【アロマ】スペアミント精油
-植物の特徴・期待される効果効能とは?

【アロマ】スペアミント精油<br />-植物の特徴・期待される効果効能とは?

作用も香りも穏やかな、優しいミント

スペアミントは、さっぱりとしつつ、お菓子を連想させるようなマイルドな香りで使いやすい精油です。主成分はカルボンで、メントール含有率が低いなどペパーミントとは違いも多いですが、消化器系や呼吸器系のケア、集中力サポートなど似た働きが期待されています。抗菌性も報告されているので、お部屋の空気を綺麗に保ちたい時にも◎

スペアミント(Spearmint)のイメージ画像

スペアミントとは

スペアミントの特徴・歴史

スペアミントは、ペパーミントよりも甘く柔らかな印象が特徴的な植物。人によってはお菓子を連想する方向かもしれません。刺激や辛味が少ないのでそのまま葉をハーブティーとして利用したり、アイスクリームなどのお菓子などに添えて提供されることも多いですね。香料として、ガムや歯磨き粉などのフレーバーにも使われています。ミントらしいくっきりとした清涼感が欲しい場合にはペパーミント、マイルドな爽やかさが欲しい時にはスペアミントという使い分けが多いのではないでしょうか。

日本ではミントと言われると最初にペパーミント系の香りを想像されることが多いですが、欧米、特に主産地であるアメリカでは「ミント」と言われて最初に出てくるのはスペアミントなのだとか[1]。ちなみに、ミントという言葉はシソ科ハッカ属に分類される植物の総称。世界には多くのミントが存在していますが、スペアミントはその中でも最も古いグループの種だと考えられています[2]。ミント類は“料理用および医薬品用に使用される最も古いハーブの1つ”とも称されるほど人との関わりの深い植物。古代には現在ほどミント類の区分が明確ではなかったため種類までは断定されていませんが、ミント類の中でも古い時代から使われてきた種と考えられます。

新約聖書(マタイによる福音書23章)』でイエス・キリストが律法学者とパリサイ人たちを非難するシーンで“ミント、ディル、クミンなどの十分の一を納めているが~”という言葉が出てきます。それよりも更に古い時代のことが綴られている『旧約聖書』にもミントが登場していますよ。また、古代ギリシアで語られたギリシア神話にもミントは登場しています。ミントの語源でありハッカ属の属名Menthaも、ギリシャ神話のなかで妖精“Minthes(メンター)”が姿を変えた植物である、というお話が語源[1]。どれも古い自体から語られているお話ですから、スペアミントがモデルであるという考え方が有力視されています。

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ハーブとしても、スペアミントは古代ギリシア・ローマの時代から使われてきたと考えられています。ギリシャでは媚薬として、古代ローマでは大プリニウスなどが活力剤のように使用したとの説も[2]あります。中世頃にはヨーロッパ各地で香味野菜や薬用ハーブ、お部屋の消臭剤など様々に活用され親しまれました。イギリスへも伝わり、風邪などの呼吸器系トラブルのケアに役立つハーブとして使用されるようになります。それ以外に、民間医療の中では吐き気の軽減や消化促進など、お腹のハーブとしてもスペアミントが活用されていました。

ヨーロッパで愛されたスペアミント。新大陸への到達・移住が始まると、スペアミントは移民たちによってアメリカ大陸へも持ち込まれ、栽培されました。19世紀にはスペアミントを配合したチューインガムが発売され、人気に。多くの人にガムが好まれるほど原料であるスペアミントの需要も高まり、大規模な栽培・精油生産が行われるようになります。このため現在のスペアミントの主産地はヨーロッパではなくアメリカ。アメリカでは年間約2000トン以上もスペアミント精油が生産されています。

ミント系精油の種類について

シソ科ハッカ属に分類され“ミント”と呼ばれている植物はたくさんあります。しかし、世界的にハーブや香料植物として利用されるのは、スペアミント系品種とペパーミント系統品種の2系統が主。日本の場合は在来種である和種ハッカ(日本薄荷/Japanese peppermint)を加えた3つの種が使われています[1]。

スペアミント:Mentha spicata
ペパーミント:Mentha × piperita
和種ハッカ:Mentha canadensis var. piperascens

スペアミントはミントの中でも古い種。ペパーミントもウォーターミントとスペアミントの交配種と考えられていますから、スペアミントはペパーミントの祖先とも言えますね。植物としてみると、名前の由来ともなっているスペア(spear/槍)のように尖った葉先がスペアミントの特徴。同じく種子名のspicataも槍が語源[2]。

