レーバントスタイラックスとは
スタイラックスはフウ属の樹木から分泌される樹液を原料とした精油です。単にスタイラックスと記されることもありますが、Styrax属の植物と区分するため「Levant styrax(レーバントスタイラックス/レバントスチラックス)」とも呼ばれています。レーバントスタイラックスは小アジアが原産ですが、アメリカ原産の近縁種モミジバフウ(学名Liquidambar styraciflua)の樹脂からもスタイラックもしくはアメリカンスタイラックス精油が生産されています。
スタイラックスは「蘇合香(ソゴウコウ)」として紹介されることもあります。これに対して蘇合香モドキ・偽物と表現する方もいらっしゃいますが、wikipediaによれば“基源となる植物は歴史的に変遷しており、一種ではない”との事。雅楽曲「蘇合香」の元となったとされるアショーカ王を治した蘇合香は菖蒲に似ているとされていますから全く別の植物と推測されていますし、中世まではセイヨウエゴノキ(Styrax officinal)の樹脂を蘇合香と呼んでいました。こちらはエゴノキ(Styrax)属に属していますから、植物としてはベンゾイン/安息香に近いですね。16世紀以降は安価なレーバントスタイラックス樹脂が主流となっています。
スタイラックスの香りは、琥珀やハチミツを連想させるようなアンバーかつ甘い香り。軽く焦げたお菓子やバニラなどを思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれません。香りとしてはベンゾインよりも少しクセがあり、オポパナックス(スイートミルラ)に近いとも言われています。独特の甘い香りから食品や飲料の香り付けとしても広く用いられていますし、香料・揮発保留剤として香水業界でも利用されています。甘めの香りがお好きな方であれば、手作り香水や芳香剤作りにも重宝するでしょう。
スタイラックス=フウ属樹木の樹脂は各原産地で伝統医療で樹脂が用いられてきたとは伝えられているのものの、医学的実験などはほとんど行われていないようです。香りの成分などから期待できる効果は挙げられていますが“香りを楽しむ”ことをメインに取り入れてみてください。アロマテラピー全体がそうですが医学的なものではありませんし、特にマイナーな精油についてはデータも少ないので注意が必要です。
基本データ
- 通称
- スタイラックス(Styrax)
- 別名
- スチラックス、レーバントスタイラックス(Levant styrax)、蘇合香(そごうこう)、Sweet Gum(スイートガム)、Storax(ストラックス)など
- 学名
- Liquidamber orientals
- 科名/種類
- フウ科(マンサク科)フウ属/落葉樹
- 主産地
- トルコ、ギリシア(ロードス島)
- 抽出部位
- 樹脂
- 抽出方法
- 水蒸気蒸留法
(※溶剤抽出されたアブソリュートも有) - 色
- 淡黄色もしくは淡黄緑色
- ノート
- ベースノート
- 香り度合い
- 中~強
- 代表成分
- スチレン、安息香酸、ケイ皮酸、α-ピネン、β-カリオフィレン、バニリン
- おすすめ
- 芳香浴
バルサム調の中に、カラメルのような甘さを含む香り
こんなお悩みにオススメ
【精神面】
- ストレス・神経疲労
- 不安・緊張・イライラ
- リラックスしたい
【肉体面】
- 喉の不快感がある時に
- 咳・気管支炎の軽減に
- 風邪のひきはじめに
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レーバントスタイラックスに期待される効果・効能
心への作用
華やかな甘さとバルサミック感を併せ持つスタイラックスの香りは、ストレスや不安を和らげ、気持ちを落ち着かせる働きがあると考えられています。イライラしている時・神経的に張り詰めて寝付き悪い時などにも、リラックス状態へと導く働きが期待できます。
体への作用
スタイラックスは伝統医療の中で咳・気管支炎など喉の不調緩和に取り入れられてきた存在です。成分的にも抗菌作用や去痰作用があると考えられており、精油としても呼吸器系の痛みや炎症軽減に効果が期待されています。風邪のひき始めや喉がイガイガする時などに、いつもの精油にプラスして香らせてみると良いかもしれません。
その他作用
皮膚利用について
スタイラックス精油は殺菌・消毒作用があると考えられており、海外では化粧品にも配合されているそうですが、感作性(皮膚刺激性)があることが指摘されています。IFRAでは“0.6%を超えてはならない”と規定しています。このことから極低濃度であれば問題ないという見解もありますが、マッサージオイルや自作コスメなど皮膚に直接付くような利用方は避けたほうが良いでしょう。
香り付けに利用するのであれば、似た香りを持ち、日本でも皮膚利用を行っている方が一定数以上いるミルラやベンゾインなどを使うと良いでしょう。ただしこちらも全ての方に合うものではありませんので、必ず低濃度希釈・パッチテストを行うようにしてください。
レーバントスタイラックスの利用について
相性の良い香り
ハーブ系・フローラル系の香りと相性が良いとされています。少量でも強い香りを持ちますし、揮発性も低く香りが持続しますので多量に加えないように注意しましょう。
【スタイラックスのブレンド例】
スタイラックス精油の注意点
- 敏感肌の方は芳香浴の場合でも使用量に注意が必要です。
- 高濃度での利用、集中量が必要なシーンでの利用は避けましょう。
- 禁忌ではありませんが、妊娠中・授乳中の使用は控えた方が無難です。
- アロマテラピーは医療ではありません。効果や効能は心身の不調改善を保証するものではありませんのでご了承ください。
- 当サイトに掲載している情報は各種検定とは一切関わりがありません。