扱いが難しいものの、メリットも…
ユーカリ・ディベスはペパーミントユーカリとも呼ばれるように、メントール感のある香りが特徴。成分としては約半分をピぺリトンというケトン類が占めており、神経毒性や皮膚刺激性などがあることから使用には注意が必要な部類と言えます。しかしケトン類には脂肪溶解作用を持つ可能性が報じられたため、セルライトケアなどに役立つのではと注目されています。また、気持ちをシャッキリさせたい時のサポーターにも使われていますよ。
Contents
ユーカリ・ディベス(ペパーミントユーカリ)とは
ユーカリ・ディベスの特徴
ユーカリと言えばすーっと鼻に抜けるような、人によってはメンタームなどを連想させるような薬品っぽさのある香りが特徴。室内芳香剤や入浴剤などにも使われていることから、名前を聞いて香りをイメージできる方も多いのではないでしょうか。このページで紹介しているユーカリ・ディベス(Eucalyptus dives)の場合も大雑把に表現するならば染み透るような清涼感のある香りですが、ペパーミントユーカリという別名もあるようにミントに似た甘さを感じさせる清涼感ある香りが特徴です。
ユーカリという呼び名は植物分類でフトモモ科ユーカリ属(Eucalyptus)に分類される樹木の総称として使われています。属名の“ユーカリプタス”を短縮して言いやすい形にした言葉がユーカリなんです。原産地はオーストラリアやタスマニア島周辺。ユーカリと言えばオーストラリア特産品というイメージもありますが、ヨーロッパやアメリカ、ハワイなどにも植樹されています。ユーカリの木は成長が早く、根を深く伸ばて地下水を吸い上げてくれる性質があることから、近年は砂漠化地域の緑化対策用として植林されることも多いようです。
ちなみにユーカリ属の樹木は約500種類、変種も含めると1000近くと非常に多くの種類が存在します。香料源(精油の原料)として主に用いられているだけでも約15種類がありますから、一口に「ユーカリ」と言っても芳香成分や香りの印象にはかなりの違いがあります。そんなユーカリ類の中でも一般的に単に「ユーカリ」と言った場合に想像される香りはユーカリ・グロブルス(Eucalyptus globulus)であることが大半。精油としては次いで多く流通しているユーカリ・ラディアータ(Eucalyptus radiata)にも“ブラックペパーミント”という別名があるのですが、香りの印象はユーカリ特有の清涼感を柔らかくフルーティーにしたような印象。
ユーカリ・ディベス(ペパーミントユーカリ)はミントのようなスッキリとしたハーバル感があり、芳香成分もピぺリトンというペパーミント様の香りをもつ成分が主成分となっています。ユーカリの代表成分とも言われる1,8-シネオール(ユーカリプトール)の含有量はかなり少ない事もあって、香りは樹木系というよりもハーブ系寄りの印象です。クセの少ない馴染みある香りから消臭剤・マウスウォッシュなどにも配合されていますよ。ただし同じディベス種を原料としている精油でも、CTシネオール、CTフェランドレンとケモタイプが存在しているため成分は異なる場合があります。
ユーカリ系精油の種類について
ユーカリと呼ばれる樹木は500以上、香料源として使用されているものだけでも片手で数え切れないくらいにユーカリは種類が豊富。そんなユーカリ系精油の中でも最も生産・流通量が多いのがユーカリ・グロブルス(Eucalyptus globulus)で、アロマテラピーで単に「ユーカリ」や「ブルーガム」と呼ぶ場合もグロブルス種を指すのが一般的。カンファー感とも表現される染み入るような強い清涼感+スパイシーさのある香りを持つユーカリがこちらですね。
精油としてユーカリ・グロブルスに次いで良く用いられているのがユーカリ・ラディアータ(Eucalyptus radiata)という種類。別名ブラックペパーミントなどとも呼ばれていますが、香りはグロブルスよりも柔らかく、柑橘系っぽさを含んだフルーティーな印象。香りだけではなく作用も穏やかであると考えられていることから、お子様やお年寄りがいる場合、ルームフレグランスを兼ねて香らせたい場合などにも適しています。
