アトピー性皮膚炎ケアとして注目度上昇中
ブラックスプルースとは
ブラックスプルースは北アメリカが原産のマツ科トウヒ属の樹木で、和名を黒唐檜(クロトウヒ)と言います。北海道などに分布しているエゾマツ・山中湖湖畔のハリモミなどの近縁種に当たります、外見は形状としてはクリスマスツリーの“モミの木”とよく似ています。アラスカの永久凍土上にもブラックスプルースの林があるほど耐寒性が非常に高く、北の樹木限界線はクロトウヒの北部限界線とも言われているそう。樹木自体は北米大陸東部に広く分布していますが主産地はカナダで、パルプ資源や外食産業用の箸などの原料としても使われているそうです。
日本でブラックスプルースの精油はあまり知られてておらずマイナーな精油と言われていましたが、近年アトピー性皮膚炎などの皮膚炎症抑制効果が期待できる精油・副腎機能を高め甲状腺機能亢進症(バセドウ病)のケア効果が期待できる精油として知名度が高まっています。その他にも精神面へのサポートや風邪・インフルエンザ予防など様々な点で役立つと考えられていますし、価格的にもさほど効果でないので取り入れやすい精油でもあります。精油は医薬品ではありませんから全ての方が期待した効果を得られるというわけではありませんが、ウッディー系の香りが好きな方や精油を使って化粧品を作っている方は機会があれば取り入れてみても良いかもしれません。
スプルース系精油の種類について
精油として利用される同属としてはシルバーファー(ヨーロッパトウヒ、Abies alba)が代表的ですが、欧州唐檜/ドイツトウヒなどと呼ばれるPicea adiesや、同じくアメリカ原産でホワイトスプルース/カナダトウヒなどと呼ばれるPicea glaucaなどもあります。しかし一日本で流通している“スプルース”と呼ばれる精油は場合には、マツ科ツガ属に分類されるヘムロック・スプルース(ツガ/学名Tsuga canadensis)とブラック・スプルースの2つが主要となっています。
ヘムロックスプルースが明るさ・楽しいクリスマスなどを連想する香りと言われるのに対し、ブラックスプルースは爽やかさ・静かな森の印象と称されることもあります。ブラックスプルースの方が良く言うとリアルな森の香りがしますが、自然のエネルギー感や開放感があり、自然と体の緊張がほぐれるような香りでもあります。かつてネイティブアメリカンの人々が傷や筋肉の痛みを癒す薬としてのほか、神様と交わるための儀式に利用していたと言うのも納得ですね。ただし複雑かつ濃密な香りのため好き嫌いの別れるところでもあります。
基本データ
- 通称
- ブラックスプルース(Black spruce)
- 別名
- 黒唐檜(クロトウヒ)、spruce pine、bog spruce、swamp spruce
- 学名
- Picea mariana
- 科名/種類
- マツ科トウヒ属/常緑針葉樹
- 主産地
- カナダ
- 抽出部位
- 針葉
- 抽出方法
- 水蒸気蒸留法
- 色
- ほぼ無色
- ノート
- トップ~ミドノート
- 香り度合い
- 中~やや強い
- 代表成分
- 酢酸ボルニル、α-ピネン、δ-3-カレン、カンフェン、リモネン
- おすすめ
- 芳香浴・アロマバス・マッサージ・スキンケア
パインやモミ(ファーオイル)に似た、深く力強い森の香り
こんなお悩みにオススメ
【精神面】
- ストレス・神経疲労
- 不安・焦燥感・神経過敏
- イライラ・情緒不安定
- 開放感が欲しい時に
- リラックスしたい時に
- 気持ちを落ち着けたい
- 癒やしがほしい時に
【肉体面】
- 喉の調子が悪い時に
- 気管支炎や喘息の緩和に
- 風邪・インフルエンザ予防
- 関節痛・神経痛・リウマチ
- 肩こり・腰痛・筋肉痛
- アトピー性皮膚炎の軽減に
- 乾燥性のかゆみや湿疹に
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ブラックスプルースに期待される効果・効能
