メンタルサポートについては柑橘系随一とも
柑橘系の爽やかさの中に、フローラルやハーバルな印象も入り混じった柔らかい香りのベルガモット。アールグレイのフレーバーとしても有名ですね。“酢酸リナリル”を含む事が特徴で、精神や神経バランスを整えるえる手助けをしてくれるストレス対策精油としても注目されています。消化器系サポートや、抗菌・抗ウィルス作用なども研究されています。
Contents
ベルガモットとは
ベルガモットの特徴・歴史
紅茶“アールグレイ”の香りとしても知られるベルガモット。柑橘系の香りではありますが、酸味を連想するような爽やかさは控えめで、フルーティーながらフローラルさを合わせ持った優しい香りが特徵的です。好き嫌いの少ない柑橘系香料の中でもオレンジ・スイートと並んで、老若男女問わず受け入れやすい香りと言っても過言ではないでしょう。
天然精油か合成香料かを問わずに言えば、私達の周りには“ベルガモットの香り”が溢れています。日本でも飲料類や食品のフレーバー、スキンケア商品や化粧品・入浴剤・芳香剤など様々に使われています。ベルガモット系の香りをベースにした香水も多く販売されていますね。アロマテラピーにおいてもかなり使用頻度が高く、ポピュラーな精油の一つ。
ベルガモットの香りには馴染みがあっても、ベルガモットそのものを見たことがないという方も多いのではないでしょうか。ベルガモットは植物としてはミカン科ミカン属に分類される常緑高木樹で、ビターオレンジとレモンの交雑種、もしくはそれに近いものではと推測されています。ちなみに、果物としてベルガモットが販売されていることがほぼないのは「食べても美味しくない」から。ベルガモットにはフラボノイド配糖体が多く含まれており、苦味がかなり強いのです。一部地域でマーマレードやジュースにして使われてはいますが、大半が香料(精油製造)原料と言っても過言ではないでしょう。
ベルガモットの産地としてはイタリアなどの地中海沿岸地域が挙げられますが、原産は分かっていません。中国や南東アジア起源説もあれば、カナリア諸島原産でクリストファー・コロンブスが発見して持ち帰ったという説もあります。産地だけではなくベルガモット(Bergamot)という呼び名の語源についても、この木が最初に栽培されたイタリアの都市“Bergamo(ベルガモ)”が由来という説や、トルコ語で王様の梨を意味する“beg-armudi”という説など様々[1]。世界的に使用されている割には、謎が多い植物です。
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17世紀中頃からイタリアのカラブリアではベルガモット精油の抽出が行われるようになり、1750年にはイタリアのレッジョ・ディ・カラブリア周辺に最初のベルガモット果樹園が誕生したことが分かっています。そして18世紀初頭からはイタリアで本格的なベルガモット精油の生産が行われるようになった……というのが定説。18世紀の間にベルガモット精油のデリケートで優美な香りは注目され、現在使われている“オーデコロン”という言葉の元となった「Kölnisch wasser (ケルンの水) 」にも利用されています[1]。
ちなみに、ハーブティーなどで見かけるタイマツバナ(Monarda didyma)というハーブも同じ「ベルガモット」の名を持ちますが、シソ科で全く別の植物。同じく「ベルガモットミント」と呼ばれている植物・精油もありますが、こちらもシソ科ハッカ属の植物です。
香料原料データ
- 通称
- ベルガモット(Bergamot)
- 別名
- ベルガモットオレンジ(bergamot orange)
- 学名
- Citrus Bergamia
- 科名/種類
- ミカン科ミカン属/常緑高木樹
- 主産地
- イタリア、チュニジア、モロッコ、ギニアなど
- 抽出部位
- 果皮
- 抽出方法
- 圧搾法
(※水蒸気蒸留や、分留によりフロクマリン誘導体を除去した精油も有) - 色
- 淡い黄緑~オリーブ色
- 粘性
- 低い
- ノート
- トップノート
- 香り度合い
- 弱め~中くらい
- 精油成分
- リモネン、酢酸リナリル、リナロール、γ-テルピネン、β-ピネン、a-ピネン、ゲラニアール、フロクマリン類(ベルガプテンなど)など
- おすすめ
- 芳香浴・アロマバス・マッサージ・スキンケア・ヘアケア
柑橘系をベースに、フローラル感を含んだ柔らかい香り
ベルガモット精油に期待される働き・効能
精神面への作用と効果
