眠気覚まし&リフレッシュに
ペパーミントは眠気覚ましのガムやマウスウォッシュなどにも使われている、シャープでクールな香りが特徴の植物。日本のハッカよりは少しマイルドな印象がありますが、脳を刺激して眠気を覚ましたり、集中力を高める働きが期待されています。冷感作用でエコな涼しさを感じたり、花粉症対策に用いられたりと、幅広く活用されている精油の一つでもあります。
Contents
ペパーミントとは
ペパーミントの特徴・歴史
爽やかでクールな香りから、眠気覚ましガムや歯磨き粉などの口腔ケア用品でもお馴染みのペパーミント。男性用香水や化粧品をはじめ、服や空間用の消臭芳香剤・入浴剤・洗剤類など、芳香を示す表現としてはラベンターと同じくらいにポピュラーな存在。ガッツリ系のチョコミントやメンズシャンプーなど、清涼感あるシャープな香りを押し出したい場合にも、ペパーミントはよく使われています。
また、ペパーミントは、ハーブとしてもラムを筆頭とした肉料理・魚料理の臭み消し、スッキリとした芳香が楽しめるハーブティーまで幅広く使われています。そんな、私達にとってお馴染みの“ミント”ですが、意識してみるといくつか種類がありますよね。
実はミントという呼び名はシソ科ハッカ属に分類される植物の総称。日本の薄荷(ハッカ)もミントに含まれています。それ以外にもたくさんの種類があり、かつ交雑・交配させやすいこともあって、それらを含めると数百もの種に分かれるという説もあります。ミント類全体として見ると“料理用および医薬品用に使用される最も古いハーブの1つ”とも称されるほど人との関わりの深い植物ですよ。
古代には現在ほどミント類の区分が明確ではなかった関係もあり、ペパーミントがいつ・どこで誕生したのかは分かっていません。しかし、紀元前1000年頃のピラミッドからミントの葉が発見されており、少なくとも3000年以上前から人々がミントを使用していたことがわかります。
また、古代ギリシアの医師で“医学の父”と称されるヒポクラテスは、ペパーミントを胃腸薬や気付け薬として処方していたと伝えられています。古代ギリシアにはミントにまつわる神話も多く残っています。ミントの語源でありハッカ属の属名Menthaも、ギリシャ神話に登場する妖精“Minthes(メンター)”が由来。メンターは冥界の王ハーデスに愛されたことで彼の妻ペルセポネーに嫉妬され、姿を変えられミントになった、と伝えられています[1]。
古代ローマ帝国でもミントはハーブとして飲食物の香り付けに使用されていたほか、お酒で酔いが回っているときに良いとしてペパーミントで編んだ冠を被っていた・ミントの冠をかぶると心と魂が刺激されるとして哲学者が身につけていた、などの逸話もあります[1]。怒りを抑える・性衝動を抑えるなどの働きがあると信じられていた、なんて話もあります。
ミントは中世の間もハーブとして人々に親しまれ、利用されていました。17世紀になるとペパーミントという種がはっきりと区別されるようになり、イギリスでは商業的な栽培も行われるようになります。イギリスでペパーミントが栽培されるようになったのは、当時薬として利用されていたことに加え、ミントの生育に適していたため。ペパーミントは湿気のある気候条件で良く育つ性質があり、雨の多いイギリス産のペパーミントは品質が良いと評判だったのだとか。現在でもイギリス産ペパーミントは、一種のブランドといえるほど高品質と考えられています。
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ミント系精油の種類について
シソ科ハッカ属に分類され“ミント”と呼ばれている植物はたくさんあります。しかし、世界的にハーブや香料植物として利用されるのは、スペアミント系品種とペパーミント系統品種の2系統が主。日本の場合は在来種である和種ハッカ(日本薄荷/Japanese peppermint)を加えた3つの種が使われています[2]。
- ペパーミント:Mentha × piperita
- スペアミント:Mentha spicata
- 和種ハッカ:Mentha canadensis var. piperascens