心への作用
ブラックスプルースの主成分である酢酸ボルニル(ボルニルアセテート)は「松葉の匂い」とも言われている成分で、実はマツ科の代表的な精油であるパインニードルよりも含有量は高くなっています。次に含有量が多いα-ピネンもまた森を感じさせる芳香成分ですから、この2つによって“深い森の中”と称されるしっとりとした香りを楽しみ、癒され感や開放感を味わえると考えられています。
α-ピネンは森林浴効果や強壮効果が期待できる成分とされていますし、酢酸ボルニルも低用量であれば自律神経系を弛緩させる働きが見られたことが九州大学によって報告されています。このためブラックスプルースの香りはストレスや不安などを感じている神経の強張りをほぐし、深いリラックス効果を与えてくれると考えられています。心を強く持たせる働きも期待できますから、焦燥感やイライラに苛まれて神経過敏や情緒不安定と感じている時や、勉強や仕事の頑張り時などにも役立ってくれそうです。
体への作用
ブラックスプルースの精油は去痰・鎮咳・鎮痙作用があり呼吸器の強壮・改善に役立つとされています。気管支炎や喘息の軽減などにも有効とされていますし、空咳・痰が絡むなどなんとなく喉の調子が良くない時にも役立ってくれるでしょう。加えて抗菌・抗真菌・抗ウィルス作用や免疫力調整作用などもあるとされ、風邪やインフルエンザ予防としても活用されています。
また鎮痛作用があるとされているため関節炎・リウマチ・神経痛などの痛みを軽減する効果も期待されていますにも有効とされています。α-ピネンには血行促進・鬱滞除去作用なども期待されていますので、筋肉痛の回復促進や肩こり・腰痛など血行不良に起因する痛みの緩和にも効果が期待できるでしょう。
こんな説も…
酢酸ボルニルには脈拍を安定させる作用がるため不整脈の緩和、精神面の働きと合わせてあがり症などにも効果が期待されています。また副腎皮質を刺激する作用があり、甲状腺の機能を安定させることでバセドウ病や橋本病などの甲状腺系の疾患に対しても役立つのではないかとする説もあります。
その他作用
肌への働きかけ
近年ブラックスプルースとヨーロッパアカマツ(パイン)は優れた抗炎症作用を持つことから、ステロイドに代わってアトピー性皮膚炎やアレルギー性の皮膚炎症による炎症・痒みを抑えてくれるのではないかとして注目されています。これは強力な抗アレルギー作用がある副腎皮質ステロイドホルモンの一種「コーチゾン(コルチゾン)」に似た働き(コルチゾン様作用)を持つためとされており、ステロイド剤のように副作用の心配差少ないとされています。
この働きが話題となったことや皮膚の乾燥予防にも役立つと言われていることから、乾燥性アトピー性皮膚炎・乾燥性皮膚炎による痒み・湿疹などの改善にも効果が期待されています。手作りのローションや入浴剤用としてブラックスプルース精油を取り入れる方が増えているようですが、精油そのものがアレルゲンとなる可能性もありますので必ず低希釈からパッチテストを行いつつ利用するようにしてください。目・粘膜の周りへの使用はできません。
ブラックスプルースの利用について
相性の良い香り
柑橘系・ウッディー系の香りと相性が良いとされています。ブラックスプルースの香り自体に好みがありますが、受け入れられるようであればバルサム系やハーブ系の香りとも比較的ブレンドしやすいでしょう。
【ブラックスプルースのブレンド例】
- リラックスしたい⇒プチグレン、ベルガモット、タナセタム
- 呼吸器の不調に⇒ユーカリ、ヒソップ、ローズマリー、ライム
- 免疫力アップ・風邪予防⇒サイプレス、シダーウッド、タイム
- 皮膚炎症に⇒ラベンダー、ティートリー、カモミール、ミルラ
ブラックスプルース精油の注意点
- 妊娠中の方は利用を控えましょう。
- アロマテラピーは医療ではありません。効果や効能は心身の不調改善を保証するものではありませんのでご了承ください。
- 当サイトに掲載している情報は各種検定とは一切関わりがありません。