芳香面では刺激的とも言えるくっきりとした清涼感のあるペパーミントやハッカとは異なり、スペアミントはどこか甘さを感じさせる穏やかな香りが特徴と言えます。このスペアミントの柔らかい清涼感は、主成分がペパーミント等とは異なりℓ-カルボンであるため。柔らかい香りはシーンを選びにくいというメリットもありますし、強い刺激感が苦手な方やお子様向けの商品にも活用されていますね。ペパーミントは作用も穏やかと考えられており、お子さんやお年寄りなどにも適した“The Gentler Mint Oil”とも称されています[2]。

香料原料データ

通称
スペアミント(Spearmint)
別名
ミドリハッカ(緑薄荷)、オランダハッカ、ガーデンミント(garden mint)、グリーンミント(Green Mint)
学名
Mentha spicata
科名/種類
シソ科ハッカ属/多年草
主産地
アメリカ、スペイン、ハンガリー、ロシアなど
抽出部位
全草(もしくは葉と花の咲いた先端部分のみ)
抽出方法
水蒸気蒸留法
ほぼ無色~淡いクリーム色
粘性
低い
ノート
トップノート
香り度合い
中~強め
精油成分
ℓ-カルボン、リモネン、β-ミルセン、1.8-シネオール、α-ピネン、メントール、メントンなど
おすすめ
芳香浴・アロマバス・マッサージ・スキンケア・ヘアケア・防虫

ミント類の中では甘く柔らかい、お菓子を連想させる優しい香り

スペアミント精油に期待される働き・効能

精神面への作用と効果

スペアミントの精油は甘く柔らかい香りが特徵で、気持ちを落ち着かせる働きに優れていると考えられています。これはスペアミントの特徴成分であるカルボン(Carvone)に、神経系の興奮を抑えることで鎮静作用や抗不安作用をもたらす可能性を示唆した研究論文も多くあるため[3]。スペアミントの芳香を吸引することでの効果については分かっていませんが、アロマテラピーではストレスや不安、緊張を和らげ、気分を前向きにするサポートとして利用されています[4]。

また、スペアミント抽出物を摂取した実験では“気分、睡眠、生活の質に有意差は観察されなかったが、注意力増強効果が見られた”という報告もあります[5]。アロマテラピーにおいても若干の高揚作用があり集中力を高める働きがあるという見解もありますから、集中力を高めたい場面で取り入れてみても良いかもしれません。特に、疲れや心配事で頭がモヤモヤする時・不安をかんじて集中できない時など、ストレスなどで思考低下している時に役立ってくれそうですね。

カルボンやスペアミントの作用については研究によって有効性の有無は分かれていますし、芳香吸引における効果は更に分かっていません。伝統医療やアロマテラピーなどの効能も考えると、ペパーミントは眠気覚ましなど意識をシャッキリと覚醒させることで集中力を高め気持ちを落ち着かせる、スペアミントは精神や神経をリラックスさせることで注意力の低下を回復させるようなイメージで使用されてることが多いです。

肉体面への作用と効果

スペアミントもペパーミント同様に、消化器系のサポートが期待できる精油です。伝統的にスペアミントは消化不良や腹部膨満感・吐き気予防、風邪によるお腹の不調ケアになどに使用されてきた歴史があります。現代の研究でもスペアミントの特徴成分であるカルボンには鎮痙作用や抗炎症作用が見られたという報告がなされており[3]、神経系への鎮静作用と合わせて収縮やけいれんを緩和することで胃腸の平滑筋が収縮することで起こる痛み・不調の軽減に役立つのではないかと考えられています。しゃっくりが止まらない時に良いという説もありますよ、

また、スペアミントはインド・スリランカの伝統医学アーユルヴェーダでは頭痛の軽減にも使用されてきました[2]。メカニズムや有効性については断定されていませんが、こちらも筋肉の収縮を和らげる働きや鎮静作用による働きが関係している可能性があります。同様の理由から、スペアミントは咳や気管支炎など呼吸器系の不調緩和にも効果が期待されています。スペアミントにもメントールが含まれていること、エッセンシャルオイルを使った研究で抗炎症活性が見られたという報告があることから、アレルギー性鼻炎や気管支喘息・花粉症などの緩症状緩和にも効果が期待されています。

スペアミントは抗菌性・抗ウイルス活性が報告されている精油ですので、風邪による症状の緩和だけではなく、香らせることで風邪予防にも繋がる可能性があります。全体的な作用としてはペパーミントよりも弱いと言われていますが、香り・作用ともに穏やかなのでデイリーに利用する場合や、お子さんがいるご家庭での使用にも良いですね。

吐き気の軽減にも期待

古くから消化器系のサポートに優れたハーブと考えられてきたスペアミント。現在でスッキリとした香りと合わせて、スペアミント精油は二日酔い・乗り物酔いなどによる吐き気予防に役立つ精油の1つに数えられています。手術後の患者に対して行った研究では“スペアミント、ペパーミントショウガカルダモンのエッセンシャルオイルのブレンドした香りを嗅がせることで、術後患者の吐き気と嘔吐を軽減した”ことが報告されています[6]。伝統的効能やこうした研究から、乗り物に弱い方のサポート、妊娠中の悪阻軽減などにスペアミントがおすすめされることもあります。

女性領域にも…?