そんな“ミント”を代表する種の一つであるペパーミントは、ウォーターミントとスペアミントが自然交配することによって誕生したと考えられています[2]。ペパーミントの特徴は、清涼感のある刺激的な芳香。このペパーミントの香りはメントール(メンソール/ハッカ脳とも)と呼ばれる成分によるものです。3種のミントの中で、ペパーミントと和ハッカの芳香の主成分はメントール。対して、スペアミントはℓ-カルボンが主成分となっているため、マイルドで柔らかい芳香になっています。
ペパーミントの種子名piperitaはPepper=コショウのような香りが語源。呼称の“Pepper mint”も同じく、メントールの刺激的な香りをコショウに例えて付けられました。とは言え、メントール含有率が増えるほど芳香はシャープな印象になっていくので、クール感で言えば和ハッカ>ペパーミント>スペアミントという順。ハッカがある日本で育った私達にとっては、ペパーミントの香りにも甘さ・柔らかさを感じることもあります。
香料原料データ
- 通称
- ペパーミント(Peppermint)
- 別名
- セイヨウハッカ(西洋薄荷)、コショウハッカ(胡椒薄荷)、目覚め草
- 学名
- Mentha x piperita
- 科名/種類
- シソ科ハッカ属/多年草
- 主産地
- イギリス、アメリカ、イタリア、オーストラリアなど
- 抽出部位
- 全草(もしくは葉と花の咲いた先端部分のみ)
- 抽出方法
- 水蒸気蒸留法
- 色
- ほぼ無色~淡い黄緑色
- 粘性
- 低い
- ノート
- トップノート
- 香り度合い
- 強い
- 精油成分
- メントール、メントン、1,8-シネオール、リモネン、β-カリオフィレン、メントフラン、酢酸メチルなど
- おすすめ
- 芳香浴・アロマバス・マッサージ・ヘアケア・ハウスキーピング・防虫
刺激的で清涼感あふれる、シャープなメントールの香り
ペパーミント精油に期待される働き・効能
精神面への作用と効果
ペパーミントの香りは、メントールを筆頭とした精油成分によるシャープで刺激的な香りが特徴です。この目の醒めるようなクールな香りから、ペパーミントやその芳香は眠気を冷まして意識をはっきりとさせたい・集中力を高めたい場面に活用されています。眠気覚ましのガムなどでもお馴染みの香りで“ドライバーに適した香り”なんて称されることもあります、実際に、研究でもペパーミントの芳香は中枢神経系の興奮剤として働き、覚醒作用によってモチベーションやパフォーマンスを高める働きをもつ可能性が示されています[3]。
このため、ペパーミントの精油も、頭をしゃっきりさせたい時や、集中力を高めて作業効率をアップさせたい場面に適した精油として扱われています。また、ペパーミントは興奮・覚醒方面の働きを求めて使われることが多い精油ですが、冷却作用によってイライラ・怒り・興奮など感情の高ぶりを抑えるという評もあります。実際に実験でも“ペパーミントの香りが不安や倦怠感を軽減した”という報告もあります[3]から、カッと頭に血が昇るような興奮ではなく、覚醒させることで冷静さを保つようサポートしてくれる可能性もあるでしょう。まさにクールな印象通り、という感じですね。
不安や倦怠感の軽減が見られたという報告もある精油ですから、ペパーミントはストレスや神経疲労などで気持ちが落ち込んでしまっている時の香りとしても役立ってくれるでしょう。お家に帰ってきてからのリラックスタイムではなく、通学や出勤前・休憩中など「お疲れ気味、でも頑張らなきゃ…」というタイミングに適しています。
肉体面への作用と効果
ペパーミントは古代ギリシア・ローマの時代から、胃腸薬のような感覚で利用されてきたと伝えられるハーブ。現代でもヨーロッパでは「お腹を壊したときにペパーミントティー」など民間療法の中で使用されています。そうした伝統的効能もあり、ペパーミントの精油が胃腸トラブルに対して有効かの研究は多く行われています。ペパーミント精油が過敏性腸症候群(IBS)や消化不良に対して有効だったことを示す研究論文も多く発表されていますが「4]、こうした研究ではペパーミント精油の投与によるものが大半。芳香吸引のみでの有効性についてはあまり触れられていません。
