花粉症軽減・スキンケアにも注目
ポリフェノール含油量が非常に高く、沖縄の長寿の秘訣ではないかと注目されるようになった月桃。独特の爽やかな香りを持つショウガ科の植物であることから、沖縄県の特産品・国産精油としても少しずつ流通するようになっています。抗菌・抗炎症作用が報告されている成分が多く、スキンケアに使用することでアンチエイリアシングをサポートしてくれるのではないかという説もありますよ。
Contents
月桃(ゲットウ)とは
月桃の特徴・歴史
一時期は赤ワインの34倍のポリフェノールが含まれているアンチエイジング植物としてメディアでも紹介されていた、ロマンチックな呼び名も特徴的な月桃。沖縄県の特産品でもあり、長寿地域である沖縄県民の健康維持に関与しているのではないかという論文[1]が発表されたことから世界的にも注目されている植物です。抗酸化作用が期待できる健康茶や、爽やかな香りを持つ国産精油という事も注目され精油やフローラルウォーターとしても販売されています。月桃精油やエキスを配合した石鹸や化粧水などの化粧品類、消臭・虫除けなどの商品ありますね。
そんな月桃は名前から“桃”のような甘くフルーティーな香り連想してしまいますが、精油はスッキリとした香りながらスパイシーさと甘さが含まれる独特のグリーン調。植物としても月桃はショウガ科ハナミョウガ属に分類される多年草、桃よりもショウガに近い存在です。ちなみに同属にはタイ料理で使われるガランガルや、観賞用として知られるレッド・ジンジャーなどがあります。商品パッケージなどで目にするブドウ房状・赤い縁取りの入った白いつぼみが印象的ですが、先端が開くと中から黄色と赤という鮮やかな色の花びらが出てきます。
月桃の原産は東アジアと考えられており、分布域は熱帯から亜熱帯アジア。日本では沖縄県から九州南部で見ることが出来るほか、台湾やインドでも葉を料理や伝統医学の生薬として利用しているようです[2]。私たちが使っている“月桃(ゲットウ)”という呼び名のルーツも台湾での呼び名ではないかというのが定説ですが、由来については断定されていないそう。日本国内でも地域によってハナソウカやムチガシャなど様々な名前で呼ばれています。沖縄県では琉球王国の時代から月桃の事をサンニンやサネンなどと呼び、また「ぬちぐすい(命の薬)」として健康維持に取り入れてきたそうです。
琉球列島で月桃は抗菌防腐作用や防虫作用が期待できる植物として、種子は健胃・整腸効果のある生薬としてとして日々の暮らしの中でも活用されてきました。沖縄の縁起物であり健康・長寿を願って食される月桃の葉でムーチー(餅)を包んだ“ムーチーカーサー(鬼餅)”がありますが、これも香り付けだけではなく抗菌・防腐剤を兼ねていると考えられています。近年では特産品の一つとしてブルーシールアイスクリームなどの沖縄名物にも月桃フレーバーが使われていた李、月桃の茎を使った紙が作られていたりもします[3]。
月桃の種類について
国産・沖縄産の精油として注目されていることもあり全国的に月桃精油やそれを使った商品が流通していますが、月桃精油は100kgの葉から100gしか採れないと言われる希少価値の高い精油でもあります。主に原料として利用されている“月桃”は日本の在来種であるシマ月桃(本島月桃/学名:Alpinia zerumbet)ですが、台湾原産のAlpina uraiensisやそれとシマ月桃との交配種であるタイリン月桃(Alpinia zerumbet var. excelsa)[3]を原料とした精油も生産されています。
タイリン月桃の方が精油率が高く安価な傾向がありますが、香りについては本島月桃の方が高く評価されています。とは言え、本島月桃はスパイシーさが強くインパクトのある香りなのに対し、タイニン月桃の方がスパイシーさが少なく甘さが強めなので好みによっては使いやすいと感じる可能性もありそうです。成分的には大差ないとされていますから、お好みに合う香りを選んでみると良いのではないでしょうか。
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香料原料データ
- 通称
- 月桃(Gettou)
- 別名
- Shell ginger(シェルジンジャー)、Variegated Shell Ginger、Pink porcelain lily、サンニン、ソウカなど
- 学名
- Alpinia zerumbet(シマ月桃/サンニン)