スペアミントは“エメナゴーグ(Emmenagogue)”と呼ばれる、骨盤領域と子宮の血流を刺激する月経促進ハーブとしてヨーロッパで利用されてきた歴史があるハーブの一つでもあります。作用秩序などについては分かっていませんが、伝統的な利用の延長として月経を刺激して月経不順や過多月経を緩和する働きがあるとする見解も[4]あります。

スペアミントは鎮静作用や鎮痙作用を持つ可能性も示唆されていますから、生理痛や月経に関連した腹痛・情緒不安定さのケアにも活用されています。女性の体への働きかけについては分かっていませんが、柔らかく爽やかな香りなのでブルーデイを快適に過ごすサポーターとして取り入れてみても良いでしょう。ただし、子宮刺激やホルモンバランスに働きかける可能性があるので、妊娠中の方や産後の方は自己判断での使用は避けましょう。

その他に期待される作用

肌への働きかけ

スペアミントは収れん作用と皮脂分泌のバランスを整える働きがあり、脂性肌のケアに適した精油とされています。毛穴の角栓・黒ずみが気になる時にも効果が期待できますし、抗菌・抗真菌作用を持つ精油でもありますからニキビができやすい方のケアにも役立ってくれるでしょう。脂っぽさを抑えて地肌を清潔に保ってくれることから、頭皮・頭髪のお手入れにも使われます。スッキリとした香りは夏場にデオドラントも兼ねてくれますよ。

そのほか、スペアミントは抗炎症作用によってかゆみを抑える作用も期待できますので、虫刺されなどかゆみを伴う皮膚炎症のケアに良いという説もあります。精油成分であるカルボンは動物実験でむくみや関節炎の軽減効果が見られたという報告も[3]なされてるため、スペアミント精油は痩身マッサージや関節炎・筋肉痛などのケアに利用されることもあります。

スペアミントはペパーミントと比べると刺激性が低く穏やかと称されますが、若干の皮膚刺激性を持つ精油です。特に敏感肌の方や、皮膚炎症を起こしている方は使用に注意が必要。精油は医薬品ではありませんので、炎症を起こしている場合は皮膚科で適切な治療を受けるようにしましょう。それ以外の場合も、低濃度に希釈してパッチテストを行うようにすることをおすすめします。

虫除けとして

スペアミント精油にも昆虫忌避作用があり、虫よけ剤代わりに利用できるとされています。ゴキブリを寄せ付けない天然物質の研究では、ニホンハッカやスペアミントの精油に含まれるテルペン化合物に臭覚的忌避効果が高いとの報告がなされていますから、水回りや物陰などに香らせると良いかもしれません。

スペアミントが利用されるシーンまとめ

【精神面】

  • ストレス・精神疲労
  • 気持ちの落ち込みに
  • 考えがまとまらない時に
  • 気持ちを切り替えたい時に
  • リフレッシュしたい時に
  • 緊張や不安を感じる時に

【肉体面】

  • 消化不良・食欲不振・お腹の張り
  • 胃痛や吐き気の軽減に
  • 二日酔い・乗り物酔い対策に
  • 頭痛・偏頭痛の緩和に
  • 風邪予防・初期症状ケアに
  • 花粉症の緩和に
  • 脂性肌・ニキビケアに

スペアミントの利用と注意点について

相性の良い香り

甘さがありライトな印象のスペアミント精油は、ブレンド相手を選びにくい精油の一つでもあります。特に柑橘系・ウッディー系・ハーブ系などスッキリとした印象の香りであれば失敗する心配は低いです。重めの香りに隠し味のような感覚で加えることも出来ますよ。また、主成分が異なっているのでペパーミントや和ハッカとブレンドすることでも奥行きのある“ミントの香り”を作ることが出来ます。

スペアミントのブレンド例

スペアミント精油の注意点

  • 妊娠中・授乳中の方、小さいお子さんへの使用は避けましょう。
  • 高濃度で使用した場合、頭痛・めまい・吐き気などの原因となる可能性があります。
  • 皮膚刺激となる可能性があります。敏感肌の方は芳香浴の場合でも使用量に注意してください。
  • 疾患がある方・投薬治療中の方は医師に確認してから利用して下さい。
  • アロマテラピーは医療ではありません。効果や効能は心身の不調改善を保証するものではありませんのでご了承ください。
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参考元