【アロマ】ヒソップ精油
-植物の特徴・期待される効果効能とは?

【アロマ】ヒソップ精油<br />-植物の特徴・期待される効果効能とは?

浄化効果が期待される「聖なるハーブ」

ハーブリキュール類の香り付けに使われている程度で、日本では馴染みのないヒソップ。ヨーロッパではかつて薬としても使用され、聖書に登場する“Ezov”と考えられたため「聖なるハーブ」として精神的な部分でも大切にされてきました。研究でも抗菌活性や鎮痙・抗炎症作用が報告されており、自然療法では呼吸器や消化器サポートに取り入れられていますが、ケトン類の含有率が多いため多様は避けるべき精油の一つでもあります。

ヒソップ(Hyssop)

ヒソップとは

ヒソップの特徴・歴史

精油・香料と言うよりも、ハーブとして紹介されることの多いヒソップ。お酒が好きな方ならばハーブリキュールやハーブワインの成分として名前を見かけたことがあるかもしれません。ヒソップの和名は「柳薄荷」で、呼び名の通りハッカに似た甘めで清涼感のある香りが特徴的。個人的には香辛料・食品香料として多く使われているのも納得の、美味しそうな香りだと感じます。あまり人を選ばなさそうな香りであるのに精油の流通が少ないのは、ケトン類ほか刺激性成分が多く含まれており扱いに注意が必要なため。てんかん反応や痙攣発作を起こす危険性が指摘されていることもあり、特に日本ではかなりマニアックな精油です。

私達にとっては馴染みのない植物と言っても過言ではないヒソップですが、ヨーロッパから中東にかけての地域では古くから使用されてきたハーブ。植物としてはシソ科ヤナギハッカ属(Hyssopus)に分類され、種名にofficinalisが付けられているように古くは薬としても使用されてきた歴史があります。古代は医学と宗教の線引が曖昧だった関係もあり、精神的・宗教的な部分でも古くからヒソップは大切にされてきたと考えられています。現在属名や呼称として使用しているヒソップという言葉についても「聖なるハーブ」を意味するヘブライ語もしくはギリシャ語の言葉をそのまま音写したものとされています。

ヒソップが浄化のハーブとして使用されていたという説の元となっているのは聖書の記述。ヘブライ語聖書(旧約聖書)には“Ezov(ヘブライ語でאזוב)”という植物が登場しており、ギリシャ語訳された際にhyssopとなり、ヒソップのことを指すというのが定説になったのだそうです。ちなみに和訳版では“Ezov”はヒソプと訳されています。旧約聖書『詩篇(51:7)』で姦淫と謀殺の罪を犯したダビデ王が“ヒソプをもって私の罪をきよめてください。そうすれば、私はきよくなりましょう”と祈りを捧げる場面もヒソップ=浄化ハーブの歴史としてよく紹介されますね。

また『出エジプト記』では神による初子殺しが行われる際に、ヒソプを生贄として捧げた羊の血に浸して門柱に印をつけたイスラエル人の子どもは殺さないというシーンがあります。そのほか『レビ記』ではハンセン病の治癒に使用されるなど、ヒソプ(Ezov)は要所要所に登場してます。ただし、ヒソップはイスラエル周辺には自生していないという指摘もあります。研究者の間でも様々な見解がありますが、聖書の“Ezov/אזוב”はバイブルヒソップ(Origanum syriacum)もしくはハナハッカ属の植物ではないかとの見解が主流となっています。

ともあれ、聖書が翻訳されてから“Ezov”がヒソップと考えられたことは事実であり、聖なるハーブ」としての象徴性+消毒・消臭などの働きもあることからヒソップは浄化目的で教会のストローイング・ハーブとしても使用されてきました。ストローイングハーブは床に香草を撒き、踏むことで良い香りを拡散して空気を浄化するという方法。教会だけではなく一般家庭でも疫病除け・防虫用として活用されていたそうですし、中世頃には邪眼・魔除けに良いハーブと信じられていたとの逸話もあります。

