瞑想にも使われる、しっとり静謐な香り
サンダルウッドは日本で白檀とも呼ばれる、お寺やお香を連想するようなしっとりとした香りを持つ樹木。広義ではビャクダン属の樹木全般が“サンダルウッド”と呼ばれますが、香木として需要が高いのはインド原産のサンダルウッド・インディアン。アーユルヴェーダでも使用されていますし、精油も鎮静・抗不安作用を持つと考えられています。特徴成分サンタロールには血行促進作用や抗炎症作用を持つ可能性も報告されていますよ。
Contents
サンダルウッド(白檀)とは
サンダルウッドの特徴・歴史
オリエンタル感たっぷりの、深く静かな香りが特徴のサンダルウッド。日本でも白檀としてお香でもお馴染みの存在ですし、お寺・仏壇などを連想される方も少なくないのでは無いでしょうか。宗教儀式・瞑想用の薫香や香木として用いられているほか、サンダルウッドは仏像や数珠などの仏具、寺院の建材、化粧品などにも幅広く用いられています。日本や中国では扇子の骨に白檀を利用したものも、高級品として知られていますね。また、近年ではストーン(石)ではないものの“パワーストーン”の一種としても販売されており、深く落ち着いた香りを手軽に楽しめることもあり浄化や厄払いを願う方に人気があります。
香料として、木材としても…様々な形で使われているサンダルウッド。植物としてはビャクダン科ビャクダン属に分類される熱帯性常緑樹で、サンダルウッドという言葉は広義ではビャクダン属(Santalum)に属す複数の植物の総称としても使われます。この中で私達が通常サンダルウッドもしくは白檀と呼んでいるのは学名をSantalum albumという、インドが原産の種類。原産地であるインドでは4000年以上昔から大切にされてきた存在で、紀元前5世紀ころには既に高価かつ高貴な香木として珍重されていました。世界最古の香料と考えられているものの一つでもあります
サンダルウッドは人にとっては心地よい芳香があり、防虫にも役立つことからの寺院などの建築にも使われていました。古代シルクロードの交易品として中国へも伝えられ、アーユルヴェーダ医学や漢方医学では生薬の一つとしても利用されています。宗教的にも「邪気を払う」「死者の魂を自由にする」と信じられていたこともあり、仏教の伝播に伴って東アジアで広く珍重される存在となりました。日本にも中国を通って伝わり、様々に活用されていますね。インドの方々にとっても大切なものでしたし、木材としての実用面・宗教的にも医薬としても使われていたことを考えると高価であったと考えられます。古代においては冨の象徴でもあったのではないでしょうか。
ヨーロッパへもサンダルウッドは伝わり、精油の抽出技術が向上したことも合わせてサンダルウッドの需要は高くなりました。サンダルウッドの精油は定着性が高く香りが長く残ることや、催淫作用があり色っぽさを演出してくれることなどから香水業界で欠かせない精油の一つにも数えられます。特にインドのマイソール産のサンダルウッド(老山白檀)は高品質とされ人気がありましたが、年々数が減少していることが問題となっています。近年は保護のためインド政府によってサンダルウッドの伐採制限・輸出規制が掛けられていますが、不法伐採は無くならず深刻な状態のようです。
気軽に使うには、環境的にも価格的にも少し気が引ける存在となっているサンダルウッド。サンダルウッドの精油はベチバーやフランキンセンス(乳香)などと同様に、時間の経過とともに香りが成熟して品質が向上する特性があります。数十年単位で香りが継続する精油でもありますから、入手した場合は香りを熟成させながら大切に使ってみても良さそうですね。精油と共に年を経て深みを得る…というのもロマンチックではないでしょうか。
サンダルウッド精油の種類について
インドのサンダルウッド(白檀/Santalum album)は数の現象や栽培の困難性から伐採制限・輸出規制がかけられています。そこでサンダルウッドの近縁種で似たような芳香を持つ植物も香料源として使われるようになり、サンダルウッド・オーストラリア(学名Santalum spicatum)などの精油も多く流通するようになっています。このため見分けを付けるためにサンダルウッド(Santalum album)を「サンダルウッド・インディアン(indian sandalwood)」や「トゥルー・サンダルウッド(True sandalwoods)」と呼び分ける場合も増えています。