ペパーミントのエッセンシャルオイル吸引による、妊娠中の悪阻(吐き気・嘔吐)軽減を調べた研究ではプラセボと差がなかった=有意な影響を及ぼさないという結果も報告されています[5]。反対に、ペパーミントオイル吸入で悪心(吐き気)レベルが有意に軽減したという報告もあります。
アロマテラピーや民間療法では二日酔いの軽減、車・船などの乗り物酔いによる吐き気止めにペパーミントが使われていますし、消化不良や食欲不振、便秘、吐き気、胃痛軽減など消化器系の不調全般に対して効果が期待されています。しかし、実際のところ芳香吸引による有効性については分かっていませんので、過度な期待はせず、自分に合っているか否かを考えて使うようにしてください。
そのほか、ペパーミントの特徴成分メントールには鎮痛作用があり、頭痛や偏頭痛、筋肉痛、捻挫や打撲などの外傷まで、様々な痛みの緩和にも有効とされています。1994年にドイツで行われた臨床試験ではペパーミントオイルに“頭痛に対する感受性の低下を伴う有意な鎮痛効果”があったことも報告されています[6]。同実験では筋肉を弛緩させ、精神的にも弛緩させる効果があるという事も報告されていますから、こうした働きからも緊張性頭痛または偏頭痛、過敏性腸症候群(IBS)の緩和を手助けしてくれているとも考えられますね。
呼吸器トラブル・花粉症対策にも
近年ペパーミント精油は花粉症の緩和用として利用される事も増えています。これはスーと通るようなメントールの清涼感に加え、ペパーミントには鬱血除去作用や粘液溶解作用、鼻腔内の筋肉をリラックスさせる働きがあると考えられているためです。1998年『European Journal of Medical Research』に発表された臨床試験では、メントールの持つ抗炎症作用がアレルギー性鼻炎や気管支喘息などの慢性炎症性疾患の治療に役立つ可能性を示唆しています。
サッパリとした香りは気分的にも鼻詰まりのぼんやり感を払拭しスッキリした気分を味あわせてくれますから、セルフケアの一つとして取り入れてみても良さそうですね。炎症を抑えたり鼻の通りを良くする働きは、アレルギー性の炎症だけではなく風邪による症状の緩和にも役立ちます。ペパーミント精油には抗菌、抗真菌、抗ウィルス性があることも報告されています[7]ので、風邪やインフルエンザなど感染症予防対策として室内に拡散させておいても良いかもしれません。
その他に期待される作用
肌への働きかけ
ペパーミントの精油は抗炎症作用や軽い麻酔・冷却作用があると考えられており、日焼け後の肌や炎症を起こした肌のケアに取り入れられています。かゆみ止め効果が高い精油として軟膏類などに配合されることもありますし、抗菌・抗真菌作用を持つことから虫刺されや水虫(白癬)の痒み止や炎症改善にも取り入れられています。しかし、ペパーミント精油は皮膚への刺激が強いため敏感肌の方や炎症が重い方の場合は使用に注意が必要です。肌の状態を悪化させてしまう可能性もありますので、低濃度に希釈してパッチテストを行った後に利用するようにしてください。
そのほかに収斂作用により、ペパーミントは脂性肌のケアや頭皮に利用することで髪の脂っぽさ・ベタツキの解消に役立つとされています[1]。メンズ用のシャンプーなどにも配合されていまね。収斂作用と抗菌・抗炎症作用が複合して働くことでニキビのケアなどにも有効とされていますし、脂漏性皮膚炎やそれに伴うかゆみ軽減などにも効果が期待できるでしょう。
暑さ対策・入浴剤として
近年では、夏になるとミント系を使った暑さ対策グッズが多く流通しています。冷涼感ある香りも勿論ですが、メントールには「冷感作用」と呼ばれる冷感受容体というタンパク質を刺激する働きがあるため、皮膚につくと冷たく感じるというのも大きなメリットとなっています。このメントールの冷感作用は実際に体を冷やしているわけではなく、いわば脳を騙しているような状態です。
実際に体を冷やしているわけではありませんから、オフィス内での冷えが気になる方なども安心して利用することが出来ますし、入浴剤として利用すると暑さを感じずに体を温めることが出来ます。メントールには消臭効果もありますので、入浴剤やボディーローションとして利用することでお風呂上がりもサッパリと過ごすことが出来ます。メントール含有量の多さで見ると和ハッカ(ハッカ油)の方が高いのですが、ペパーミントのほうが甘さのある香りですので香りが残った際や、化粧品や香水の香りと混じる可能性がある方の場合は使いやすいかもしれません。
