ティーツリーよりも柔らかくライトな香り
マートルはユーカリやティーツリーと同じくフトモモ科に分類される樹木で、和名「銀梅花」として紹介されることもあります。香料原料として使用されるのは葉で、ティーツリーなどと共通した清涼感も若干感じられますが、より甘みがありライト香りです。消毒薬というよりはお菓子っぽい印象ではないでしょうか。α-ピネンや1,8-シネオールなど抗菌・抗ウィルス作用が期待できる成分の比率が多いため、空気浄化や風邪予防・呼吸器ケアにも期待できます。
Contents
マートルとは
マートル(銀梅花)の特徴・歴史
甘みのあるハーブ調の香りが特徴のマートル。ティートリーやユーカリなどと同じフトモモ科に分類される常緑低木で、小ぶりな白い花を咲かせることが特徴の植物です。花が梅に似ていることから日本では「銀梅花(ギンバイカ)」と呼ばれています。香料源となるのは花ではなく葉で、香りの良さからハーブとして肉料理の臭み消し・お酒の香り付けなどにも利用されています。ちなみに黒い液果(マートルベリー)も食用可能。
マートルは同じフトモモ科というだけではなく、優れた消毒・抗菌作用があることからもティーツリーやユーカリなどと並べて紹介されることがあります。しかし薬品っぽい独特の清涼感があるティーツリーなどに対し、マートルは甘さを含んた柔らかい香りでどちらかと言えばスペアミントに似た印象があります。強い香りや消毒薬のような香りが苦手な方にもおすすめですし、作用が穏やかなことからお子様がいる家庭でも使いやすい精油として注目されていますよ。
フトモモ科というとオーストラリア植物のようにも感じますが、マートル(銀梅花)は地中海沿岸が原産。原産地付近で栄えた古代文明でも切にされてきた植物で、シュメールでは女神イナンナ(イシュタル)の聖花とされていました。イナンナはシュメール語でエデンの女主人(nin-edin)であることから、マートルの香りは“エデンの園の香りの象徴”とも称されています。イナンナは時代と共にイシュタルになり、イシュタル信仰は古代ギリシアのアフロディーテ・古代ローマのヴィーナスへと形を変えていきます。このためアフロディーテやヴィーナスへもマートルは捧げられました。
マートルが女神の象徴として使われるようになった理由としては、マートルの純白の花が綺麗だったという事もあるでしょう。花の印象か、愛や美を司る女神の印象かはさておき、古代ギリシアではマートルを「愛と不死」を象徴する植物として惚れ薬や香水・料理にまで幅広く活用していたと伝えられています。ローマでは結婚式の時に使われており、現在もマートルは「愛・純潔」を表す花として花嫁のブーケや髪飾りに利用されています。初めて純白のウェディングドレスを採用したと言われるヴィクトリア女王が使ったのも、白いマートルの花で作ったウェディングブーケ。結婚式にお馴染みの植物であることから「祝いの木」という別名もありますし、花言葉も“愛”や“高貴な美しさ”などが選ばれていますよ。
そのほか『旧約聖書』でもイザヤ書やゼカリヤ書など各所に“ミルトス”などという表記でマートルは登場しています。ちなみにマートルというのは英語読み、ミルトスやミルテというのはドイツ語の発音のようです。現在でもユダヤ教ではマートルが儀式に使われていますし、かつては花嫁の飾りではなく新床に入る花婿にギンバイカの枝を与える風習もあったようです。近年はネオペイガニズム・ウィッカなどが夏の訪れを祝うお祭りMay Dayで、神聖な植物としてマートルを使うこともあるそう。すっきり感と優しい甘さを兼ね備えた芳香、白く美しい花は現在でも人々に“特別感”を与え続けていると言えるかもしれませんね。
香料原料データ
- 通称
- マートル(Myrtle)
- 別名
- ギンバイカ(銀梅花、銀盃花)、コモンマートル(common myrtle)、ミルテ、ミルトス
- 学名
- Myrtus communis
- 科名/種類
- フトモモ科ギンバイカ属/常緑低木
- 主産地
- スペイン、オーストリア、フランス、チュニジア、モロッコ
- 抽出部位
- 葉、枝
- 抽出方法
- 水蒸気蒸留法
- 色
- 淡黄色~オレンジ
- 粘性
- 低い
- ノート
- ミドルノート
- 香り度合い
- 中くらい
- 精油成分
- α-ピネン、1,8-シネオール、リモネン、リナロール、α-テルピネオール、ゲラニオール、酢酸ミルテニルなど
- おすすめ
- 芳香浴・アロマバス・マッサージ・スキンケア・ヘアケア・ハウスキーピング
ユーカリに甘さを加えてライトにしたような、穏やかな香り
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マートルに期待される働き・効能
精神面への作用と効果