サンダルウッド・オーストラリアは白檀と比較すると、少しライトな印象の香り。精油成分や芳香が似ていることからほぼ同じ作用が期待できると言われていますが、全く同じではないため作用が異なるという推測もあります。また、中南米原産のアミリスも、サンダルウッドと香りが似ているとして別名“ウェスト・インディアン・サンダルウッド”と呼ばれています。こちらはミカン科に属し植物分類上は全くの別種ではありますが、似た芳香・作用を持つと考えられ同様にサンダルウッドの代替え品として近年流通が増えています。
香料原料データ
- 通称
- サンダルウッド(Sandalwood)
- 別名
- サンダルウッド・インディアン(indian sandalwood)、トゥルー・サンダルウッド(True sandalwoods)、白檀(ビャクダン)、栴檀(センダン)
- 学名
- Santalum album
- 科名/種類
- ビャクダン科ビャクダン属/常緑高木
- 主産地
- インド、インドネシア、スリランカ、パラグアイなど
- 抽出部位
- 心材(木部)
- 抽出方法
- 水蒸気蒸留法
- 色
- 淡い黄色もしくは黄緑~琥珀色
- 粘性
- 高い
- ノート
- ベースノート
- 香り度合い
- 弱め~中くらい
- 精油成分
- α-サンタロール、β-サンタロール、α-ベルガモトール、α-サンタラール
- おすすめ
- 芳香浴・アロマバス・マッサージ・スキンケア・ヘアケア・防虫
お香を連想させる、深みと甘さがあるオリエンタルの香り
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サンダルウッド(白檀)に期待される働き・効能
精神面への作用と効果
神秘的でありながら陶酔感のあるサンダルウッドの香りは、深いリラックス状態へと導いてくれる香りとして愛されています。民間医療では古くからサンダルウッドの香気には優れた鎮静作用があると考えており、緊張や不安を和らげて心を落ち着かせてくれる働きがあるものとして扱ってきました。イギリスのテムズバレー大学からもサンダルウッドオイルが不安を軽減する可能性を示唆する研究報告もなされており、近代でも代替医療・補完医療として注目されています。
同じように脳の興奮を鎮めて気持ちを落ち着ける働きから、サンダルウッドの精油は睡眠の導入にも利用されてます。2007年には『日本心理薬学誌』に掲載された予備実験でも、良質な睡眠を促すための手段として有望なものとしてサンダルウッドが挙げられています。医学的にはまだ解明されてはいない部分も多いものの、サンダルウッドは脳の過剰な興奮を鎮めてくれる香りとして親しまれてきた歴史があります。心を深く鎮めて自分の内面・本質と向き合う手助けをしてくれる香りとして、瞑想時にもよく用いられていますね。
こうした伝統的用途なども踏まえ、サンダルウッドは気持ちを落ち着けたい時に適した精油であると考えられています。ストレスや不安対策としてメンタル面のサポートが期待できますし、精神的な疲労やストレスなどで頭が冴える・雑念が湧いてきて眠れない場面などでも役立ってくれる可能性があります。ただし書籍によっては抗うつ作用のある精油と紹介されている場合もありますが、鎮静効果が強すぎて気分がいっそう落ち込む可能性があることも指摘されています。一時的な気持ちの落ち込み軽減には良いですが、慢性的に抑鬱状態の方は使用を控えたほうが無難でしょう。
肉体面への作用と効果
サンダルウッドに含まれている精油成分で、主成分と言えるのがセスキテルペンアルコールの一種サンタロール。サンタロールは抗炎症作用や心臓強壮作用によって血行促進作用を持つと考えられており、サンダルウッド全体としてはリンパや静脈の鬱滞を改善する働きも期待されています。体液循環を整えるほか利尿作用があるという説もありますから、冷え性やむくみの軽減、セルライト対策などにもサンダルウッドは使用されています。精油を希釈してマッサージに利用すると、より効果的でしょう。