この二種類が流通しているユーカリ精油の大半を締めていますが、レモン系の柑橘系っぽさが強いレモンユーカリ(ユーカリ・シトリオドラ/Eucalyptus citriodora)であったり、スッキリとした香りから消臭剤としても使われるユーカリペパーミント(ユーカリ・ディベス/Eucalyptus dives)などの精油を販売されているお店もあります。レモンユーカリはシトロネラールやシトロネロールが主成分ですし、ユーカリ・ディベスは主成分がピぺリトンとα-フェランドレン。ポピュラーなユーカリ精油2種はどちらも1,8-シネオール(ユーカリプトール)が主成分ですから、香りの印象も特性も別物と言えるでしょう。
そのほかα-ピネン含有量が高いユーカリブルー(ユーカリ・ビコスタータ/Eucalyptus bicostata)、レモンシロップの様な香りがあり作用が穏やかなハニーレモンユーカリ(ユーカリ・スタイゲリアナ/Eucalyptus staigeriana)、ユーカリ・スミシーなどの精油も流通しています。最も流通量の多いグロブルスとラディアータの2種については成分や特性が似ていますが、同じ「ユーカリ」であっても全く成分が異なるものもあります。それぞれ禁忌・注意などが異なりますので購入時は学名を確認するようにした方が良いでしょう。
香料原料データ
- 通称
- ユーカリ・ディベス(Eucalyptus dives)
- 別名
- ユーカリプタス・ダイブス、ペパーミントユーカリ(peppermint eucalyptus)、ユーカリピペリトン(eucalyptus piperitone)、ブロードリーフ・ペパーミント(broad-leaved peppermint)
- 学名
- Eucalyptus dives
- 科名/種類
- フトモモ科ユーカリ属/高木
- 主産地
- オーストラリア、タスマニア、南アフリカ
- 抽出部位
- 葉、小枝
- 抽出方法
- 水蒸気蒸留法
- 色
- 淡黄色~赤褐色
- 粘性
- 低い
- ノート
- トップノート
- 香り度合い
- 中くらい
- 精油成分
- ピぺリトン、α-フェランドレン、α-ツジェン、α-テルピネオール、テルピノーレン、ミルセンなど
- おすすめ
- 芳香浴・マッサージ
グロブルスとペパーミントをブレンドしたような香り
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ユーカリ・ディベスに期待される働き・効能
肉体面への作用と効果
ペパーミントユーカリ(ユーカリ・ディベス)にはグロブルス種やラディアータ種に多く含まれる1,8シネオールはほとんど含まれていません。主成分はピぺリトン(piperitone)というケトン類で、メントールではありませんがペパーミントのような“メントール系の香り”の元となっている成分でもあります。次いで含有量が多いのはモノテルペン炭化水素類に分類されるα-フェランドレンですから、同じユーカリ系精油ではあるものの成分的に見れば全く別物と言えますね。
ピぺリトンはケトン類に分類される成分で神経毒性があるため使用には注意が必要ですが、粘液溶解作用によって痰や鼻詰まり・蓄膿症などの呼吸器トラブルの緩和にも効果が期待されています。α-フェランドレンも鎮咳作用を持つと考えられていることから合わせて咳や気管支炎などのケアに、モノテルペン炭化水素類は全体的に抗ウィルス作用や抗炎症作用を持つとされていることから風邪予防や症状ケアにも役立つのではないかと考えられています。
成分は全く異なっているのに、ユーカリ系精油の一つとして呼吸器系のサポーターとして用いられるのはこのため。ただしグロブルス種やラディアータ種と比較すると実験報告の数が少ないですし、ピぺリトンやα-フェランドレンの働きについても有効性が認められるほどのデータは無いことが指摘されています。日本で精油は効能が認められた医薬品として販売されているわけでもありませんから、過度な期待は避けるようにしましょう。明らかな不調がある場合には自己判断でのケアではなく、医療機関を受診することをお勧めします。
ダイエットサポートにも期待?