ちなみにハーブリキュール全体の起源は1世紀頃に古代ローマの大プリニウスが記録したヒソップをワインに加えて作った薬用酒“hyssopites(ヒソポテス)”にあると言われています。おそらく古代~中世頃にはヒソップが薬効を持つハーブとして消化器系や呼吸器系の不調にも多用されていたのでしょう。大プリニウスのレシピをベネディクト会修道士達が再現し、19世紀にそれを復元&アレンジしたものが現在の「ベネディクティン」とされています。

香料原料データ

通称
ヒソップ(Hyssop)
別名
柳薄荷(ヤナギハッカ)
学名
Hyssopus officinalis
(syn.Hyssopus aristatus / Hyssopus angustifoliusなど)
科名/種類
シソ科ヤナギハッカ属/多年草
主産地
フランス、ドイツ、イタリア、ブルガリアなど
抽出部位
全草
抽出方法
水蒸気蒸留法
ほぼ無色~淡オレンジ色
ノート
ミドルノート
香り度合い
中~やや強い
精油成分
ケトン類(カンファー、イソピノカンフォン、ピノカンフォン)、ゲルマクレンD-11-ol、α-ピネン、β-ピネン、カンフェン、スパチュレノール、1,8-シネオールなど
おすすめ
芳香浴・アロマバス・マッサージ・ハウスキーピング

ハッカに似た爽やかさの中に、甘さと苦味を含むハーブ調の香り

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ヒソップ精油に期待される働き・効能

精神面への作用と効果

神経・精神的なサポートを期待してヒソップオイルが使用されることは少なく、人に対してどのような作用を持つのかもほとんど研究されていません民間療法上では鎮静作用を持つ精油にカテゴライズされており、ストレスや不安・緊張・神経性疲労などの緩和に役立つのではないかと考えられています。カンファーなどのケトン類が含まれていることから覚醒・頭脳明晰化に繋がるという説もあり、周囲の環境に飲まれて感情的になったり自分を見失ってしまいやすい方のサポートに適した精油と称されることもあります。ただし、実際の作用や有効性については分かっていません。

また、ヒソップは聖なるハーブもしくは浄化のハーブと信じられてきた歴史があるため、スピリチュアルは方面から心の浄化に役立つのではないかという見解もあります。一部ではネガティブなエネルギーを浄化すると信じられ「魂を浄化し、守護する」香りであると称す方もいらっしゃいます。

魂を観測することは現段階で不可能ですから信仰的な効果としか言えない状況ですが、ヒソップの香りはすーと通るようなハッカに似た清涼感が特徴。冷たすぎない温かみを感じる香りでもありますから、リフレッシュ用としてや気分を落ち着けて冷静さを取り戻したい場面で香らせてみても良いかもしれません。

肉体面への作用と効果

ヒソップは伝統的に去痰・鎮痙作用や殺菌作用に優れたハーブとして、ヨーロッパでは咳や咽頭炎・気管支炎・喘息など様々な呼吸器系の不調に使用されてきた歴史があります。古代ローマで活躍し“薬理学と薬草学の父”とも称されるギリシア医師ディオスコリデスも喘息などの呼吸器症状にヒソップを使用していたと伝えられるほどですから、2,000年以上の歴史があるハーブとも言えますね。現在でも去痰・粘液溶解作用を持ち鎮痙作用によって呼吸器系の痙攣を鎮めると考えられており、風邪による咳や鼻水などの症状から気管支炎・喘息・花粉症などアレルギーの症状のケアに活用されています。

人に対する有効性は認められていませんが、2018年『Journal of Applied Pharmaceutical Science(Vol. 8)』に公開されたヒソップの系統的レビューで動物実験ではヒソップ(Hyssopus officinalis)に抗喘息作用が示されていることが紹介されています。2014年『Experimental and Therapeutic Medicine』に発表されたマウス試験ではヒソップによる免疫調節および抗炎症作用も示されています。そのほかにヒソップのエッセンシャルオイルは優れた抗菌・抗ウィルス作用も報告されているため、風邪やアレルギー性の呼吸器症状緩和・風邪やインフルエンザなど呼吸器感染症の予防にも期待されています。