産地やメーカー等によっても成分比率は異なりますが、ベルガモット精油の中で含有率が高い成分はリモネンと酢酸リナリルの二つ。リモネンは柑橘系の精油に多く含まれていることが特徵で、酢酸リナリルはラベンダーの主成分であると同時に「ベルガモット様の芳香を持つ成分」と紹介されることもある成分です。そのほか、ベルガモット精油はリナロールの含有率も比較的高くなっています[1]。
リモネン、酢酸リナリル、リナロールは、どれも鎮静作用を持つ可能性が報告されている成分。このため、ベルガモット精油は優れた鎮静作用を持つ精油として、ストレスや緊張によって興奮状態にある脳や神経を鎮め、イライラ・行き場のない怒り・欲求不満などを和らげて気分を落ち着かせる働きが期待されています。“酢酸リナリル”は他の柑橘系(果実)を原料とする精油には含まれていないことから、ベルガモットは柑橘系精油の中でも心のサポートに優れた精油と称されることもありますよ。
有効性を証明するにはさらなる研究が必要な段階ではありますが、ベルガモット精油が精神面に有効な可能性を示した研究報告も多く存在しています。2015年に発表された41人の女性を対象にした研究では、ベルガモット精油の蒸気吸入によって唾液中のコルチゾール量が大幅に低くなったことが報告されています[2]。コルチゾールは脳が危機やストレスを感じると分泌されるホルモンのため、この結果は、ベルガモット精油がストレスの緩和・軽減に役立つ可能性を示唆していると言えるでしょう。
そのほかにもベルガモット精油がうつ病や不安の治療に役立つ可能性が示されている研究報告はあり、中枢神経のバランス回復をサポートする働きを持つ精油として注目されています。精神状態を安定させることで気持ちをリフレッシュさせ、明るさや楽観性を取り戻す助けも期待できます。このためメンタルバランスを整え、神経・精神面でのトラブル全般に役立つという説もあります。
柑橘系ベースのベルガモットの香りは、ラベンダーやローズなどフローラル感が強い精油よりも人やタイミングを選ばない存在。ストレスが気になったり、感情コントロールが上手くいかないと感じている時に香らせてみても良いかもしれません。
安眠サポートにも
鎮静作用に優れた精油として、ベルガモットは安眠をサポートしてくれるベッドサイトアロマとしても使われています。鎮静作用によって神経の興奮を鎮める働きが期待できますし、ベルガモットオイルは血圧と心拍数を低下させ睡眠を助けるという研究もあります[2]。ストレスケアに高い効果が期待されている精油でもありますから、心因性の不眠・寝付きの悪さの軽減に効果が期待できるでしょう。
肉体面への作用と効果
リナロールは、鎮静作用だけではなく抗炎症作用や鎮痛作用が期待されている成分でもあります[3]。リナロールの酢酸エステルである酢酸リナリルも、抗炎症作用が報告されています[4]。このため、ラベンダーと同様に、ベルガモット精油も、頭痛や偏頭痛・腹痛・筋肉痛・神経痛・関節痛など様々な“痛み”の軽減に取り入れられています。
加えて、ベルガモット精油の中で含有比率の高い成分であるリモネンは、消化促進・整腸など胃腸機能サポートが期待されています。ベルガモット精油は神経系の鎮静やリラックスに用いられる精油でもあるため、緊張やストレス起因する消化器の痙攣や痛み軽減、過食症や拒食症などの摂食障害ケアに役立つのではないかと注目されています。
こうした理由から、食欲不振・消化不良・便秘・下痢・お腹の張りなど消化器系の健康維持全般にベルガモット精油は活用されています。ただし、ベルガモット精油の消化器系への有効性を示した報告は、投与によるものも多く、芳香吸引やマッサージによる働きに関しては民間療法上の効能も含まれています。精油は医薬品のように効果が認められているものではありませんので、健康維持の一環として取り入れましょう。
風邪予防・呼吸器ケアにも期待
ベルガモット精油は抗菌・抗ウィルス作用があり、殺菌消毒にも役立つと考えられているオイル。酢酸リナリルとリナロールには抗炎症作用[4]も期待されていることから、ベルガモット精油は風邪予防や初期症ケア、喉の痛みや扁桃腺炎・痰・気管支炎など呼吸器系の不調軽減にも活用されています。鬱血を軽減することで鼻詰まりや喉の痛みを軽減する、去痰・粘液除去作用があるという説もあります。
その他に期待される作用
肌への働きかけ
ベルガモットはメンタル面への働きかけに優れた精油であることから、香りを嗅ぐことでストレス性の肌荒れ・肌トラブル改善に対してもサポートが期待できます。抗菌・殺菌作用や抗炎症作用が期待できることと合わせて、にきび・吹き出物・湿疹・疱疹など肌トラブルの予防改善にも効果が期待されています。リモネンには皮脂を分解して落とす働きもあることから、脂性肌性ニキビや、頭皮・頭髪の油っぽさが気になる方のケアにも活用されています。
