトックスしたい
Advertisement
アガーウッド/沈香に期待される効果・効能
下記ではアガーウッドが持つとされている作用についてご紹介しますが、アロマテラピーではほぼ利用されていない精油で作用についてはハッキリ分かっていないものが大半です。また香りが異なる=精油成分にも差異があると考えられますので、基本的には香りを楽しむものとしてご利用ください。
心への作用
日本人であればお寺を連想するようなアガーウッドのスモーキーな木の香りは、鎮静作用やリラックス効果があると考えられています。精油ではありませんが沈香そのものはアーユルヴェーダや漢方でも生薬として使われており、香りによる鎮静作用から精神安定や不眠に良いとされています。またスピリチュアルな面では心や魂を浄化するなどの働きが信じられていることもあり、鎮静作用と合わせてストレス対策として効果が期待されています。媚薬効果があると言われているのも、ストレス性の精力減退の軽減に良いという点が大きいようです。
アガーウッドは独特の強く奥深い香りですが、どこか温かく繊細さを持ち合わせていると感じる方も多いと言われています。気持ちを落ち着けたいときだけではなく、瞑想時や自分と向き合いたい時の香りとしても適しているかも知れません。また香りを嗅ぐことで脳のα波が増加するという報告もあるそうですから、日頃のストレスでリラックスタイムも気が休まらないと感じている方・寝ようとすると不安や嫌なことばかりが浮かんでくる方のサポートととしても期待できるでしょう。
体への作用
伝統医学や民間療法でアガーウッドオイルは強壮作用や気の流れを促す作用を持つとして、気管支炎や喘息など呼吸器系の不調の緩和に利用されることがあるようです。抗菌作用を持つことと合わせて、発熱・痰絡みなど風邪の諸症状軽減にも良いとされています。近年は抗炎症作用や抗アレルギー作用を持つオイルとして、花粉症などによるアレルギー性のくしゃみ・目のかゆみ・鼻水などの軽減用にも注目されているようです。そのほか抗炎症作用から関節炎やリウマチの痛み軽減に良い、東アジアを中心に利用されてきた歴史から胃痛や食欲不振・吐き気などの軽減に有効とする説もあります。
また利尿作用・毒素排出を促すデトックス効果があるという見解もあり、心だけではなく身体を浄化してくれるオイルとして利用されることもあるそう。ただしアガーウッド(沈香)の精油は稀少かつ効果な存在で、自然療法としてよりも香料用として用いられることの多い存在。実験報告などのデータは多くありませんので、こうした働きについての有効性は分かっていません。作用については生薬として内服した場合の効能も一部混ざっている可能性も否めませんし、日本では基本的に“雑貨”として扱われているものですから過度な期待は避けましょう。
その他作用
皮膚利用について
アガーウッドオイルはアーユルヴェーダの中で皮膚の痒み・痛みをはじめとする皮膚疾患のケアにも利用されています。抗菌作用からニキビの予防や消毒に良いとする説もあり、国によっては石鹸やクリームなどのスキンケア用品に配合されていることもあるそう。ただし日本で使用されることはほとんど無く、皮膚刺激性などについても分かっていませんので自己判断の利用は避けたほうが良いでしょう。
参考元:Agarwood Oil
11 Amazing Benefits of Agarwood Essential Oil
アガーウッド/沈香の利用について
相性の良い香り
フローラル系や樹木系の精油と相性が良いとされています。香りが濃厚なので、重いと感じる場合は柑橘系とのブレンドもおすすめです。
【アガーウッドのブレンド例】
- ストレス軽減に⇒ローズ、ジャスミン、ベチバー、チャンパカ
- 安眠のサポートに⇒ラベンダー、カモミール、シダーウッド
- 女性のサポートに⇒ガルバナム、ゼラニウム、クラリセージ
- 風邪予防に⇒レモン、サイプレス、サンダルウッド、クローブ
アガーウッド精油の注意点
- 妊娠中・授乳中の方、小さいお子さんがいらっしゃる場合は利用を避けましょう。
- 持病のある方や薬を服用中の方は医師に相談してから使用してください。
- アガーウッド精油は使用データが少なく、副作用などについても判明していない部分が多くあると考えられます。禁忌とされていなくとも濃度・頻度などに注意して使用するようにしましょう。
- アロマテラピーは医療ではありません。効果や効能は心身の不調改善を保証するものではありませんのでご了承ください。
- 当サイトに掲載している情報は各種検定とは一切関わりがありません。