Alpinia zerumbet var. excelsa(タイリン月桃/ハナソウカ) - 科名/種類
- ショウガ科ハナミョウガ属/多年草
- 主産地
- 日本(沖縄県~九州南部)、台湾、インド、タイなど
- 抽出部位
- 葉
- 抽出方法
- 水蒸気蒸留法
- 色
- 薄黄色~薄黄緑色
- 粘性
- 低い
- ノート
- ミドルノート
- 香り度合い
- 中~やや強め
- 精油成分
- 1,8-シネオール、テルピネン4オール、p-シメン、γ-テルピネン、ボルネオール、カンフェなど
- おすすめ
- 芳香浴・アロマバス・マッサージ・スキンケア・ヘアケア・ハウスキーピング・防虫
グリーン感をベースに、スパイシーさも含む爽やかな香り
月桃に期待される働き・効能
精神面への作用と効果
民間療法(植物療法)の中で月桃の葉の香りは鎮静作用を持ち、ストレスや不安を和らげる働きがあると考えられています。月桃エッセンシャルオイルもストレス・うつ・不安神経症などのメンタルトラブル軽減に取り入れられることがあり[1]、芳香浴を楽しむことでもリラックス状態に導くサポートが期待されています。
ちなみに、産地やメーカーによっても違いがありますが、2014年『Natural Product Communications』に発表された月桃精油のGC-MS分析結果[4]では1,8-シネオールが主成分と発表されています。また2018年に発表されたGC-MS分析[5]ではテルピネン4オールが全成分の19.7%を占める主成分であると報告されています。テルピネン4オールという成分にも鎮静・神経強壮作用が期待されていますし、いくつかの動物実験では月桃精油(A. zerumbetessential oil)によって抗不安作用やリラックス効果が見られたという報告もあります。ただし、人に対しての有効性が認められる段階ではありませんから、過度な期待は避けましょう。
そのほか、月桃の香りが持つスーッとした清涼感はリフレッシュ効果が期待でき、脳を刺激・活性化させる作用を持つという見解もあります。神経の興奮を鎮める・脳の活動を高める働きが期待できることから冷静さや集中力を保つ手助けとしても期待されています。香りそのものとしても、相乗効果が期待できるという面でも、ローズマリーとの相性が良いなんて話も。こちらも有効性が認められているものではありませんが、プレッシャーのかかるプレゼンや試験前の勉強時などに香らせてみても良いかもしれません。
肉体面への作用と効果
月桃の精油は神経系への鎮静作用が期待できると考えられ、伝統医療の中で鎮静・鎮痛剤のような形で用いられてきた歴史があることから頭痛や生理痛などの“痛み”の緩和に用いられることもあります。特にストレス・神経的な部分に起因する胃痛や腹痛などの軽減に役立つのでは、という見解もあるそう。希釈してマッサージや温湿布として活用することで、肩こり・疲労・筋肉痛などの軽減用に用いられることもあります。
その他に、日本やブラジルでは民間療法の中で降圧剤のような形で用いられてきたこと・2003年『Fundamental & Clinical Pharmacology’s』に動物実験ではエッセンシャルオイルとその主成分であるテルピネン-4-オールに高圧作用が見られたことが報告されている[1]ことから、芳香浴でも血圧を下げる手助けが期待されています。鎮静・リラックス作用と合わせて心拍数を安定させたり身体を落ち着けてくれる精油との説もありますよ。どれも人に対する有効性が認められているわけではありませので、ご自分の体調を確認しながらセルフケアの一環として取り入れるようにしましょう。
風邪予防・アレルギーケアにも期待
月桃精油にはユーカリ系の精油やティーツリーなどの特徴成分でもある、オキサイド類の1,8-シネオールという成分が多く含まれているという報告[4]もあります。1,8-シネオールは抗菌・抗ウイルス作用や免疫向上作用、抗炎症作用によって粘膜系の炎症を落ち着けたり痙攣を和らげるなどの働きを持つ可能性が示唆されており、風邪予防から花粉症の軽減まで幅広い呼吸器系のサポートが期待されている成分です。
月桃精油の有効性について十分な研究は行われていませんが、1,8-シネオールを含んでいること、同じく抗炎症作用や抗菌・抗ウィルス作用が期待できるテルピネン4オールなどを含んでいることから同様に呼吸器系のサポートに役立つのではないかと考えられています。香りもスッキリとして鼻が通るような印象ですから、鼻詰まりや鼻炎、花粉症による鼻の痒みなどの軽減策の一つとしても注目されています。精油ではなく月桃という植物全体としては抗菌活性・抗炎症が見られたという報告[1]もありますから、風邪予防に香らせてみても良いかもしれません。