空気浄化を兼ねたルームアロマとして役立つ精油と考えられますが、ヒソップは神経毒性を持つケトン類が多く含まれている精油。妊娠中の方やお子様がいる・てんかんの方がいる場所での使用は厳禁。それ以外でも長時間拡散させるのは控えたほうが良いでしょう。

また、ヒソップは呼吸器系だけではなく消化器系に対する民間薬としても使われてきました。2002年には摘出モルモット回腸・摘出ウサギ空腸を使って行った実験で、ヒソップ精油とイソピノカンフォンに筋弛緩作用が見られたというイタリアの研究報告も『Planta Medica』に発表されています。この働きから腹痛や下痢の緩和に、子宮収縮を抑制することで生理痛の軽減にも期待されています。ただしこちらも人に対する有効性は認められていません。

関節リウマチなどのケアにも…

ヒソップオイルの持つ鎮痙作用は過剰な筋肉収縮を抑制する=筋弛緩作用にも通じると考えられます。抗炎症作用が期待されていることもあり、ヒソップの精油は筋肉痛や関節リウマチ・神経痛などに対するマッサージにも使用されることがあります。ケトン類は神経毒性が指摘される一方で、優れた鎮静・抗炎症剤という評価もあります。常用はお勧めできませんが、一時的な筋肉痛・関節痛がひどいタイミングなどでセルフマッサージに使用してみても良いかもしれません。

そのほかケトン類は脂肪溶解作用を持つと紹介された関係もあり、痩身マッサージに使用する方もいらっしゃるようです。ただし有効性が認められているものではありませんし、神経毒性の危惧もありますから常陽・多量の使用は避けましょう

その他に期待される作用

肌への働きかけ

ヒソップは抗菌作用に優れているとして古くは切り傷や擦り傷・虫刺されなどのケアに活用されてきました。現在でもカンジダ菌などに対する阻害活性が報告されており、抗菌薬や抗真菌薬のような形で皮膚感染症を予防するのではないかと期待されています。そのほか精油は抗酸化作用・収斂作用・抗炎症作用を持つとされ、ニキビケアや小じわやしわなど皮膚老化対策(アンチエイジング)に良いという説もあります。ただしヒソップの精油自体があまり利用されていないことに加え、皮膚への利用のデータも多いとは言えない状況ですので、ニキビケアならティートリー、スキンケアならラベンダーなどを選んだほうが無難でしょう。

ヒソップが利用されるシーンまとめ

【精神面】

  • ストレス・神経疲労
  • 不安・緊張・イライラ
  • 気持ちを落ち着けたい
  • 冷静さを保ちたい時
  • 気分を入れ替えたい

【肉体面】

  • 咳・鼻水・鼻詰り
  • 花粉症・アレルギー性鼻炎
  • 風邪・インフルエンザ予防
  • 腹痛・下痢・消化不良
  • 筋肉痛・関節炎などの緩和に

ヒソップの利用と注意点について

相性の良い香り

ヒソップの精油は比較的どの香りとも組み合わせやすい存在。同系統のハッカミント類と組み合わせると香りに奥行きが出ます。樹木系や柑橘系の香りとも相性が良いとされています。

ヒソップのブレンド例

ヒソップ精油の注意点

  • 妊娠中・授乳中の方、小さいお子さんへの使用は避けましょう。
  • 中枢神経毒性のあるケトン類を含むため、てんかんの方は使用できません。それ以外でも疾患がある方・投薬治療中の方は医師に確認してから利用して下さい。
  • 低濃度で利用し、利用頻度は少なめにしましょう。
  • アロマテラピーは医療ではありません。効果や効能は心身の不調改善を保証するものではありませんのでご了承ください。
  • 当サイトに掲載している情報は各種検定とは一切関わりがありません。

参考元