エイジングケアなど皮膚利用に注目
植物としてはカレープラントと呼ばれることも多いヘリクリサム(イモーテル)。花から採油された精油はハチミツに例えられる甘さのある、独特のハーバル調の香りが特徵です。メンタルサポートや呼吸器・消化器ケアなど幅広い効果が期待されていますが、近年はスキンケアに役立つ精油として注目されています。乾燥肌やエイジングケアに用いられているほか、βジオンの働きから打ち身などのケアにも活用されています。
Contents
ヘリクリサム(イモーテル)とは
ヘリクリサムの特徴・歴史
独特の甘さを感じさせる香りから、香水、石鹸、化粧品などの香料として用いられることも多いヘリクリサム。ヘリクリサムと言われると全く馴染みのない植物のようにも感じられますが、実は観葉植物として“カレープラント”の名前で販売されているお花。キク科ムギワラギク属に分類される植物で、ちょっとカサカサした感触の小さな黄色い花が密生していることが特徵。カレープラントと言われると覚えのある方もいらっしゃるのではないでしょうか。ちなみに呼び名はカレー料理に使われるからではなく、葉からカレーに似たスパイシーな香りがすることに由来しています。精油は花が原料なので、香りにカレーっぽさはありませんが。
ヘリクリサムはカレープラント以外にイモーテル(Immortelle)やエバーラスティングフラワー(everlasting flower)など様々な呼び方をされています。everlasting flower=永久花というのは、乾燥させても色と花姿が変わりにくい花を総称した呼び名です。Immortelleも直訳すれば不滅や不死を意味する言葉で、同じく乾燥しさせても色・形の変わらない植物を総称の総称として利用される言葉です。条件に当てはまるハナカンザシやカイザイクなども同様の呼び名が使われています。ヘリクリサムという言葉もムギワラギク属(Helichrysum)の属名そのままですからカレープラントのみを指す言葉ではありませんが、香料源として使われる機会が多いことから精油の場合は基本的にカレープラントを指す言葉として使われています。
ヘリクリサム(カレープラント)は南ヨーロッパから北アフリカにかけての地中海沿岸地域が原産。乾燥した岩場や砂地に自生することから、生命力が強いく力のある植物と考えられていたようです。実際は生命力が強いというよりは高温多湿な環境が苦手なだけですが。ともあれ葉がスパイシーな香りを持っていることもあって、古代ギリシアでは料理に利用したり、薬代わりに用いられることがあったと考えられています。現在でもヘリクリサムの若芽や葉は地中海料理でスパイス感覚で使用されています。また、乾燥しても色褪せないという特徵からお墓に供える花として、地域によっては永遠の愛を象徴するものとして花輪を花嫁に捧げる風習があったとも伝えられています。
精油に話を戻しますと、ヘリクリサム精油はその香りを「ウッディーさ+蜂蜜の甘さ」というような例えられ方をする存在。しかしフローラルなハチミツの香りではなく、甘みのあるスパイス・漢方薬の香りと捉える方もいらっしゃいます。香りの感じ方は人それぞれでもありますし、独特の濃厚さから好き嫌い・慣れ不慣れが分かれる精油であるように感じられます。カモミールやヤロウよりも柔らかな香りではありますが、採油量が少なく高価な精油でもありますから始めて購入する場合は香りを確認してみることをお勧めします。
香料原料データ
- 通称
- ヘリクリサム(Helichrysum)
- 別名
- イモーテル(Immortelle)、カレープラント(curry plant)、エバーラスティング(Everlasting)、イタリアンストローフラワー(Italian strawflower)
- 学名
- Helichrysum italicum
(syn.Helichrysum angustifolium) - 科名/種類
- キク科ムギワラギク属/多年草
- 主産地
- フランス、イタリア、スペイン、ユーゴスラビア
- 抽出部位
- 花(頭花・花序)
- 抽出方法
- 水蒸気蒸留法
(※溶剤抽出されたものも有) - 色
- 淡黄色~薄オレンジ色
- 粘性
- 低~中
- ノート
- ミドルノート
- 香り度合い
- 強め
- 精油成分
- 酢酸ネリル、α-ピネン、γ-クルクメン、β-カリオフィレン、リモネン、βジオン(イタリジオン)、リナロール、ネロールなど
- おすすめ
- 芳香浴・アロマバス・マッサージ・スキンケア
スパイシーで濃厚なハーバル調の中に、甘さを加えた香り
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ヘリクリサム(イモーテル)に期待される働き・効能
精神面への作用と効果
ヘリクリサムの精油は濃厚で甘みのあるハーバル調の香りが特徵。好き嫌いが分かれるものの、甘さ・温かさを感じるしっとりとした香りは緊張や感情面での昂ぶりを抑えて、心を穏やかにする手助けをしてくれると考えらられています。成分的に見ても、ヘリクリサムの精油に多く含まれているのは酢酸ネリル(ネリルアセテート)とα-ピネン。酢酸ネリルは鎮静作用を持つとされる成分ですし、α-ピネンは森林浴をしている時と同じようなリラックス効果とリフレッシュ効果が期待されていますよ。
ヘリクリサムの神経・精神面に対しての実験報告は少なく、作用などについては分かっていません。民間療法としては鎮静作用と抗うつ作用が期待できる精油として、ストレス・神経衰弱・精神的な疲労感・気持ちの落ち込みや無気力感がある時に適した香りとして用いられているようです。α-ピネンの森林浴効果からか、トラウマや恐怖心・失敗や後悔を引きずってしまっている時に適した精油という見解もあります。ストレスやマイナス感情が滞っていると感じる時に香らせてみても良いかも知れませんね。
