不眠対策に期待されるが、不明点も多い
ホップとは
ビールの原材料であり、独特の苦味・香りにも欠かせない存在として知られるホップ。風味の決めてとしてだけではなく、抗菌作用や防腐作用によってビールの保存期間を長くという役割も持っています。そんなホップの原産地は西アジア、黒海とカスピ海に挟まれた地域ではないかと考えられています。シュメール文明期には既に野生のポップと大麦を使って自然発酵させたビールに近い飲料を作っていたのではないかとする説もあるそうですよ。
ポップとビール作りの技法はシュメールからバビロニアを経由してエジプトに伝わり、古代エジプトでもビールが飲まれていたことが分かっています。現在のような嗜好品としてだけではなく、薬として医療の中でも活用されておりお金の代用にも使えたのだとか。“目には目を”で有名な『ハムラビ法典』でもビールに関わる法が記載されていると言われていますから、紀元前に栄えた古代文明では広くホップやホップを使って作ったビールの存在が知られていたと考えられます。ただしローマやギリシアでは大麦の栽培に適していなかったこともあり、ヨーロッパでビールが普及するようになるのは8世紀頃ドイツでホップ栽培が大々的に行われるようになってからと言われています。
ヨーロッパでのビール普及当初はヤロウやクラリセージなどの薬草や香草を使用したグルートビールと呼ばれるものが主流でしたが、14世紀頃になるとポップの苦味や保存性の高さが評価され、現在のようにビールと言えばホップという状態になっていきます。また中世ヨーロッパのハーブ辞典ではホップの鎮静効果が記されていますし、インドのアーユルヴェーダや中国の漢方でも生薬として用いられていたと言われていますから、薬用植物としての需要もあったと考えられます。現在でもハーブティーやサプリメントなどの健康食品に利用されていますし、ドイツのコミッションEでも鎮静効果が認められています。鎮静作用のほか抗酸化作用・ホルモン様作用が期待できることから、更年期障害など女性領域での不調にも取り入れられていますね。
対してホップのエッセンシャルオイル(精油)は日本では非常にマイナーな精油。かなりマニアックな品揃えの専門店以外ではほぼ見かけることはありません。欧米では様々な効果が期待され取り入れられているようですが、ホップ精油はミルセンやフムレンが主成分であることは分かっているものの、微量成分を含めると100種類以上の香気成分が含まれていると言われており、まだまだ未解明な部分も多いのだそう。刺激性・感作作用についても曖昧な部分があることは否めませんから、注意して使用したほうが良いでしょう。
基本データ
- 通称
- ホップ(Hops)
- 別名
- セイヨウカラハナソウ(西洋唐花草)
- 学名
- Humulus lupulus
- 科名/種類
- アサ科カラハナソウ属/性多年草
- 主産地
- ハンガリー、フランス、ドイツ
- 抽出部位
- 毬花
- 抽出方法
- 水蒸気蒸留法
- 色
- 淡黄色~オレンジ色
- ノート
- ミドルノール
- 香り度合い
- 中くらい
- 代表成分
- β-ミルセン、フムレン、α-カリオフィレン、リナロール、メチルノニルケトンなど
- おすすめ
- 芳香浴・アロマバス(※ごく少量で)
乾いた草をベースに甘さとスパイシーさを加えた様な、独特の香り
こんなお悩みにオススメ
【精神面】
- ストレス・神経疲労
- イライラ・ヒステリー
- 情緒不安定
- 寝付きが悪い
【肉体面】
- ストレス性の不調
- 胃腸トラブル緩和
- 頭痛・生理痛の軽減
- 風邪予防
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ホップに期待される効果・効能
心への作用
ホップの香りは高い鎮静作用があると考えられており、脳は計測の実験でもリラックス効果が見られたという報告がなされているようです。このためホップは気持ちを落ち着かせることに優れた精油としてストレスや神経疲労の軽減のほか、イライラしやすいなと感じている時にも適しているでしょう。気分が揺れ動きやすい方に適した精油とする見解もあります。
また成分的に見るとリナロールやゲラニオールなど抗うつ・抗不安作用が期待できる成分も含まれていることから気持ちが落ち込みがちな時に良いとする説もあります。ただし鎮静効果が高いことなどから“鬱症状がある人・鎮静剤を服用している人は使用を避けるべき”としている文献もありますので、サンダルウッドと同様に気持ちの落ち込みが強い方は使用を控えたほうが確実でしょう。
不眠対策にも期待
ホップの精油は高い鎮痛作用を持つことから不眠対策としても取り入れられています。特に心因性・ストレス性の不眠に高い効果が期待されており、枕元に香らせるようにすると深い睡眠を得られるとも言われています。有効性が報告された実験でセットで使われていたこともあり、バレリアンと組み合わせて使われることが多いようです。ただし過剰に使用すると鬱症状を引き起こす可能性があることも指摘されていますから、デイリー使いは避けたほうが良いでしょう。
体への作用
精神面への鎮静作用からストレス性の諸症状軽減に役立つとされています。消化機能系への働きかけもあると考えられていますから、特に神経性の食欲不振・消化不良・胃痛・腹痛などに効果が期待できるでしょう。また神経系への鎮静のほか鎮痛作用も期待できることから頭痛の軽減、神経痛や関節痛などの軽減に取り入れられることもあるようです。そのほか抗菌・消毒作用を持つ成分が多いこと、抗炎症作用を持つとする説があることから風邪予防や咳のケアなどにも効果が期待されています。
女性の体への働きかけについて
ホップの精油は鎮痛作用があることから生理痛の軽減にも用いられています。精神面への働きかけと合わせてホルモンバランスの乱れによるイライラやヒステリーの軽減などにも有効とされていますが、ハーブとして利用した場合のようなホルモン様作用(エストロゲン様作用)があるのか否かについては意見が分かれており、はっきりしません。オイルの場合はエストロゲン作用作用を持たないとする説もありますが、妊娠中・授乳中・ホルモン依存性疾患のある方の使用を禁忌としている文献も多いので該当する方は使用を避けましょう。
その他作用
皮膚利用について
抗炎症作用と皮膚軟化があるとされ、湿疹や皮膚炎症のケアに用いされることがあるようです。しかし感作作用があることも認められており、皮膚刺激性の強い精油であるとも言われていますから使用はおすすめできません。
ホップの利用について
相性の良い香り
柑橘系の精油と相性がよく、スパイス系やハーブ系の香りとも比較的組み合わせやすいでしょう。
【ホップのブレンド例】
ホップ精油の注意点
- うつ症状のある方・医薬品を服用中の方は使用を避けましょう。
- 妊娠中・授乳中の方や疾患のある方は使用を避けましょう。
- 刺激性・感作作用があるため注意が必要です。敏感肌の方は特に使用濃度に気をつけるようにして下さい。
- アロマテラピーは医療ではありません。効果や効能は心身の不調改善を保証するものではありませんのでご了承ください。
- 当サイトに掲載している情報は各種検定とは一切関わりがありません。