その他に期待される作用
肌への働きかけ
月桃の精油や芳香蒸留水(フローラルウォーター)は肌に対して様々な効果が期待されており、化粧品原料としても注目されている存在です。肌に対する働きとしては収斂・保湿作用が高いと考えられ、肌を引き締めつつ潤いを保持する働きが期待されています。また精油の場合も高い抗酸化作用が期待できることから、収斂作用と合わせてシミやシワ・たるみなどの肌老化対策としても注目されています。アンチエイジング・エイジングケア系の自然派化粧品などにも取り入れられているようです。
成分的にみた場合は1,8-シネオールやテルピネン4オールなどの含有量が高いことから、抗菌・抗炎症作用が期待されています。このため日焼け後のお肌のケアやニキビ・あせも・かぶれなどの炎症に良いとする見解も。とは言え月桃精油が人間の皮膚に対してどのような有効性を持つかの報告は少なく、皮膚刺激性についても分かっていません。使用する場合はパッチテストを行い、お肌の調子を見ながら使用するようにしましょう。
消臭剤・虫除けにも
月桃は沖縄で消臭・防虫・防カビ・抗菌などの効果を持つ植物として、古くから生活の中で使用されてきた歴史があります。現在でも様々な精油成分の複合効果で殺菌・抗菌作用や消臭・防虫効果などを持つことが報告されています。このため天然成分系の消臭剤や防虫・防カビ剤などに月桃精油やエキスが原料として取り入れられています。
月桃の精油を水で希釈してゴミ箱やキッチン周りなどにスプレーしておくだけでも、嫌なニオイや虫・カビ対策として役立ってくれるでしょう。お出かけ時の虫除けを兼ねてアロマスプレーを作る方もいらっしゃるそう。独特の香りが気になる方はペパーミントなどとブレンドすると軽い印象になるでしょう。
月桃が利用されるシーンまとめ
【精神面】
- ストレス・神経疲労
- 緊張・不安・神経過敏
- イライラ・落ち着かない
- 気持ちを落ち着かせたい
- ストレス耐性を高めたい
- 集中力を高めたい
【肉体面】
- 頭痛・生理痛・筋肉痛
- 免疫力向上・風邪予防
- 花粉症や鼻炎の軽減に
- 肌のアンチエイジングに
- 乾燥・毛穴開きに
- 防虫・防カビ・消臭に
月桃の利用と注意点について
相性の良い香り
比較的どの系統の香りともブレンドしやすい香りです。特に柑橘系の香りは相性が良く、スッキリとした印象を持つウッディー系・ハーブ系の精油ともブレンドしやすいでしょう。
月桃のブレンド例
- 集中力サポートに⇒レモン、ローズマリー、ペパーミント
- 花粉症・鼻炎軽減に⇒ティートリー、パイン、ユーカリ
- 生理痛の緩和に⇒アンジェリカ、マジョラム、クラリセージ
- スキンケア用に⇒ラベンダー、フランキンセンス、ヒノキ
月桃精油の注意点
- 禁忌とはされていませんが、妊娠中の方・小さいお子さんへの利用は控えた方が無難です。
- 血圧降下作用があるため低血圧の方は高濃度・長時間の使用を避けましょう。
- 皮膚を刺激する可能性があるため、敏感肌の方は注意して利用して下さい。
- 疾患がある方・投薬治療中の方は医師に確認してから利用して下さい。
- アロマテラピーは医療ではありません。効果や効能は心身の不調改善を保証するものではありませんのでご了承ください。
- 当サイトに掲載している情報は各種検定とは一切関わりがありません。
参考元
- [1]Viewpoint: A Contributory Role of Shell Ginger (Alpinia zerumbet) for Human Longevity in Okinawa, Japan?
- [2]Shell Ginger facts and health benefits
- [3]月桃とは? 日本月桃株式会社/有限会社月桃農園
- [4]Identification of volatiles in leaves of Alpinia zerumbet ‘Variegata’ using headspace solid-phase microextraction-gas chromatography-mass spectrometry.
- [5]Alpinia zerumbet an essential medicinal herb