肉体面への作用と効果
ヘリクリサムは地中海沿岸地域の伝統的医学において咳やアレルギー、消化器系の不調を軽減するために用いられていたと伝えられています。料理にカレープラントの葉を使用するのも、風味を良くするだけではなく消化を整える目的があった可能性もありますね。ヘリクリサムが消化器系のサポートとして利用されたのは、酢酸ネリルに鎮静・鎮静作用があること、肝臓を刺激して胆汁分泌を促す可能性があるためではないかと考えられています。鎮痛作用も期待できることから、腹痛やけいれん性の胃痛などの緩和に用いられています。
また、こうした働きはお腹の痛みだけではなく頭痛や筋肉痛の軽減にも役立つ可能性があります。酢酸ネリルやβ-カリオフィレンなどは抗炎症作用が期待できることと合わせて、関節痛や神経痛・リウマチなど様々な痛みの緩和に用いられることもあります。加えて近年はヘリクリサム特有の成分であるβジオン(イタリジオン)に、血腫抑制作用や血液凝固阻害作用が見られたということも報じられ注目されています。血液凝固を抑えることからサラサラ血液を保持してくれる成分として、高血圧や動脈硬化・心疾患の予防への有効性について研究が行われています。血行を良くすることからも血行不良や冷えに起因する痛みの緩和に繋がる可能性がありますね。
風邪予防・呼吸器ケアにも
ヘリクリサムは粘液溶解作用や去痰作用を持つ精油として、呼吸器系のサポートにも取り入れられています。抗炎症作用が期待できる成分も多いことから、花粉症などアレルギー性の症状から、咳・痰・気管支炎などの緩和用として利用されているようです。α-ピネンなど抗菌・抗ウィルス作用や免疫力向上作用が期待できる成分も多いので、風邪やインフルエンザにも一役買ってくれるでしょう。
その他に期待される作用
肌への働きかけ
近年ヘリクリサム(イモーテル)はエイジングケアに役立つ精油として注目されています。刺激が少なく敏感肌の方でも使いやすい部類であると考えられていますし、抗炎症作用と抗酸化作用の両方を持っていると報じられたことで一気にスキンケア精油としての需要が高まったそう。日本でもL’Occitaneさんからヘリクリスムイタリクム花油を配合した“イモーテル ディヴァイン(Immortelle Divine)”ラインが発売された関係もあって、一部の注目を集めた精油と言えます。
ヘリクリサムは肌に対して細胞成長促進・瘢痕形成作用を持つと称され、年齢に伴ったシワや肌のたるみ軽減に取り入れられています、作用秩序などは分かっていませんが、βジオン(イタリジオン)の働きで血液とリンパ液の循環を促すことが大きいのではないかとも言われています。酢酸ネリルには保湿効果が、ネロールには皮膚弾力回復効果が期待されていますから、合わせてお肌をより良い状態へと整えてくれるのでは無いでしょうか。傷や火傷痕を目立たなくするために利用する方もいらっしゃるようです。
そのほか抗炎症作用や殺菌・抗真菌作用を持つ成分が多いことから、ニキビのケアや水虫・カンジタ対策などにも取り入れられています。抗アレルギー作用と合わせて虫刺されやアレルギー性の皮膚炎症・かゆみを伴う乾燥肌のケアにも効果が期待されています。またβジオン(イタリジオン)の血腫抑制作用によって打ち身などの皮下出血やアザの回復促進用に役立つ精油としても取り入れられています。ちなみにβジオンはケトン類に分類されますが、ケトン類の中でも毒性が低い成分。用法用量を守って適切に使用する場合の危険性は低いとされています。
ヘリクリサムが利用されるシーンまとめ
【精神面】
- ストレス・神経疲労
- 無気力・疲労感がある時に
- 不安・気持ちの落ち込みに
- トラウマや失敗を引きずっている時に
- 前向きさ・活力が欲しい
- リラックスしたい
- ネガティブになりやすい方
【肉体面】
- 風邪予防・咳や痰の軽減に
- 神経痛・関節痛・リウマチに
- お腹の不調・腹痛の軽減に
- 肌のエイジングケアに
- 乾燥肌・かゆみのケアに
- 傷跡・火傷痕を薄くしたい
- 打ち身など皮下出血の治癒促進に
ヘリクリサム(イモーテル)の利用と注意点について
相性の良い香り
甘さと苦さがある個性的な香りですが、柑橘系の香りは違和感なく馴染みます。ヘリクリサムの香りが重く感じる時にも役立ってくれるでしょう。そのほかオリエンタル系や樹木系の香りとも相性が良いとされていますが、重めの香り同士でブレンドする場合には注意が必要。少量ずつ加えていくようにすると失敗しにくいです。
ヘリクリサムのブレンド例
- メンタルサポートとして⇒ベルガモット、アンジェリカルート
- 呼吸器系の不調に⇒サイプレス、レモン、サンダルウッド
- 肌荒れ・ニキビ対策に⇒カモミール、ヤロウ、プチグレン
- エイジングケアに⇒フランキンセンス、ラベンダー、ミルラ
ヘリクリサム精油の注意点
- 妊娠中・授乳中の方、お子さんへの使用は避けましょう。
- キク科アレルギーの方は使用に注意が必要です。
- 神経系統の弱い方・てんかんのある方は使用を控えるか医師に相談の上で利用してください。
- 肝臓に疾患のある方・抗血液凝薬などの医薬品を服用中の方は医師に相談しましょう。
- アロマテラピーは医療ではありません。効果や効能は心身の不調改善を保証するものではありませんのでご了承ください。
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参考元