抗菌・消臭・虫よけ剤としても
メントールはニキビや体臭予防だけではなく、お部屋の抗菌・消臭用としても活用されています。またメントールには昆虫忌避性もあり、蚊やアリをはじめゴキブリ避けにも効果が期待できます。ペパーミントの香りはネズミが嫌うとも言われていますから、台所やゴミ箱などにスプレーして利用してみてください。完全に駆逐するには至るかは微妙なところですが、消臭も兼ねてくれますので使い勝手は良いでしょう。天然香料なので安心感があることも嬉しいですね。
ペパーミントが利用されるシーンまとめ
【精神面】
- 気分をシャッキリさせたい
- 眠気を緩和したい
- 集中力を高めたい時に
- 冷静になりたい時に
- リフレッシュしたい時に
- ストレス・神経疲労を感じている時に
- 倦怠感があり、やる気が出ない時に
【肉体面】
- 吐き気・乗り物酔いに
- お腹のトラブルケアに
- 頭痛の軽減に
- 筋肉痛や打撲のケアに
- 鼻ずまり・花粉症の軽減に
- 風邪・インフルエンザ予防に
- 脂性肌・ニキビケアに
- 消臭剤・体臭予防に
- 暑さ対策に
ペパーミントの利用と注意点について
相性の良い香り
ペパーミントの精油は清涼感が強いことが特徵ですが、単体でもブレンドオイルのような様々なニュアンスを含んでいます。同じ様にスッキリした印象のある柑橘系の香りとは組み合わせやすいのは勿論のこと、ウッディー系のやハーブ系の香りともマッチします。甘めのスパイス系など以外な部分でも、使用量にさえ気をつければ組み合わせられますよ。不安な場合は少なめに使うと失敗しにくいです。
ペパーミントのブレンド例
- ストレス対策に⇒ラベンダー、サイプレス、マンダリン
- 集中力を高めたい⇒レモン、ローズマリー、和ハッカ
- お腹の不調緩和に⇒オレンジ、マジョラム、プチグレン
- 鼻ずまり・花粉症に⇒ユーカリ、ティートリー、ニアウリ
ペパーミント精油の注意点
- 妊娠中・授乳中の方、小さいお子さんへは使用できません。
- 皮膚への刺激が強い精油です。目の周りへの使用は避けてください。
- 肌に触れる使い方をする場合は、事前にパッチテストを行いましょう。敏感肌の方は芳香浴の場合でも使用量に注意してください。
- 疾患がある方・投薬治療中の方は医師に確認してから利用して下さい。
- アロマテラピーは医療ではありません。効果や効能は心身の不調改善を保証するものではありませんのでご了承ください。
- 当サイトに掲載している情報は各種検定とは一切関わりがありません。
参考元
- [1]Peppermint Oil Uses, Benefits, Side Effects and More
- [2]ハッカの種類 | 北見ハッカ通商
- [3]Effects of Peppermint and Cinnamon Odor Administration on Simulated Driving Alertness, Mood and Workload
- [4]The impact of peppermint oil on the irritable bowel syndrome: a meta-analysis of the pooled clinical data
- [5]Effect of Aromatherapy with Peppermint Oil on the Severity of Nausea and Vomiting in Pregnancy: A Single-blind, Randomized, Placebo-controlled trial
- [6]Effect of peppermint and eucalyptus oil preparations on neurophysiological and experimental algesimetric headache parameters
- [7]Essential oils, their therapeutic properties, and implication in dentistry: A review