また抗炎症作用だけではなく、サンダルウッド精油は優れた殺菌・消毒作用や抗感染症作用を持つという説もあります。伝統的に去痰鎮咳作用と合わせて風邪の初期症状や咳・喉の痛み・気管支炎の軽減などに使用されていますし、免疫機能を強化する手助けをしてくれる精油という説もありますからルームフレグランスなどに活用すれば風邪予防にも一役買ってくれそうですね。そのほか利尿作用と合わせて膀胱炎などの泌尿器系の感染症対策に活用される場合もあるそう。症状がある場合は医療機関で受診すべきでますが、再発予防のためのセルフケアとして活用する方もいらっしゃるようです。
女性のサポートとしても
サンダルウッドの精油はホルモン分泌を調節するという説もあります。この働きについては断定されていませんが、古くから催淫作用を持つとして媚薬の原料に使われてきた歴史もあるため、何らかの性的な働きかけがあるのではないかと考えられています。現在でも男女問わず性欲を高める効果があると言われ、フェロモン香水の原料や、インポテンツや冷感症などベッドでのお悩みに使われることがありますね。
ホルモンバランスを整える働きがあるかは不明ですが、それ以外にもサンダルウッドは血液循環を促すなどの働きが期待できる精油。血液やリンパ液の流れを整える働きから、生理痛の緩和に繋がる可能性もあります。気持ちを落ち着ける働きも高いと考えられていますから、精神的ストレスから起こるホルモンバランスの乱れや月経不順・PMSなどの緩和にも効果が期待できるでしょう。
その他に期待される作用
肌への働きかけ
サンダルウッドは保湿剤として使用できると言われるほど保湿作用も高く、皮脂分泌を調節する作用がある精油にも数えられていることから乾燥肌・脂性肌どちらのケアにも利用されています。消毒作用や抗菌作用もあるのでニキビ予防にも取り入れられていますよ。ラベンダーなどと同じく水分の蒸発を抑えて潤いを保持し、肌を柔らかい状態に保ってくれるエリモント効果も期待されています。乾燥するのにニキビができやすい方のケアにも適していますね。
保湿効果が高いだけではなく、抗炎症作用があると考えられることから乾燥性の痒みや湿疹など炎症肌のケアに用いられることもあります。2014年『Phytotherapy Research』にはサンダルウッドのα-サンタロールおよびβ-サンタロールにサイトカインの生成抑制効果が見られたという報告も掲載されており、軽度の皮膚炎症に対する抗炎症剤としての有用性も示唆されています。そのほか保湿作用以外にシワを防ぐ働きがあるという説もあることからエイジングケアに活用されたり、α-サンタロールには皮膚ガンの予防に対する有効性を示唆する報告があったりと、サンダルウッドオイル・抽出物は皮膚の健康維持にも様々な研究が行われていますよ。
サンダルウッドが利用されるシーンまとめ
【精神面】
- ストレス・緊張・不安
- 精神的な疲労感
- 興奮・イライラ
- 一時的な気持ちの落ち込み
- リラックスしたい時に
- 自分と向き合いたい時に
- 寝付きが良くない時に
【肉体面】
- 血行不良・冷え性
- むくみ・セルライトケアに
- 喉の痛み・気管支炎に
- 風邪予防・咳の軽減も
- 生理痛・月経不順に
- 乾燥肌・ニキビケアに
- 肌のエイジングエアに
サンダルウッド(白檀)の利用と注意点について
相性の良い香り
オリエンタル系・バルサム系・フローラル系の香りと相性が良いとされていますが、どの系統の香りとも合わせやすい香りと言えます。ブレンドのしやすさと保香性の高さから、香りが飛びやすい精油の香りを持続させる目的でのブレンドにもよく利用されます。
サンダルウッドのブレンド例
- 心を落ち着けるたい⇒ベルガモット、フランキンセンス
- 風邪などの予防に⇒レモン、ラベンダー、ジュニパー
- セルライトケアにパチュリ、ゼラニウム、サイプレス
- 肌のエイジングケアに⇒ネロリ、イランイラン、ベンゾイン
サンダルウッド精油の注意点
取り扱いについて
サンダルウッドの精油はベチバーやベンゾイン(安息香)に次いで粘性が高く、瓶から取り出しにくい事が多いです。出そうと勢いよく振ってしまうと飛び散ったりする恐れもありますので、使用時には注意するようにしましょう。衣服などの布製品に付くと香りが取れにくいですし、シミになってしまうこともあります。
- 妊娠初期の使用は避けましょう。
- 抑鬱症状がある方は使用を控えて下さい。
- アロマテラピーは医療ではありません。効果や効能は心身の不調改善を保証するものではありませんのでご了承ください。
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参考元