そのほか、抗酸化作用を持つ成分が多いためアンチエイジングに役立つ、創傷治癒促進作用があり傷跡やニキビ跡のケアに良い[5]という説もあります。ただし、一般的なベルガモット精油には光毒性のある成分が含まれているため、スキンケアやマッサージなど皮膚に直接塗布する形での使用は注意が必要です。これはベルガモット精油にはベルガプテンやベルガモチンなどのフロクマリン誘導体が含まれ、皮膚に接触すると光毒性によって皮膚炎を起こしてしまう危険性があるため[4]。
皮膚へ塗布する形で利用したい場合であれば、低濃度に希釈して使用後は紫外線を浴びないように注意するか、水蒸気蒸留や分留することで光毒性成分を除去したBGF(ベルガプテンフリー)もしくはFCF(フロクマリンフリー)の精油を選ぶようにしましょう。
デオドラント(消臭)にも
ベルガモット精油の殺菌消毒作用は、細菌やバクテリアの繁殖を抑制することで悪臭の発生を防ぐことにも役立ちます。合成香料がない時代、香水にベルガモット精油が多用されていたのも、香りの良さだけではなくデオドラント効果があったためではないかという説もあります。お部屋や衣服の消臭芳香剤としても利用できますし、紫外線を浴びない脇や足の裏などに希釈してスプレーしても体臭予防に繋がるでしょう。ブレンド相手を選ばない香りなので、香水や柔軟仕上げ剤の香りとの相性を気にしなくて良いのも嬉しいポイント。
ベルガモットが利用されるシーンまとめ
【精神面】
- ストレスが多いと感じる
- 緊張・不安・抑圧感がある
- 精神的な疲労感がある時
- 気持ちが落ち込んでいる
- リラックスしたい
- 寝付きが悪い・眠りが浅い
【肉体面】
- 食欲不振・食欲異常
- 消化不良・下痢・便秘・腹痛
- 頭痛・偏頭痛・関節痛
- 血行不良・肩こり・筋肉痛
- 喉や鼻の不快感がある
- ニキビ・脂性肌ケアに
ベルガモットの利用と注意点について
相性の良い香り
ベルガモット精油には、極めて相性が悪い香りはありません。どの香りとでも違和感なくブレンドすることが出来ます。ベルガモット精油自体が柑橘オイルとフローラルオイルをブレンドしたような香りですから、シングルでも十分楽しめますね。ベルガモットの香りの印象を壊したくない場合には柑橘系やフローラル系、フローラルなニュアンスを持つハーブ系との組み合わせもおすすめです。
ベルガモットのブレンド例
- 精神疲労の軽減に⇒タジェット、黒文字、ヘリクリサム
- 前向きになりたい⇒ネロリ、ジュニパー、ライム、ダバナ
- 安眠サポート用に⇒ラベンダー、クラリセージ、オレンジ
- 消化器系の不調に⇒アニスシード、和ハッカ、プチグレン
- 風邪予防に⇒レモン、ホーリーフ、ラベンサラ、シトロネラ
ベルガモット精油の注意点
- 妊娠初期の使用を避けてください。
- 特に記載の無いものは光毒性のある成分を含むため、肌への使用後は紫外線を避けましょう。
- 血圧を下げる可能性がある精油です。低血圧の方は注意して使用しましょう。
- 芳香浴として利用する場合でも、濃度や体質によっては皮膚刺激となる場合があります。
- 疾患がある方・投薬治療中の方は医師に確認してから利用して下さい。
- アロマテラピーは医療ではありません。効果や効能は心身の不調改善を保証するものではありませんのでご了承ください。
- 当サイトに掲載している情報は各種検定とは一切関わりがありません。
参考元
- [1]Chemical constituents of Bergamot oil
- [2]Inhalation Aromatherapy via Brain-Targeted Nasal Delivery: Natural Volatiles or Essential Oils on Mood Disorders
- [3]6 Amazing Linalool Benefits You Need to Know About
- [4]Citrus bergamia essential oil: from basic research to clinical application
- [5]The essential oil of bergamot stimulates reactive oxygen species production in human polymorphonuclear leukocytes