毒性があって使用に注意が必要な成分であるケトン類ですが、近年は痩身効果を持つ可能性があることが注目されています。ペパーミントユーカリに含まれているピペリトンにも利尿作用や脂肪溶解作用があるのではないかという説があり、むくみの解消やセルライトの予防に役立つのではないかと期待されています。
ペパーミントユーカリの精油をキャリアオイルで希釈してマッサージに使用することでセルライト除去・ダイエット促進に取り入れる方もいらっしゃいます。…が、こちらも有効性は分かっていませんし、ピペリトンには皮膚刺激性もあります。肌荒れや接触性皮膚炎の原因となってしまう可能性もありますので、試して見る場合には希釈濃度に注意してパッチテストをきちんと行ったうえで取り入れるようにしましょう。
精神面への作用と効果
ペパーミントユーカリ(ユーカリ・ディベス)は呼び名の通り、ペパーミントもしくは薄荷を思わせるような香りが特徴。香りとしても気分をスッキリとリフレッシュさせてくれそうな印象がありますし、成分的に見ても主成分ピペリトンは中枢神経の興奮作用を持つという説があります。このためペパーミントユーカリは心を刺激・活性化することで前向きさとやる気を引き出す香りと表現されています。
スッキリとした香りは煮詰まってしまった時や心が疲れていると感じた時のリフレッシュ用としても役立ってくれますし、モチベーションを低下させたくない時の気付け感覚でも活用できそうですね。リラックス用としては適しませんが、意識をしっかりとさせて集中力を高めたい場面や、一日を乗り切りたい朝などに取り入れてみても良いかも知れません。
その他に期待される作用
皮膚利用について
成分的に見れば抗菌作用や傷の治りを早めて傷跡の修復を促す働き(瘢痕形成作用・癒傷作用)が期待できるとは言われているものの、ケトン類が主成分であり皮膚刺激性が高いことからユーカリ・ディベスはお肌のケア用としては滅多に使用されません。ニキビや傷、タコやウオノメのケアに良いという説もありますが、そうした目的で使用する場合には刺激性の少ない別の精油を選んだほうが良いでしょう。
ユーカリ・ディベスが利用されるシーンまとめ
【精神面】
- 精神的な疲労感がある
- 無気力・モチベーション低下時に
- リフレッシュしたい時に
- 前向きさ・やる気が欲しい
- 集中力を高めたい時に
【肉体面】
- 咳・痰喉の不快感に
- 鼻水・鼻詰りなどのケアに
- 風邪予防や初期症状ケアに
- むくみ予防・セルライト対策に
- ダイエットのサポートに
ユーカリ・ディベスの利用と注意点について
相性の良い香り
ユーカリ・ディベスはペパーミントユーカリという別名の通り、ミント系のクールな印象が特徴。このため精油は、書籍や販売社によって樹木系ではなくハーブ系に分類されていることもあります。同系統であるハーブ系や樹木系とのブレンド相性は抜群に良いですが、柑橘系の香りやスパイス系とも比較的ブレンドしやすい精油と言えます。
ユーカリ・ディベスのブレンド例
- リフレッシュ用に⇒セージ、ローズマリー、レモン
- 喉の不快感・風邪予防に⇒ヘムロック、ベンゾイン
- 鼻詰まり軽減に⇒ペパーミント、パイン、レモンユーカリ
- むくみ対策に⇒ジュニパー、シダーウッド・バージニア
ユーカリ・ディベス精油の注意点
- 妊娠中・授乳中・小さいお子さんへの使用は避けましょう。
- 神経系統の弱っている方(お年寄り)、てんかん患者には使用出来ません。
- 皮膚刺激がある精油のため、芳香浴の場合でも濃度に注意しましょう。
- アロマテラピーは医療ではありません。効果や効能は心身の不調改善を保証するものではありませんのでご了承ください。
- 当サイトに掲載している情報は各種検定とは一切関わりがありません。
参考元
- The Uses of Eucalyptus – Which one do I use?
- Eucalyptus Dives Uses, Benefits & Recipes
- カラーグラフで読む精油の機能と効用(フレグランスジャーナル社/三上 杏平 著)