優れた消毒・抗菌作用を持つフトモモ科精油としてティーツリーなどと共に紹介されることの多いマートルですが、精油成分として見るとα-ピネンが多く含まれていることが特徴。α-ピネンは“森林浴効果”があるとも称され、鎮静作用や強壮作用が期待されている成分。このため他のフトモモ科精油と比べて、マートルは鎮静作用が高く気持ちを落ち着かせる働きに優れていると考えられています。神経が興奮してしまって寝付きが悪い時にも適しています。
α-ピネンにもリモネンやリナロールなど鎮静・リラックスを手助けしてくれる成分が含まれていますから、マートルは心の乱れを落ち着けて感情のバランスを取り戻したいときのサポートに用いられています。香りも甘く柔らかい印象がありますから、ストレスや緊張によって疲れてしまった時・イライラしたり不安定になっている時の癒やしとしても役立ってくれそうですね。マートルには高揚作用などはありませんが、神経と気持ちを落ち着けることで、明るく元気な気持ちを取り戻すことにも繋がる可能性もあります。
肉体面への作用と効果
マートルの精油はα-ピネン・1.8-シネオール・リモネンなど、免疫力向上や抗菌・抗ウィルス作用を持つ精油成分が多く含まれています。1.8-シネオールは抗炎症作用や抗アレルギー作用が期待されている成分でもありますから、マートル精油も風邪・インフルエンザ・鼻炎・喘息・気管支炎・花粉症など幅広い呼吸器系の不調軽減に役立つと考えられています。呼吸器系以外にも膀胱炎や尿道炎などの尿路感染症ほか、感染症のケア全般に用いられています。
またマートル精油は安価といえる価格帯で販売されていることが多く、ティートリーやニアウリよりも優しく心地よい香りであるというメリットもあります。優れた抗菌作用があり免疫機能のサポートにも期待できますから、風邪やインフルエンザが気になる季節にデュフーザーなどでお部屋全体に拡散して、空気浄化に利用するのもお勧めです。穏やかな香りには鎮静作用もあるので、ベッドサイドで香らせても眠りを妨げる心配がなく、むしろ安眠を促してくれる可能性があるのも嬉しいところですね。
その他に期待される作用
肌への働きかけ
マートルの精油にはα-ピネンや1,8-シネオールなど抗菌・抗ウィルス作用が報告されている精油成分が多く含まれています。精油全体としては毛穴や皮膚のたるみを引き締める収斂作用を持つと考えられていることと合わせて、毛穴の開き・脂性肌・ニキビができやすい方のケアに適した精油とされています。収れん作用から皮脂分泌抑制にも期待出来ますから、頭皮や髪のベタつきや脂っぽさのケアにも役立ってくれそうですね。
また、収斂作用からシワやたるみの予防に繋がるとして、マートルの精油はエイジングケアにも活用されています。そのほかに抗炎症作用を持つ精油としても紹介されることがありますが、一方で皮膚刺激性があるという指摘もあります。特に1,8-シネオールは皮膚刺激性が指摘されている成分でもありますしね。体質や使用濃度によっては皮膚を刺激して炎症を起こす原因ともなりますので、低濃度に希釈して皮膚の厚い部分から順にパッチテスをを行うようにしてください。
消臭剤として
マートルに多く含まれている1.8-シネオールは抗菌作用が高いことから、消臭作用を持つと考えられています。悪臭の原因の一つとして、温度や湿気などの関係から雑菌が繁殖して悪臭物質を発生させることが挙げられます。洗濯物の生乾き臭やカビ臭が代表的ですし、体臭についても皮脂や垢を雑菌が分解することで発生する悪臭物質によるものが多いと言われています。雑菌を繁殖させないようにすることで消臭剤としての機能を持つことに繋がると考えられます。
マートルが利用されるシーンまとめ
【精神面】
- ストレス・精神疲労
- 興奮・イライラ・緊張
- 不安・不安定な時に
- リラックスしたい時に
- 心を強く持ちたい時に
- 寝付きが悪い・眠りが浅い
【肉体面】
- 風邪・インフルエンザ予防
- 花粉症対策として
- 鼻炎・鼻づまり・気管支炎
- お部屋の空気清浄に
- ニキビ・毛穴の開きに
- エイジングケア用に
マートルの利用と注意点について
相性の良い香り
マートルはフトモモ科植物を原料とする精油の中では清涼感・薬っぽさが少ない香りです。クセがないので何系の精油でもブレンドしやすい部類と言えるでしょう。一般的にはハーブ系・スパイス系の香りと相性が良いとされていますが、ウッディー系などともよく合います。
マートルのブレンド例
- 免疫機能のサポートに⇒ユーカリ、タイム、ティートリー
- 鼻・喉の不調軽減に⇒スペアミント、タイム、ジンジャー
- リラックス用に⇒ベルガモット、クラリセージ、ヒソップ
- ニキビ・シワ予防に⇒ローズ、サンダルウッド、ラベンダー
マートル精油の注意点
- 妊娠中・授乳中の方は使用を避けましょう。
- アロマテラピーは医療ではありません。効果や効能は心身の不調改善を保証するものではありませんのでご了承ください。
- 当サイトに掲載している情報は各種検定とは一切関わりがありません。
参考元